本官、異世界で署長になりました!   作:劉鳳

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タイトルに困ってます。

漸く一段落つきました、この話の後は割とだらだらになりそうです。




第18話 後悔なんて、あるわけ無いですとも!(パクりじゃねぇか!!)

 

 

清蔵の住んでいた向日葵市(ひまわりし)。行方不明になってから半年、彼のこの世界においての扱いは死亡と同義だった。特定失踪者として届け出が出されたのは署が消えてすぐだった事から、彼の扱いは自然とそうならざるを得なかった。しかし、向日葵市署の全ての人間が、最近清蔵がファンタジー的な世界でかつての署の署長として、異世界の町の警察官として活躍している姿を夢に見ると言う。全員が全員、同じ夢を見ると言う事、それは清蔵は死んで等おらず、むしろ元気に生活しているのだと言う事が、心で感じ取れた。死んだ目は輝き、かつて周りから期待されていた姿を、夢と言う形で見た皆は言う。

 

ー児玉清蔵は、生きている……ーと。

 

 

『ん?』

 

清蔵はふと目が覚めた。襲撃が未明に来てもいいように夜通しで見張りをしていたのだが、それぞれ半刻程交代で仮眠をとるようにしており、清蔵もその流れで現在仮眠室で寝ていたのだ。元世界とリンクした夢、最近は過去のリフレインではなく、現在進行形のそれを見るようになっていた。どうやらあっちの世界では死亡扱いになったらしい。しかし、向日葵市署の皆はこちらの働きを夢に見ており、彼が死んでる等と思っている人間が皆無だったのが、清蔵の心に響いていた。

 

『……俺、立派とは言えないけど、宜しくやってます……よ!?』

 

清蔵の意識は現実に引き戻された。テイルが清蔵を抱き枕にして寝息を立てているのだ。

 

(なんつー事だよ……良かったぁ、交代の人員が呼びに来た時にこんな所見られたら、(今じゃ、この不届き者をフルボッコに!いいですとも!)って流れになってたよ絶対。)

 

清蔵はテイルを起こさぬように引き剥がし、上から制服の上着をかけてやった。テイルの制服は警察官の服を改造した露出の高いもので、見るからに風邪引きそうだったのだ。寝ていた体勢も下の三角地帯が丸見えになっていたので、赤面しながらも横にあった毛布をかけてやった。

 

(しかし今更なんだが、この娘にえらく気に入られちゃったな……でも本当に俺で良いのかな?そりゃあデ〇べっぴんな彼女に好かれるなんて憧れではあったけども!)

 

清蔵はそう心で言いながら、寝息を立てるテイルを覗きこむ。余り主張しない小さめの水牛のような角、目覚めて動いている時とは対照的なあどけなさの残る顔、元世界の女達が見たら羨ましがるであろうグラマーなボディ。しかしなにより清蔵が惚れたのは、テイル自身の心優しい性格だった。故に、もっと段階を踏んでお付き合いをしたかったと思っている清蔵としては、いささか飛ばし過ぎだと感じていたのだ。

 

(命懸けの亡命をしてまで守った娘が、異世界のどこの馬の骨とも分からん人間に純潔を捧げたなんて……親父さんが俺とあったらなんて顔すんだろうな?隣に住んでるのにまだ一度も会った事無いんだよねぇ。)

 

頭で色々と考えていたが、今は深く考えないように、再び眠り直す事にした。先ずは目の前の問題を解決してから、彼女との事はそれからだと言い聞かせながら……

 

 

仮眠をとり、交代してから数刻、夜が明けて来た。元の世界よりも澄んだこの地の空は美しさが違う。赤い朝日を浴びて急速に体を覚醒させた清蔵は、屋上で辺りを見回した。ナハト・トゥ町と警察署を結ぶ街道、そこに30余りの人影を捕らえた清蔵は、伝令の巡査に指示を伝える。

 

『いよいよだな。各班に報告、これよりコーリン鎮圧の任務を開始する。』

 

『了解しました!全員、任務開始!』

 

清蔵は伝令の巡査の返事を聞き終えると、再び視線をかの集団に戻した。距離的には2km程を切った所で、まだ豆粒のようにしか見えてはいないのだが、その中心にいる一回り大きな体を持つ人間はハッキリと捕らえていた。

