本官、異世界で署長になりました!   作:劉鳳

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第11話 変化する環境と不変の思い

 

 

俺はサカサキで親友の山田と邂逅した。山田は優れた警察官だった。元々仕事に関しては木尾田に匹敵する程に実直だったし、所轄署の警備部に行きたいと前々から行っていた位。その願いは叶った。木尾田の死から警備部に志願、成績も優れていたあいつは見事に転属、晴れて公安にいった訳だが、あいつは殉職してしまった。余りにも呆気ない最期だった。心臓に銃弾が直撃して即死……木尾田と全く同じ箇所に被弾していた。有能な人間ばかり先に死んでいく様を見た俺は壊れてしまったよ。神様と言う奴がいたのなら、俺は真っ先に殴りにいっただろう。

 

しかし、目の前に死んだ筈のあいつがそこにいた。10年と言う歳月を感じさせるように、あの時と比べて随分と老けたなぁ……目付きの鋭さは公安に行った時のそれそのままだった。あいつも俺ほどでは無いにしろ、心が壊れたのかも知れない。

 

『清蔵、本当に久しぶりだな……』

 

『ああ……そうだな……』

 

あの後の最初の言葉はそれぞれこんなだった。互いに生きていた事を喜びたい気持ちはあるけど、何と言うか気まずさがいりまじっていて二の句が出ない。山田は元々シャイだから仕方ないにしても、俺までなんと言うか次の言葉に困った。

 

山田啓将……あいつは俺に無い者を持っていた。頭脳、容姿、そしてそれらとは別にある人間としての魅力。欲しがり屋で頭も見た目も悪い俺とは違い、頭も良く魅力的な人間であるあいつとは何故か妙に馬があったな。部活なんて行かず帰宅部の俺と、動体視力のスポーツである卓球部のホープだったあいつ。中学は木尾田と同じだったけど、あいつと接点が出来たのは高校に入ってからだったな。木尾田が進学校、俺は工業高校に進み、一番の盟友とは距離を置く事になった。進んだ道は機械科、そこで誰ともつるまず寂しそうにしていたあいつに声を掛けたのが付き合いの始まりだったっけ。顔も頭も良いあいつはヤンキーの巣窟だった機械科の中で特に浮いた存在だった。家は自動車整備工の親父の影響から工業高校に進んだらしいけど、あいつの頭なら普通に進学校の道に進めたはず。ちょっと親の意見に流されやすかったのかも。そしていざ工業高校に進んだは良いけど、まわりはヤンキーだらけ、あいつは真面目でヤンキー嫌いが酷かったから余計に居心地悪かったんだろう、窓際の席で一人寂しく過ごしていた。俺は他の連中とは一定の距離を保ちつつ可もなく不可もなく過ごせていたからだろう、なんの警戒もなく声を掛けられたのは。

 

『窓際を覗いて何見えるの?俺には前より寂れた街の風景しか見えないけど。』

 

『……別に。』

 

声を掛けたのが嬉しいと言う顔をしていたのに、言葉はぶっきらぼう……典型的ツンデレなんだなと言うのが第一印象だった。俺は構わず喋ってた。

 

『まぁ皆ヤンキーっちゃヤンキーだからね、山田達からすると付き合いきれんと思うのも無理はないけど。実は俺も似たようなもんさ。』

 

ヤンキーの親玉的存在がクラスにいて、言葉を出しにくい雰囲気はあったのかも知れない。まわりは親玉の顔色伺ってそうしていた中、俺は普通に話し掛ける。ヤンキーと言う人種は存外気を使うもんだと体感してるので、俺のような人間はある意味助かるとか言われたけど、山田との出会いでは見事にそれがはまった。

 

『体育の授業の時の反射神経凄かったね、部活やってんの?俺は家の仕事の手伝いとかあるから部活とか考えた事無いけど、羨ましいな。』

 

『卓球……今はやってない。』

 

少しずつだけどあいつは話すようになっていった。聞けば子供の頃から人見知りで余り人と話す事がなかったらしい。顔が良いんで女子からは言い寄られる事があったみたいだけど、基本的に人とコミュニケーションを取るのが苦手と聞いた。クラスのヤンキーは寄るな話し掛けるなって雰囲気の山田に触れるのを怖がっていたようだけど、俺は余り話さないってだけで人間を判断したくないし、判断なんて出来ないと思ったから、軽く声を掛けて話を聞くようにしてる。

 

俺の方からコミュニケーションを取るようになってから山田は少しずつ変わって行った。ヤンキー連中とも仲良くなったし、普通の連中ともコミュニケーションを取れるようになったあいつは、自然と魅力的になったのか、クラスの中心的存在になっていた。俺はあいつと親友となり、時に馬鹿な事やったり、泣いたりした。とある日の休日に木尾田と出会い、山田は自然と打ち解けた。そうそう、三人で夏休みのキャンプに行った時に、将来の事を話し合ってから今の道に行ったんだっけ……

 

『俺は卒業したらさ、警察官になろうかなって。安定した収入が入るし、無駄にある運動能力を発揮出来そうだしね。』

 

『清蔵は相変わらずアバウトだな……しかし奇遇だな、俺も警察官になろうと思ってるよ。元々親父の仕事のお陰でバイクや車が好きだったのもあるけど、白バイ隊とか交通機動隊とか憧れてたからさ。公安とかもかっこよさそう。』

 

『二人共将来が警察官か……僕も公務員として働こうと勉強してるよ、中々難しいって聞いてたからちょくちょく勉強でもするかい?』

 

