本官、異世界で署長になりました!   作:劉鳳

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第32話 再会は突然に

 

 

本官、開いた口が塞がりません。凄いタイミングで木尾田がやってきたもんだから、固まっております。十数年ぶりの再会のはずですが、タイミングがタイミングなだけに、感動的ではありません。更に、まさか特使が康江ちゃん?いや、声の時点で気付くべきだったけど、よく似た人間って何処の世界でもいるから(震え声)

 

『詳しく話を聞きましょう、兵士の皆さん、機動隊の皆さん、ここは一旦席を空けて頂いて良いか?』

 

町長がそう言うと、みんながみんな会議室から出て行った。木尾田は町長に頭を下げると、席へ座った。

 

『隠すつもりは無かったけど、僕は今、奴隷解放戦線と言うレジスタンス組織を結成して、各地の奴隷階級の人間の手助けをしている。山田は事情を知っているけど、どうやら清蔵には伝えなかったみたいだね……』

 

『雅人……どうしてここに死んだはずの貴方がいるのよ……』

 

木尾田は経緯を説明した。幸か不幸か異世界に飛ばされ、この世界で結婚し、子供がいる事、山田も飛ばされ、最初は喜んでいたもの、その後の康江と清蔵の現状を聞いて、負い目から平穏を捨てて現在の状況にある事……康江はショックで何も話せない。

 

『馬鹿野郎……負い目なんて感じなくたって良かったんだよ、お前が何か悪い事した訳じゃねぇんだから。』

 

『僕の死が、どれだけ二人の、いや、山田の人生すら左右したか……それを知らずにのうのうと家庭を持って幸せに暮らす事が、堪えられなかった。特にやっちゃんが警察になったと聞いた時、僕は残された人間の苦しみを感じざるを得なかった。やっちゃん、本当は美容師を目指してたんだろ?』

 

『うん……』

 

以前の康江は美容師の道を目指していた。彼女の心を変えたのは、木尾田の死……霊安室で眠る彼の横で泣き叫んだ彼女は、その日以来心を殺し、警察官を目指した。苦学を続け、大学卒業後にキャリアとなり、僅か数年のうちに名を知られる程の敏腕刑事となっていた。

 

『こっちに飛ばされたのは、仕事中、ちょうど猟銃乱射事件の犯人を追っていた最中に……エルフランドの謁見の間に飛ばされたの。皇帝は何故か私を気に入って、気が付いたら無理くり将軍にされちゃった……』

 

彼女の真意を知った清蔵は、怖い思いをさせてしまった事を後悔した。怒りの余り、上に立つ者が悪ければ、周りも悪いものだと狭い視野になっていたのではと……清蔵は大いに反省するのだった。

 

『康江ちゃん、ごめんね、エルフランドの現状とか聞いてたから、殺すつもりで睨みつけて……ほんと、こんなぽんこつで何が警察署署長だよ……』

 

清蔵は危うく、同じ世界の人間を不幸にする所だった事を知り、自然と涙が溢れていた。木尾田はそんな清蔵を見て、微笑みながら優しく言葉を発した。

 

『ふふっ、清蔵は変わらないな……僕が最後に見た時の清蔵、そのままだもの。』

 

木尾田にとっての清蔵は、心が壊れる以前の、やる気に満ちた、涙もろく優しい男のままだった。清蔵は首を横に振りながら、

 

『そんな事ねぇよ……俺をこうして元に戻してくれたのは、他でもねぇ、ナハト・トゥの人達だよ。だから、皇帝のやり方に腹が立ったのさ……彼女を……テイルちゃんを泣かすような人間を許せ無くてよ……』

 

それを聞いた康江も、涙を押さえられずにいた。

 

『謝るのは私だよ、清蔵兄ちゃん。私がお飾りだったから、どんなに気持ちを伝えても、聞き入れて貰えなかった……みんなが殺し合いをしちゃうような状況を止められなかった……ごめんなさい。』

 

清蔵と康江は、涙を流すだけ流した。今まで無理矢理押さえて来た感情全てを吐き出すかのように。

 

 

『皆さん、何だかスッキリしたようですな。』

 

そう優しく微笑むアール、殺伐としていた会議をしていたのが嘘のように穏やかになっている。外では、エルフランドの兵士と機動隊の面々が和やかに談笑していた。

清蔵はそれに驚いていた。

 

『町長、何があったんですか?』

 

『ノインとテイルが直ぐに打ち解けて話し合いがスムーズに行っての、互いの誤解が解けたんじゃ。』

 

『流石天女……』

 

会議室から出て行った兵士達と一触即発の雰囲気になっている中、警察側からテイルが顔を出し、ノインと話し合いをしたのだ。テイルの悪意を感じない人懐っこさに、兵士達は警戒心を緩め、気が付けば争うような雰囲気は消えて行ったのだ。

