※ふざけたタイトルではありますが、この話はギャグパート無いです。しかも短いです…
第13話 遅れて来たカリスマ
『キスケ警部、リーザ警部補、フラノ巡査部長代理、ラーズ巡査部長……署長とテイル警部補が休暇の為、巡査部長代理のフラノ君を含め、巡査部長級はこんだけじゃ。まず、おんしら呼んだんは他でも無い、コーリンの頭の事についてじゃ。シシ巡査、説明ば。』
『了解しました。』
コーリン撲滅の為に幹部を集め、会議が行われる事になった警察署。長い間町の治安を害してきたギャングの首領カマリタを遂に捕縛出来るのではとあって、幹部達は色めき立っていた。しかし、シシの告げる言葉は彼等のそれを戦慄させた。警察署に襲撃をかけると言う事実、相手はたったの5人ではあるものの、カマリタとリザード二人はかなりの手練れである事、更正に向かっているとは言え、元構成員がカマリタ達の襲撃に呼応して裏切るかも知れないと言う不安……会議は長丁場になっていた。
『相手はたったの5人、襲撃を署の外で防いでしまえば良いのでは?』
ヒューマのラーズ巡査部長がそう疑問を投げる。いくら歴戦の手練れとは言え、数に劣る相手を封じ込めるのはそうそう難しくは無いはず。しかしワフラは首を横に振る。
『いんや、奴ら、正確にはカマリタとリザードのダイナスとセンリューの三人だが、奴らはアンブロスの暗黒街で多人数の抗争を生き抜いたいわば怪物じゃ、抑え込むにしても一筋縄ではいかん。かつ、バーテンのノーチスは魔人とエルフのハーフで魔法を操るらしい。法力を使う者がいるっちゅー事は下手が打てん。』
今までの構成員を抑えて逮捕するのとは訳が違う事をワフラは説いた。カマリタはゴブリンの中で突然変異にあたるゴブリンオーズと呼ばれる種族であり、オーガ並の体高とドワーフ並の横幅比、その2種族を凌ぐ力を持つフィジカルエリートとも言える存在である。リザードの二人も通常のリザードではない。リザード全体でも少ないワニ型の種族、リザーディアダイルと言う種族で、高い瞬発力、つまり単純なパワーが異常に強いのだ。かつその後衛をつとめるであろうバーテンは魔人とエルフと言う魔法に秀でた種族のハーフである。特に魔人の眷属ともなれば数人単位を蹴散らせる程の法力を持っている事も珍しくない。
『ですが我々には拳銃があるではありませんか!これなら容易く無力化出来ます。』
少々過激派なきらいのあるリザードの若巡査がそう提案をする。
『おんし、頭を狙わないと言う自信はあっとか?確かにあれは強い、それだけに扱いは慎重にならないといかん。』
拳銃を新しいオモチャ感覚で使わぬよう、巡査長以上の人間、しかもモラルの高い者に限定して所持を許している。リザードの若者は正義感溢れる男ではあったが、いかんせん悪党には容赦なく殺していいと言う職権濫用の恐れがあった。しかし、若巡査の何人かはそのような考えを持っていた。清蔵の持ち込んで来たルールを良いように解釈している節があり、悪には死あるのみなキスケの考え方に賛同する者も多い。シシはその状況を哀しんだ。
(ああ、署長……俺じゃあ強硬な彼らを止められ無い。)
会議が殺せ殺せの論調になった時、扉を激しく開ける音がそれを遮った。
『君達、正義感が高いのは悪い事じゃない。ただ一つ、言わせて貰えるかな?』
『しょっ、署長?!』
常に穏やかだった清蔵の顔は、いや、今も穏やかではあるのだが、凄みが効いていた。今しがた署に戻り、制服に着替えた清蔵は、途中から会議の話を聞いていたのだ。
『俺流のルール、気に入らないと思っている者がいる事は、職務に当たっている皆の報告書、特に始末書で把握はしていた。俺自身も現場での仕事が好きだから、この町のルールやマナーを上手く融合させようと必死になってるよ。
余所者風情がって言いたいならばはっきりと言ってくれ、現に俺は余所者故にナハト・トゥの事をまだまだ知らない。ただ一つだけ、これだけは頭に入れて欲しい。正義の反対は悪では無い、別の正義であると。君達は悪党なら何をしても許される、そう思っているのかな?身内を殺された事も無いアマちゃんが何を言ってるんだとか思っているのかな?』
顔は穏やかだが、署員全ての人間が察していた。彼は哀しみ、怒っているのだと。今まで清蔵は自らも最前線に立ち、町の治安を改善する為に奔走してきた。休暇に入ったのだって、余りにも働き過ぎた故に周りから頼まれて休んだのだ、誰も仕事をホッポリ出したなんて微塵も思ってなどいない。だから自然に清蔵の言葉に耳を傾けていた。
『俺は……同僚だった友人二人を失った。ただ犯人に対して死んで欲しいと思った事は無い。自分達の罪と向き合って、真人間として社会に戻って欲しかった……それは今も同じさ。
警察官と言う仕事をやっている限り、君達も何れ経験する時が来るかも知れない。だから言う、死んじゃだめだ、そして……殺しちゃだめだ!誰かが殺された怒りは表に出さない、ただ、その怒りを心の何処かに留めて、町を守る人間としての力に変えてくれ!』
清蔵の気持ちは、この世界に来た時に決まっていた。警察官としての再起、そして人間としての再起。気が付けば皆が清蔵に敬礼をしていた。
『署長、すまなんだ、コーリンを撲滅出来ると言う契機だったんで皆殺気立っていたんじゃ。』
キスケが進んで頭を下げる。清蔵は手でそれを制しながら、皆の前で思いを話す。
『コーリンの撲滅、しかも今までかなり平穏にそれを行えたのは、皆の努力があったからだ。俺はただただ感謝しかない。しかし今度はコーリンの親玉、その時が来るのは覚悟はしていた。相手は強固で狂暴かもしれない。
だが、だからこそ、そんな人間であっても、更正の余地はあるはず……奴らを確保したのなら、法の下で裁きを受けさせ、罪を償って貰う。生け捕りは至難の業だろう、それでも、出来る限り殺しちゃいけない。そし…て…君達にも言おう、被疑者確保において、必ず生き残るんだ!』
『『了解!!』』
署員全てがこの日、一丸となった。清蔵は気付いてはいなかったが、本人の魅力と言うものが、未だバラバラだった署の人間の思いを一体化させた。それは、生まれながらのカリスマではなく、本来誰しもが持っている力なのだ。異世界の地で戸惑いつつも警察官としての魂が甦った時から、生き抜く為の魂が輝き、清蔵は皆に認められる立派な警察官、いや、社会人となったのである。
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ナハト・トゥのギャング、コーリン。敵はもはや組織としては深手を負った獣である。しかし手負いの獣程恐ろしいものは無い。清蔵はここに来て最初の困難に直面しつつも、自らの矜持と覚悟を以て打ち勝たんと決意を新たに運命の局面を迎えるのだった。
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あとがき
ギャグパートの後にシリアスパートってスッゴい難しい。構想自体は10話位出来てるのに、直近のシリアスが難産で中々進まないっすね…