<Chapter2-7-3>
神社の本殿から見て、住宅側の最も近い小さな一室。
ほぼほぼ待機室のようになっている部屋の奥、普段は立ち入ることも無いそんな部屋。
「ええっと……。」
俺と芳乃ちゃんは、そんな一室の中に踏み入れていた。
「おお……。」
桐箪笥、一見良く分からない壺のようなモノにテレビで見た覚えがある捧げ物の為の台のようなモノ。
それらが予備を含めて綺麗に整理されている中、箪笥の中の引き出しを開いている。
……食器みたいなものまであるけど、これも指定とかあるんだろうか。
全部布や紙で包まれていて、少しだけはみ出した場所から見える部分から察している程度だが。
「この程度の大きさで……将臣くん?」
「あ、ごめん。 ちょっと色々気になって。」
一枚の布――――赤地で俺の掌程の大きさの物を取り出しながら振り向かれ。
何をしているのか、と目線で問われてついつい頭を下げてしまう。
「まあ構いませんが……これで大丈夫ですか?」
「うん、全然大丈夫。 有難う。」
「いえ、この程度でしたら。」
そこで途切れてもおかしくはない会話。
ただ、何方もその部屋から出ようとしなかったのはタイミングの問題か。
それとも、踏み出そうとしたところでの言葉が理由か。
「……あの。」
背中に投げ掛けられて、彼女の側へ改めて向き直った。
「ん?」
「古文書を見る、と言っていましたが……みづはさんとは別口で、ということですよね?」
首を縦に振った。
「書いてある内容が全部正しいとは限らないけど、念の為確認しておきたいなって。」
「……それは。」
「俺の……なんだろうな、性分?」
幼い頃伝え聞いた”イヌツキ”という言葉。
それを周りに聞いても口を閉ざされていた。
だからこそ、調べた――――調べてしまった。
恐らくそれが原因で……気になったら調べてしまう、という悪癖は身についてしまったのだと思う。
そうですか、と一度口が閉ざされて。
恐らくは無意識にだろう、布を強く握っているのに気付いたようで。
なんとなしにそれを見ながら一言。
「そういえば。 これ、何に使うんですか?」
気分転換のような問い掛け。
ああ、と答えかけて……
ムラサメちゃんとも話したが、これ以上考えさせることで負担をかけるのもどうかと思ったので。
嘘を言う必要性もないし、それなりに納得してもらえる理由。
「ん~……ちょっと仕舞っておきたいのがあって、かなぁ。」
「布で覆ってですか?」
「そう。 まあ思いつきな部分もあってね。」
はぁ、とぽかんとした表情を浮かべたままで。
仄暗い灯りが二人の影を部屋の中に散らす。
互いにその場から動かなかったのは……多分。
若干偶然ではあったけれど、見つめ合うような形になってしまったからなのだと俺は思う。
「……。」
「……。」
実時間にして多分数秒、或いは十数秒。
動かずに、動けずに。
けれど、動こうとしだしたのは結局俺から。
「……あー、芳乃ちゃん?」
「あ……はい。」
固まった身体を無理に動かすように、若干ぎこちなさがあった。
多分、それは彼女にも――――返答に少しだけ、間を感じた。
その間に何を思っていたのかまでは知れないけれど。
似たような気恥ずかしさは共有していたと、そう思う。
「まだ時間大丈夫?」
「……そうですね、15分くらいなら。」
だからこそ、朝食の時に聞いていた内容を繰り返すように口にして。
その直後に”用事があるって言ってただろ”と自分を叱咤しそうになったが。
ポケットから取り出した電話で時間を見て、多分これくらいならと口にしてくれたことで助かった。
「じゃあさ……此処にあるものってどう使うのかって聞いてみても良い?」
勿論、ごまかしの為だけの内容というわけでも無かった。
単純に気になった、それが9割を占めている質問であったのは間違いなく。
それでも、残りの1割は……多分、その15分を共に過ごしたいと。
どこかで自分が思っているからこその質問。
「え? ここの、ですか?」
「うん。 いや、その……気になって知りたい、ってのは間違いないんだけど。」
ただ、それをはっきり言ってしまうのは恥ずかしい。
だから、少しばかり遠回しに言おうとして。
「
そう、口にしてしまった。
「…………?」
ちょっとだけ、首を傾げて。
「…………ぇ。」
少しだけ、声が漏れて。
「~~~~~っ。」
「あ。」
顔を真っ赤にして、横を向いた辺りで何か勘違いされている事に気付いた。
「……あの、芳乃ちゃん? 一応、俺の立ち位置って……その。」
「わ、分かってます!」
それでも、とかなにか呟いているのが聞こえ。
口にしてしまった内容に俺自身焦りつつも。
互いに落ち着き、話が出来るまでに――――その15分という時間は費やされたのだった。
何故そこまで焦っていたのか。
当初との違いは何だったのか。
それに気付いたのは、ずっと後で……思い出した時でのことだった。