 

『せぞさん、大丈夫だった?』

 

『うん、おかげさまで。』

 

『清蔵、この人は?』

 

『紹介するよ、俺の彼女、テイルちゃんだ。』

 

『嘘……凄い美人……あのモテない清蔵兄ちゃんが……』

 

『やっちゃん、酷いよ……』

 

 

朝のピリピリムードは何だったんだって位、現在穏やかな雰囲気が流れております、清蔵です。異世界にて元カップルだった二人がちょっといい雰囲気になってますが、互いにもう結ばれる事は無いのだと何処かさばさばした感じです。まあ木尾田は一度死んだ身であり、こっちの世界では妻子持ち、康江ちゃんもこちらの世界で竹〇力に似ているという将軍さんと付き合っているらしい……色々複雑やなぁ。

 

その点俺や山田は後腐れないよぉ?向こうで彼女いなかったし(亜由美さんが俺の事好きだったの知ったのこっちに来てからだしノーカンです!)、こっちでお互い可愛い彼女と幸せにやってますだからね……今はまあ二人の時間を作ってあげますか。さて、こっちは町長と娘さんが互いの立場を忘れて親子の時間を過ごしています。しかし娘さんデ〇べっぴんだけど会議の時の雰囲気の目が怖かったのでわてくし、ちょっとあの手の感じの女性は苦手だなぁ……

 

それにしても木尾田は奴隷解放戦線の総帥か……負い目なんて感じずに幸せを享受してれば良かったのに。奥さんに寂しい思いさせたんだ、サカサキに一旦帰りなさい。娘さん、物心ついた頃には父親を知らなかったんだろ?ちゃんと会いなさい、そして向き合いなさい。

 

『清蔵兄ちゃん、あのね、私サカサキに行くんだけど……』

 

ああん、なんで?木尾田が行くのならともかく、康江ちゃんは縁もゆかりも無いでしょ?

 

『実は交渉の出来不出来関係無しにサカサキの近くだから皇帝に彼処のお土産買ってくるって言ったから、それで……』

 

なるほど、分からん。康江ちゃん、結構皇帝を上手くかわしているのかな、気に入られるとか将軍になるとか何気に凄いな〇う主人公かよって展開だし。こっちはコツコツ町の開拓とかしてるってのに、これも個々の能力の差かな……ともあれ、俺もサカサキに行く!署長の仕事しろやとか言わないの……少なくともバ〇ーボーイズよりは本分果たしてると自覚してるよ!サカサキに行くのは山田と康江ちゃんを会わす為、そして異世界での同郷者の集合を果たしたいのよ。ああ、またワフラとキスケに負担かけちゃうなぁと思ったら、二人は即、行って来い、そん位の権利はあると言ってくれた……二人には何かお礼しないとな。と言うかテイルちゃん?貴女何際どいワンピース姿をしているのですか?

 

『私も行くよ……あの二人がしっかりせぞさんのお尻を叩いて来なさいって……』

 

俺はじゃじゃ馬ですか?……そりゃ彼女がそばにいてくれるのは最高ですとも、でも仕事はどうすんのよ?……すんません、ブーメランでしたね、〇舫並に。

 

 

木尾田の協力により、最悪の事態は回避され、清蔵は康江が皇帝への土産を買う為にサカサキへと行くと聞き、同行する事になった。仰仰しい特使用の馬車では目立つ為、町長が所有する馬車を2台借り受け、サカサキへと行く。白バイと比べれば速度に劣るものの、歩いて二日もあれば到着する距離であるので、サカサキへは半日もかからず到着出来る。馬車の中で、清蔵はテイルと手を繋いで並んでいた。康江達は空白の十数年もある為か、二人の間にややスペースが空いている。

 

『こうしてみんなが揃うの、いつ以来かな?確か、若葉マークも取れて独身寮から出て直ぐの非番だったかな?俺と木尾田は非番が被ってて、山田も半日非番が被ってたんだったな。』

 

『採用から21月だったね。初補(初任補修科:警察学校卒業後に各部署に卒配され、高卒で8か月から10か月配属先で勤務後に、再び警察学校で3か月研修がある。)が終わって直ぐの非番だったから覚えてるよ。

 

やっちゃんとは独身寮出るまでメールのやり取りとかしか出来なかったから、凄く嬉しかったな。』

 

新米警官として羽ばたきだした頃、四人で海に行った。康江は当時まだ高校生だったので、夜に連れ回す訳には行かなかったので、明るいうちに行ける所を聞いたら、海に行きたいと康江がはしゃぎ、四人は海で海水浴をしつつ、BBQを楽しんだのだった。

 

『やっちゃんが僕の方ばかり気にかけてたから、色々準備してた清蔵達が振り回されたんだっけ?』

 

