*体調崩してました。
<Chapter3-1-3>
日が傾き、紅く染まり始めた時間帯。
外からは小さい鳥の鳴き声のようなものが響き、それ以外には微かに生活音が聞こえるかどうか。
少しだけ周囲から離れた、ある種の
知り合いの声というのは、必要不可分なモノなのだろう――――なんて、柄にも無いことを思う時間帯。
「お時間頂いちゃってすいません。」
「いや、今日の鍛錬は済ませたからさ。 それより、どうかしたの?」
折り目正しく正座姿の茉子ちゃんと、たった二人で部屋の中。
思い出すのはいつぞやの二人での話し合いの時だろうか。
ただ、あの時よりも漂う気配は真剣で。
冗談めかすような空気は余り見えなかった。
「幾つかお伝えしておきたいことがあるんですけど……。」
「伝えたいこと?」
態々時間を作るようなこと、ということか?
それも二人きりで。
……一つ浮かんでしまった事柄を頭から打ち消す。
「はい。 先ずは……この間仰っていた古文書に関してです。」
「あ、倉庫にあるっていう?」
「そうですね。」
あれ、でも茉子ちゃんからそれに関して伝えること?
一年に一回掃除してるとは言ってたし、入る権限でも持ってるのか?
いや、でもそれなら安晴さんが直接言ってくる方が正しいよな?
幾つかの疑問が浮かんでは消えていく。
「掃除は済ませておいたので、入る際にはワタシに声を掛けて下さい。」
「分かった。 でも茉子ちゃんから俺に言う事?」
「ええ……コレに関しては全面的に好きにするように言われておりまして。」
「……
それを許可する理由がある?
……あの時話した内容からして、そして安晴さんの性格からも考えて。
物事をどうでもいいと投げ出す人では絶対にないし、寧ろ大事に抱えて継いでいく人の筈。
これは俺の今までの印象論だから正しいかどうかは別としても。
「そこから次の話に繋がるんですけど……。」
少し眉を
まるで、口にするのを恐れるように。
或いは、何か罪を告白するのを躊躇うように。
「……それで?」
「……いえ、今ワタシが言ってしまうのはちょっと
「怖い、って。」
俺にどう捉えられるかが、という意味?
それとも、何かが起こってしまうかもしれないという意味?
謎が謎を産み、それについて口にすることを許さない。
「だから、将臣さん。 一つお願い……うん。
「聞くよ。」
「古文書を読んだ後で、もしかしたら気になることがあるかもしれません。 ……そうしたら、ワタシに聞いて貰えますか?」
読んだ上で、という言葉に浮かんだのもやはり疑問だった。
つまりそれは、普通に伝わっている伝承とはまた違う内容が書かれているということ。
そして、その内容を知る人物も限られている……恐らくは神社関係者とみづはさん。
祖父ちゃん達のような氏子はどうなのかまでは分からないが、隠す理由があるということ。
「芳乃ちゃんじゃなくて、茉子ちゃんに?」
「はい。 ……芳乃様から言われ、相談して。 その上で決めました。」
「それは、分かった。」
ただ、何故か。
今言ってしまってもいいと思うのに。
それが、先程の恐れに繋がっている?
「ただ、教えて欲しいんだけど。」
「はい、勿論。」
「
仮に、呪いの波及であるのなら。
叢雨丸が封印されている間黙っていた、という事で納得がいく。
ただ、その理由が彼女自身の成り立ちに関わるのなら――――。
「……。」
少しだけ、押し黙り。
気付けば外の鳥の声も消えていた。
「…………んを、持って欲しくないからです。」
「……え?」
「
「偏、見?」
傷ましげな表情は変わらなかった。
ただ、その言葉は。
本当の答えを求めているようにも思えた。
一度、何故か生唾を飲み込んでいた。
「それを、持つような内容ってこと?」
「かも、しれません。 ワタシが知る内容と、芳乃様が伝え聞く内容は若干違いがありましたから。」
だからこそ、と茉子ちゃんは続けた。
「最初に、将臣さんが読んだ上で判断して。 それでから、話を聞いて貰えますか?」
「俺自身の意見が欲しい――――ってことでいいの?」
「はい。」
分かった、と小さく頷いた。
だとしたら、出来る限り早いほうが良いのだろう。
「だったら、この後の夜か……明日の午前中、かな。」
「分かりました。 では、夜にお風呂入る前に一度。 それと明日に一度で。」
何方も了承した、と彼女も頷いた。
……なら、もう一つ聞いておこう。
「後さ。」
「はい。」
「茉子ちゃんに話を聞くなら、いつが良い?」
そうですね、と呟いた。
「夜でしたら、いつでも。 ……寝物語には、物騒ですけど。」
微かに微笑んだ内容は。
長くなるような事を簡単に想像させて。
そして、