 

『あれがカマリタ……』

 

清蔵は手を汗だくにしながらも、自らの装備たる拳銃と警棒を握りしめ、屋上より下へと降りて行った。

 

 

一方、カマリタ達は、街道より警察署を見上げる形で進んでいた。ゴブリンの目は、他の種族よりも大きく、屋上にいた清蔵達をはっきりと捉えていた。

 

『屋上にいる、他の人間よりも上等な造りの服に身を包んだあの男が大将か……想像よりも若い。』

 

初めて見たカマリタの率直な感想だった。立派な建物と対比して、その主と言うにはまだまだ青臭さが抜けていないと感じながらも、その者の目は、決して泳いで等いなかった。カマリタは手に持つ巨大マチェットに目をやりながら、命のやり取りをこれから演じる相手の首を刈る事に意識を集中した。

 

カマリタの横に立つヤヌスは、改めて警察署の外観を目にした。この世界にはない頑丈な壁と、まるで城と形容するような建物の様相。一度だけ顔を合わせた事がある男の顔を思い出しながら、ヤヌスは呟く。

 

『どこの馬の骨か分からぬ青二才と思っていたが、中々に殺し甲斐のある男だったようだな。』

 

『ヤヌスの旦那、奴は俺の獲物だ……横取りは許さん。』

 

『ふっ、心配には及ばんよ。私も私自身の獲物がある。』

 

ヤヌスはそう言うと、会った時から全く馬が合わなかったワフラの顔を思い浮かべながら、手製の槍を握り直した。

 

 

警察署側は、迎えうつ準備が整った。人員はやはり全て使う事が出来ない。機装一式に身を包んでいるのは、体力面で優秀な若手達。その中には、前日質問をしたコモドの姿もあった。熱血で徹底交戦を所望した彼も、いざ装備に身を包むと緊張で体が萎縮していた。

 

(へへっ、あんなにイきってたのに、いざとなると泣きそうになってきた……でもそれじゃ署長に顔向け出来ねぇ……)

 

押し潰されそうになりつつも、呼吸を整え、盾と警杖を構え直す。機装一式を装備するのは、コモドの他にはシシやミハイルの姿もあったが、彼等もまた、初めての事に体の震えが止まらない。

 

『シシ君、その……怖くない?』

 

『ミーさん、そりゃあ怖いよ……でもさ、ここまで俺達頑張って来たんだ、きっと大丈夫。』

 

シシの言葉は自分に言い聞かせるようにも感じたが、ミハイルは同僚の言葉に励まされ、グッと身を引き締めた。

 

 

『奴ら、本気で殺しに来たな。これはこっちも殺してやるって気兼ねで取り押さえんと死ぬ!』

 

機装班のすぐ後ろで構えているキスケは相手の状況を冷静に分析していた。手にしている装備は多くの者が剣にナイフ、守衛隊がクロスボウを所持、そしてバーテンの男は軽装で手ぶらである事から、全体の攻撃を予測した。

 

『機装班、おめえらは盾でとにかく前面を押さえぇ!剣やナイフは脅威じゃなか、守衛隊の飛び道具を押さえるんじゃ!バーテンの男は魔法を使う、後衛の銃撃班に任せろ!勝てるのか?じゃなかっ、勝つんじゃ!』

 

いつもはパワハラ気味なキスケの言葉は、この日に限ってはこの上なく頼もしいものとなった。

 

 

コーリンの動きを確認し、次の準備へと移る為、下の階へ降りて行く清蔵は、途中テイルとすれ違った。不安そうにこちらを見つめるテイルに、清蔵は頬笑む。

 

『心配しないで、きっと大丈夫。テイルちゃん、囚人達が暴走しないように、後ろを宜しくね。行ってくる!』

 

清蔵はそれだけ言うと署の外へと走って行った。テイルは清蔵に何も言う事が出来なかったが、彼のこれまでの行動を見て、確信していた。

 

『せぞさんは、約束を破らない人……頑張って!』

 

 

