Bright Azure ── 輝ける碧【DQ5主フロ】 作:サクライロ
さて、ルーラで一足飛びに行けるか、風の精霊の力を借りて位置を探ったものの、うまく捕捉できなかった。大きな街ならほぼ問題なく飛べるのだが、あまりに小さな村だと難しいのだろうか。仕方がないので馬車のある宿の納屋へ向かい、たまたまそこに居たプックルを拾う。一緒に遊んでいたホイミンとスラりんには留守のみんなへの伝言を頼んで、急ぎ、街の外の船着場から定期船の昼便に乗り込んだ。
村に着くのは明日の夕方になりそうだが、帰りは魔法で済むと思えば気が楽だ。
概ね定刻通りの翌日昼過ぎに船は着き、そこから他の乗客に紛れて村へと向かう。山道なのでやはり多少は魔物に遭遇するが、プックルと僕で問題なく対処できる程度のもの。僕達よりずっと後ろから村へと向かっているらしい、街帰りと思しき集団が、道中狩られた魔物を眺めては声を上げている。馬車よりはどうしても時間がかかったが、そうこうしながら日がとっぷりと暮れる頃、ようやく村へと辿り着いた。
この村に来たからには挨拶しなくてはならない人がいたが、まずは目的を果たしてから、と村人を呼び止め萬屋の場所を聞く。教わった通りに店を訪ったが、生憎店は閉まっていた。「残念だったね、お兄さん。ここのドワーフは日暮れと共に寝ちまうから」と通りすがりに笑う村人に軽く会釈を返し、一つ溜息をつく。
「残念。今夜はここで一泊しないとだね」
早く帰ると意気込んだけれど、やはり三日はかかってしまいそうだ。僕の落胆を感じとったプックルが、慰めるように腕に身体を擦りつけてくれる。
「そうだ、プックル。温泉って知ってる? 一緒に入れたら気持ち良さそうなんだけどな。魔物も一緒に浸かれる温泉があったらいいのに」
からかい半分に言ってみると、泳げはするものの水が決して得意とは言えないプックルはやや不快そうにグォン、と吼え首を振った。「冗談だよ。ごめん」と笑って頭を撫でてから、改めて村のずっと奥を見やる。
……やはり、ちゃんと伝えなくては。
少しだけ、気鬱と共に足取りが重くなるのを感じつつ、僕は村の奥へと足を踏み出した。
およそ二週間ぶりに訪ったダンカンさんはやや憔悴気味ではあったが、僕達を見送ってくれた日よりは目に力を宿していて、僕は密かに安堵した。
「おや、坊だけかい? ビアンカはどうしたね」
「あ、えっと。今サラボナにいます。実はちょっと、今日はお遣いを頼まれて参りまして」
頭を掻き、言葉を濁す。が、無意味な配慮であったことに思い至り、どう説明したものか暫し口籠り思案する。
「お遣い? ふむ、よくわからんが忙しそうにしているなぁ。坊よ、若いからって無茶はいかんよ。私のように身体を壊しては元も子もないのだからね」
僕を案じてくれるその声に、自然と肩の力が抜けていく。
「ありがとうございます。中々ビアンカをお帰しできなくてすみません」
「何ならそのまま貰ってくれても構わないんだよ?」
笑ってそう応えたダンカンさんはおどけた表情ではあったが、どこか自嘲的な微笑みにも見えた。僕が言葉を探して視線を泳がせると、申し訳なさそうに首をすくめて僕を見る。
「すまないね。……坊には想い人がいると言っていたのに」
「いえ、……謝らないでください。僕の方こそ……」
背中を丸めれば記憶よりもずっと小さく感じられるダンカンさんを見下ろし、僕も遠慮がちに言い繕う。
そうして、暫しの間白髪の増えた彼の頭を見つめ、意を決して静かに、告げた。
「……結婚が、決まりました」
