本官、異世界で署長になりました!   作:劉鳳

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第33話 異世界の来訪者‐比較的幸運な者‐

 

『山田、それは本当か?』

 

清蔵は山田の口から聞いた事が信じられず、もう一度聞き返した。当然ながら山田が冗談を言う男ではない事を清蔵が理解していない訳が無かったのだが、事の重大さに理解が追い付かない、否、今まで起こり得たであろう現実を受け止められなかった。

 

『手足を斬られた俺達の世界の女性を保護した。他の女性も同様になっていた為、とある侯爵の元に送った。その女性は……ここにいる。ついて来い、正直言って俺自身もあれを見て正気でいられずにいるんだ。』

 

山田の、今にも発狂しかねない表情に困惑しながらも、清蔵はそれを確かめる為に、山田の後をついて行った。山田に促され、サカサキの保安所の地下に清蔵は来て、思わず口を覆った……そこには、手足を失った女性が死んだ目をしたままベッドに横たえられていた。秘部を布で隠しただけの姿……斬られた手足の切断部は傷口を消毒され、包帯が巻かれているが、痛々しさは嫌と言う程伝わっている。

 

『ここに来る前は京都の化粧品会社に勤めていたと言う、一条志麻(いちじょうしま)さんだ。気が付いたらこの世界に来て、野盗に捕まり、強姦され、手足をもがれて肉奴隷市場に売られそうになっていた所を、俺が保護した。』

 

清蔵は聞いていて怒りが沸いていた。人間をそこまで扱う、しかも、何も罪を犯していないものをそのような目に合わせる者の諸行、理解など出来る訳が無い。清蔵は極端な考え方が嫌いである。誰々にひどい目にあったから、世界を滅ぼす等と言いだし大量殺人を犯す人間に共感するだろうか?親に虐待され、心が歪んだから、他人を壊し、犯してもいいと抜かす人間に共感するだろうか?その人間の置かれた環境に同情はしても、凄惨な行いそのものに共感はしない。だから清蔵はメキシコの麻薬カルテルの制裁と称した行為には嫌悪感しか沸かないし、中国の武装警察による取り締まりと称した民族浄化には激昂する程に怒っていた。そんな人間だからこそ、目の前で何も出来ず、死んだ目を浮かべている女性の姿に、清蔵は言い知れない感情にとらわれた。

 

『山田、彼女の心理状態は?』

 

『極度の人間不信、いや、恐怖症に陥っている。あれだけの事をされたのだ、そうならない方がおかしい。所の連中は面倒を見切れないらしく、俺がこうして介護しているのだが……』

 

『ならばなおさらサリーちゃんと相談するべきだよ……なんで隠す必要があるんだ。』

 

そう言う清蔵に、厳しい顔のまま、山田は言葉を紡ぐ。

 

『もし……もしも、お前の両親が同じ状態にされても、お前は彼女にそれを伝え、見せられるのか?トラウマを植え付ける事になるやもしれんのだぞ?』

 

『俺の発言が軽々しいとは自覚しているさ、偽善者のそれだと言われても否定はしないしな……ただ、お前はそれ以上に忘れている事がある。サリーちゃんの……奥さんの表情を見たか?元気の塊と言っても過言ではない彼女は、お前の苦しむ姿に顔を曇らせているんだ。何を知ったふうな事をとも思うさ。それでも俺は……すまん、これ以上は頭が馬鹿なんで出て来ないぜ……』

 

清蔵が言わんとしている事を、山田は理解していた。仕事柄暗い話題になりがちな夫婦の会話ではあるが、サリーはそんな山田を慰め、山田も彼女には正直に甘える。そんな二人だからこそ、辛い事も乗り越えられると清蔵は信じているのだった。

 

『すまんな清蔵、昔から深刻な事があると一人で抱え込む性格だったからな、反省するよ。しかし、一条さん自身の心はどうなるか……』

 

改めて、彼女の状態を見る。四肢をもがれると言う非人道極まりない行為をやられた彼女に対し、深い哀しみの表情を浮かべると同時に、この世界に巣食う悪への怒りも沸き上がった。

 

 

