閃光のハサウェイもう次が楽しみですわ
ゴールドシップのデビュー戦は、華々しいものだった。
開幕出遅れたものの、中盤から驚異の追込みを見せ、最終コーナーで見事なコーナリング、大外から内ラチ側に詰まったバ群を意に介さず、ごぼう抜きし1バ身つけて一着。チームフラッグは幸先のいいスタートを切った。しかし何故かこの日ゴールドシップはゲートに逆立ち歩きで入る奇行を見せていた。
続くスペシャルウィーク、ゴルシとは違いゲートも難なく、上がりもバ場状態が悪かったにもかかわらず34秒台。危なげなく一着、2着と2バ身差でゴール。このままGIII以上の重賞も勝ち取り、クラシックに殴り込みをかけたいところ。意気込みは十分といった様子のスペだった。
マチカネフクキタル。中距離レース。出遅れはしなかったものの、最初は振るわないといった印象を与えたが、終盤の豪脚と言えるスパートを見せる。が、スタミナ切れか、距離が足りなかったか、タイミングなのか伸び切れず、一着とクビ差。惜しかったですけど、頑張りきれて良かったです!とポジティブなフクキタルだった。尚、事前の占い結果は吉だった模様。
アグネスタキオンは理想と言っていいほどのレース展開だった。他のウマの後ろにつけ、スタミナを温存した前目の先行策で、最終直線でバ群から抜け、6バ身差をつけてゴール。余裕綽々といった表情で帰ってきたタキオンだった。アイシングは迅速に行われたが。
ライスシャワーは、最初こそ良い走りを見せたが、ことごとく上位をかっさらうチームフラッグへの警戒からかブロックを受け、バ群から抜けれず失速。しかしなんとか3着に。落ち込んでいたがハルウララとトレーナーのおかげで持ち直した。
ハルウララは、出身の高知ではダートしか走った事がない上、芝に慣れさせることが不十分であったため、他のメンバーと違いダート戦だった。
スピードに乗り切れなかったものの、なんとか5着。掲示板に乗れた。いつも笑顔だがいつも以上に大喜びのウララだった。
だが、最後の一人、ツインターボはまず模擬レースに出させたものの、ゲートにはなんとか入ったが、開いても棒立ちでスタートできず、そのままレースから逃げ出してしまった為、メイクデビューは当分見送りになった。
ちなみに逃げ込んだ場所はチームフラッグのミーティングルームの隅っこで、半ベソをかいてしゃがみこんでおり、ゴールドシップと楠トレーナーが宥めて保護するまで1時間掛かったそうだ。
ところ変わって、自称グラハム・エーカー、楠薫に割り当てられたトレーナー室。
そこにはいつだったか「おうトレーナー!ここアタシの部屋にしていいか?」という一声と共に段ボール箱を2,3箱荷台で転がしてきたゴールドシップの私物入り乱れるカオスを醸し出していた。ついでにだがフクキタルの生涯をかけて集めたg……開運グッズも仕舞われている。
そして放課後おろか寮の門限すら無視してずっといる始末。尚楠トレーナーは気にしておらず、それどころか許可証を作って学園に提出しており、実質ゴールドシップの寮室と化していた。
そんなこんなでトレーナー室には楠トレーナー、いつものようにいるゴールドシップと、今日は一人お客さんがいた。
「ゴールドシップよ、仕事中の私を無視してここに遊びに来るのはいいが、メジロのご令嬢を振り回すのはどうなんだね」
「あー大丈夫大丈夫、なーマックイーン?」
ゴールドシップの膝上には、同じ葦毛の小柄なウマ娘が居た。メジロマックイーン。メジロ家でステイヤーとしての活躍を期待されるウマ娘である。
「まあ、お気遣い感謝致します、フラッグのトレーナーさん」
「でも、ゴールドシップさんには散々振り回されてますから、慣れっこですわ」
「えー、そんなこと言うなよーマックイーン、アタシとオマエの仲だろー」
