史上最強のレベルカンスト~無能スキル『経験値アップ』が『自動レベルアップ』に進化したので、仲間と共に成り上がる!!~   作:蛮異未成年

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10 助ける者

 「私は正義を執行しているだけで貴方はその正義に干渉すべきだ。正義とは悪が存在して成立する。今回の悪は仲間である勇者を殺した魔王が悪だ。」

 

 まだ話す余地はあるのかと思うほど冷静に話しかけてくる。

 だが殺気と威圧のスキルを継続している事で、その可能性が0に近い。

 

 「確かに勇者を殺した魔王は倒すべき相手だ。でも力が全てである勇者にとって魔王の力の行いは悪だと感じられるか?」

 「話している内容がお子様すぎて理解に困る。これだから低民(ていみん)は嫌いなんだ。」

 「なんだと…?」

 

 出会ったときは心優しい勇者だと思っていたが、話を重ねていくごとに本性が現れる。

 

 「魔王は敵、なぜなら魔族だから。人間は生きる事を許された民族と同時に魔族は死を許された民族なんだよ。」

 

 

 それは違う。

 確かに魔族とは人を殺す最低な民族だ。

 だが俺達、人間は魔族の何を理解している?

 約200年前の人族と魔族は互いを尊重し共存を誓った、それから100年前までの歴史は空白となっている。

 これがどういう意味かはまだ俺に理解できるものではない。

 でも1つ分かるのは、何も分からないから殺すのは間違っている。

 

 

 先程、魔族を殺していた自分の理論とは全く別になっている。

 それでも真実を知った咲苑は正しい正義を貫こうとしている。

 

 「貴方の考えは分かった。俺は魔王も倒すし、勇者も倒す。」

 

 

 今の発言がどれだけ不可能に近い事なのかは分かる。

 だがもうここまできて、家に帰ってまたニート生活するのは厳しい。

 それなら自分は正しいと思った事を最後まで突き通し、そのための犠牲を俺は問わない。

 

 

 何が正解かなんて分からない咲苑は自分なりの最速の幸せを求め、結論を出した。

 

 「そうか、なら話すのも無駄だ。貴方が強くなる前に殺してやる」

 

 殺気と威圧が先程より数倍威力が強くなり、体が思うように動かない。

 多分、スキルによる最大レベルの効果だろう。

 

 「ちっ、これじゃ避けられない…」

 

 圧倒的レベル差と分かっていたので何かしら刹雷魅阿がしてくると思っていたが、まさか殺気と威圧の間接的スキルでここまで体の自由が奪われるとは思わなかった。

 

 「避けられはしない。私は光よりも早い速度で貴方の心臓を雷で貫く。」

 

 そう言うと刹雷魅阿は静かに目を閉じた。

 そして背中に背負っている剣を持ち、独り言のように一言呟く。

 

 「弱雷(じゃくらい) 裂雷(さくいかづち)

 

 この声を聞いた瞬間、咄嗟(とっさ)に先程の魔物のボスを思い出した。

   

 

 あの技…

 

 

 だが思い出す瞬間に刹雷魅阿の剣は俺の首元に達していた。

 

 

 やばい、死ぬ…

 

 

 体と意識、全てはまだ刹雷魅阿の剣に斬られると思っていない咲苑だが、なぜか心の中で殺されるとふと思った。

 だが刹雷魅阿の剣は止まる事なく、咲苑の首元は少しずつ斬られていく。

 音はせず、確実に最初の一撃で殺しにかかっている。

 もう手遅れかと思う暇もなく、咲苑の首から多少の血が出てきたところで刹雷魅阿の剣は止まった。

 

 キーーン。。。

 

 咲苑の真正面から剣を横に振る刹雷魅阿とは違い、咲苑の横から剣を少し突き出し、真上に振り上げた。

 そして刹雷魅阿の剣を止めた女性は呟く。

 

 「思考の面白い子は好きなんだけどなぁ」

 

 剣を持っていない左手の人差し指で口元を触り、何か不思議そうな顔をする女性。

 それを見た刹雷魅阿は眉間にしわを寄せ、鬼のような顔をする。

 

 「貴様、なぜここにいる?」

 

 すでにこの様子を見ただけで仲が悪いと分かるが、刹雷魅阿の言葉に女性は笑いながら答える。

 

 「なんでそんな怒ってるのよー!!」

 

 何事もないかのように話す女性を見て俺はなんで助けてくれたのだろうと思うが、刹雷魅阿の怒りはなぜか頂点に達し、今まで見たことのない技を披露する。

 

 「死ね。強雷(きょうらい) 火雷(ほのいかづち)

 

 それとほぼ同時に俺は俺を助けてくれた女性に担がれ、一瞬にして数キロ先の場所まで移動させられる。

 そして移動が完了した瞬間、俺の目の前は更地になっていた。

 

 「え…いったい今の一瞬で何が…」

 

 

 魅阿さんが何かの技を出したのは聞こえたが、ここまで連れてきたのは俺を助けてくれた人なのか?

 しかもさっきまで周囲に沢山の家があったのに一瞬で無くなってる…

 

 

 何が起こっているのか訳が分からなくなり、もう頭が追い付かない。

 1つ分かるのは今俺の前で俺を助けてくれた女性が、腰に身に着けていた2つの剣を取り出して防御態勢に入っている事だけだ。

 

 「はぁはぁ…いきなり強雷って!魅阿はホントに手加減を知らないね!!」

 

 少し息切れをしながらもまだ余裕のある女性。

 

 「その男を放っておけばそんなに体力を消耗する必要はなかった」

 

 冷静さを取り戻し、状況を鮮明に見極める刹雷魅阿。

 

 「まぁそれもそうだけど、魅阿が今殺したいのは私じゃなくてこの男の子でしょ?」

 

 急に現れた女性は何もかも知っているような口ぶりで刹雷魅阿の狙いを当てる。

 

 「栞亜《しあ》、なんでその男を助ける?」

 

 狙いを当てられる刹雷魅阿だが全く動じず、逆に栞亜と呼ばれる女性が咲苑を助けるのかを問う。

 

 「それは答えられないねぇ~。まぁ今回はこの男の子を見逃してもらうよ」

 「私の前でそんな事ができると思うか?」

 「さぁね?まぁ私がいるから大丈夫でしょ?」

 「そうか。ならせいぜい頑張るんだな」

 

 両者どちらともが戦う意思を見せたところで、栞亜と呼ばれる女性は咲苑に向かって言葉を投げかける。

 

 「私が魅阿を押さえる。君は逃げて」

 

 この言葉に俺はいち早く反応し、ひたすらロードアイアスの街から無法地帯へと逃げる。

 だが俺の目指した無法地帯は刹雷魅阿と出会った無法地帯ではなく、全く別方向の無法地帯だったが、もちろんそんな事に俺は気付かない。

 

 

 




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