ひでぇ事しやがる。なんの恨みがあってこんな事をするのか分からないが、これだけははっきり言える、何もやっていない人間を辱しめる者は、聖人であれ神であれ、お偉いさんであれ、クズだと。もし仮に、テイルちゃんが同じ事されたら、俺は……一条さんの体と表情を見たら、誰だって怒りにうち震えるだろう。俺は、少しでも彼女に救いが無いか聞いてみる。

 

『山田、彼女の手足、どうにかならないのか?』

 

『魔法を使う者がいるこの世界でも、手足を回復する程の魔法は人体錬成と同義、つまりは禁術クラスだ。正直な所、禁術をまともに扱える人間は現時点でも世界に存在しない。』

 

だよな……この世界、魔法って言ってもありがちなお手軽に魔法打てるよって世界じゃない。魔法使い、攻撃専門の人間で、上位の者ですら、剣を持った兵士七人分の戦力が良いところ、しかも、精神の集中が必要だから、力を溜めている間は無防備、素手の兵士でも楽々鎮圧出来てしまう。それ考えるとあのバーテンって強かったんだな……身分と強さは比例しないってのはこの世界の良いところかな?しかし参った……魔法使いですら治せないとなるとどうするか……いや、待てよ?

 

『山田、凄い器用な職人系の知り合いがいる?ドワーフの職人さんとかさ。義手はきついかもだけど、義足位は作れるんじゃない?』

 

『!そうか……すまん、すっかり忘れていた!』

 

あのさぁ……

 

 

魔法・鉄器大戦が25年以上続いた理由、それは手先の器用な武器職人らが鉄器兵側に多数いたからに他ならない。特にドワーフは、魔法の類いが苦手な代わりに、手先の器用な種族である。この世界では知能と魔法を行使する力は直結していないので住み分けが出来ている為、ドワーフはそれ故に名工と呼ばれる者が多いのだ。サカサキに、その名工の一人、コウロ・ハンドァと言う老齢の鉄鍛治がいた。彼は武器ではなく、戦争で体を欠損した人間の義肢を制作しているのだ。治安の良いサカサキの街では、彼の出番は少ないように見えるが、生まれつき四肢が無い人間の為にそれを制作したりする機会があり、彼の功績は計り知れない。山田は、保安隊の職務上、そう言った所との繋がりはあった筈だが、治安維持に拘る余り失念していたのだ。

 

『まあそう言うとこ抜けてるのは山田らしいな……しかし元の腕や足のように動かせる義肢ってすげぇな、俺らの世界でもまだ完全に確立されてない技術じゃん。やっぱ技術のベクトルが違う方で進んでんだなぁ。』

 

そう言いつつ、清蔵は山田が抱き抱えている一条志麻の顔を覗いていた。死んだような目をしているのは相変わらずだったが、幾分生気は戻っているようにも見える。失った四肢を隠して、おぶる形で歩いているのでそんなに目立たないからか、注目される事は無い。

 

『あの……』

 

『大丈夫、今は何も考え無くていいさ……大丈夫、だから……』

 

口ベタなりに山田が励ましているのを感じた志麻は、そのまま山田の背中に身を預けた。清蔵はその様子を見ながら言葉をかける。

 

『山田、この世界に来て色々と考えさせられたよ。俺はこの世界の良心に巡りあえてさ、馬鹿なりに楽しく過ごせるだけで幸せだった。でも、俺はこうして現実を見てしまった。木尾田(あいつ)がやるせない気持ちになったのも、今なら解るんだ。』

 

清蔵はこの世界の闇を垣間見、自分がまだまだ何も知らない事を改めて実感した。他の転移転生者の事、この世界にある国の風習や宗教、そして、明確な悪意の根源……勉強不足は仕方ないのだが、清蔵はより警察官としての仕事に熱意を増すのだった。

 

 

番外編・異世界の来訪者-奈落に落ちた人々-

 

 

異世界転移、転生の原因はこの十数年余り、悪帝ユナリン・ローズ・カン=ムエルが召喚の儀式に傾倒した結果の副産物であった。儀式によって生贄にされた者の数、それは千人にも及ぶ。召喚の儀式の効力は即効で現れるものから、時間差をおいて現れるものもあり、康江が召喚されたのを最後に儀式を行っていないにも関わらず、転移、転生者は未だに出続けている。日本人ばかりが召喚される理由は、召喚する側の言語に近しい者をと言う希望が反映されているからだが、何れにせよ、ユナリンによって少なくとも現時点で30人もの失踪者、つまり転移者を出している事実だった。召喚に使われた生贄のうち、生きたまま捧げられた者は100名、召喚の儀式の余波が未だ来ると言う事実は後70名はこの世界に生きたまま引きずりこまれると言う事……