僕の言葉にダンカンさんは一瞬ぱっと目を剥いたが、恐らく硬い表情をほぐせずにいる僕の様子だけで、相手が誰なのか察してくれたらしかった。その微笑みに少しだけ切なさを滲ませて、ダンカンさんはゆっくり頷いてくれる。
「──ああ……、これで……パパスも安心できるなぁ……」
「……申し訳、ありません……」
「何を謝るんだい。……謝らなくてはならないのは私の方だ。悩ませてしまって、本当に悪かったね」
どうにも言葉を選べなくて項垂れるばかりの僕に、そんな優しい労りをくれる。
「ああ、なるほど。それでビアンカが戻らないんだね。あの子は本当に世話焼きだから」
「は、はい。今も式の準備を手伝ってくれているようで」
「その様子だと結婚式を見るまで帰りそうにないな? はは。ついでにあの子も、好い人を見つけてきてくれればいいんだがなぁ」
ビアンカの気質をよく分かっているダンカンさんが、冗談めかしてそんな風に言って、笑ってくれる。
……血の繋がりはなくとも、僕にはあなた方が本物の親子にしか見えない。
それはひどく尊いもののように感じられて、同時に、ビアンカはやはりダンカンさんの元を離れるべきではない、と強く思う。
ここで幸せになってほしい。彼女にとってかけがえのない家族がいる、この場所で。いつか、僕なんかよりずっと素敵な伴侶を見つけて。
「今度は是非、お嫁さんを連れておいで」
優しいばかりのそんな申し出に頷き返して、僕はダンカンさんの家を後にした。
翌朝、日の出と共に起き出した僕は、朝食もそこそこに宿を飛び出し、プックルと連れ立って萬屋へと向かった。
目算の通り店は既に開いており、店主はカウンターに向かい何やら魔物の皮やら角やらを数えているところだった。洞窟になっているその店先を覗き込むと「おや、今日はまたお早い客だ」と老年のドワーフが片眼鏡の奥の眼球をぐるりと動かし、こちらを見た。
「すみません。こちらで婚礼用のヴェールの仕立てをお願いしている者なのですが」
控えの紙を取り出し、軽く会釈をして告げると、ドワーフは片眼鏡をカウンターに置き眼をますますぎょろつかせた。のそりと立ち上がると「おお、おお」と呟きながら店の奥へと消えていく。程なく、もう一人ドワーフを伴い、大きく立派な化粧箱を二人掛かりでよろよろと抱えながら戻ってきた。
「領主殿んとこのだったな。うん、間違いない」
箱を僕の程近く、入り口付近に置かれた椅子まで運んだ店主は、僕が差し出した注文票の控えを手早く照合する。
「昨晩やっと出来上がったばかりだ。すんごい出来だぞ」
店主が何やら確認している間にも、先程箱を一緒に運んできた年若いドワーフが人好きする笑みを浮かべて話しかけてくれた。こちらが、卿が言っていた名工だろうか。
「なぁ、あんた、もしかして新郎か?」
……最近の僕の顔には自己紹介でも書いてあるのだろうか。思わず真顔でぺたりと頰を抑えると、彼は笑い含みに「領主様んとこの人とは、身なりが違う」と言い添える。改めて僕を上から下までまじまじと眺めてから「ちょっと待ってろ」と言い残し、店の奥へとぴょこぴょこ走っていった。
「ほう、あんたが花婿か。こんな山奥までご苦労なことだ」
何やらカウンターで書類を封筒にまとめていた店主がぴょんと飛び降り、ややぶっきらぼうにそんなことを言う。「これは領主殿に」と封筒を渡され、とりあえず黙って頷き受け取る。それを道具袋に収めたタイミングで、先程の若いドワーフが「できた、できた」と忙しなく戻ってきた。
差し出されたのは、掌に収まる小さな小さな白い花束。
「……これは?」
「おまけだ。さっきのヴェールで使った、シルクの小花の余りを束ねてきた」
