カイドウがワノ国から百獣海賊団の撤退を決定した。あとは将軍オロチさえどうにかすればひとまず安心だ。
そんなことを考えてるとヤマトが走って戻ってきた。
ヤマト「ラダーーン!」ギュッ
ラダン「おっと」ダキトメ
ヤマトはラダンに飛び付き抱きついた。
ラダン「戻ってきたか」
ヤマト「うん!久しぶりに自由に走れた!」
ラダン「そうか。それはよかった」ナデナデ
ヤマト「むふ〜……」
ラダンは微笑みヤマトの頭を撫でる。ヤマトは気持ちよさそうにしている。
「あんなヤマト様は初めて見ました……」
カイドウ「俺もない。そもそも、俺の子供として接してことさえない」
「では、今後はせめて少し仲が悪い程度の親子関係を目指しましょう。ラダンさんのおかげでその機会はたくさんありますし」
カイドウ「……今更な気もするがな」
「これから頑張っていけばいいでと思います。私に子供はいませんが、どうにかなるでしょう」
カイドウ「……ふむ……」
少しはヤマトに向き合ってみようと、一歩前進したカイドウであった。
ラダン「さて、俺はそろそろ行く」
ヤマト「え、もう行くのか?」
ラダン「やらないといけない事が多いからな」
ヤマト「え〜……」
ラダン「またこっちに来るからさ」
ヤマト「本当…?」
ラダン「本当だ」
ヤマト「……約束……」
ラダン「ん?」
ヤマト「約束してくれるなら…」
ラダン「あぁ、約束する。ほら」
ヤマト「!うん!」
ラダンは小指を出す。いわゆる指切りである。
「「ゆ〜びきりげんまんうそつ〜いついたら針千本の〜ます。指切った!」」
ラダン「こっちにもこれあったんだな。とりあえず、これで安心か?」
ヤマト「うん!」
ラダン「そうか。んじゃ、じゃあな」ノツ
ヤマト「ばいば〜い!」ノツ
カイドウの方に行き
ラダン「それじゃぁ、もう行くわ。終わったらまたこっちに来る。次の将軍を担う奴らを連れてな」
カイドウ「わかった。こっちも急いで工場を解体して撤退する」
ラダン「頼んだ」
ラダンはそう言い残し飛び去った。
「嵐のような人ですね」
カイドウ「言い得て妙だ。奴の家系全員が嵐だろう」
「あり得そうですね。絶対に敵に回したくないですね」
カイドウ「敵になど回せるか。回したら百獣海賊団は一瞬で滅ぶ」
「この世界にあの人に勝てるものはいませんね」
カイドウ「兄と姉、父親には勝てないそうだ。そんなことより、工場の解体を速やかに済ませ」
「了解です」ビシッ
部下に工場の解体の命令を出した少し丸くなった(?)カイドウであった。ヤマトはぼうっとラダンの行った方を見ていた。
飛び去ったラダンは日和達の所に戻ってきた。
スタッ
ラダン「ただいま」
河松「おぉ、ラダン殿。思っていたより早かったですな」
ラダン「思ったよりスムーズに行ったからな」
ラダンはそう言い、獅子狛と戯れていた日和を見た。日和は楽しそうに笑っていた。
ラダン「(よかった。楽しそうに笑っていてよかった。ナイス獅子狛)」サムズアップ
「ガウッ!」サムズアップ
河松「姫様も久方ぶりに楽しく遊んでいます。久しぶりに姫様の笑顔を見ました。この河松……!感激にございます……!」
河松は楽しそうな日和を見て涙を流している。
日和「あ!ラダンさん!」テクテク
日和はラダンを見つけて近寄った。
日和「カイドウの件はどうなりました?」
河松「っと、そうでした。どうなりました?」
ラダン「結果から言うと、百獣海賊団はワノ国から全面的に撤退する事になった。工場もワノ国から鬼ヶ島に移すそうだ」
河松「おぉ!あのカイドウが撤退ですと!して、オロチは?」
ラダン「元々オロチは後に殺すつもりだったそうだ。だから、オロチは俺たちで討ち、新将軍を建てる必要がある」
河松「なるほど。もうオロチにカイドウの後ろ盾はないということですな」
ラダン「オロチを討つのはすぐやった方がいいだろう。今からでもな」
