<Chapter2-6-10>
「ふぁぁ……。」
翌日。
結局帰宅時にも何も見つかることはなく。
然し念入りに調べていた結果、普段よりも明らかに帰宅は遅くなった。
結果、起こったのは明らかな睡眠不足――――朝のランニングの時間を考えると睡眠時間を削るしか無かった。
「おいおい、夜更かしでもしたのか?」
「ある意味ではそーだな……。」
授業と授業の中休み。
そんな誂いのような言葉を右から東に流しつつ。
目線を二人へ向ければ、彼女たちも普段よりもなんだか眠そうにしている。
普段なら滅多にすることもない欠伸を繰り返し、身体を伸ばして。
それだけ精神的にも疲労することになったのか……それもそうだろ、俺自身そうだったし。
「なんか深夜にテレビでもやってたか?」
「んなわけねーだろ。 それなら後で見るわ。」
「生放送で見ない派閥か将臣……!」
いや知らんわ、何だその派閥は。
「
「そんな重い宿題とか出てねーだろうに。」
「色々な、色々……。」
翌日の教室の空気の重さは昨日よりも薄れている。
夜に人がいなくなり、周囲に散ったからなのか。
唯でさえ朝が弱い芳乃ちゃんが早起きして教室で柏手を打って祓ったからなのか。
他の同級生達は昨日の浮かれ具合から一転し真面目に。
それでも休み時間の度にレナさんへと話をしに向かい、彼女はそれを受け入れる。
レナさんの高祖父に当たる人物は日本人で、穂織に勉強のために訪れていた事。
そしてこの地で高祖母に当たる人物と運命的な出会いをして結ばれた事。
その話をずっと故郷で語り聞いていたからこそ来るのを楽しみにしていた事。
……昨日は深く聞かなかったが、
「……。」
そして、最後の言葉を聞いた時に廉太郎の顔が向いた場所。
というよりも、聞こえていた生徒の多かれ少なかれが向いてしまった気がしないでもない。
唯でさえオーダーメイドだというのにそれでも尚窮屈だというスタイルの良さも相俟ってか。
胸を目立たせているのではないか、といっそ疑ってしまう。
リボンの膨らみ方も影響してだろうし。
「やっぱり外国の方だと違うのかなぁ……。」
「どうでしょう。 やはり人によるのではと思います?」
女子のクラスメイトがそれを見て自分の胸元に目線をやって落ち込んで。
隣の男子生徒、普段から良く話しているやつがそんな彼女を慰めつつも奇妙な空気が漂っていて。
一つ二つ、舌打ちが聞こえたようなそうでないような。
奇妙な一体感というか、このクラスが持つ特有の連帯感は未だに継続したまま。
「……なーんか、楽しそうだよな。」
ボソリと呟く廉太郎。
……いや本当に此奴らしくない。
「そう思うなら話しかけてこいよ。」
「
分かってはいるが、そんな愚痴を垂れ流すのなら……と言ってしまいそうになり。
自分に置き換えたことを想定して、絶対無理だと黙り込む。
「実際どうなんだ?」
「……何がだ?」
「いや、ほら。
主題を省く。
先程の話に続いて言ってるから、細かい部分は言わなくても伝わるだろう。
その想定通りに。
ああ、と口を開いて振り返り、椅子の背凭れに改めて両腕を載せた。
「まだ心子さんから色々勉強してる最中だからそんなに絡みもねえよ。」
「そうなのか?」
「まだ手伝ってた頃のお前レベルの仕事……から力仕事を抜いたくらいか。 客前にはまだまだ。」
「で、その分の仕事はお前が?」
まーな、と言いつつ平然とした顔を浮かべている。
此奴も此奴で出来ることをしているからか、意外と服の下の筋肉なんかはみっちり詰まっている。
体育の時に見かけるか、暑い時に脱いでそれが見える程度ではあるが。
……気付いているのかいないのか。 女子生徒から目線が向けられることだってある。
柳生さんとか。
「休憩の時とか……後は力を貸したりとか。 祖父ちゃんとかと大体一緒だよ。」
だから深く話をする時間もない、と溜息。
……これ、やっぱりそういうことでいいのかね。
口に出せば多分強めに否定するから言わないでおくことにするが。
「まあその内……いや、その内でもないな。」
「あん?」
何言ってるんだ、と首を傾げる此奴に一言。
「そういう動きも祖父ちゃん達は見てるだろうし、機会はあるんじゃねえ?」
「そんなもんかねえ……。」
そんなもんだろ、と口にして。
チャイムの音が鳴り響いた。
……俺はどうなんだろうな、と自問自答を響かせながら。
約束と、決意と。
二人へ向けているこの現状を含めて、男二人で苦悩していた。