署の外に出た清蔵は、ワフラと合流した。ワフラは清蔵の姿を見て、ため息をつきつつ、

 

『大将には署の中で指揮をとって欲しいんだが……あんたの事だ、出てくると思うとったば。ならばこのワフラ、しっかり参謀をする!』

 

『すまない、ワフラ……では、コーリン鎮圧の為、行くぞ!』

 

部下数名を引き連れながら、清蔵は正門前に向かった。

 

 

コーリンの構成員と守衛所の人数36名、警察署の鎮圧隊、55名が正門前で対峙した。その距離、約15m。警察署の屋上には、ライフルを構えた狙撃班が息を潜めて待機していた。フラノである。

 

(もしもの時があったら、あっちの大将を狙撃しろ。清蔵さんが死ぬような事があったら、たとえ鎮圧しても負けになるば。)

 

伯父であるワフラの言葉を頭で思い出しながら、弾を込めた。ボルトアクション式の狩猟用ライフルは、造りは古いが作動は良好であり、この距離からなら、大抵の目標に当てる事も容易い。しかし彼はそれを使うのを躊躇っていた。装備を揃える為に、一度どのようなものか、試射を見せて貰った事があった。その威力は、フラノの想像を越えていた。音よりも速く射出されるそれは、拳銃よりもはるか遠くの目標を撃ち抜いてみせた。あの威力を目の当たりにしているからこそ、躊躇うのだ。確かに凄い威力だが、貫通力が高過ぎる故に、周りの同僚達に当たる危険性すら孕んでいた。

 

『伯父さん、署長、僕の出番が来ないよう、頑張って下さい。』

 

 

『ギャングコーリン、並びに守衛隊。貴様らの行いは既に分かっている。無駄だとは分かっているが……投降する意思は無いか?』

 

清蔵は彼等に声をかける。無駄とは分かっていても、先ずは戦わない事を願う。しかし、それを嘲笑うかのように、守衛隊の側から、クロスボウを持った男が清蔵に向けて矢を放った。その矢を、盾を持ったコモドが反応し、難なく弾いた。清蔵は彼等のそれが答えだと悟り、声を張り上げる。

 

『それが答えなら、もう何も言わない。全員逮捕だ!!』

 

鎮圧の狼煙が、ここに上がった。

 

 

コーリン側が全面的に攻撃に出て来たのに対し、警察側は前面に出ているのは機装班10名と遊撃班25名。銃撃班は署の玄関側に10名待機している。機装班はクロスボウを構えた12名に盾を構えて突進して行く、向こうも負けじと槍を持った者が行く手を阻む。

 

『かかって来い小童ども!』

 

カマリタの周りには遊撃班が5名取り囲む、手には警杖と刺股を携え、果敢に立ち向かうが、カマリタはマチェットをふるい襲いかかってくる。どうにか皆手に持つ武器でガードするが勢いで弾き飛ばされる。その瞬間、後ろについていたバーテンが魔法を放つ。氷の粒、雹を散弾銃のように飛ばし、後ろにいた遊撃班を襲う。間一髪それをかわしながら今度はお返しとばかりに警杖でバーテンを叩く。警杖の突きはバーテンの脇腹を捉え、思わずよろめく。

 

『ぐっ、何の!』

 

バーテンは間髪入れず反撃の魔法を放つ。氷の散弾銃は至近距離で食らえば致命傷を負う。遊撃班に出ていたロウラはその攻撃の前に無防備になる。

 

『危ない!』

 

そこに盾を構えた機装班の者がロウラの前に立ち、それを受ける。盾はズタズタになりながらも二人とも無事であった。盾を構えたままバーテンの前に走り、手に持つ警杖を力一杯に振り、それをバーテンがよけるが、突如背中に打撃を食らい、息が止まる。後ろについていたのはコモドだった。

 

『がはっ!』

 

バーテンはそのまま意識を手放し、地面に突っ伏した。盾を構えた男はロウラに近付き、

 

『ロウラ、無事だった?!』

 

『シシ、それにコモド君?ええ、ありがと!』

 

無事を確認すると一旦待避するよう呼び掛け、二人はそのまま遊撃班に加わった。

 

『こちとら体力錬成は続けてたんだ、負けるかよ!コモド、突っ走るぜ!』

 

