第19話 大丈夫精神(大丈夫だとは言っていない)
『痛だだだ!滅茶苦茶痛いですけど?!』
『そりゃ痛いでしょう、あんたの怪我、骨迄達していたんだし。幸い神経も血管もくっついたし、あんたの体力なら1週間もあれば元気になっでしょう。』
町の診療所に警察の負傷者が運ばれていた。清蔵も当然ながら運ばれたのだが、麻酔無しの外科治療だった。此方の世界には一応、麻酔はあるのだが、清蔵のような怪我の場合、腕の動き等を観るため、敢えて麻酔無しで治療を行っていると言う。念のため清蔵は治療の魔法ってないの?と聞いたが、
『宮廷の医者や大都市の病院にならいるがよ、たっかいぞ。むしろ魔法の力が無い所こそ医者の手術の腕が良いってもんだ。とりあえず消毒液ね、風呂の後か寝る前に塗る事、お大事に若大将。』
との事だったので諦めた。深い傷だったので、今回の怪我は治っても傷痕が残るだろう。取り敢えず治療を終えた清蔵は署に戻る事にした。報告書の作成をしなければならないのだ。
『今回の件の被害報告書、武器弾薬の使用状況、被疑者の処遇に、し・ま・つ・しょ!』
今回、危うく自分の金〇を駄目にする所だった清蔵は、銃撃班一のノーコン、マーシー(一人だけ仲間に当てたと言う事が判明)に対する始末書の作成通達を指示しようと思っていた。
『まあ本人も頑張ってはいたから、大した責はないんだけどねぇ、テイルちゃんとの将来考えると、金〇は大事だから!』
『せぞさんっ!もう無理しちゃって!休んでなさい!』
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平穏を取り戻した警察署、何時もと違うのは、人員のうち15名が先の事件で入院して欠員が出ている事。入院まで行かずに治療後動ける者も、疲労と怪我でろくに動けない。そこで無傷だった数名の優秀な人間に代理で動く事になった。現在署にいる者で清蔵を除く最高階級はテイルだったが、それに加えて巡査長のフラノ、働きが良かったシシ達4名が、事務仕事に回る事となった。
『みんな、ここから暫くは忙しいよ!でも後もうひと踏ん張りやけん、頑張ろ!』
『了解です!テイル警部補、書類書きは苦手ですが、頑張ります!』
『あのぉ、わてくしはどうしたら?』
『署長、寝てて下さい!怪我の大した事の無かった伯父さんですら自重したんですから!よし、みんな、きびきびやっぞ!』
代表者のフラノが声を上げ、それぞれ書類作成に取り掛かった。後数日はこの忙しい日々が続くであろうが、彼等は清蔵に署長室に留まらせる気は無いようだった。清蔵は呆然としながら署長室を後にした。
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ども、署長の児玉清蔵であります。本官テンションだだ下がりであります。治療を終えて署に戻ったら、部下の皆様に
『怪我人は帰って寝てなさい!はっきり言って迷惑です!』
と怒られたので、そうさせて貰ってます。ああ、テイルちゃんのあの怒った視線、対照的に舌っ足らずな可愛い叱責、また何かに目覚めそう……俺のムスコは、全身打撲で肩の重傷の肉体の事など露知らずに今、その、下品なんですが、フフッ、勃起しちゃいましてね……
ええ、こっち来てから、オ〇ニーなんて一度も出来なくて、射〇したのは夢〇とテイルちゃんとセッ〇スした時だけなんです。出来ればオ〇ニーで性欲をコントロールしたいのでありますが、我が住み処はテイルファミリーの隣、オーマイガー!早く体治して通常業務に戻ってテイルちゃんと
『セッ〇ス!』
はっ、しまった!つい願望が声に出てしまった。お隣さんがテイルちゃん一家なので聞かれてしまったかもと焦りましたが、この時間帯は両親共にお仕事に出かけてるらしいのであります。良かった……(いや良くねぇ)しかし異世界に来てから充実した日々が続いてるなぁ。これは夢なんだ、寝て目覚めたらまたあの空の現実に引き戻されるだろうとか思ってみたけど、この肩の痛みと全身の痣が、今の現実なんだと悟らせてくれる。
『清蔵くーん、今おると?』
『あっ、はーい、今行きます!』
この声はテイルママだ。名前はハンニさん、年齢は40歳、結構早い結婚だったらしく、ママになったのが今のテイルちゃんと同じ年齢だって……テイルダディは手が早かったのかな?それともロリコ……これ以上はやめておこう、おまいうになるし。しかしテイルちゃんはハンニさんにそっくりだと感じる。違うのはハンニさんの方が身長がやや低い事と、おとぎ話の鬼の角をイメージしたような角な所。それにしても、ハンニさん、何の用だろう?