若いドワーフがわくわくと店主を振り返ると、店主も「ま、お代はたんまりもらってある」と頷く。今ひとつ彼らの意図がわかりかねたものの、厚意である事は理解できたので、礼を述べてそれを受け取った。
「式で、胸につけるといい!」
シルクで作られた可憐な花束が僕の手に渡ったのを確認して、若いドワーフが自分の左胸を示しながらぱぁっと破顔する。
「ありがとうございます。わかりました、胸元ですね」
その純粋な好意が嬉しくて、小柄なドワーフの前に少しだけ身を屈めて微笑むと、店主が視界の端で、何やら呆気にとられた様子で身動きを止めたのが目に留まった。
「ん? 師匠、どうかしたか?」
僕の視線につられて振り返った若いドワーフが店主に向かって呼びかける。師匠、という事は、名工は店主の方だったのか。
「──、いや……なんだ。随分と、懐かしいことを思い出した」
緩やかに息を吐いた彼は、先程までの人を寄せ付けない雰囲気ではなく、どこかやわらかな瞳で初めて、僕を見た。
「……お若いの。幸せにな」
彼がこのとき覚えた既視感の理由を、僕達が知ることになるのは、もっとずっと後のこと。
この時の僕達には、お互いに知る由もなかった。今から二十数年ほどの昔、彼が今目の前にいる新郎の母親の為、生まれて初めてシルクのヴェールの縫製を手掛けたのだということ。彼にヴェールの作製を懇願しに来た、とある国の王であった新郎の父親に、愛弟子と同じように、思いつきで作った絹の小花のブートニアを手渡したのだということを。
◇◇◇
無事に婚礼用のヴェールが入った箱を受け取り、店の外の人気がない辺りまで移動して、プックルの背に手を載せつつルーラを唱える。
瞬時にふわりと身体が重力を失い、周囲の景色が光に溶けて、同時に風景を再構成する。
ほんの一瞬で目的の場所へと転移する。今では失われたこの古代魔法は、利便性に優れた本当に素晴らしい術だ。
「おっ、戻ってきたな。みんな! 色男のご登場だぜ」
目を開けるより先に、聞き覚えのある軽快な声音を耳にして、久々の感覚に心が躍る。
「──ヘンリー! いつこっちに着いたんだ⁉︎」
サラボナの入口で、仲魔達と連れ立って僕を待ち構えていたその人こそ、朋友ヘンリーだった。昔、共に奴隷として働き、その後旅をしていた頃からすれば想像もつかない立派な身なりではあったが、どこか得意げに僕を見つめる瞳は、あの頃から全く変わりなくて。
「昨日だよ。せっかく驚かせてやろうと思ったのに、ルドマン公が俺のこと、とっととバラしたって言うからさぁ。お前のことだからここら辺に転移してくるって踏んで、早朝から張り込んでやったぜ」
さも残念そうに宣ったかと思えば、今度は大得意でふんぞり返る。俺の読みはすごいだろう⁉︎ とばかりにいい笑顔でにじり寄る旧友に、僕もつい笑いが溢れた。「ま、拙者の助言が功を奏しましたな」などと隣で茶々を入れるピエールを軽く小突くヘンリーを見ていると、まだラインハットを解放する前、ヘンリーと共にあちこちを放浪していた頃にたちまち心が還って、ひどく懐かしい気持ちになる。
「何だ。お前、すごい良い顔してるじゃん」
嬉しくてにやついてしまっていたのか、傍から覗き込んだヘンリーがそんなことを言う。
「そう? 久々に会ったからかな」
「莫迦言え、お前ついこないだうちの城に来たばかりだろうが。こうも自覚ない辺り、さすがだよな。ピエール」
そういや確かに、ルーラを覚えたばかりの頃、祝辞を述べにラインハットへ飛んだから、まだ一ヶ月半くらいしか経っていなかった。もっとずっと長く会っていなかったような気がして、僕は無意識のうちに首を捻った。
ていうか、自覚ってなんだ?