『おう!』

 

 

『やるな皆!』

 

清蔵は思わず声に出した。素早い連携で守衛所のクロスボウ、槍の攻撃部隊を鎮圧していった。クロスボウ隊が下がり、槍部隊が前に出て来た瞬間に、清蔵は銃撃班に合図を送ったのだ。銃撃班は槍部隊の足、弁慶の泣き所を正確に捉え、向こうの動きを無力化し、すかさず機装班が鎮圧。更にクロスボウ隊が構え直す前に遊撃班がそれを取り上げ、腕を極めて完全に無力化した。流れるような連携に感嘆しながらも、清蔵は指示を伝える。

 

『機装班二名、バーテンの方角にいる遊撃班に加われ!残りは引き続き隊列を組んでヤヌスとカマリタ側に行くんだ!』

 

『『了解、俺達が行きます!』』

 

そこでシシとコモドの二人がすかさず反応し、遊撃班に加勢が来た事で、厄介なバーテンを抑える事が出来たのだ。魔法の脅威を退けた後は、ヤヌスとカマリタの大将二人を止めに行くのみ。しかし、これがかなり厄介だった。屈強なリザード二人が槍と長柄の大斧をふるい、遊撃班の鎮圧を阻んでいるのだ。更にはヤヌスとカマリタ自身も屈強、それぞれ背中を合わせながら攻守の連携を取りながら、遊撃班を吹き飛ばしていた。

 

『こっちの遊撃班は負傷!鎮圧から離れます!』

 

『了解、機装班、奴ら中々厄介だぞ!盾で面制圧を頼む!』

 

盾を横一列に構え、警杖から拳銃に持ちかえ、突進して行く。

 

『ダイナスとセンリュー、あのリザード二人を奴らから引き剥がせ!』

 

そう叫びながら清蔵はリザードの片割れ、ダイナスの肩に渾身の力で警棒をふるった。鎖骨が折れ、悶絶しそうなのを堪えながらも、ダイナスは手にした斧を高々と清蔵に振り上げた。

 

『ヌオアアッ!きさんらぁあ!』

 

斧を当たる寸での所でかわし、ふるった力をそのまま逃がすように腕を取ってダイナスを地面に叩きつけた。

 

『ダイナスゥ!きさん、死ねやぁ!』

 

叩きつけた時に倒れこんだ清蔵に向けて、センリューが槍の一突きを見舞おうと構えた。

 

(やられる!)

 

その時、遠くから高い銃声が鳴った。センリューの腕は撃ち抜かれ、思わず槍を手放す。

 

『フラノ君か?』

 

 

『ふぅ、どうにか当てられた。』

 

フラノは清蔵が無事だった事と同時に、自分の出番が来た事に対する複雑な思いを浮かべていた。

 

『幸い腕を撃っただけだから良かったけど、今度は分からないな。』

 

乱戦で動くものに正確な射撃を当てる事は非常に難しい。フラノは尚高まる緊張の中、ライフルを構えた。

 

 

腕を撃たれ、丸腰になりながらも、目の前のセンリューは清蔵を殺そうと立ち向かってくる。清蔵は警棒を逆手に構え、前に出した左手を指を着けた手のひらの状態にして迎えうつ。

 

『きさんがいなければぁ!』

 

振り上げた左腕のパンチは、さながらヘビー級のボクサーのそれだった。清蔵はそれを敢えて額に受けた。

 

『ぐっ、オラァッ!』

 

額で拳を受け流し、左手で相手の喉を打ち、右手に構えた警棒で脇腹を叩いた。センリューは白目を剥き、がくりと膝から崩れ落ちた。

 

『手の空いた遊撃班は彼等二人を確保しろ!俺は……あの二人に向かう!』

 

 

戦いは互いに多くの負傷者を出した。遊撃班と機装班25名は負傷し、戦線を離脱。一方のコーリン側は20名が拘束。銃撃班は手持ちの弾を使い果たした為、拘束と負傷者の救助に回っているので、実質無駄弾を撃たなかったフラノしかいない。互いにボロボロになりながらも、警察側が僅かに押しはじめていた。バーテン、センリュー、ダイナスの三人を抑える事に成功した事で、残る厄介が大将二人になった事で、警察の士気は落ちていない。一方のコーリン側は、実質大将二人しか戦力的優位が無い為、瓦解するのも時間の問題と思われた。

