本官、異世界で署長になりました!   作:劉鳳

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長編だからバトルを入れる?そんな決まりはねぇ!

盛大に何も始まらない、んな感じです。


第31話 リユニオン(言ってみたかっただけ)

 

 

特使がやってくる当日の早朝、コーリン以来の厳戒体制を敷いていた。割り当てる人員は30人程度、目に見えて武装している者は機動隊員15名で、他は狙撃班3名が町役場の屋上からライフルを構える形を取っている。この一年の間に、本町側も町役場を署並に整えたりと建物は立派なものに変えている。鉄筋コンクリートに近い工法で造られた4階建ての立派な建築物は、新町の警察署と並ぶランドマークとなっていた。

 

『清蔵さん、いよいよじゃな。』

 

町長アールが緊張の面持ちでそう言葉を出す。ナハト・トゥの町の重役達が役場の町長室に集合し、改めて特使に対する返答を精査していた。

 

『自治区への税徴収及び年貢の取り立ては、タイーラ連合憲章第150条2項の自治区に対する税徴収及び年貢取り立ては国の優遇措置を受けれぬ代わりに免除されると言う項目により違憲とし、受け入れられない。又、武力を以ての自治区への干渉はタイーラ連合憲章第151条により、禁止されており、我々は屈するつもりはないし、屈しなければならぬ理由がない。

 

これを我々の返答としよう。建設的に、そして非暴力的に。だが清蔵さん、そうは言っても相手は歴代最悪の暗君の特使じゃ、念には念を入れておこう……恐らく、わんの娘も伴ってはいるが、もしもの時は、遠慮はいらん……ノインも覚悟の上じゃからの。』

 

アールの表情は毅然としたまま、言葉も弱さを見せぬ毅然としたものだった。小さな町の町長とは言え、自治区の長を務める男のそれは、上に立つべき者の模範と言うべき振る舞いだった。

 

『了解しました。町長をはじめ、役場の皆さんに危害が及ばぬよう、こちらも気を配るよう善慮いたします。また、町長の横に私が付く事で、不測の際の身辺の安全を確保します。』

 

『済まんな清蔵さん、宜しく頼んだ。』

 

 

『みんな、体調は万全?』

 

『魔術師は全員体力バッチリよ、出来れば私達の出番が無い事を祈りたいとこね。』

 

『騎兵も全員異常無しです、魔術師の皆さん同様、出番が来なければそれに越した事はなかですな!』

 

『そうね……ノインさん、故郷に対して脅迫まがいの事、と言うか脅迫そのものなんだけど、それを行う辛さはあると思うけど、大丈夫?』

 

『既に都で働く事を決めた時、覚悟は決めています、遠慮は無用です。』

 

康江はナハト・トゥの建物、正確には町役場と警察署が遠方からでも分かる場所まで来ていた。ナハト・トゥに入る前に各々の状態を確認しながら、康江は将軍の礼服に着替えた。真っ白で勲章があしらわれた豪奢な軍服、下の方は女性将官用の膝下スカートと白塗りのブーツ、腰には細身のサーベルが帯剣している。頭はヴェールのかかった冠をしており、端からでは顔を覗けないようになっている。

 

魔術師、騎兵の人間は馬車から降り、各々の装備に身を包んだ。部下達は他の将官の部下達と違い、日々訓練に身をやつしたエリート達である、その動きは無駄がない。将官付の魔術師は一人で10の兵士に比肩するような実力者とされ、騎兵の方も強靭な戦闘力を誇る。康江はその部下達が本来皆優しい事を理解しているからこそ、敢えてかつての氷のロリータの口調に切り換えて進軍する。

 

『ではナハト・トゥへ、各員不測の事態を想定、進め!』

 

 

『来なすったぜ、奴さん。』

 

警察署の屋上から監視をしていたシシが、特使の一団を目に捉え、伝令に伝える。伝令班は手旗信号で町役場の屋上にいる本隊へとそれを伝え、警察の本格的行動を開始する。

 

『町長、いよいよですね。』

 

『ああ。出来れば穏便に事を済ませたい所だ。』

 

 

ナハト・トゥの外壁まで来た康江は、町役場と、反対側の新町にある警察署を見て、妙なデジャブを感じていた。

 

(何あの建物……凄く私の世界にありふれた鉄筋コンクリートのそれなんですけど!)

