「頑張れー!後少しだぞー!」
「ぜぇ…ぜぇ…はいぃ」
とにもかくにもスタミナを付けさせるために行っているトレーニングは二つ。プールでの遠泳と坂路トレーニングだ。というのもスタミナだけを伸ばすならプールでのトレーニングだけでいいが、飽きさせない為とトップスピードに早く到達するためのパワーを鍛えるために坂路トレーニングも採用した。
「これも全てこいつのお陰か。感謝してます」
彼の手元には小さな手帳。養成学校時代に放課後の特別授業で培ったものだ。逃げを全否定してた教師も少しは憧れがあったらしく逃げを育てるのに必要なあれこれをマンツーマンで叩き込んでくれたのだ。
「ただまあ課題なのは………」
ターボの課題。それは少しばかり………いや、かなりおつむが残念だということ。補習は当たり前のように引っ掛かるし、最初から何も考えず突っ走るせいで少々スタミナを鍛えた程度では焼け石に水。スタミナを鍛えても体も鍛えられるせいでスピードが出てしまい、結果やっぱり最後までスタミナが持たない。温存するように伝えても
「分かった」ピュー!
数秒で忘れて全力疾走。この時彼はターボにペース配分やらを教えることを諦めた。
「他が巻き込まれてバテるのを期待するしかないか。あれを最後まで走れるくらいにスタミナを付けさせるには時間が足りねぇ」
「終わったよー!トレーナー!」
坂路を終えたターボが元気良くそう言った。
「お疲れ様ターボ。水分補給と休憩をしっかりな」
「はーい!」
走り去るターボを見ながらひたすらいかにしてターボを最後まで走らせるか、それを考える翔であった。
ターボとのトレーニングを終えた翔が取り組むのは作戦の考案。何せあんな逃げ切るかドベかのピーキー極まりないツインターボを勝たせるのは並大抵のことではない。
「うーむ…………」
長い目で見れば、例えば有馬記念を見据えてスタミナを鍛えれば勝てるだろう。だが有馬記念に出走するためにはファンを獲得せねばならず、体が最高潮に達する時期やらを考えると今のうちから色々出走してファンを稼がないといけない。
「でもなぁ。スタミナがなぁ」
勝たねばファンは獲得できない。実際にホープフルステークスが直近の目標とはいったもののその前にメイクデビューも済ませておかないといけない。メイクデビューで勝てなければそもそもレースに出られない。
「あの作戦は一回こっきりだし出来ればダービーまで取っておきたいんだよなぁ。メイクデビューとホープフルステークス、皐月賞をどう攻略したもんか。ツインターボでも実践可能な作戦で………」
暫く唸った彼が導きだした結論は
「よし、メイクデビュー、ホープフルステークス、皐月賞は可能な限りスタミナを鍛えて逃げ切る。ダービーはあの秘策で攻略する。これでいこう。というかこれしかない!」
ダービー以降を見据えれば時間にも余裕が生まれ十分にスタミナを鍛えられるだろう。体を鍛えきる前に迎えるレースに勝てることを祈るばかりだ。
結局どの世界でもいつの時代も最後は運次第である。
それからメイクデビューまでの日々は特に取り上げることはない。ひたすらに坂路とプールでのトレーニング。それに飽きてきたら実際に中距離のターフを走らせてタイムの計測。実際に中距離を走らせるのはツインターボがちゃんと走りきれるかという確認の為でもある。ここで中にはスタミナが持たないなら短距離、マイルを走ればいいじゃないかという意見もあるだろう。だがターボは余りスタートが上手ではなくトップスピードに乗るまでもスプリンターと比較すると遅い。現状で短距離、マイルはむしろ中距離以上に不利なのだ。
「ぜぇ…ぜぇ…ひぃぃ!」
「まだ無理か」
いまだに中距離を完走できないツインターボ。ペースが落ちるのはしょうがないとしてゴール前で歩くor倒れるようでは話にならない。
「余計なことは考えるな………考えたってやることは変わらない!」
メイクデビューまで後2週間
タグが違うじゃん!?直しておきました。
文字の表記について。馬場等の「馬」の表記について
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カタカナ表記「ウマ」
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諦めてそのまま漢字表記「馬」