恋心、想花の如く。   作:氷桜

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午後の過ごし方……だった(過去形)。


<Chapter2-7-6>

 

<Chapter2-7-6>

 

”だったら八百屋さんとお肉屋さん寄って来て貰ってもいいですか?”

 

そんな文面を受け取って、寄り道をして合わせて一時間程。

途中ムラサメちゃんと別れ、神社に戻った際には既に食事時特有の良い香りが漂っていた。

 

(……あれ?)

 

リビング……と呼べば良いのか、或いは居間か。

部屋には誰も姿が見えず。

キッチン側では水を流しながら茉子ちゃんが洗い物をしている背中だけが見える。

 

「ただいま……?」

 

そんな声を小さく掛けつつ、幾つかのビニール袋を冷蔵庫の足元へ。

すぐに反応し、水を止め。

振り返り手を拭きつつも、浮かべたのは少しばかり()()部分を含んだ小さな笑み。

 

「あ、お帰りなさい。 どうでした?」

 

そんな表情に、自分自身気付いていないようで。

手を伸ばそうとしても、途中で壁に当たるかのように止まり。

深く追求するのは――――少しだけ、躊躇われて。

 

「頼まれてたのは買ってきたよ。 ……それより二人は?」

 

気付いていない風に、いつもどおりに対応する。

普通であれば、彼女()なら気付いて問い掛けてくるだろう浅いごまかし。

けれどそれに対しても気付かずに、返ってくる答えは質問に対する回答。

 

「ああ……本殿の方で、その。 ()()()()お客様だそうで。」

「……え? この時間に? いや、そもそも予定とかはどうなの?」

 

()()()の部分に感じる若干の悪意というか、厭な感情というか。

其処からピンときたのは以前にもあった芳乃ちゃんに対するあれこれ。

……とはいえ、客が来るのなら朝の時点で教えてくれるのが常なものだけど。

 

「……。」

 

小さく首を横に振る。

いや、どうなんだそれは……予定込だったとしても良い気分はしないけど。

それは俺が思う一方的な物なのだろうか。

 

「前にも来られている方なんですよ。 押しが強いというか、諦めが悪すぎるというか。」

「……でもさ、一応俺が()()()()扱いな訳でしょ?」

()()()()()()押し掛けてくる方、と言い直しましょうか。」

 

いや、そんなに理不尽な……というか変な相手まで来るのか?

ぐるぐると身体の中を負の感情が巡っている気がして、一度深呼吸をして押し流す。

……こういったものが積み重なってああいう形作ると分かっているから。

本来だったら何とかするべきではあるのだと分かっていても。

 

「まあ、話していても楽しくもない話になってしまいますから。 将臣さんもご飯食べます?」

 

何となくだけど。

茉子ちゃんがおかしい態度を抱いている理由は、客のこと(それ)だけではない気がしつつも。

その言葉に甘えてしまう。

 

「あぁ、うん。 後、悪いんだけどその買ってきたの冷蔵庫に入れておいて貰っても良い?」

「はい。 ……って、ワタシがお願いしたのとは別の、って意味です?」

 

見れば分かるよ、と。

そんな事を言いながらも、まずは手洗いからだと水に手を翳す。

少しずつ暑くなり始める季節に差し掛かり始めていて、それでも水の冷たさには快感よりも背筋に一瞬冷たさが走るレベル。

田舎、山だからなんだろうか。 未だに慣れないことの一つ。

 

「あれ、これって。」

 

そちらを向けば、丁度お土産として買ってきたパックを手に取っているタイミング。

 

「ああ、お土産で買ってきたんだけど……どうかな、一緒に食べられるかな。」

「恐らくそんなに長引かないとは思いますよ。  笑っていませんでしたからね、お二人共。」

 

……まあ、そうだよな。

ただこんな日常をずっと過ごして、それが当たり前になってしまっているのは。

やはり何かが違うというか……()()()()

 

「ですから、将臣さんは芳乃様がお戻りになったら優しくしてあげて下さいね?」

「何その言い方。」

 

芦花姉といい、茉子ちゃんといい。

何故か年上っぽい言い方する相手が多い日だな……。

 

「将臣さんがなんだか年下に見えるからですよ?」

「えー……。」

「はいはい、ご飯食べましょう? ワタシも実はまだなんです。」

「え、食べてなかったの?」

 

はい、と小さく頷いた。

見れば普段使う食器類……その中でも使われた形跡があるのは二人分。

 

「え、食べてなかったの?」

「はい。 その……少しやることがありまして、気付いたら。」

 

その()()()()()()()に関係するのが最初の表情の理由なんだろうな、と。

そんな事を思いつつ。

 

「まあ……そうだね。 食べて少し休んだら俺も身体動かそうと思うし。」

「あ、そうなんです?」

「何か力仕事とかあるようなら声掛けてくれる?」

 

勿論です、と告げる言葉。

その声色は普段と変わらない様子で、少しだけホッとする。

 

けれど、それも偽って――――いや、意識して平然としているのかもしれない。

彼女が俺の全てを知らないように。

俺も彼女の全てを知るわけではないのだから。

……なんて、考えてしまうのは最近頭を使いすぎている反動だろうか。

 

「じゃあ俺も準備手伝うよ。 何からやればいい?」

「あ、でしたら……。」

 

手分けして、けれどたった二人の準備。

頂きます、という食事の前の作法の声が揃ったのは。

それからほんの少し後のことだった。

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