河松「そう上手く行くのでしょうか?」
ラダン「百獣海賊団はいないからオロチ直属の部下だけ気をつければいい。それぐらいは俺でも十分だ」
河松「という事は、気をつけるべきはお庭番衆と狂死郎一家ですな」
ラダン「そんなに少ないのか。あ、後、兎丼に捕まっている者達は百獣海賊団の撤退と同時に釈放されるはずだ」
河松「それは誠ですか!?」
ラダン「あぁ、わざわざ殺すこともないだろうからな。それに、カイドウもわかってるはずだ。無駄な殺しをすれば俺の怒りを買うことになるとな」
河松「よかった……これで味方が増える……!」
ラダン「オロチを討った後のことも考えよう。まず、次の将軍だ」
河松「おでん様の実子である未来に飛ばされたモモの助様がいいでしょうけど、それまでのつなぎは生き残った赤鞘九人男。もしくは生き残った大名にやってもらうことになります」
ラダン「なら、その赤鞘九人男と生き残った大名がいればそいつも探すとしよう」
日和「ですが、探すのは困難かと思いますが……」
ラダン「それなら問題ない。赤鞘九人男や大名ってのは普通の人より気配が濃い。それを探せばいい」
河松「どうやってですか?」
ラダン「おいおい。俺がいるだろ。禁忌と呼ばれるこの世の常識に当てはまらない龍がよ」
河松「まさかワノ国全体を察知できると…?」
ラダン「当然」
河松「……ラダン殿の驚くべきことに慣れた方が良さそうだ」
ラダン「そうした方がいい。一々驚いてたら身が持たんぞ」
河松「そうします。それで、わかりましたか?」
ラダン「それらしいのは二人見つけた。それもたまたまか二人は同じ場所にいる」
河松「おぉ!では早速!」
ラダン「折角だし俺に乗って行くぞ」
日和「乗る?」
ラダン「あぁ、少し離れていてくれ」
ラダンは二人と獅子狛から少し離れる。そしてラダンは人化を解いた。
河松「これが……ラダン殿の本当の姿……」
日和「スゴイ……」
ラダン『さ、頭に乗れ』
ラダンは頭を地につけ二人に乗るように促す。二人とついでに獅子狛もラダンの頭に乗った。
ラダン『しっかり掴まっておけ。行くぞ』
蛇の巨体は木の間を通り、進んだ。
ズルズル バキッ ガサガサ
九里、おこぼれ町の近く。荒野を蛇の巨体が進んでいた。
「巨大な蛇がこっちに真っ直ぐきてるぞー!」
「なんだあの蛇は!?」 「あんなのいたか!?」
おこぼれ町の皆は慌て喚いていた。
?「なんだ〜?巨大な蛇だ?何が起きている…」
着物を着崩した大男は顔を顰めていた。
?「おっほっほっ!巨大な黒い蛇とな!こりゃぁ面白い!」
青髭の濃い頭巾を被った男は笑いながら見ていた。
?「また何か起こるのでしょうか……」
店を営む女性は不安を感じていた。
「お、おい!あれ!誰か頭に乗ってるぞ!」
巨大な蛇が近づくと、その頭に誰かが乗ってるのが見えた。ボンヤリと見えていたのが蛇が近づいた事でハッキリした。
「女の子と獅子狛に……河童…?」
?「なんだと?」
?「何?河童?」
?「河童ってもしかして……」
蛇はおこぼれ町ののすぐ前で止まった。その頭から女の子と河童、獅子狛が降りた。すると蛇は光に包まれた。おこぼれ町の皆は目を腕で覆った。光が止むとそこには男がいた。
そう、ラダンである。
ラダン「ここにいるぞ」
河松「えぇ、一人は目の前にいます」
?「河松!」
着物を着崩した大男がズンズンと巨体を河松に近づかせた。
?「お前、河松か?本当に河松か!?」
大男は河松の肩を掴みそう言う。
河松「久方ぶりですな、アシュラ童子殿」
アシュラ「と言うことは……姫……様……?」
日和「お久しぶりです。アシュラ童子さん」ニッコリ
アシュラ「お…おぉ……ご無事で何よりです……!」ポロポロ
アシュラ童子は涙を流しながら言う。
?「日和ちゃん……?」
女性が日和に話しかけた。
日和「お鶴……さん……?」