 

清蔵達のように幸運にして現地の人間と友好関係を結べた者は稀である。極めて高い確率で残りの転移転生者は不幸に見舞われているのだ。転生転移者の引き込まれた地点は数ヶ所に及ぶが、共通点はどの地点も龍脈の湧気点である事だった。当然それを知る者はおらず、召喚を行ったユナリン本人ですら知らない真実である。

 

 

北海道に住む会社員の男性横山忠は、家族と楽しく夕食をとっている最中に引き込まれた。電気に彩られた元世界と、電気の無い闇夜に覆われた異世界との違いに彼は動揺し、助けを呼ぶため割れんばかりに叫んだ、しかし、それはこの世界の闇夜では得策では無かったのだ。彼の目の前に現れたのは、野盗の数人組、下卑た笑いと共にその集団は横山の身ぐるみを剥いだ。助けを求める声をあげ続けていたが、その声はやがて悲鳴に変わる。身ぐるみを剥いだ後の野盗達は、彼を生きたままバラバラにすると言う常軌を逸した行動に出る。痛みに絶叫をあげるが、やがて喉笛を掻き切られた上に、首を断たれた。死の間際、彼が思った事、それは、家でほんの一時間前まで楽しい夕げを囲んでいた家族の姿……彼が死んでから1週間余り、その亡骸は木尾田によって発見された。

 

関東のとある中学校に通う川上奈緒は、反抗期で、父親と激しい口喧嘩の末、家出をしていた。寝泊まりは友人の家かネットカフェを利用していたが、その今宵の宿を探そうかと言う時に、異世界へと引き込まれた。引き込まれた当初は家出している事もあり、特に感慨もなく異世界転移なんてものが本当にあるのだと、冷めた感情で受け入れたが、彼女が降りたった場所が悪すぎた、よりにもよってエルフランドの貧民窟に降りたってしまったのだ。初めは未知との遭遇にワクワクしていたが、直ぐにその思いは悲鳴へと変わった。数人の男に囲まれたかと思うと衣服を破られ、顔を殴られ地べたに這いつくばらされ、男達に輪姦されていった。なすすべなく汚された彼女を、悲劇が更に襲う。数日間も犯された後、彼女の体は違法娼館に売られ、絶望の中、今も何処かの違法娼館でその体を犯され続けている。

 

九州で運送業を行っている貴田吉広は、仕事が出来るが素行が悪く、いつも威張り散らしているような男だった。その日も気の弱い後輩を恫喝するような口調で叱責し、作業の陣頭指揮を取っていた中、異世界へと引き込まれた。異世界に来て慌てはしたものの、持ち前のごますりで野盗の親玉に気に入られた彼は、娼館に売り付ける女を拐う仕事に就いた。元々、人格に問題があった彼が悪行に違和感無く順応するのは早く、この世界に来て2ヶ月余りの間に、30人もの女を拐って行った。しかしそんな悪行三昧の日々が長く続く道理は無く、サカサキの街道沿いにおいて、山田率いる保安隊によって素っ首を飛ばされて呆気ない最期を遂げた。

 

このように転移者は、善人悪人に関わらず、災難が待ち構えているのだ。上手く取り入ったと思えば、暗転……平和な日本との違いをまざまざと見せつけられるのだ。転移者達の末路は悲惨だったが、元世界での死を経験した転生者達の方はもっと悲惨な末路を辿った者達がいる。

 

東北のある都市でごく普通の家庭に育った7歳の少女、浪川真綾は、学校の通学中、酒を飲んで運転していた若い男の乗る車に跳ねられ、その幼い命を失った。彼女は気が付くと、ナハト・トゥ外れの森林に降り立っていたが、理解が追い付く前に、この周辺に生息する銀狼に喰われ、2度目の死を迎えた。屈強で巨大な生物の前では、彼女はただの餌に過ぎなかった。

 

