恋心、想花の如く。   作:氷桜

96 / 171
新チャプター。
原作のこの章での新規情報がかなり変わってるのでそれ相応に。
UA5万超えたら何かアンケート取って短編書きたいですね。


<Chapter3-1>
<Chapter3-1-1>


 

<Chapter3-1-1>

 

一週、二週。

凡そ半月の間大きな変化は起こらず。

その間、拾っていた水晶のような欠片にも何も発生せず。

()()の――いや、普通ではないか――高校生としての日々を過ごしていた。

 

「はっ、はっ…………ふう。」

 

梅雨の様子は中々見えず。

早朝の、太陽が少しだけ顔を出し始めた頃に走る習慣は未だ続き。

ルートを変え、負担を変え。

時々廉太郎や芦花姉、何故かレナさんと出会うことさえあった日々。

 

(朝から頑張ってたな。 ……廉太郎もセット運用されてたけど。)

 

休日朝に、志那都荘周りの掃き掃除。

ランニング途中に見かける光景に少しだけ驚いて。

声を掛けてしまったのが失敗だったような、そんなどこにでも転がっている日常。

 

(……高低差がある道もある程度慣れちまったし、もう少し速度上げるか?)

 

神社裏、庭側。

走り終え、いつものように荒い息を漏らしながら迎えた休日の始まり。

体力を鍛え、腕を鍛え。

お陰で腕の筋肉痛は当初のものよりだいぶ薄くなりつつある中。

少しだけ開いた窓からは、いつものように芳しい香りが周囲に漂っている。

 

(……良いお嫁さんになりそうだよな~。)

 

そんな何でもない事を思いつつ。

ただ先ずは喉の乾きを潤したい、と玄関へ手を掛け、開き。

 

「……あれ?」

「……おはよ、ございます?」

 

内側からも同時に開かれた入り口。

その中には、この時間に起きているのなんて珍しい少女――――芳乃ちゃんの姿。

 

「珍しいね?」

 

完全に目を覚ましているわけではないのか、欠伸と合わせ寝巻きが少し崩れていて。

白い肌や首筋が見えて、目線を其処から逸らしつつ。

……朝から見るには少し()()が強すぎる。

なんというか、そういった()()をする余裕も気力も余り起こらず。

寧ろその分を身体を痛めつけることで解消しているのに……と言うのは言いがかりだな。

 

「少し、慣れようかと思いまして……。」

「慣れる?」

 

はい、と呟き再び欠伸。

小さく伸びをしながら一歩内側に引き。

それに応じて中に入り、扉を閉める。

……他に誰もいないだろうからこその無防備さだとは思うけれど。

少しばかり不安になってしまう、と口には出せないんだが。

 

「その……私、いつもこの時間、寝てる、じゃない、ですか?」

「まあ、うん。 そうだね?」

 

大体俺が汗を流した後、少し休んでから朝食の時間帯。

その頃から少し前に目覚めて眠気眼で動いているのが日常で。

朝に弱いんだなぁ、と前々から思っていた感想と。

普段と変わっているから驚いた、という感情が混じっているのが今の俺。

 

途切れ途切れ、というよりは思考が上手く回っていないのだろう。

普段ならもっと冷静で、知的な部分を表に出す”巫女姫”で。

けれど、こうしてみると”同い年の女の子”にしか見えなくなるから不思議な話。

 

「でも……私も、色々やってみたく、て。」

「色々、ねえ……。」

 

何を、とは聞かなかった。

二人並んで、雑談を交わしながら向かったのは居間。

正確に言えばキッチンへ。

 

「~♪」

 

私服の上からエプロンを付けて、何かを呟きながらの朝食作り。

毎朝のように見かける光景で、それを見るだけで少しだけ安心するような。

少しだけ、ドキリとするような。

そんな感情を両方抱かせる少女の背中が視界に映る。

……自分で思うが、随分贅沢だよな。

 

「ただいま。」

「あ、お帰りなさい……それに。 おはようございます、芳乃様、早いですね?」

「ああ、うん……昨日少し話したこと、なん、だけど。」

 

帰宅の挨拶。

起床の挨拶は既に済ませているからこそ、そして同時に日常と化しているからこそ。

彼女が居るのが当たり前で、そして彼女も当然のように受け入れる。

多分に幸せだろう、と思わせてくれる光景。

 

「ああ。 でもまずはしゃんとしましょ?」

「……そう、ね。」

 

ふああ、とずっと続ける欠伸と目を擦る仕草。

それを仕方ないなぁ、という目線で面倒を見る動き。

コップに入れた水を二杯ほど呷りながら、()()()()()()()()()()()()()光景を眺め。

その上で、ちょっとごめんと口火を切る。

 

「とりあえず俺は汗流してくるけど大丈夫?」

「あ、はい。 洗濯物とかで脱衣所には出入りするかもしれませんけど。」

「いつものだよね、分かってる。」

 

ただ、念の為声を掛けるのは忘れない。

最初も最初、茉子ちゃんが風呂に入っていたときのような事は繰り返してはならない。

思い出しても駄目だ。 忘れろ。

 

「……。」

 

ふと感じた視線。

誰かと思えば、俺達を()()()()した目で眺める芳乃ちゃん。

奇妙なほどに圧力のような、変な感覚を受けて一歩だけ後ずさろうとして。

背後が背後だけに下がれずにその場で佇む。

 

「……え、何?」

「いえ、仲が良さそうだなぁ、って。」

 

……顔を見合わせた。

今更?

――――或いは、内心が漏れているだけ?

 

「普通、ですよね?」

「女の子の手料理って一点を考えても普通ではないけど……まあ、普通だよね。」

 

しかし、芳乃ちゃんからの視線は止むことはなく。

どう動いて良いのか。

その場で暫し、立ち止まっていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。