『そうですとも、結構デカイ浮輪を自慢の肺活量で膨らましたのに、康江ちゃんはお前とイチャイチャする事しか考えて無かったので落ち込みましたとも。』

 

『あの時は、ごっ、ごめんなさい!私も久しぶりに雅人と一緒に過ごせると思って舞い上がっちゃって……』

 

『BBQの火を起こしてた山田の目が怖かったのを覚えてるよ……』

 

『俺と山田がお前ら二人がずっとイチャイチャしてるのを横で見ながら、リア充〇ねとか言ってたよ!その半年後にガチで死んだから俺と山田は人目を憚らずに泣いたんだけどな。でもあの時、あんたらがはしゃいでた気持ちが、今じゃ分かるよ。』

 

そう言うと、テイルの手を取って、顔を見ながら微笑んだ。清蔵とテイルはウブなので嘗ての元バカッ、もとい元カップルである目の前の二人のように人前で接吻等出来ないが、こうして互いの顔を見て幸せを感じるようにしているのだ。

 

『何か二人共ういういしくて可愛い!私なんか10歳で処女捧げてから雅人と所構わずキスしたりセッ〇スしたり『はいストップ!惚気と言う名のプレイ自慢はやめなさい、俺もテイルちゃんも爛れた話は聞きたくないの!つーか木尾田ぁ、当時のお前ネジぶっ飛んでたろ!ロリコン拗らせよって!』

 

『ロッロリコンって……失礼だな、もう!』

 

『ふふっ、でも本当にみんな仲がいいんだね、いいなぁ♪』

 

((この子は癒しだなぁ……可愛い))

 

三人の話す雰囲気にニコニコと笑いながらテイルが言う。清蔵がこうして素の状態で他愛のない話をするのはテイルをはじめ親しい人間の前でしか見せない。署長と言う立場故にしめなければならないと言うプレッシャーを感じていた清蔵がこうして力を抜いているのも、古くからの知り合い故に着飾る必要もないのだと。

 

『まだまだせぞさんの知らない所がいっぱいあるけど、その……よろしくね。』

 

『い、いいですとも!』

 

ぎこちない二人の会話は、周りの雰囲気を柔らかくするのか、木尾田も康江も、外で警護している者まで思わず微笑む程だった。

 

 

サカサキに到着した一行、姿はごくありふれた冒険者や旅行客の格好故、視線が集まる事は無い。

 

『みんな、3日後にここに集合ね。ババァへの土産以外は、みんな家族や友人になんか買って行ってね。それじゃ、楽しんでってね!』

 

『はい!じゃあやっさん、行ってきます!』

 

騎兵の年長の男がそう言うと、彼らは何の違和感もなく街へと溶け込んで行った。馬車は、例の所に預けている。

 

『ティヒッ☆お久しぶりです、お兄さん。』

 

『やあ、サリーちゃんだったかな?山田は元気?』

 

清蔵の何気ない言葉に、サリーは複雑な表情を浮かべた。

 

『ダーリンはね、元気だよ。ただ、最近は辛い事があって、表情は暗いの……』

 

元気の塊な目の前のサリーが顔を曇らせているのを見た清蔵は、山田の身に何か深刻な事が起きている事を察した。

 

『山田はサカサキにいるのか?』

 

『うん、あの人は保安所にいるよ、この前仕事から帰ってきてからずっと変だから……昔からのお友達であるお兄さんなら、あの人の事、頼めるから……よろしくお願いします。』

 

 

山田…一体何があったんだ?俺は単身山田の所へと向かった。木尾田と康江ちゃんは木尾田の妻と子供の所へ、テイルちゃんはサリーちゃんのそばにいると行った為に俺一人だ。保安所の前に来ると、以前俺達を案内してくれた兄さんが出迎えてくれた。

 

『あっ、あの時の!お久しぶりです。山田隊長の所へ行くんでしょ?案内します。』

 

察しがいいな、もしやニュータイプか?って顔に出てたからバレバレか……まあ話が早くて助かる。俺は保安所の中へと入った、相変わらず規模が大きいから人の出入りが激しい。心なしか、前来たときに比べて皆顔が険しくなっている、山田の事と関係があるのか?

 

『隊長、児玉さんがやって来ましたよ。』

 

『清蔵が?分かった、通せ。』

 

山田の口調がより威圧感あるものになっている事に不安を覚えたが、とにかく今は顔を見たかった。

 

『久しぶり、木尾田も康江ちゃんもサカサキに来てるぜ。それより、奥さんの表情が暗かったけど、どうしたんだ?』

 

『実はな……』

 

 

 




敢えてしり切れにしたのは、一応まだまだ続きがあるのと、後の話がちょっと重くて、筆が止まってるのもあります。
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