東海の内陸部の町に住む、学校にも行かず引きこもりをしていた長谷源三は、生きる気力もなく、家の前の木の枝にロープを括りつけて、自殺した。死んだら異世界に転生出来ると考えた彼の淡い思いは、最悪の形となって叶う事になった。転生した先は、アンブロス帝国の政治犯収容所、一度入れば拷問の末一月で処刑される場所だった。彼は異世界から来た事を訴えるが、収容所の人間は荒唐無稽とも取れる彼の言い分を聞く訳も無く、死にたくても死ねない地獄の拷問を一月受けた後、四肢裂き刑を食らった後、アンブロスの広場で串刺しされながら焼かれた。

 

待っているのは死か凌辱、運良くそれらから逃れたとしても、降り立った地域によっては定住もままならずに世捨人になると言う末路を迎えた。食事もろくにとれず、飢えの中で死んで行くか、野盗に身をやつすか……だが、野盗に身をやつせば、そう遠くない未来に山田達のような治安を守る者達に殺されるのがオチである。この世界の治安を維持する者達の殆どの概念は、悪には死を故に。

 

史上最悪の暗君と呼ばれるカン=ム皇帝ユナリン。この女が自分の欲求を満たす為だけに行われた召喚の儀式による転移転生は召喚の儀式に飽きたユナリン自身の手によって悲劇は終わりつつあった。

 

しかし、捧げられた人間の数を考えれば、転移者だけでも70人は来訪すると言う確定の悲劇が待っている。新たな転移者達は、厳しい現実に直面する中、光明を見出だせる暇も無く死を迎えるばかり……元より人間は神から与えられた力等無い、あるのは、生き抜く執念、知恵、運……果たして、新たな転移者達は、生き残れるのだろうか?

 

奈落に落ちた人々・完

 

 

山田と話しをしながら、清蔵はコウロ・ハンドァの工房に来ていた。工房の主、コウロは、かなりの年齢を重ねており、生やしている白髭は腰の辺りまで伸びている、一見すると古い漫画で見た仙人と錯覚してしまう老人は、こちらの要件を聞かずに察して話す。

 

『その娘さんに義肢をか……お前さんらの目を見れば分かる。しかし、四肢全てになると高いぞ?白銀貨7枚、それ以下だと材料費が足りない。』

 

山田はそれを聞くと、手持ちの袋から白銀貨を取り出し、10枚積み上げた。

 

『貴方には保安隊の人間も何人か世話になっている、安いもんさ。』

 

清蔵はそのやり取りに沈黙するしか無かった。

 

 

本官この世界に来て、初めて白銀貨を見ました!ってオイ、すげぇな山田……確か白銀貨の価値ってちょっとした馬車が馬つきで余裕で買える程だぞ、保安所って予算潤沢なの?……大規模署相当だから潤沢か、うん。でも保安所の経費で大丈夫なの?

 

『安心しろ、これは俺の給与だ。』

 

ぶっ、ブルジョアかよ。かなりの給与貰ってんのね……

 

 

『制作には大体半月だな、足の方についてはそう時間はかからないが、なにぶん腕の方は精密に作らねばならんからな、お嬢さん、それまでは辛抱なさい。』

 

『はい。』

 

採寸の為、台の上に寝かせられた一条は、コウロの言葉に応えた。体が動かせるようになると聞いたのか、その目はもう死んで等いない。採寸は体の隅々まで行われる為、秘部も曝け出す状態になる関係上、二人は視線を外していた為、それを確認したのは終了間際だったが。採寸を終えると再び山田が背負い、コウロに礼を言って工房を後にした。山田はその足でサリーの宿屋へと向かった。ここは離れにサリーや山田が暮らす家があり、そちらの方へと足を運ぶ。

 

『お帰りなさい、ダーリン♪』

 

『ただいま、サリー。この娘絡みの件でな……それが俺が元気無かった原因さ、君には本当に心配をかけたな。』

 

『そう……あなたらしいわね、優しい人。』

 

サリーはそう言うと、後ろに担がれている一条に近付き、顔を撫でながら微笑む。

 

『暫く私達の家でゆっくりしてね、父さんもダーリンも優しいから、もう怖がらなくていいからね!』

 

『ありがとうございます……ごめんなさい、嬉しくて……』

 

一条は安心したのか、安堵の涙を流した。一条は義肢が出来るまでの間、サリーの宿屋で面倒を見る事になった。義肢が完成し、自活出来るようになったら山田達の並びの家に住むと言う。

