本官、異世界で署長になりました!   作:劉鳳

1 / 58
配備編
序章 人生の転機。ただし、異世界にて


最近はずっと流れ作業的に仕事しては帰りを繰り返してる俺。名前は児玉清蔵(こだませいぞう)。何処の世界にも大抵何人かはいるうだつの上がらない男さ。年は今年で35歳、彼女無し、結婚歴も無し。たまーに風俗とか出会い系で女の子と情事に及ぶ位だけど、何て言うのか、そっちの方はあまり興味が……と言うか女の子苦手だったりする。ホモォとかそう言う意味じゃなく女の子に軽く対人恐怖症持ってるね。そんな俺の職業は警察官だ。

 

うだつの上がらないって言った通り、出世はしてないけど、一応は仕事してるよ、何とか人生でニート経験は無し。高校卒業後に地方公務員試験を運良く一発合格して、警察官になったんだけど、この年になって漸く巡査長だよ……みーんな昇任試験受けて、大体の同級は巡査部長やら警部補になってる。勿論昇任試験受けなかった階級同じ奴もいるけど、俺より全然早くに巡査長になってんのよ……だから実質俺より下なんて殆どいない。巡査長になったのも奇跡的だった位。

 

まあ就職の動機が公務員で安定してるからだったし、帰宅部の割には体力もあったんで警察官とか良くねとか思ってさ……まあなったはいいけどこれが大変だった。まず仕事を覚えるスピードが遅いから毎日叱責されてた。パトカーの無線操作と言い警察官が覚えるべきルールである刑法や道路交通法と言った法律と言い専門用語と言い俺は覚えきらない。辞めたいと思った事は何百回、未だにそう思う時がある。

 

でも辞めたら何が残るとかさ、リセットボタンなんて無いから辞めて無い。仕事に漸く慣れてきたのかそこそこいい給料である事、俺の住む地域が平和過ぎて体力錬成と交通取り締まり位しかやる事が無いイージーさもあって馬鹿なりにどうにかやってる。でもうちの地域は他でやってるせっこいネズミ捕りとかはしてなくて、しっかり見える所にいてパトカー待機してるから、丸暴被れとか族(よっぽどのばか)位しかしょっぴいてないけどね。ノルマがどうとか言うのを嫌う署長さんで助かってるよ。

 

 

今日も朝早く無駄に起きて、お気に入りのな〇う小説を一時間読んで、晩飯の残りを食って、俺の住む向日葵市警察署に通勤。車で15分、何時もギリギリの到着、出勤表を通して署長と部長、同僚らに挨拶、今日の俺の仕事を聞いて…今日は拳銃と弾の状態を確認及び整備。ああ、俺は庶務的な所と交通課的な所の中間にいてね(所属は地域課だけど、色々掛け持ちするのがこの地域の警察の普通かな?他の所は知らんけど)、署の厄介者と言うか何度も言うようにうだつの上がらない万年ヒラだから雑用ばっかりやってんの。遅刻病欠一度も無しな為なのか、はたまた特別クビにする大義名分は無いのか、どうにかやれてる。労基法の改正は警察にも来てんだなぁ……一昔前なら早い段階でクビ宣告されてるかも。

 

さて、まずは拳銃を保管している警察装備保管室へと…治安が良すぎて状態は新品のまま、拳銃の訓練なんて俺が来てからあんまりやった事無いし他の連中と一緒にやった事も無いんだが……そういや警察学校でやったのがペア以上でやった最後だったな……

 

この署に保管されてるのは15丁、どれも新品同様のニュー南部(もう生産は終わってるロートルなんだけど)。俺も交通課と合同の見回りの時は勿論持つんだけど、治安良すぎなせいか、基本武装は実質警棒だけなのよ。白バイ隊と派出所の連中が気合い入れて持ってる位じゃないかな?刑事課とかは携帯許可が降りないと装備しないし、ここ何年も殺人事件や強盗事件も起きて無いからね。刑事課は専ら事務員扱いよ。

 

拳銃の確認が終わったら、次は……何時使うんだろう、ライフルが3丁。麻酔彈を撃ち込んだり、機動の連中が凶悪犯を狙撃する時に使うんだけど……ここに置いてあるのは違和感があるよ、ライフルの出番は市街に出てきた猪を撃った時だけらしいから。

 

ライフルの確認が終わった、次は押収した武器の確認。この署は大体適当なのよね、なんで被疑者から押収した凶器類を俺達が使う物と一緒に置くかなぁ?十数年もののショットガンとか日本刀とかが無造作に安いビニールにくるまれて置いてあるよ……なんで処分しないの?

 

とりあえずこっちも確認。おっと、弾丸の確認もしないとね。拳銃の弾丸、パックで保管されてる。弾を使う事なんてあるのかな?こ〇亀的なドンパチは無いからそんないらない気がする(あったら大変だよ)。

 

ああ、単調な生活。警察の俺が言ったら不謹慎って言うかアウトなんだろうけど、何か事件が起こらないかなぁなんて思ってしまう程、治安良いのよ(勿論嫌だぞ)。馬鹿な事考えながら保管室を出て、完了の報告をしに行く時だった……妙な違和感を感じた。静か、そう、余りにも静かだった、誰一人いない。何時もならひっきり無しに掛かっている無駄な110番の電話も無い。

 

『あれ?濱田課長?黒木さん?甲斐さん?正一?みんな何処に行ったの?えっ?亜由美さん?小出警部補?……うう、くそっ!どうなった!』

 

俺は心配になって外へと飛び出して行くと度肝を抜かれた。目の前に広がる光景は、何時も見慣れた向かい側の向日葵商店街が無く、代わりに何処までも鬱蒼と茂る草原が広がる風景だった。

 

『……冗談きついぜ、どこぞのありきたりな異世界転移じゃあるまいし。』

 

目の前に広がる光景を受け入れられず、何故か俺と共にこちらの世界にそのままでん!と移動した向日葵市警察署内へ一旦戻った。ドアは手開き、うちの署は未だに手開きで、自動ドアに替えて無かったが、この緊急事態下では幸いした。とりあえず落ち着こうか……いやこんな事態になってるのに落ち着ける訳もない!警察官たるもの日常こそ非日常にと叩き込まれたとは言え、これはきついぜ。

 

 

何の変化も無いと思っていた日常、しかし生きていれば時に想像を越える事が起こりうる。児玉清蔵と言う、一人の警官が、何の因果か別世界に飛ばされてしまった。果たして清蔵はこの状況を無事に乗り切る事が出来るのだろうか?

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。