『テイルから聞いてね、貴方怪我したんですってね、だから忙しいあの子の代わりにお見舞いに来たんよ。』
うっ、うす、どうも……なんか凄い嬉しそうなんだけど、ああん?なんで?
『いやぁねぇ、あの子貴方とセッ〇スしたでしょう?もうここまで来たら結婚しちゃいなさいって背中を押しに行こうと思ってね。さっきもセッ〇スって聞こえたわよ、若いわね☆』
おい、ちょいとストップ!そして声が大きいよMrs.ハンニ!その可愛い系の顔と声でセッ〇ス連呼しないで!
『まあまあ、落ち着きなさいな。それにしても清蔵くんは私のダーリンに何処か似てるのよねぇ。あの子が懐く訳ね。』
旦那さん悪い顔の北村〇輝と照〇を足して二で割った顔っすか……顔の好みが親父さんって事は、テイルちゃんやっぱちょっとファザコンなんだね。
『誉めても何にも出ませんよ。それに、怪我のせいで娘さんに仕事押し付けた形になっちゃって、申し訳無いです。』
『んもう、あの子と同じで遠慮がちねぇ、そこはありがとうございますでいいのよ☆』
ハンニさん恐ろしく明るいな、若干引いてるわ……しかし親子揃ってなんつー身体と格好してんだよ、傷にさわるぜ!露出が激しくねぇか?!そっそれにいくらオーガがヒューマよりちょいと寿命長いっつっても、俺と同年代の人が放課後電〇波倶楽部みたいな格好にスケスケのパレオ着けただけの姿でいるのはちょっと……
『ふふ、ウブな反応ね、そんな所もダーリンにそっくり。今度テイルとダーリンと一緒に浴場に行って洗いっこする?』
やめて、マジでやめて!恥ずかしいから!ほんの最近まで素人童貞だった男をからかわないで!何この人怖い……
『あらいけない、長居すると身体にさわりそうね、テイルにも伝えとくね、貴女のパパさんは心配無いって。』
だぁかぁらぁ、まだ旦那じゃねぇっての!段階踏みたいんだから、セ〇レじゃねぇんだから本来ひとっ跳びしたくなかったんだからね!
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『ふぅ、やっと終わった……みんな、ご苦労様。』
報告書の作成も終わり、ひと息ついたテイル達。辺りは既に日が落ちていた。普段事務方でないシシ達は、慣れない仕事でどっと疲れているようだった。無理もない、昨日の早朝からろくに休まず働き続けていたのだから疲労も溜まらない筈が無かった。デスクに顔をつけて休んでいると、ワフラが部屋に入って来た。
『うむ、お疲れさん。三連勤で家に帰っておらんだろ?おめ達は三日間非番じゃ。』
『お疲れ様ワフラさん。怪我の方はいいの?』
『ワシは清蔵どんと違って殆ど怪我をしとらんしな。それにドワーフの80なんてまだまだ体力が有り余っちょるば。』
ワフラはヤヌスを確保した時に槍の矛先を握った部分以外、外傷はなく、更に1日ぐっすり眠る事が出来た為、言葉の通り疲れは抜けていた。身体が比較的頑丈なドワーフと言う点を差し引いても、その様は異常の部類である。
(署長も大概だったけど、この人はこの人で化け物だな……)
呆気にとられる彼らを尻目に、ワフラは署長の椅子にどっかと座り、なに食わぬ顔で仕事をしはじめた。
『ま、まぁワフラさんがそう言ってんだし、そうしよ?』
『ですね、では、我々も引き継ぎを済ませたら帰ります。』
『みんな、お疲れ!ワフラさん、後は宜しくお願いしますね。』
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うーん、身体がソワソワする。いくら傷病者で休みを言い渡されているとは言え、身体を動かして無いと落ち着かないんだよなぁ。でも寝てないと身体は回復しないし……
落ち着かないのでちょっと住み処の周囲を散歩する事にした。こっちの世界は季節的には冬、やや肌寒いけど、この澄んだ独特の空気はとても気持ちいい。長屋の通りを歩いていると、各々の家庭で夕げの煙が立っていた。俺が来た当初は聞こえなかった家族の賑やかな声がそこかしこで聞こえている。特に小さい子供達のはしゃぎ声が……平和になったなぁ。
それにしても、昨日までの緊張感が嘘のようにリラックスしてるよ。思えば普通の非番なんてこっち来てから初めてだったな。ん?あれはテイルちゃん?随分とお疲れのようだな?って何他人事な台詞言ってんだ馬鹿!てめぇのせいでもあんだろ!まず言う事あっだろ!