 

この世界の建物で、頑丈そうな建物はいくつもあるが、あからさまなコンクリート造りの建造物は初めて見た。しかも、都市部では無い、辺境の自治区にこれ程の建物がある事等、聞いた事も無かった。

 

『私が暮らしていた事と比べて、町の規模が大きくなっていますね……あんな大きな建物はありませんでした。もしかすると軍備等も強化している可能性があります。』

 

『そのようね……平和に解決したい所だけど、相手がそれを望まないなら、ノインさん、悪いけど容赦はしないわよ?』

 

『構いません。閣下にもしもの事があったら、私も魔法の手解きは受けています、助太刀致します。』

 

康江はその言葉を聞くと、視線を外に戻した。ナハト・トゥの入り口に来ると、守衛が目の前を塞ぐ。兵達が構えるが、康江は手で制し、馬車から降りて守衛に応える。

 

『我らはカン=ム帝国の特使である、話は聞いているな?我らは自治区の首長と話をする為、帝よりの勅令を賜っている。』

 

守衛はその高圧的な威厳ある言葉に気圧されながらも、表情に出さず、事務的に振る舞う。

 

『通行証と言うものはございませんが、武力を持っている一団に対しては、証明書を見せるよう仰せつかっております。』

 

康江はこの自治区のレベルの高さを匂わせる守衛の物言いに感心しながら、ノインを促し、帝よりの勅令を証明する印を掲示する。守衛はそれを確認すると、

 

『確認致しました。町役場はあちらに見える建物になります、どうぞ。』

 

と、これまた怯えもなく事務的に対応した。争うでもなく、確認をしたらそのまま通す様にノインが康江に耳打ちをする。

 

(以前はあんなじゃなかったです、明らかに通すのが早すぎます。)

 

(そっ、そうなの?罠かも知れないわね……みんな、気をつけて!)

 

 

(父さん、私が離れて10年もの歳月が経ちました。町の様子が様変わりしている事に大きな不安を感じています。つい去年までは町の治安に心を痛ませていたはずなのに、この町の平穏さ、そして町の綺麗さ、正直驚いています。

 

父さんは私が旅立つ時、何も心配するなとおっしゃいましたが、町の急激な変化を目の当たりにすると、逆に不安になっていきます。父さん、どうか妙な事はしないでください。閣下は自治区に対する要求を飲ませるような手荒な真似はしないですから、どうか冷静に……)

 

祈るような仕草をするノインを見て、康江は心中を察した。町の長である父親と、親子ではなく政務官と町長として対面する無情さ……康江は言葉をかけるのは得策ではないと判断し、ただ目の前の役場を目指した。

 

 

馬車が役場の前に止まる。町長と各役員、そして清蔵がそれらを並んで待つ。馬車から降りてくる特使の姿を清蔵は射殺す目で見据えた。

 

(豪奢な軍服に身を包んでやがる、御大層なこった。しかし体は小さいな。胸の膨らみからして女のようだ。そして横にいる女性、あの人が町長の娘さんか……何処か面影があるな。)

 

清蔵は二人を見つつ、周りの人間の動きも確認する。重武装の騎兵、軽装の魔術師、どちらも隙が無い動きをしている事を察知、更にそれらの目がこちらをしっかりと捉えているのも察知した。

 

(殺気を放っているのを見逃さないのは流石だな。幸いカマリタよりは強い感じではないが油断は出来ないか。)

 

清蔵はそう思いつつ、再び目の前の特使へと視線を戻した。

 

 

デッデジャブ……な、何あの町長の後ろにいる人、警察の格好してるんですけど。それに顔が清蔵兄ちゃんそっくりなんだけど、お前を殺すって表情、滅茶苦茶怖っ!あっ、あのぅ、こっちは穏便に事を済ませたいんですけど!止めてよね、本気でやったらこの小娘が勝てる訳無いだろ!

 

『ユナリン・ローズ・カン=ムエル皇帝陛下の特使である、話はノイン政務官からの手紙で書いてあった通りだ。』

 

ーブッ!