 

『ハハハハッ!ワフラァッ!ここで死ねぇい!』

 

『寝言は寝て言えきさっころが!』

 

『どうした若大将!そんげなもんかおどれの力は!』

 

『くっ、言ってくれるぜこの肉だるまが!』

 

あろう事か大将同士が正面からかち合うと言う事態になっていた。実は、機装班、遊撃班共に大将二人による負傷者が殆どを占めており、事態に気付いた二人が直接その場にやって来たのだ。

 

『君達何をぼけっとしている!他の連中を拘束するんだ!』

 

『しっ、しかし署長!』

 

『ここはわっどんに任せい!フラノもお前らが邪魔で狙撃もままならん!こん屑はわっどんが潰す!』

 

『ほざけ石頭が!今日こそおまんの気に食わん顔をメタクソにしちゃる!』

 

その四人の修羅場感を悟った警察側は、言う通りにその場を離れた。

 

『ワフラ、これで心おきなくきさんを殺せる。』

 

『ヤヌス、おめが何故コーリンと組んでいたかは聞かん、興味は無か。じゃが、何故、町民を泣かす事ばした?!』

 

『私は、ナハト・トゥに来た時から、かつて暗黒街で商いをしてきた繁栄を築き上げたかった。だが、きさんのような石頭が気に食わんかった。女子供を売り飛ばし、奴隷を売り飛ばし、薬を売り飛ばす……裏で気ままな支配者として、表向きは公僕として生きる。それが俺の求める所だった。だから言う、きさんらが邪魔で邪魔で、殺したい。』

 

『幼稚な……いや、幼児に失礼か。こんげなもんの為に、多くの命が奪われた……赦さん、じゃが殺さん!おめには、死すら生温い!』

 

『抜かせ!』

 

ワフラは警杖を構えたまま動かず、ヤヌスは槍を正確に心臓に向けて繰り出す。完全に捉えたと思ったそれを、ワフラは素手で矛先を捕らえ、留めた。

 

『馬鹿め、ここから少しでも私が槍を押せば、指は無くなるぞ!』

 

『馬鹿め?違う、おめが次に言う言葉は……』

 

ワフラは警杖でヤヌスの股間を打ち、肋を折り、そして鼻をかすめてもぎ取った。

 

『あぐぁっ!』

 

『馬鹿な、だ。おめには弁護士を呼ぶ権利と黙秘権がある。署長に感謝するば!』

 

最後に首もとに打ちつけ、失神させた。

 

 

『これで誰もいなくなったのう、裸の大将!』

 

『その台詞、まんまブーメランっつーのを気付け!デカ〇ン野郎!』

 

カマリタはマチェットを清蔵の首へとふるい、清蔵はそれを警棒で受け止め攻撃を止める。

 

『ちぃ、なんて破壊力だ!』

 

『どうした、このまま死ぬんか?ハハハハッ!』

 

特殊合金製の警棒がへし曲がったが、清蔵は近くにあった警杖を拾い、構え直す。清蔵はまたふるわれたマチェットの一撃を、警杖を斜めにして構え、受け流し、反動をつけて、カマリタの頭にそれをぶつけた。カマリタの後頭部の皮が破れ、出血したが、カマリタは倒れない。

 

『ぐっ、中々やりおる……が、まだまだあっ!』

 

カマリタは目にも止まらぬスピードでマチェットを縦に振り落とした。清蔵は咄嗟に警杖を盾にするが、マチェットはそれを断ち切り、清蔵の肩口に食い込む。

 

『痛てぇ……けど!』

 

『?!マチェットが外れん!』

 

やや袈裟懸けに肩の肉を切り、骨にまで達するが、清蔵の鍛えられた筋肉と、対斬撃の制服のお陰でそれ以上切り込めない。マチェットを持つ手を清蔵は握り、腕を捻ってカマリタの頭を大地に叩きつけた。

 

『警察なめんなこらぁ!』

 