お鶴「日和ちゃん!よかった!無事でよかった!」ギュッ ポロポロ
日和「うん!お鶴さんも……無事でよかった!」ポロポロ
お鶴と呼ばれた女性と日和は抱き合い、涙を流した。
そこに
?「いやはや。感動的な話で私、感激です!」
ラダン「お前が最後か」
河松「え、ラダン殿、このものがアシュラ童子殿ではないもう一人…?」
ラダン「あぁ、そうだ」
河松はいきなり話しかけた胡散臭い男を注視した。
河松「!まさか!」
?「……気づいてしまったか」
河松「何故貴方様がそのような……!」
アシュラ「おい河松。どういうことだ」
河松「気づかないのか!?この方は…!元々白舞の大名…!霜月康イエ殿だ!」
アシュラ「何!?」
康イエ「気づいてしまったのなら隠す必要もない。たしかに俺が霜月康イエだ」
アシュラ「生きて……いたのですか……」
康イエ「正確には生き延びてしまった…だろう。して、何故ここに?俺の記憶が正しければトキ殿の預言のために逃亡生活をしてると思ってたのだが?」
河松「えぇ、確かにそうでございます。しかし、その必要が無くなったのです」
アシュラ「無くなった?どういうことだ。それに、そいつは誰だ。あの蛇がいた所にいたが……」
河松「この方はクラネル・ラダン殿。ワノ国の外から来たものです。そして、我々の協力者です」
康イエ「協力者……確かに計り知れぬ力を持ってるのはわかるが……」
河松「ラダン殿はつい先日、あのカイドウと戦い、圧勝するほどの力を持っています」
アシュラ「な!?あのカイドウを!?」
ラダン「本当だ。俺がこの国にきた経緯、そして河松らといる経緯は……」
ラダンはこの世界に来たこと、自分の正体、そしてワノ国に来てからの事を話した。
康イエ「何もかもが信じられぬ……だが、カイドウ率いる百獣海賊団が本当に撤退してたとしたら……」
アシュラ「後15年も待たなくてもオロチを討てる……!」
ラダン「酷ではあるが、カイドウを討つのはやめて欲しい。カイドウと協力関係を築いてワノ国を統治する。それが最善だ」
しかしアシュラ童子と康イエは険しい顔をしていた。
アシュラ「それは……難しい……カイドウに恨みのある奴は多い。協力関係を築いてたら変わらずカイドウの傀儡と思われかねない……」
ラダン「なるほど……」
ラダンは考え込んだ。
今のままでは無理……だが、カイドウはここにいた方がいいのは事実。今のワノ国自身に戦力はほぼない……。
!第三者が味方してオロチを討ち、カイドウを倒してその上でカイドウと協力関係になれと言った場合、それも人間では到底敵わない例えば龍とか、な。
ラダン「一つ思いついた」
皆ラダンの話に耳を傾けた。
作戦はこうだ。
人化を解いた状態で日和達を乗せ花の都に乗り込む。大きさは調節して都内に入り、オロチ城に強行突破。そのままの勢いでオロチを討つ。さらに、そのままカイドウを討つと宣言する。俺は神の使いとでも言えばいい。そうすればカイドウを倒した俺がカイドウと協力関係を築け。さらにダメ押しにメリットを言えばカイドウを恨むものも納得するはずだ。
ラダン「──という感じだ。どうだ?」
河松「なるほど!それなら!」
康イエ「うむ、出来ないことはないだろう」
アシュラ「無理矢理な気もするがな」
ラダン「強引なのはうちの家系の特徴だしな」
日和「けど、作戦はいいと思います」
ラダン「やるにはカイドウに作戦を伝える必要がある。その間に仲間集めは頼んだ。少人数でも大丈夫だ」
アシュラ「わかった。それは俺に任せてくれ」
ラダン「なら、俺はカイドウの所に行ってくる。決行は2時間後。場所はここだ」
打ち合わせが終わり、ラダンはまたカイドウの所に向かった。
オロチ討ち入りまで
後 2時間
長らくお待たせしました。
今回でオロチを討つつもりでしたが、先延ばしになっちゃいましたした。次回こそは……!