恋心、想花の如く。   作:氷桜

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2-6終了。


<Chapter2-6-14-Y>

 

<Chapter2-6-14-Y>

 

月夜、木々の合間。

顔のような場所から溢れ出している()()()()が雲のように引き伸ばされ。

其処に実体として存在してしまっている祟り神が、呻るように小さく一歩を踏み出そうとする中。

 

「――――シッ!」

 

銀閃が空気を裂いて。

彼……将臣くんが握る叢雨丸がその足を刈るように振られるのが見えました。

 

「茉子!」

「はい!」

 

叫ぶそれが片足を失い、崩れ落ちるのを見て。

動き出したのは、多分同時に。

握る神具……霊力を通しやすく、同時に普段は神社に祀る武器を振り上げながら。

横から回り込もうと動いていた茉子へと叫び、大きく二歩程の間を進む。

 

幾度となく経験して。

その度に築き上げてきた連携のような、息を合わせた行動。

彼が加わってから暫く――――その動きは、やっと噛み合うようになったような気がします。

 

「そこ!」

「はぁあ!」

 

時間がゆっくりと進むような、勘違いのような。

投げ付けられた苦無が肩を捉え、崩れる方向が少しだけ後ろへと傾き。

私の全力での攻撃が腹部(の辺り)を抉り、そのまま抜こうとせずに大きく後ろへと離れ。

一度体勢を整えた将臣くんが首の辺りを引き裂き、そのまま遠心力で祟り神の身体を分割するのが目に入ります。

 

どさり。

そんな音が大きく、小さく、二つ。

 

「……お疲れ様、大丈夫?」

 

頭部と胴体、二つに分たれた物体がさらさらと消えていくのを見た上で。

漸く息を吐き、叢雨丸を納刀しながら掛けられた声。

大丈夫です、と――――そう返答するだけなのに。

少しの時間を費やしました。

 

焦っていたのか。

普段よりも息苦しさを感じたのか。

……少しだけ、見惚れてしまっていたのか。

そのどれかが、自分でも分からずに。

 

「将臣くんこそ大丈夫ですか?」

「ああ……うん、疲れはあるけど怪我とかは全く。」

『怪我などさせるものか。 担い手が余程ダメダメでも無ければの。』

 

誰がダメダメだ、とか。

別にご主人のことなど誰も言ってない、とか。

そんな話す内容が、遠く感じて。

ただ、それを見ているだけなのに()()()()()()()()

 

「……芳乃様?」

「なあに、茉子。」

「いえ……なんだか、酷く疲れておいでのように見えましたので。」

 

そう、なのだろうか。

自分でも気付かない疲れが出ているのか。

 

「そう?」

「はい。 戻ったら早くお休み下さい……心配です。」

「……ごめんね。」

 

獣耳が発現する際に、身体の内を侵食されるような寒気に襲われる。

身体がむず痒く、自分が自分でなくなってしまうような遠い感覚に慣れてしまったのはいつだったかな。

お母さんも――――ずっと、こんな感覚を受けていたから。

そんな考えが離れなくなったのは、いつからだっただろう。

 

「将臣さん。 じゃれ合いは後にしましょう。 芳乃様がお疲れみたいです。」

「あ、ごめん。 ……そうだな、夜中に女の子を寝かせないのも悪いし。」

 

よ、っと声を上げつつ消えた祟り神の存在していた位置から立ち上がる。

何も無くなった場所を確認していた将臣くんが、私の武器を手渡してくれた。

ありがとうございます。

そう言いながら、指先が微かに触れただけで温もりが胸に宿ったようにも感じました。

 

「そんなことばっかり向こうでは言って回ってたんです?」

「俺に女の子との縁なんか無かったよ……。」

 

じゃれ合い。

軽口。

それだけ、の筈。

帰りながらの、()()()()()()()の筈。

 

でも。

――――酷く消耗した私は。

いつも、それを埋めてくれる何かを求めている。

そんな、浅ましい自分も感じている。

 

だから。

まさおみさん、と。

言葉にならない声で。

もう一度、何かを……彼に、求めている。

 

それが何か、気付けるまでには。

後少しのような、気がしていた。




Q:芳乃様が原作より疲れてない?
A:原作より獣耳発現時の疲労・消耗度が増しています。
それも幼い頃からやり過ぎている+比較対象が既にいないのでおかしさに気付けない。
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