本官、異世界で署長になりました!   作:劉鳳

27 / 58

秋口になると各地の獣騒動とか良く耳にするようになりますね、今回はそんな感じですw


第26話 異世界獣騒動

 

 

 

ナハト・トゥ町は町を外れれば新町側は草原が広がり、本町側は森林が広がる。新町本町の双方からサカサキ方面の反対側を真っ直ぐ2日馬車で行けば、海が広がる。自然豊かな場所と言えば聞こえはいい。しかし、自然豊かと言う事は、清蔵の元世界のようなイノシシ、猿、熊騒動のような自然の生物が人里に降りてくる事も珍しく無い。今日は本町の裏側に、虎が出没したと通報を受けて、清蔵は数名を引き連れてそちらへと向かう。本町に到着した清蔵は、駐在所の人間に話しかけ、状況を聞いた。

 

『どうもご苦労様、それで虎は何処に?』

 

『署長、どうやらここに子供の虎が迷いこんだそうで。』

 

『子虎ねぇ……何か嫌な予感がする。』

 

清蔵は虎捕獲等経験した事は無い。数回イノシシが街に出没したのを猟友会と協力してやった位である。異世界に来てもこのような騒動はあるんだなぁと感じつつ、迷い込んだ子供の虎を捜索していたら、丁度目の前に現れた。清蔵は目の前にいる子供の虎を目にしながら叫ぶ。

 

『何処が子供じゃ!』

 

 

おい聞いてたのと違うぞおい……でかくね?アムール虎の最大個体位あんだけど。ねぇ、あれマジで子供なの?

 

『シンビャッコってここらじゃ呼ばれてる白い虎の子供ですねぇ、まだ生まれて10年位でしょうか?成獣になるのに30年はかかるのでまだまだ子供ですねぇ、いやぁ可愛いですねぇ。』

 

おい、そこの眼鏡かけたゴブリンの兄さん。何ムツ〇ロウさんみたいな事いいながら笑ってるの?何か顔もそっくりなんだけど?頼むから本家みたいなじゃれ方しないでね怖いから。つーか子供?これで?あっあのムツ〇ロウさん、子供って言ってももう親離れしてるよね?

 

『いやぁまだまだ甘えん坊ですねぇ、母親は生後25年は子供と過ごしますからねぇ、母親もきっと近くに来てますねぇはい。』

 

なっ、何ぃ?!マママママジ?マジで?!ちょっ、てぇ事はだ……

 

ーグルルル……ヴゥルルル……

 

えらい響く低い喉を鳴らす声が耳に入りましたが……聞こえてくるその声がやけに高い位置から低い位置に流れるように聞こえてますはい。

 

『署長、後ろ後ろ……』

 

志〇的な言い方やめて、まっまさかですけど……いっせーの

 

『せっ!』

 

ーガルルルル!!

 

『………』

 

何あれ?アフリカ象より倍以上でけぇ虎が俺の後ろ5mまで来てるんですけど。あっ、あの、怒ってらっしゃいます?つーかあんだけデカイのに足音がしなかったよ!肉球恐るべし、そして俺は人生で最もインパクトの強い殺人毛玉(物理)と対峙しちゃってます。ヘルブ、ガチでヘルプ!つーか肩の高さがキリンの頭頂位とか何の冗談だよ!つーか応援の皆さん?俺一人置いて安全圏に避難すんの酷くねぇか?

 

ーウルルルル……

 

何?俺食料違うよ?そしてあんたのお子さんに何も悪い事してないよ?どうしたんです?

 

ーがぅ!

 

『痛えっ!』

 

ちょっ、子供の方が何か俺に寄っ掛かってきたんですが?!何処ぞの動物番組の相葉君みたいな構図になってますハイ。頭ペロペロされてます、重い、重いって。何かママさんの方も心なしか穏やかな表情してるんですけど、どういう事?

