ウマ娘。それは人間と似て非なる生き物。人間と同じように言葉を話し、二本の足で歩行する。しかし、人間とは比べ物になら無いほどの身体能力を持つ。そしてこの世界においては人間と密接な関わりにある。ターフを駆けるウマ娘達。そんな姿に魅了され、その後の人生が変わってしまうこともよくあることだ。
「おおおお!!!!かっけええええ!!!」
ここにいる少年。有澤翔もまたウマ娘に魅了された一人だ。彼は父に連れられここ、阪神レース場にて格式高いG1レース、桜花賞を観戦に来ていた。そこで目にしたのは
「先頭は変わらず……………!後ろからは何にも来ない!後ろからは何にも来ない!後ろからは何にも来ない!堂々の逃げ切り!」
その勝ったウマ娘の名前を彼は覚えていない。いかんせん幼すぎた。しかしその先頭をたった一人で駆け抜ける姿は目に焼き付いていた。彼は父に問う
「とうちゃん!あれってなんなの!すっげえかっけぇ!」
「ああ、あれはな、逃げ………いや、大逃げって奴さ」
「おおにげ!?おおにげってかっこい!」
「だな、だた最近はあんな大逃げをかますウマ娘が減ってるんだよ。カッコよさと引き換えに色々犠牲にしてるからな。ただの逃げウマ娘はいるんだが」
「へってるの?とうちゃんはそれかなしい?」
「悲しいと言うよりは…………虚しいな。後数年もすればターフからはいなくなるだろうな。それこそ父ちゃんがもっと若い頃なんかは大逃げだらけだったさ」
「いなくなっちゃうの!?そんなのいやだよ!」
「父ちゃんもそうさ、ま、誰かあんな大逃げを育てる物好きなトレーナーでもいれば話は変わってくるかな」
「とれーなー?がいればいいの!?だったら…………ぼくはとれーなーになる!おおにげの!」
「はっはっは!トレーナー、それもG1に出るようなトレーナーは狭すぎる門だぞ?」
「でも!」
「そうだな、お前がもう少し………小学校を卒業して、それでもその熱意が残っていればトレーナー、目指すか?こんなんでも父ちゃんはそこそこ金はある。もしその気なら応援してやるぞ」
「わかった!ぼくはとれーなーになる!」
「頑張れよ。夢はでっかくだ!」
それから月日は流れ………
「なれちゃったよ。トレーナー」
翔はここ、中央トレセン学園に新人トレーナーとして足を踏み入れた。
「俺の夢はただ一つ。大逃げだけだ。散々バカにしてきた奴等を見返してやる!」
というのもトレーナー養成学校にて大逃げを語る翔は教師からも生徒からもバカにされていた。何故なら
「ウマ娘の脚質には色々ありますが現在最も強く、長く活躍できるのは先行です。続いて差し、追い込みと続きます。はっきり言うと逃げは論外です。確かに勝てるでしょう。ですが脚への負担は他の脚質とは比べ物になりません。選手生命は短く、脚を使いきったウマ娘はウイニングライブにも出られないというケースがありました」
ウマ娘は数年走れれば良いものではない。当然その後の長い生活を考えると脚を壊しやすい逃げは推奨されないのは当然である。しかし翔は
「でも!俺は逃げ、いや、大逃げが好きなんです!」
「えっと………有澤君?あなたはあなたの身勝手な理由でウマ娘の今後も奪う気ですか?確かに逃げは強く、派手で、皆の注目を集めます。ですが今まで逃げで勝ちを積んできたウマ娘は例外なく短命です。中には脚を駄目にして歩けなくなったウマ娘もいます」
「それでも…………」
尚食い下がる翔に教師が折れた
「…………好きにしなさい。そんな考えについてくる物好きがいればですが。それに成功したとしても怪我でもしてみなさい。あなたには担当ウマ娘をダメにしたというレッテルが貼られるんです。それでも尚目指すと言うのなら…………放課後私のところに来なさい」
逃げは論外。それが彼が育っていく過程で生まれた常識。この事はウマ娘にも徹底されつつあり、今では逃げを選ぶウマ娘は極僅かだ。選ぶウマ娘がいるとすればただの阿呆か、逃げざるを得ない事情があるか、はたまた余りの才能に周りが着いていけず自然と逃げになるかのどれかだ。
「でも俺は!憧れを貫き通す!」
決意を胸に一歩を踏み出す翔。逃げのマエストロとまで呼ばれる彼の伝説はここから始まった。
一応物語はアプリ基準で進みます。
文字の表記について。馬場等の「馬」の表記について
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カタカナ表記「ウマ」
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諦めてそのまま漢字表記「馬」