『いいね!じゃあ木尾田ん家で勉強すっか!』

 

俺はまだ軽いのりだったな……採用試験の過去問を見て絶望したのは内緒ね。でも半ば遊びがてら勉強してたのもあって卒業後は晴れて警察官になったんだよな。山田よ、あの時は本当に楽しかったよなぁ……おっと、思い出に耽ってる場合かよ、先ずは思い切って経緯を話す事にした。山田は何かずっと驚きっぱなしだったな、いや、死んだ筈のお前さんが体持ってる事の方が驚きなんだけど……

 

『成る程……ある意味俺達よりも災難だったな。実はな、木尾田もいるよ。』

 

『え?何だって?』

 

『何故かは分からない。今のところあいつ以外でこの世界に来ている人間はお前だけだな。しかも生きてやって来たって言う違いもあるし。』

 

さらっと凄い事言ったよおい、お陰で難〇系な反応になっちまった……まさか木尾田までこっち来てんのかよ?この世界の神様か仏様は何があってこんな事してんのよ、悪趣味な……しかし木尾田も山田もこの世界に存在していると言うのは事実。時間の流れは向こうと変わらない、祈る神はあれど全面的に出ては来ない所とか人が想像するような神様とかは存在しないとこ見ると、やっぱりワームホール的なものなのかな?そう思案に入っていると、唐突に扉が開いた。何だよあの宿屋の猫さんじゃねぇかよ、どうしたの?

 

『ダーリンお弁当持ってきたよ、ウェヒヒヒ!』

 

『ちょっ、ノック位してくれサリー、それに人前でダーリンはよさんか……』

 

………山田君、椅子の下の座布団全部持って行くよ!世間は狭いとか言うレベルじゃねぇよこれ!あんまな展開だからテイルちゃん驚き過ぎてさっきから喋れてねぇぞ!

 

『ああ、済まん……その、俺の妻のサリーだ。』

 

『ティヒッ!まさかお客様がダーリンの知り合いだったなんてビックリィ☆』

 

山田君、君の奥さん俺達の情事を覗いてたんですけど……ああんもう色々台無しだよ。にしても、女が俺以上に苦手だったあいつがまさか猫耳の姉さんと言うか嬢ちゃんとくっつくとは……

 

『せぞさん、世界って意外と狭いね……』

 

うん、そうだね、心配になる位に狭いね。びっくりしたよ。この調子だともしかしたら他の転移者が案外近くにいたりしてってありそう。ブルーになってた俺の気持ちを返してくれ。

 

 

番外編〔山口康江:居心地良さと罪悪感と〕

 

こっちに来て早2ヶ月……お喋りで痛キャラの女帝のお守りをしながら、異世界の事を色々調べてたけど、凄い発見ばっかりだった。日本語が普通に通じる時点でびっくりだったけど、普通の見た目じゃない人間が普通ってのにもびっくり……この前会ったピクシーと言う種族、見た目ちっちゃくて可愛いけど、寿命も性成熟もヒューマと同じ位でかつ私と同じ年齢だったから生々しい夜の話してて引いたわ。あの見た目で緊縛プレイとか単語が出て来た時は意識失いそうだった。私は痛女帝の鶴の一声でこの国の将軍になっちゃった。確かに向こうの世界じゃ捜一で多くの部下を従えてたけど、桁が三つも違うんですけど!いきなり何すればいいの?!

 

『もしもの時は女の子の最大の武器で抱き抱えれば万事解決☆』

 

おいこらババァ!適当言ってんじゃないわよ!て言うかこのババァ……もとい女帝の国はタイーラ連合国の一国で割りと大きな国らしいんだけど、なんか平和ボケしてる日本の一市民だった私よりも何と言うか呑気?って感じがする。でも実際は血生臭い事件やら内紛やらが発生してもいるのよね……お腹が痛いよぅ。

 

『康江、どぎゃんした?冴えない顔しとって。』

 

『ああ、リッちゃん……ううん、何でもないよ。』

 

強面(でも結構男前)だけどこの人と一番仲良くなったかな?私の境遇を聞いて涙してたし、この人も孤児で平民階級から苦労して上がってきた人だったから私も苦労話聞いて泣いちゃった。互いに女帝のスタンドプレーに頭抱えながら将軍なんて御大層な役職やらなきゃだから自然と良いコンビになりつつあるけど……リッちゃんとくっつく話が出た時はその……悪く無いかなって言うのと同時に、変な罪悪感が……まだ雅人の事を引き摺ってるのよね私。清蔵兄ちゃん程心に傷を負わなかったとは言え、色恋沙汰なんて見えない位に仕事に逃げてたから。

 

『康江は良い女じゃ。きっと幸せになれる!』

 

そんな事言ってるリッちゃんこそ……人の事に身を削ってる所、雅人と被るのよね。と言うか私達なんだか幹部連中含めて事実夫婦みたいな感じで扱われてるのよね。二人共イヤイヤ違う違うと否定はしてるんだけど、リッちゃんの家で寝泊まりして、慣れない料理を作ったりしてるってのもあるけど、私もリッちゃんもそっちの方は奥手で中々進展はしないんだけど、本当に結婚を考えてる。幸せを願っていた雅人がこんな私を見たら失望するのかな?一緒に幸せに過ごそうねって誓ったあの人はもういない。ねぇ、雅人、あなたならどうして欲しいの?

 

 

 

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