 

あっ、あれ?あの強面さん吹き出したんですけど!なっ、何もおかしな事言ってないよ私……

 

 

清蔵は特使の声を聞いて思わず吹いてしまった。

 

『失礼した……風邪をひいてしまってな、続けて下さい。』

 

周りのしかめた顔に赤面しながらも、どうしても吹いてしまうのだ。

 

(おいおい、声がひどく懐かしい感じがしてさっきまでの緊迫した雰囲気が吹っ飛んじまったよ。警察庁のホームページの動画で聞いた氷のロリータこと康江ちゃんそっくり、つーかそのまんまだよ。あのアニメ声を無理やりクールっぽく誤魔化した感じ、懐かしすぎてねぇ。シリアスなはずなのになんか肩すかし食らったような感じだよ。)

 

『……では改めて。勅令を賜っている、ついてはこれについての貴公の意見を聞きたいのだが……後ろの御仁は何故笑いを堪えている?無礼であるぞ。』

 

『ププッ、すんません、なんか知人に声が似ていましたので懐かしく感じまして……失礼つかまつった。』

 

(もう、何なのよあいつは!話を進めたいのに全然進められないじゃない!何よ、アニメ声で悪かったわね!ホームページの動画とか公開処刑だったわよ!)

 

『気を悪くしたなら謝ろう、この方は笑い上戸でな、悪い人間ではないのでそこは許して欲しい。お話については、立ち話ではなんなので、中に入ってからで宜しいかな?』

 

『う、うんむ、そうしよう。では案内を頼む。』

 

(渋い声と顔のおじ様が助け舟を……ノインさんのお父さん、格好いいなぁ、って、あの強面さんのゲラが鬱陶しいんですけど!)

 

 

がっ、がはははは!ヒーッ、ヒーッ、腹が、腹がいてえよ!周りの護衛怒りじゃなくて普通にどん引いてるけど、ダメだ、笑うなってのが無理無理!うんむって、康江ちゃん超そっくり!舌っ足らずなもんだから氷の女じゃなくて氷のロリータってあだ名されてんだよなオイ。ヴェールの下超覗きてぇ、超顔見てぇ!

 

『……清蔵さん、今はわんが上手くかわしたが、余り笑うのは得策じゃなか、それで機嫌をそこねて争いが起こったら、流石に擁護出来んば。』

 

……すんません、笑いおさまりました。渡〇也顔で怒られたもんで流石に押さえます、後で丁寧に始末書書きます。この清蔵、最大の不覚……

 

 

康江が役場内へと入った頃、木尾田はナハト・トゥ外壁の方まで来ていた。本町、新町にある建物を見ながら、どちらに行こうかと悩んだ末、木尾田は新町の方へと入った。警察署の前まで来ると、馬を降り、正門に構える巡査に話を聞く。

 

『すみません、こちらで児玉清蔵と言う人がいますよね?今ここにいますか?私は彼の友人の木尾田と申します。エウロのサカサキに住んでます。』

 

『署長ですか?すみません、今国の特使の方と会議がありまして、そちらに出席しています。』

 

(遅かったか……いや、まだ間に合う!)

 

『ありがとうございました、何処かで宿を取っていますので、またそちらの都合が合ったら会う事になるでしょう、失礼しました。』

 

木尾田は警察署の反対側にある役場であろう建物へと走っていった。

 

 

皇帝の勅令をノインが康江の代わりに読み、その内容を伝える。町長をはじめ、全員がその内容に怒りを持ちながら、今度は町長が返答文を読み上げる。連合国憲章に則り、勅令の無効と違憲性を訴えたそれを、康江は静かに聞いていた。

 

(ですよねぇ、スッゴい大人の対応、タイーラ連合全体を敵に回すような事はしたくないはずだよ。つーかババァ憲章とかあるの知らなかったの?)

 

『……と言う事で、ナハト・トゥは陛下の勅令を呑む事は出来ぬ。それに武力による強制では何も生まぬ、生むのは国民の死骸と荒廃のみじゃ。』

 

『町長、陛下は勅令に関して、強制は敷いておりません、ですが、この事はしっかりとお耳に入れられるでしょうから、何らかの返答はあると思われます、それでもよいのですか?』

 

『ナイト政務官、私は自治区の出来た経緯と現状を知っている、故に陛下の命であれ呑めぬ、こう申しておるのじゃ。』

 

アールは落ち着いた口調でそう返す。元々通る方がおかしい勅令、呑むと言う回答が返る道理は無いのだ。それは目の前にいるノインが一番詳しいはずである。

 

(ノインさん良かったね、向こうは凄く大人の対応してるし、あれだったら真剣になる必要もないって。)

 

『……わかりました。閣下、如何致します?』

 

『うんむ、町長の言う事が本来の正論であろう。立場上苦しい中広大な自治区を取りまとめている貴公だ、その意見、確かに受け取った。』

 

(あーもうとっとと終わらせてノインさんとお父さんの家族水入らずの時間を作ってやりたい!)