 

 

山田もやっと一つ肩の荷が降りたみたいだな、とりあえずは安心かな?そんなこんなで、山田の家、正確にはサリーちゃん家の宿屋の食堂を貸し切って、木尾田達を集めて食事をする事になった。木尾田の方は久しぶりに奥さん、そして成長した我が子と顔を合わせたが、何と何の恨みつらみを言われるでもなく、奥さんは迎え入れたらしい……木尾田の奥さんも天女か。娘さんは最初戸惑ったそうだけど、直ぐになついたそうだ……イケメン無罪ってか?この西島〇俊、中々だな。木尾田は元カノたる康江ちゃんも紹介したらしい。ずっ、随分とオープンにしたな、確かに前、オープンにしろとは言ったけど、それはモテない男たる俺の無配慮だったかなと思い直したんだよな……しかし奥さんのユウミさんの表情を見るに、全く心配は無かったようだ。テイルちゃんといい、サリーちゃんといい、ユウミさんと言い、俺達心の広い奥さん彼女が出来て良かったなぁマジで。

 

 

『『乾杯!』』

 

友人四人が集まり、酒を酌み交わして食事を共にする。清蔵達の他に、エルフランドの兵士達、テイル、木尾田一家、一条、そしてサリー親子と、この日は宿を貸し切って宴を楽しんでいた。厳しい状況におかれた世界でも、基本的に平和が一番なのだと。

 

『こうして見ると、この世界って改めて凄いと思う。俺達の世界なんかより遥かに人種の違いが出てるのに、外見でどうのっての抜きにいい笑顔してんだもの。』

 

清蔵は人種、身分、生まれた世界がバラバラな各々が(しがらみ)もなく楽しんでいるのを見て、気分良く酒を目一杯呷った。山田の義父が選んだその酒は高アルコールで、喉に通すと心地いい焼けるような刺激を与えてくれる。酒を飲み干すと、清蔵はふと窓の外を眺め、今までの事を振り返っていた。警察官としての自分が復活するきっかけになった転移、パートナーとの出会い、命を懸けたギャングの鎮圧、清蔵の世界の人間達との邂逅……決して平坦では無いものの、生きている事を実感出来る毎日を送れる事が、こんなにも自分を変えるものなのかと改めて感じるのだった。

 

『せぞさん、どうしたと?みんなの輪から離れて窓を覗いちゃって。』

 

清蔵の様子に気が付いたテイルが寄って来た。酒が入っているのか、透き通るような白い肌は、さくら色に染まっていた。清蔵はテイルの露出の高い衣装に赤面しながら、また窓の外を眺めた。

 

『いや、ちょっと今までの事を振り返ってたんだ……俺って本当に運のいい奴なんだなってさ。何にも無かった心が満たされていく、嬉しいんだけど、他のこっちに来た人らの事を考えるとさ……』

 

『……でも、それはせぞさんが良い人だったからだよ、運だけでここまで来たんじゃないよ?それは私が身近で見てるんだから。』

 

テイルは清蔵に体を寄せ、その温もりを感じる。清蔵はテイルの体を更に抱き寄せ、互いを見つめ合う。大人なムードを漂わせていたが、端から見ると清蔵の股間が異常に盛り上がっているので下心丸出しにしか見えなかった、本人達は至って真剣であるが。

 

『(ヒソヒソ……ねぇ、雅人、清蔵兄ちゃん良い雰囲気に持って行ってるけどあれじゃ台無しだよね……)』

 

『(ヒソヒソ……せっ、清蔵らしくていっ、良いんじゃないかな?)』

 

『(ヒソヒソ……ティヒヒ、相変わらずの絶倫帝王だねあの人!)』

 

『(ヒソヒソ……さ、サリー、今日は流石に覗くんじゃないぞ……)』

 

そんな会話がかわされているのも知らず、清蔵とテイルは熱い抱擁を続けるのだった。

 

 

 




清蔵達サイドと他の転移転生者サイドとの開きがありすぎるとは思いますが、仮にもし自分が飛ばされたと過程すると、とても生き抜ける自信が無いと思い、一般人の末路はややハードな展開となっています。書いてて気分が悪くなったので、オチはなるだけ平和に仕上げました。
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