『グフッ!なんちゅう馬鹿力じゃ!』

 

『いらん枕詞つけんなぁ!』

 

清蔵は更にカマリタの頭にエルボードロップを噛まし、カマリタは戦意を喪失した。

 

『つ、強い……』

 

『いや、全然強くねぇって……背中押してくれる人間が糞みたいな俺に力を貸してくれただけさね……』

 

清蔵がそう言うと、カマリタは悟ったのか、もう立ち上がる事をしなかった。

 

『俺の負けだ。この町はもう、俺など必要としていない。好きにせぇ。』

 

『無論、そのつもりだ。けどあんたは僅かでも更正の余地がある。後は奉行所の沙汰次第さ。おっといけね、これを言わないと……カマリタ、公務執行妨害と凶器準備集合罪、並びに傷害の現行犯で逮捕する。尚、あんたには他に何十件もの容疑で指名手配が出ていた、その件についても話してもらう。あんたには弁護士を呼ぶ権利と黙秘権がある。』

 

清蔵は言い切ると、肩の傷を押さえながら署に戻って行った。カマリタはその後ろ姿を見ながら、一人笑いを浮かべていた。

 

『ククッ、本当に面白ぇ人間がいたもんだ。これは何としても、生きてその後が見たいものよのう……』

 

こうして、ナハト・トゥのギャング、コーリンは壊滅した。署に隣接していた刑務作業所や未決囚収監所は、主だった暴動もなく、この事により警察側の混乱が発生しなかったと言う事実が、事件解決の遠因と言われた。何よりも一番の収穫は、殉職者を出さないと言うそれを達成出来た事が、何にも代えられないものであった。

 

 

痛い!痛すぎる!カッコつけて突っ込んだは良いが、体が超痛ぇでごぜぇますよ……肩から血がどくどく出てるし、体中痣だらけ。つーか銃撃班途中誤射ってたな、右太股の上の方当たったよおい…あと数cmズレてたら俺の金〇がああん状態になってたよ。まあゴム弾にしてて良かった。しっかし俺ってば署長失格だなぁ、どうしても現場の空気の方が好きでしゃしゃり出ちゃったけど、これは後々自重出来ないとおじさん死んじゃうね。散々格好つけたので痛がれないし泣き事言ったら総スカンだからな。

 

おっ、みんなで俺を出迎えてくれるのか?いや、説教かな?ワフラも腕組んでるし。キスケは顔と目を真っ赤にしてて怖い……すんません、説教は取り敢えず治療終わってからにしてもらえんですか?

 

『せぞさん……グスッ……』

 

あれ?テイルちゃん?どうしたの?なんか涙目になってるけど、ほら、ちゃんと生きて帰ってきたんだから心配しない

 

『でぶぅ!』

 

『せぞさん、無理ばっかして!せぞさんは約束破る人じゃないのは知ってるよ!でも……こんなボロボロの姿になって、もしもの事があったら……』

 

すみません、二重の意味ですみません!バストアタックで血圧が……そしてテイルちゃん、泣かないで!女の涙は堪えるのよ!

 

『全く、無理をして……仕方の無い署長ば。』

 

そう笑ってるあなたもえらい前線に出てましたよね?ムキムキだとは思ってたけど、強かったのねワフラ……

 

『清蔵さん、俺は感動しちょっばい!あんたはやっぱ町の英雄じゃあ!』

 

ちょっ、キスケさん?やめて、超恥ずかしい!男泣きで何言ってんのよ!

 

『署長、カッコ良かったとです!』

 

『署長、最高でした!』

 

『僕、男ですけど、署長に惚れ惚れしとります!』

 

シシ君?コモド君?煽てないで!ミハイル君に至っては際どい事言ってるし!と言うか皆泣いてんの?えーと、こう言う時って、なんと言うのが正解かな?取り敢えずこれかなぁ。

 

『ありがとね……みんな、ほんとにご苦労様。』

 

うう、これが今の精一杯です。ホッとしたら俺も泣いてしまいそうになったけど、ここは我慢だぁー!!

 

 




いいのかそんな締め方で?

とは言え、今の私にはこれが精一杯すなぁ。
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