ぶー垂れるゴールドシップ。こういうゴールドシップを見るのは新鮮であった。こういうウマ娘同士の親密な関係は、時として恋人のようなものになることもある。
が、この二人はなんというか、身内の絶妙な距離感というべき、家族愛のような深い信頼で成り立っている関係というのだろうか?そういった不思議な雰囲気を醸し出している。思わず気になって、
「つかぬ事を聞く、メジロマックイーン。二人は血縁か何かのような繋がりがあるのだろうか」
という質問をした。デリケートな話題を臆せず言ってしまうのはこの男の悪い癖だろう。
「血え、んんっっ!?……そ、そのようなことはございませんわっ!」
本当につかぬ事を聞かれ、声が上ずったマックイーン。余談だが、マックイーンは心底嫌そうな顔をしており、ゴールドシップはこれに傷ついた。ずっと笑顔だったのが一瞬真顔になる程度には。
「では昔からの友人のようなものであったのか?」
「い、いいえ、少なくとも私には幼き頃、ゴールドシップさんとは知り合った記憶はありません。それどころか、このトレセン学園が初対面ですわ」
「えっ……アタシを忘れたのか!?あの時河川敷で一緒にカニ採り合戦して、柿を猿と奪い奪われの争いをしたじゃねーか!忘れたなんてそんな……グスッ」
「ええっ!?そ、そうだったんですの……わ、私ったら、なんてことを……」
マックイーンは真に受けてしまったが、
どう見ても発言と表情から察するにいつもの、その場ででっち上げた冗談、ウソ泣きである。
「気にするなメジロマックイーン、いつもの冗談、つまり嘘だ」
「あっ、テメー!ネタバラシすんなよ!つまんねーじゃねえか!」
「ああっ、ゴールドシップさん?また嘘をつきましたわね……」
空気は敢えて読まない男、グラハム・エーカーこと楠薫。
ゴールドシップ、指摘すれば、あっさり白状する。
まあツッコまなくても自分からネタバラシするのが彼女ではあるが。
そっぽを向き、ぷりぷりと年相応に怒るマックイーン、謝るゴールドシップ。
実に微笑ましい光景であった。
「でもそうですわね……何故かは知りませんが、どこか不思議な縁を感じてはいます」
「ほう、やはりそうなのか。ゴールドシップはどう思っているんだ?」
「うーん、なんつーかこう、じいさっ……懐かしい匂いがするっつーか、いたずらしてもなんだかんだ許してくれるし、一緒に居て安心するというか、まあ好きだぜ!カレーに添えてある福神漬けの次くらいには!」
「ゴ、ゴールドシップさん?それは……いい方なのですの?」
独特の例えに難色を示すマックイーン。
「なかなか上位の位置づけだと思うぞ。それに、仲睦まじきはいいことだ。見ていて私の気分も上がるというもの……どうした二人とも」
「いえ……ゴールドシップさんのことをよく理解してらっしゃると思い」
そうかね?と問うと、まあ見てくださいまし、このゴールドシップさんの顔とマックイーンはさし示し、
「うええ、やだやだ。流石は天才変人トレーナーさまだこと」
「図星って顔してますわ」
苦虫を嚙み潰したような顔で舌を出しているゴールドシップがトレーナーを睨みつけていた。
「む、ゴールドシップ、折角の美人が台無しだぞ。折角の授かりものだ、大事にした方がいい」
「……は?」
「まっ」
突然の言葉に呆気にとられる二人。大胆なのですわね、何言ってんだオメーあたりめえじゃねえかなどと言われ、首を傾げるトレーナー。なんだこれ
だが、実はこの時楠トレーナー、大腿部が蛍光色に光っていたことには、薬を盛ったアグネスタキオン、楠トレーナーの机の下に潜んで居た宇宙猫化ターボ以外には気づかれなかった。
閃ハサ三部作完結までに例のアレ等で生きていられるか不安なので失踪します
ついでに同監督作品の「虐殺器官」見ろよ見ろよ