 

『これはですねぇ、母親が私達人間が危害を加えない事を理解したんですねぇ。シンビャッコは基本的に大型の草食獣以外は食料と認知しないので、こちらから手を出さなければ問題無いんですねぇ。じゃれて遊んでるだけなので暫くお待ち下さいですねぇ。』

 

暫くお待ち下さいねぇじゃねぇよ、持たねぇよ……子供の虎の時点でどんだけ重いと思ってんだ、こんなんじゃれて来たら俺持たねぇって!警察の皆さん、これ知ってたのかよ!

 

『いっ、いえ。その方の話で我々もへぇーと思った所であります。』

 

おい、ムツ〇ロウさん、いくらそう言う事を言っても長い時間じゃれられたらたまったもんじゃないよ、どうしたらいいの?ん?あれは……テイルちゃん?!ダメだ、近づいちゃだめだ!って手に持ってるの何?

 

『ホラホラ、こっちこっち♪』

 

巨大な猫じゃらしだ、子虎がそちらに興味を示したわば!押し潰された!母親もそちらに付いて行く、ムツ〇ロウさん、これって?

 

『いやぁ、警察の皆さんに伝えてたんですよねぇ、猫科の動物ですので、大きな猫じゃらしで町の外に出せばと、上手く行きましたねぇ!』

 

上手く行きましたねぇ!じゃねぇよ!俺は一体何しに来たの?……まっ、まぁでも生きてて良かったぁ。そう言やここの世界での大型生物で馬以外の哺乳類にあったの二度目だけど、一度目は元世界と大差無い可愛い猫だったからなぁ……異世界恐るべし。ドラゴンとかもいるって言ってたから、こっちの獣騒動はこんな感じだと思うと、ああ、胃が痛ぇ、子虎にじゃれられた所も痛ぇ。

 

『せぞさん、無事に外に出て行ったよ!肉球が可愛かったね!』

 

そっ、そうだね……テイルちゃん動物は怖がらないのね、いや、怖がる怖がらない以前にあそこまででけぇ捕食者俺の世界だと海にしかいねぇから!俺の彼女は頼もし過ぎでごぜぇますよ!

 

 

巨大虎が町に迷い込むと言う下手な暴力団鎮圧より遥かに恐ろしい案件は、何とか平穏に終わった。謎のゴブリンに関してはこの町に住む生物学の研究者だったと言う。テイルが即座に用意していた大型の猫じゃらしは、その研究者の私物だったらしく、冷静に対応した研究者とテイルの好判断で町の被害も特に無く、騒動は収束した。仕事を終えて署に戻り、書類仕事も一段落し、テイルと夕食を食べながら、今日の事を話した。

 

『いやぁ、テイルちゃんに助けられちゃったね……俺、危うく虎に殺されるんじゃないかと思ったよ。』

 

『あはは、せぞさんが困ってたから何か力になれるかなって思って……迷惑だったかな?』

 

『そんな事ないよ……その、すごい力になってるよ、毎日ありがとね。』

 

清蔵がどもりながらそう言うとテイルは照れくさいのか顔を赤くしながら視線を逸らす。肉体関係に至ってもまだこの二人はウブなようだ。

 

ーブイイイイ!!

 

『ちょっ、この鳴き声は……今度はイノシシ?!今日はよく動物出るなぁ、テイルちゃん、今度こそは大丈夫だから、行ってくるね!』

 

新たな獣が今度は署の直ぐ近くに出たのを感じた清蔵は、心の中で空気読め豚野郎と叫びながら、嘶きのした場所へと急行していった。

 

『あっ、せぞさーん!……行っちゃった。ふふっ、私こそ、毎日ありがと♪』

 

 

ーブイイイイ!!

 

『イノシシもでけぇぇ!!』

 

清蔵の目の前にいたイノシシは、クロサイ級の大きさのイノシシだった。朝方の騒動の虎に比べれば小さいが、清蔵の世界にはこれ程巨大なイノシシは存在していない為、どっちにしろ脅威である。しかもイノシシは一頭ではなく、十頭もいるのだ、その怖さは、想像を越えている。

 

『これ警察案件なの?明らかにモン〇ンとかドラ〇エに登場しそうなレベルの生物なんですけど!朝の虎と言いデカイノシシと言い規格外過ぎだよ!』

 

ーブイイイイ!!

