一芸だけじゃ生き残れない   作:冥々

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再会

実家に帰省した日から翌日。久々に帰って来た私はこの前話に出ていたゲームセンターへ枦山さんと一緒に行こうと話になり、バスや電車といった公共交通機関を利用している。何故枦山さんの車で連れて行ってもらわないのかは、ゲームセンターがあるデパートの駐車場は夏休みとかの長期休暇期間中は満車である事が多い。

そして今は夏休み真っ只中、私は周囲の人達.....特に若い人からの視線に晒されながら向かっている。

 

電車から目的地であるさいたま新都心駅に降りた私と枦山さんは改札口へ向かう道中に見覚えのある金髪褐色のギャルが同じ進行方向で歩いているのを見つけた。枦山さんが目の前にいる須原由紀らしき人物に気付いていないかを確認する為、チラッ視線を向けるとそんな素振りは感じられなかった。恐らく夏休み効果で通常時よりも多いだろう人混みのおかげで気付かなかっただろう。

 

だけど、まだ安心できない.......何故なら改札口を出た後に〝さいたまスーパーアリーナ方面〟へ行くのか、はたまた私と枦山さんが向かっている〝デパート方面〟へと行くのかが分からない以上まだ安心できない。

 

そんな急に私が焦っている理由は前回会った時は何処かの借りた会議室での出来事だったので誤魔化し切れたけど、今回は地元でばったり遭遇した途端逃げ道がない状況へとなってしまう...........が、あくまでもらしき姿を見ただけだし、ばったり会う事なんてないよね。

 

「花沢さん!」

 

あの後ろ姿が須原由紀ではないかと考えに耽っている私の名前を上げて肩を叩く。された私は当然その方向へと向くと頬にツンと人差し指で突いてきた。悪戯に成功した枦山さんはニチャアとしたキモ....嬉しそうな顔で笑っている。

 

「.......何ひゅるんですか」

「いやー、一度誰かにやってみたかったですよね」

「それを私に?」

「ええ、深刻そうな顔を浮かべていたので」

 

須原由紀らしき人物について考え込んでいる私の表情が傍から見て深刻そうに見えたのだろう。実家に帰って来てからほとんどモード(厄介オタク)が入った状態だったので、こういう時にマネージャーとしての枦山さんが出るとあまりの変わり様にびっくりする。

 

「ありがとうございます。おかげで気が紛れました」

「いえいえ、これもマネージャーとしての役割ですから」

 

これが大人としての器もしくは貫禄っていうものかな?とか思っている内にデパートの入口付近まで歩いて来ており、須原由紀らしき人物の影は私の目の前から消え去っていた。

 

「ゲームセンターは何階の何処にあるんですか?」

「今もあるなら四階のDVDショップの隣にあると思いますので付いて来て下さい」

 

ゲームセンターまでの道のりを前を切って歩く......と言っても、エスカレーターを三回乗ってゲームセンターへ向かう簡単な道案内をするだけなので偉そうに言う必要はないけどね。無事にゲームセンターに到着すると枦山さんは腕に掛けていたバックからスマホを取り出して、ゲームセンター前をあらゆる角度から撮り始める。

 

「あ、いい!.....この角度もいいですね。花沢さん!こっちに来てもらえますか!」

 

一頻り撮り切った枦山さんは今度は私が写っているバージョンも撮りたいらしく、ゲームセンター前に立たせて再びあらゆる角度から撮っていると、物凄い勢いで近づいてくる無精ひげの男性が近づいて来る。

 

「ここに通い詰めて、早八年!あの時の屈辱を果たしに来たぞ!」

 

そう言ってきた男性は〝30歳、男性、無職〟と検索したら出て来そうな容姿だった。

 

「えっと?....どちら様?」

「なっ!」

 

何か私の事を知っている雰囲気だが人違いではないかと思う。だって、目の前にいる人の事なんて全くと言っていい程知らないし、私の記憶の中にも彼についての情報が一切存在していないから、人違いではないかと私の中では結論がついている。

 

「わ、忘れたのか!!この神王魔央の事を!?」

「?」

 

名前を名乗られてもいまいちピンときておらず首を傾げている私の傍らで、枦山さんはクスっと小さく笑い声を漏らしている。

 

「とりあえずだ!もう一度俺と勝負しろ!」

「いやです」

「よし!では.....え?」

 

こんな見るからに不審者と言っても過言ではない人物とゲームする気なんてさらさら起きないし今日は昔の思い出に浸りに来たついでに枦山さんと一緒にゲームをするつもりでやって来た訳だしね。ゲームセンター前でいざこざを起こしている私達の間に聞き覚えのある声が割って入って来た。

 

「はぁ......いい加減に諦めたらどうだい?」

 

声が聞こえた方向に視線を向けるとそこに立っていたのはプロゲーマーチーム〝explosion〟のオーナー五島玄太だった。

 