「ま、致し方ありませんな。なんと言っても我があるじ殿は筋金入りにうぶである」
「あー、違いない。純粋なんだな、うん」
「よくわかんないけど、今、絶対莫迦にしてるだろ……」
僕を除け者にしたまま頷きあう二人を恨めしく思い、悔し紛れにそう呟く。とすぐに、ぷにぷにの青い二匹組が「ごしゅじんさまは、ぴゅあなんだよー!」「ぴゅ〜あ〜!」と叫びだした。多分擁護してくれているのだろうが、煽られているのと大差ないと感じてしまうのは僕の心が狭い所以だろうか。
「いいひとに出逢えたんだな、って言ってるんだよ」
不貞腐れる僕の肩を軽く叩き、ヘンリーがどこか大人びた微笑みで僕を覗き込んだ。
「ところでそれ、ヴェールだろ? 早く行って届けた方が良くないか」
「あ、そうだった」
ヘンリーに指摘され、はたと抱えたままの箱のことを思い出す。傍で僕を見守るプックルを軽く撫で、他のみんなには「行ってくるね」と手を上げて告げた。どうやらヘンリーも一緒に街に入るつもりらしく、僕の隣で同じく仲魔達にひらひらと手を振っている。
「マリアさんは? 一緒に来てくれてるって、卿が言ってらしたけど」
「昨晩は公の屋敷の離れに泊めてもらったから、そっちかな。ああ、でもマリアのことだから今頃、自分の準備そっちのけで花嫁を手伝いに行ってそうだよな……」
「そうか。やっぱり、相変わらずなんだね」
ほんの短い期間、僕達の旅に同行してくれたことがあるマリアさんが、僕らの世話を甲斐甲斐しく焼いてくれていたことを思い出す。申し訳ない気持ちはもちろん僕にもあったものの、特にヘンリーは当時から彼女を恋い慕っていたから、嬉しくも心苦しいといった想いが強かったようだ。
「俺は貴女に、侍女として来てもらってる訳じゃない」などと強く言いすぎて、彼女を落ち込ませてしまう、といった一幕もあった。
一国の王の兄、今やその妃であるマリアさんがお手伝いなんて、ルドマン卿が許さないような気もするが。
「あ──……んー、なんだその」
そんな雑談をしながら屋敷に向かっていた僕らだったが、町の中央の噴水を通り過ぎたあたりで、急にヘンリーが歯切れも悪く頰を掻いた。
「ん? どうかした?」
歩きながら振り返り小首を傾げると、ヘンリーも足は止めないものの、顔の前に軽く掌をかざして謝るような仕草をとる。
「すまん、テュール」
「…………何が?」
言葉は詫びているものの、困ったような表情にどこかにやけた笑いを含ませたこの幼馴染の青年に、困惑と共に嫌な予感を覚えながら、今一度問い返した。
ヘンリーがこういう顔をするとき、大抵ろくなことにはならない。
「おお、婿殿よ! さすが早かったな、待っておったぞ!」
ヘンリーが更なる弁解を始めるより早く、すぐ橋の向こう、屋敷の門の前で僕を見咎めた卿が大声で叫んだ。どうやら屋敷の外であれやこれやと使用人達に指示を出していた最中らしい。いち早く僕に気づくと側に駆け寄り、ヴェールの箱をもぎ取っては側にいた使用人に預けて、また他の数人の使用人と共に、僕を今来た道へとずんずん押し戻していく。
「え? どうしたんですか? まだ何か用事が?」
訳がわからず周囲を見渡しながら問いかける僕に、「まぁまぁ、とりあえずついて来なさい」と愉しげに嘯く卿。助けを求めてヘンリーの方へと必死に首をもたげたが、彼は屋敷の前に佇んだまま、どこか悪戯っぽくも申し訳なさそうな顔つきでひらひらと手を振っている。そのままの勢いで町の外まで連行され、用意されていた立派な馬車に押し込まれた。僕の馬車とは似ても似つかないふかふかのソファを備えたその素晴らしい馬車を勢い良く走らせ、ルドマン卿はわくわくと瞳を輝かせながら、尚も呆気にとられたままの僕に言った。
「君達の結婚式は、遥か北東の海上に浮かぶカジノ島で執り行なおうと思ってな! 君には今からカジノ島の場所を覚えてもらうぞ‼︎」
連行された先で待っていた、カジノ島から直接ここまで来たというルドマン家の使用人と落ち合い、砂地に大きく魔法陣を描いて、キメラの翼で強制転移させられる。
キメラの翼は最後に立ち寄った街へ転移できる、そこそこ高級な魔道具である。魔法陣がなくとも、数人ならば使う人間の記憶だけを頼りに移動できる便利な代物だが、意図した場所とは違う所に転移してしまう事故がないわけでもないため、こうして術式を縛ってやる方が無難なのだとか。
「さすがに何百人という人間を転移させるだけの人員は連れて来られんで、諦めておったのだがな。ヘンリー殿下から良い方法を伺ったのだ! 君、どこへでも自在に転移できる古代魔法を習得しているそうじゃないか⁉︎」
──さっきヘンリーが謝っていたのはこのことか……っ!