 

イノシシ達は不快な鳴き声をあげながら、清蔵達取り囲んだ警察官達を今にも吹き飛ばさんと体勢を低くする。人間相手なら理屈は通じるが、動物に人間の常識など通じない。清蔵はイノシシ達から視線を離さないよう後退りながら、手に持った警杖を前に突き出した。勿論そんなもので目の前のイノシシが倒せるとは思っていない。四足獣の頭はとても頑丈で、かつ体は人間のそれとは比べものにならない皮下脂肪と筋肉の鎧に包まれているのだ。

 

『俺の世界のサイズのイノシシでも、頭ハンマーでぶっ叩かれてもケロッとしてたからなぁ。目の前のこいつらはさしずめ肉弾戦車だな……フラノ君、頼むわ。』

 

冷や汗を流しながら、清蔵は応援に呼んでいた狙撃班を後ろに待機させていた。清蔵の声が聞こえていたのか、フラノは5人の狙撃班と共にライフルをコッキングし、狙撃体勢に入った。イノシシ達が走りだそうとした次の瞬間、5挺のライフルから超音速の弾丸が放たれ、イノシシの眉間に当たった。分厚い頭蓋骨を持つ故に眉間を貫く事は出来なかったものの、イノシシはその衝撃に狼狽え、町の外へと逃げて行った。

 

『ふぅ、何とか追い払ったか。弾の先端を少し丸みを帯びさせといたから、殺さずに衝撃だけ与えた感じになったね。これで暫くは安心かな?……と言うかまたノーコンな奴がいたな、俺の股間スレスレを弾が通ったぞ!何?俺の股間に恨みでもあんの?!』

 

色々と騒がしかったものの、無事獣騒動は解決した。この世界は丁度秋口に入った所であり、収穫の時期に差し掛かると、町の外壁を抜けて山の獣が降りて来ると言う。イノシシの他には、清蔵の世界にいるヘラジカを数まわり大きくしたアルエルクと言う大鹿や、もはや動き回れるゴリラと形容した方がいいデラウタンと言う大猿も出没すると言う。それら大型の獲物を狙って先程のシンビャッコや、牛程の大きさのシルクウォルフと言う狼が寄ってくるのだ。狼はともかく、シンビャッコのガタイになったら、外壁はあってないようなものなので、この時期の収穫は出来るだけ早めに終わらせなければならないらしいと言う事を聞き、清蔵は暫く獣騒動が続くなと諦めるしかなかった。

 

 

『大変だったね、せぞさん。』

 

『うん……危うく俺の金ちゃんが死ぬ所だったよ。』

 

仕事が一段落し、清蔵は書類をまとめる為に署長室へと戻った。股間をしきりにさすっているのは、狙撃班の一発が股間スレスレ、正確には清蔵のズボンの継ぎ目辺りを掠めた為に破れているからだが、狙撃班にノーコンがいる憂鬱から、ライフルを出来るだけ使わない追い払い方を考えねばと頭を痛ませていた。そんな清蔵に、テイルは後ろから抱きついた。豊満な胸の感触に清蔵は顔を赤くしながらも、さっきまでの緊張が解け、幾分落ち着いた。

 

『お疲れ様、せぞさん。今日はいっぱい疲れたから、交代の時間になったら、一緒にお風呂入ってゆっくりしよ♪』

 

『いいい、いいですとも!』

 

今度はベッドの上で自分が獣になるのかと、中二でももっとマシな思考をするわと突っ込まれそうな事を考えながら、清蔵は残りの書類をまとめる事にした。

 

 

 





やたら書類を書いたりしてるなと友人がいいますが、警察の仕事は意外と知られていないですが、報告書等のまとめやらでデスクワークが多いです。他人の人生狂わせかねない案件を取り扱ったりしている訳なので、逐一報告は重要ですものね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。