「あ?てめぇが俺をexplosionに入れりゃいい話だろ!何回も言ってんだろうが!!」

「無理だよ。ウチに所属するには一定の基準というのがあるんだ」

 

目の前で喚き散らかす男性のあしらい方に何処か手慣れた様なボスは男性に向けていた視線を私へと変えて、言葉を続けて発する。

 

「君は初めて触るゲームを一時間で極める事は出来るかい?」

「はぁ?出来る訳ねぇだろうが!出来たらただのバケモノだ!」

「そう。他の人には出来ない芸当を行えるバケモノじゃないとプロゲーマーの世界では生きていけないよ」

 

ボスが私に視線を向けて言ったのは暗に私がバケモノだと発言してきた。まぁ確かにボスの言っている通り、一時間から三時間あればそこそこ操作が上達はするけども、極めるまでの域までは達するまではいかないと思ってたら、側にいた枦山さんが腕を組み、うんうんと相槌を打って理解を示していた。

 

「だから、キミはプロゲーマーには向いていないよ」

「はぁ!?てめぇの話なんざぁ......信じねぇぞ!」

 

ボスに諭す様な話口に見え隠れする圧を感じ取ったのか、捨て台詞を吐いた後にこの場から立ち去って行った。男性の背が見えなくなってのを確認した瞬間フフッと悪戯が成功したガキの様な笑みを浮かべてボスは言う。

 

「んな訳ないじゃん。普通のプロゲーマーはひたすらに練習を繰り返して、その成果を大会に出すんだよ。そんな芸当が出来るのはnanaくらいだよ、ね?」

 

やっぱり思ってた通りボスは私の事をバケモノ扱いをしていた。その時、今更騒ぎを聞きつけた店員何名かがゲームセンターからやって来た。騒ぎについての顛末を聞きに近づいて来た老年の男性店員はボスを見たと同時に〝あぁ、またあいつが来たのか〟といった表情を顔に張り付け話し掛けてきた。

 

「またあの人ですか?」

「ええ」

 

ボスと店員さんの話によるとあの男性は毎回現れては何かしらの騒ぎを起こしては警備員さんに連れて行かれているらしい。ボスも何回か絡まれた事があるらしく、妙にあの男性の対応に手慣れているのだとか。その後、一応騒ぎの経緯を店員に話してデパート内にあるカフェテリアへと場所を移した。

 

「そう言えば何でここにいるんですか?事務所は六本木......でしたっけ?」

「六本木で合ってるよ」

 

テーブルに置かれているブラックコーヒーを一口飲んで、喉を潤して続きを話す。

 

「ここに来ている理由はだね。君をスカウトした時の事の感傷に浸ると言っていいのかな。何せウチに所属したいとやって来る人の半分はnanaに会いたい、nana以上に凄いプロゲーマーになると言ってるんだよ」

 

へぇ、私切っ掛けでプロゲーマーを目指す人っているんだね。枦山さんも同じプロゲーマーを目指した人間の一人だったと話していたのを思い出した。ボスと枦山さんの話からそれなりに魅力的な存在ではある事を認識したけど、担ぎ上げられるような伝説を残した覚えがない。

 

「もしnanaが良ければ今後事務所主催の大会を開くのならば。うち__explosionも手を貸そうと思う」

 

急に私が大会を開催したいみたいな振りをされた私はもしやと思い、〝急にそんな話に?〟とボスに質問をする。

 

「この話を出したのは、えらく〝Epexlegends〟をやり込んでいるから、そのやり込んだ実力を大会で見てみたい気持ちが先行して突拍子もない事を振ってしまったんだよ」

 

私が予想していた通りの答えに前にもあったなぁとEPに所属していた時の事を思い返す。当時新しく出たゲームをやるようにと言われた際は何時も〝どうしてこのゲームを?〟と質問して〝このゲームで活躍するnanaが見たい〟と好きな歌手にリクエストをするファンのような期待感を持って返答する事が何度もあった。

 

「まぁ、なんにせよ。もし大会を開きたくなったら声を掛けてね」

 

最後に〝これから大変になると思うけど頑張ってね〟と言いたい事を言って満足したボスはカフェテリアのお会計をして出入口がある方向へと立ち去って行った。その後ろ姿を見ていたら、プルルと枦山さんの携帯電話の着信音が鳴り響いた。直ぐ様に肩に掛かっているバックから取り出して電話に出るのを見てると、出始めは平静だった枦山さんの顔が段々焦りの表情が浮かび出してきた。

 

「.......はい、わかりました」

 

電話相手との話し合いが終わった枦山さんは申し訳ない表情と声で話し出す。

 

「ほんっとうに!申し訳ないのですが......配信活動を再開して下さい」

 

え?どういう事?

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