ようやく合点がいき、がくりと膝から崩折れそうな心地を覚える。そんな僕を意に介さず、卿は懐から書類を取り出すと、凄まじい勢いでめくりながら僕に最後の仕事を促した。
「サラボナにいる執事に、式の参列者のリストを預けてある。彼が補助をするから、ここへどんどん人を運んで欲しいのだよ。エルフの飲み薬ならいくらでも用意するからな! 頼んだぞ、花婿殿!」
こうなれば半ば自棄である。すぐさまサラボナへと戻り、執事に掛け合って街の広場に魔法陣を描いた。何人まで一度に転移できるか、僕にもわからなかったのでとりあえずは十人程度から始めさせてもらう。式場へ運び込みたい道具なども魔法陣の中に寄せ、まずは準備のため使用人の方を数人選んで転移する。それを何度か繰り返し、飲み薬で魔力を補充して次は花嫁と、その手伝いをしている面々である。「テュールさん、あの……父がまた無理を言ったみたいで」三日ぶりにようやく目にした僕の愛らしい花嫁は開口一番萎れた表情でそんな謝罪を口にし、僕が答えるより先に「大丈夫よフローラさん! テュール頑丈だから、ここは黙って頑張ってもらいましょ!」とビアンカに強引に押し切られる。相変わらず過ぎて涙ぐましい。ゆっくり会話を楽しむ暇もなく転移し、全員無事移動できたことを確認してまたサラボナへととんぼ帰りする。次は来賓である。段々感覚がつかめて来たので、一度に転移する人数を三十人程度まで増やして何往復かを繰り返した。
街の人も大部分が参列するらしく、それだけでも数百人に上る。カジノ島とやらにこれだけの人間が入り切れるものだろうか。
「テュール……ほんと悪いな。うっかり口が滑ってさ」
最後の方、いかにも申し訳なさそうに縮こまって魔法陣に入って来たラインハットの王兄夫妻に、僕はそろそろなんとか保っているだけの意識を向け苦く笑う。
「……どうも。ご無沙汰してます、マリア妃殿下」
「もう、おやめくださいませ。テュールさんにまでそんな呼び方をされてしまっては寂しいですわ」
困ったように微笑むマリアさんに僕も笑みを返し、「この度は、まことにおめでとうございます」と礼を取ってくれる彼女に跪き頭を下げる。
他数人の来賓客と僕の仲魔達、最後に残った執事が参列者リストに漏れのないことを確認して、陣の内側に立つ。これで最後と精神力を振り絞り、もう一度だけ、ルーラを唱えた。
これはルーラ酔いとでも言うのだろうか、最早浮遊感なのか、自分が気持ち悪いだけなのかの判別がつかない。
カジノ島へは瞬時に着いたが、僕の意識は一度そこで途切れることとなった。