『テイルちゃん、ご苦労様。』
『せぞさん?もう、寝てないと駄目じゃない……』
『ごめん、何か身体を動かして無いと落ち着かなくてね、激しい運動は禁止されてるからその辺を軽く散歩してたんだ。』
俺の方はそこまでないよ、逆にろくに休んでないテイルちゃんの方が心配だった。この子も根を詰めて仕事してたからなぁ。
『そうだ!テイルちゃん、もし良かったらでいいんだけど、その……』
『ふぇ?』
うおぅ、疑問のジェスチャーたる猫口が可愛い!じゃなくて。ちゃんと言葉を伝えなさい。
『デート、したいなって……』
ああ、何言ってだこいつって感じになりそう。お疲れのお嬢さんをデートに誘うなんて、やっぱ俺頭にウジ沸いてるわ。
『いいよ♪』
良いんかい!
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体を動かせずウズウズと落ち着かなかった清蔵は、夜風を感じながら散歩をしていた。その時仕事帰りのテイルと遭遇。清蔵は何を血迷ったのか、仕事で疲れ切っているテイルをデートに誘うのだが、何とテイルは快諾してしまった。とりあえず長屋に戻って服を着替え、近くの食堂で飯を食べる事になった。清蔵は席につくと、飲み物を2つ頼んだ。テイルが酒に弱いのを知っている為、アルコールではないが、互いの働きを労うように、二人は乾杯した。
『ふう、落ち着いた。改めまして、テイルちゃんご苦労様。』
『お疲れ様、せぞさん。あの時は仕事付きだったけど、今度は何の縛りもないちゃんとしたデートが出来て嬉しいよ。』
『まあ今冷静になって考えてみると、お疲れの状態でデートに連れ回すって非常識だなぁと……はは。』
そう言いながら頭をかく清蔵に、テイルは微笑みながら腕を清蔵に絡ませる。
『もう、仕事とそうでない時の疲れは別なの、私はデートしたかったし、せぞさんもその……したかったんでしょ?』
大胆だったり、貞淑だったり、テイルの反応は素直だ。元々女の子は苦手だった清蔵は、今まで彼女などいた事が無く、普段の接し方が分からなかった。サカサキの時は仕事の名目があった為に割り切りがあったのも大きかったが。
(初めての彼女が、まさかこんな素晴らしい子になるとは……運命って分からんものだね。)
戸惑いはあるが、清蔵は今を確実に楽しんでいた。
『せぞさん、肩の傷はもう大丈夫なの?』
『ん?これ?全然大丈夫、あの医者のおっさん、適当に見えて名医だよ、何の支障もなく動かせるもん。』
そう言って腕をブンブン振り回してみせる。だが、あからさまに顔が青い。
『ああ、まだそんなに動かしちゃうと傷にさわるよ!』
『ははは、ごめんごめん。痛っ、うん、マジで自重するわ……』
そんな感じで楽しく小一時間楽しんだ後、テイルの提案で、四番地の宿に泊まる事になった。宿に入るなりそこの親父が
『ローションとはり型です、ご自由にどうぞ。』
とか言って出して来た……ここの親父も中々である。
『ああ、気遣いはありがたいが、大丈夫だから……』
とりあえず話はそこそこに、風呂に入り、二人で洗い合った。テイルの体はとてもしなやかで精神的にはまだまだ童貞の清蔵にとって、そうそう慣れるものでは無かった。
(何度見てもムスコの怒張が止まらない素晴らしいボディだ。と言うかオーガ全般に言えるのだけど、無駄毛が無いなぁ、最高。)
『せぞさん、やっぱりエッチ……』
『すんません、全部声に出てましたね……』
その後、二人は激しい夜……とまでは行かないものの、たっぷりと体を重ねながら、心の疲れを取った。
『…せぞさん、約束、聞いてくれる?』
『どしたの?』
情事が終わり、ベッドの上で顔を合わせながら、テイルがそう言った。先程までの嬌声とは違う、真剣な顔と声に、清蔵も表情を変えて聞く。
『このままお付き合いするなら……明日パパと会って欲しいの。』
『……いっ、いいですとも。一度会いたいと思ってたけど、まだ顔も合わせた事も無かったもんね……テイルちゃんのような優しい娘を育てた人だ、会うのが楽しみだね。』
そう言いつつ内心清蔵は汗だくだった。テイルの母であるハンニいわく、清蔵は夫に似ていると言う。清蔵はオーガの角に自分でも時々自覚がある位の強面を重ねて、このまま会うのどうしたものかと考えつつも、大切な一人娘の貞操を奪った自分が逃げるのは駄目だと、テイルの父と会う事を決意した。
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