 

『……将軍、それは武を以て分からせると言う意味では?』

 

(えー……何でそうなるの?かたっくるしいと言うかババァのせいで全然信用されて無いのね……)

 

『逆だ、我々は自治区に手を出す真似はしない。首都周辺の情勢も悪化している中、自治区にまで干渉するとなれば陛下の求心力は地に落ちてしまう。』

 

(もう底無しに急降下してますが……)

 

『民を蔑ろにしてまで自分の事しか考えぬ者が良く綺麗事を……』

 

(……ほんとババァいい加減にしてよ、何もしないって言葉も全く信用されて無いんですけど!)

 

『綺麗事等ではない、事実だ。』

 

 

えー、会議は何か腹の探りあいってやつ?話としては特使側も干渉しない、あくまでパフォーマンスですって話だけど、糞女帝の肝いりの将軍の言葉だけに、町長全く信用しておりません。ヴェールから覗く瞳を見るに、かなり童顔ではないかと推測、意外と擦れてないようにも見えるし印象的には悪い人間に見え無いんだけど、生憎リトマス試験紙のワフラは現在ここにおりません、はい。話がヒートアップしそうなせいで、向こうの兵士達は殺気立ってるし、こっちも機動隊の面々が今にも飛びかかろうとしてるしで、ヤバいな……サプライズが欲しい、マジボスケテ、いや、助けて!

 

『今まで特使が将軍であった時にろくな目にあっておらん、貴女の言葉を信じれぬのも仕方無かろう!』

 

『だから何度も言う、こちらが嘘を言う利はあるのか!』

 

『あるとも、過去最悪の治世である現皇帝のやり方、それのご機嫌取りさえすれば我々等どうでもいいのだろう!』

 

へっ、平行線だ……つーか女帝今までどんだけ余計な事しやがったんだ!ガチでムカついて来たぞ!こうなりゃ俺が前に出て……

 

『そこまでにするんだ!やっちゃん……君の為にならない!』

 

『え?』

 

ーえ?

 

 

木尾田は本町の役場前に、馬車が止まっているのを確認した。守衛に止められたが、彼は叫ぶだけ叫んだ。

 

『止めないでくれ!あの会議から乱が発生するのを止めに来た!』

 

木尾田は強引に馬を走らせ、役場に止まる。馬から飛び降りると、木尾田は役場に待機している署員達に阻まれる。

 

『僕を止めるな!この先にやっちゃんと清蔵がいるんだろ?!争ってはならない!』

 

名前を出した木尾田に署員達は固まり、止める手を緩めた。木尾田は会議をやっていると思われる場所を目指し、走りに走った。そして、ヒートアップしていた会議の場へと姿をあらわしたのだ。

 

『嘘……雅人、なんで?』

 

目の前にいる人物は、かつて自分を愛してくれた男だった。十数年の年月が経っており、歳かさが行っているものの、その姿を見間違うはずがなかった。

 

『木尾田……お前……』

 

清蔵もその姿に驚きを隠せない。彼はサカサキに住んで平和に暮らしているはずなのだ、それが何故目の前に現れたのか、理解が追い付かなかった。

 

『やあ、清蔵……話せば長くなるけど……二人がここに来ている事を知って、いてもたってもいられなくなってね……』

 

『っていうか将軍って康江ちゃんだったの?!通りで声が似てると思ったよ!』

 

『清蔵兄ちゃんこそ、こんな所で何してんのよ!』

 

『清蔵さん、ちょっと説明をば……』

 

会議の場の殺気は無くなり、皆が皆、冷え切ってしまった。

 

 




漸く木尾田君、康江ちゃんと再開出来ましたね、将軍の名は伝えて無かったので清蔵さん最後になるまで気付かなかったパターンです。
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