メイクデビュー戦を無事勝利で飾ったツインターボは次に開かれるG1レース、ホープフルステークスの出走条件である一定数のファンを獲得した。想像以上にツインターボの大逃げはファンの心を掴んだらしい。
「さて、ターボ。次からは待ちに待ったG1なんだが………正直にいうとホープフルステークスと皐月賞は捨てるつもりだ」
「ええ!?何で!?」
「ターボを確実に勝たせるための作戦は一回しか使えないんだ。となると使うべきはダービー以外あり得ない。何、捨てるといっても負けるつもりで走ることはさせない。ただ何も考えずに、バテるのを恐れずに突っ走ればいいんだ。最悪完走出来なくても構わない」
「でもそれってメイクデビュー戦と一緒なんじゃないの?」
「あれは新人が相手だから通じたんだ。優秀なウマ娘が集うG1レースであれが通じるとは思わない方がいい。でもこれだけは約束する。日本ダービーでは絶対に一着を取らせてやる!」
「分かった!で、ターボは何をすればいいの!?」
「今までと変わらない。ただ坂路を多目にする。今からダービーまで、ターボに必要なのは下手なスタミナよりも圧倒的なトップスピードだ。レース中盤で実況カメラが後ろを写すときに止まるくらいが理想だ」
「つまり大逃げってことだね!分かった!ターボ頑張る!」
「うし、その意気だ!」
ホープフルステークスが間近に迫ったある日。珍しくトレーニングを休みにして行っているのは
「うぉぉ!これがターボの勝負服!どう!?似合ってる!?」
「ああ、すっごく似合ってるよ。ターボらしさが全開だ」
「ホント!?ありがとう!トレーナー!」
ツインターボの勝負服の御披露目兼試着だ。ウマ娘の勝負服。それはG1でのみ着ることができる特別な個人専用の衣装。これを着ることで原理は分からないがポテンシャルが数割増しになるそうだ。恐らく精神的な影響だろう。何せ
「分かっちゃいるが一応聞かせてくれ。そのウサギは邪魔じゃないのか?」
「いや、全然」
「だよなぁ。これもウマ娘の神秘か」
ターボの勝負服には前に大きめのウサギのぬいぐるみがくっついている。他のウマ娘の勝負服でも招き猫を背負っていたり、使用用途の不明な短剣が装備されてたりと、明らかに走るのに邪魔そうな装飾を付けている事がある。それでいて速さは普段の格好より速いのだから訳がわからない。
「サイズも問題なしか。これでG1レースに出る上での懸念材料は無くなったな。ターボ、慣らしはいりそうか?それとも勝負服はぶっつけ本番で走るか?」
「一回だけ走らせてよ!」
「オッケーだ」
その後ターボは自己ベストを更新したことをここに記そう。本当にウマ娘という存在は謎で満ちている。
夜が訪れ、ターボと別れた翔は再びトレーナー室で唸っていた。考えているのは当然今後の事である。
「あれを使えばダービーは勝てるとしてその後をどうしたものか」
よく逃げは簡単だと思われがちだ。端から見ればただ最初から駆け引きをせずに先頭を走るだけ。しかし実際にはどの走り方よりも駆け引きが多いのが逃げだ。
「ターボに臨機応変な作戦は不可能。俺が読み間違えたら負ける」
スタミナを考慮せず突っ走るのか、はたまたペースを落として走るのか。後続は付いてくるのか、はたまたバテると考えて追いかけて来ないのか。加えてバ場状態の良い場所を走れる反面スリップが使えず風の抵抗をモロに受けてスタミナを消耗しやすくなる点も見過ごせない。
「ターボはああ見えて結構バ群を嫌う。追い付かれたらそこでおしまいだ」
そしてこのご時世に逃げをかますウマ娘は総じて臆病かバ群が嫌いだ。追い付かれたとたんにプレッシャーに負けて失速してビリ、ということもよくある。
「こっからは俺の仕事だ。今更ながら少し後悔してるよ」
そうぼやく翔の目の前に積み上げられているのはトレセン学園に所属し、G1に出走する実力のある全てのウマ娘のデータ。過去どのようなレース展開をしたのか、どのような脚質なのか、得意な距離は、バ場は、性格は、そういったデータが全て記載されている。これら全てを徹底分析するつもりなのだ。一応誰でも閲覧できるものの膨大すぎる量に加えて普通の先行や差しといった作戦であればここまでしなくても実力が足りていれば勝てる。更に言うと分析するよりもより効果的なトレーニングを模索する方が遥かに効果的だ。その為活用されることは少ない。
「でもこの時代に逃げで勝つっていうのはこれ位しないとダメなんだ。絶対にターボを勝たせる!」
決意を胸にデータの山に果敢に立ち向かう翔。その後夜更かし気味になった挙げ句、疲労困憊になったことは言うまでもない。
今作はG1ばかりに出走し、勝ちます。現実で考えるとおかしいですがアプリではG1連戦連勝が当たり前なのでご容赦ください。