<Chapter2-7-2>
「パソコンを、かい?」
「はい、まあ実家で使ってたのを送って貰おうかなくらいのつもりなんですけど。」
朝食時。
四人揃っての食事、静かに立ち昇る炊きたての白米の匂い。
休みの日であってもそんな朝の一幕だけは変わらない……慣れてしまった、というよりは。
毎朝を楽しみにし始めている自分もどこかにいる。
多分に、女の子の手料理というエッセンスが混じっているのは間違いない。
……
中身が違うからこそ他にはバレてはいないが、廉太郎は知ってるし。
「また、急ですね?」
「いや、急っていうか……前々から考えてはいたんだけどさ。」
首をこてん、と傾けている芳乃ちゃん。
若干否定を交えながらにそれに応対する。
正直に言えば電子機械に触れない事に慣れてきていた、というのはある。
ただ、”一般的な”情報収集と……それに合わせて、不特定多数への情報公開。
これらを考えると、手元に自分のパソコンがあっても良いのかな、なんて踏み切ったわけだ。
祖父ちゃんも持ってるらしいけど……どんなやつなんだろう。
「僕もあまり詳しいわけではないけれど……その、工事とかが必要になるんだっけ?」
「あー……いえ、その辺りは携帯を介そうと思ってます。」
志那都荘のように客商売の宿であるならば積極的に踏み切っても然程抵抗は無いだろうけど。
建実神社のような伝統を保つ場所ならば、二の足を踏むのも当然だ。
……特に、工事であっても『外』の人間を招き入れるのに拒否感を抱くような気持ちは俺にも分かる。
ただ、その辺りは工事が必要ないように対応するつもりでもいた。
主に調べ物なんかをメインにする関係上、回線速度とかは其処まで必要ないし。
「そっか。 もし必要になるんだったらちょっと難しかったかもしれないけど……。」
「流石にそこまでは言えませんよ。
細かい事情は未だ伏せていた。
というのも、そもそも俺が何が出来るかが良く分かっていないからだ。
半分以上は穂織の人間だと、自分自身をそう思っている。
だからこそ、「完全に」外から見た場合の視点が欠けている……そんな気もしている。
朝武の家の呪い、に対しては何処まで利用できるか分からないネットの海の情報でも。
穂織自体の衰退に対する提案、に関しては利用できると――――そんな浅い想定をしているから。
「まあ分かった。 それだったら止める必要も理由もないからね。」
「有難うございます。 まああの部屋……俺の部屋から動かすつもりも今はないので。」
ノートパソコンの利点を大分投げ捨てているがまあ仕方ない。
地元でも自分の部屋から動かすなんてことは無かったし……精々遊びに来た彼奴と一緒に色々調べたりしたくらいか。
「と、そうだ。 あと一つ相談があるんですけど……。」
「何かな?」
そして、もう一つ。
「神社の中に古文書というか……なんだ、ええと。
何方かと言えば此方が本題だ。
中々休日、それも外に出難い天気の日でもなければ今の俺だと手を付けるか悩んでしまう内容でもある。
ただ、優先度が高い内容でもある……自分の好奇心が混ざっていないとは言わない。
それでも、手を付けられる範囲から調べようと思った根幹は曲がっていないと。
そう、信じている。
「……と、いうと?」
安晴さんは落ち着いた顔で。
芳乃ちゃんも、茉子ちゃんも。
気にした様子で話の流れを伺っている。
「何というか、祟り神に関して少し調べてみたくて。」
「それは別に構わないし、後で案内してもいいが……。」
……?
ちらり、と目線を他所に向けるのが分かった。
恐らくその先は
緊張したような――――それでいて少しだけ不安そうな表情を浮かべている。
「中が汚れてるだろうからね。 一度僕も中を確認してからでいいかな?」
「はい、勿論。」
「悪いね。 確認できたら連絡するよ。」
……ん?
今の話に、違和感があったような気がした。
それが何なのかに思い当たる前に、話は別の方向へと波及していく。
「将臣くん、先程言っていたことですけど。」
そう口火を切ったのは芳乃ちゃんで。
先程の件……と言うと、食事前に頼んだあの話か。
「布?」
「はい。 何でも……と言っていましたし、切れ端でも大丈夫ということで宜しいですか?」
「ある程度の大きさは欲しいけど、基本的には大丈夫……かな?」
必要とするのはあの破片を包み込むためだ。
切れ端の大きさにも依るが、一般的な大きさ……最低限ハンカチを一回り小さくしたくらいなら大丈夫だろう。
「分かりました。 では、食事が終わったら時間を頂いても?」
「勿論。 ごめんね、急に。」
いえ、と。
呟いた彼女が、少しだけ妙な目をしていたような感じがするのは気の所為だろうか。
「それと茉子。」
「……はい?」
「片付けが終わった後で、少し時間貰っても良い?」
分かりました、と。
呟く茉子ちゃんを見て――――。
……普段よりも、彼女の口数が少なかったような。
そんな違和感に気付いたのは。
食事も終わり際、テーブルの上の料理が全て片付いた後のことだった。