『それじゃ、私はもう帰るね。名残惜しいんだけど、リッちゃん一人であのババァのおもりをさせるのは可哀想だしね。』
『僕もそろそろ行かなきゃ。ユウミ達もついていくって聞かなくてね、サカサキと違って治安が悪いから、住居も探さなくちゃいけないから。』
『そうか……寂しくなるな。お二人さん、無理はするなよ?何かあったらいつでもサカサキかナハト・トゥに来いよ、俺も清蔵も歓迎する。』
ナハト・トゥに戻った清蔵達は各々の場所へと戻る木尾田達を見送る事にしていた。山田は休暇を取り、ナハト・トゥに顔を出していた。
『二人共……無理しないでくれよ?何かあってからじゃ遅いんだ、これだけは約束してくれ。もう送り人するのはごめんだぞ?』
『ああ、今度こそお前の心を壊さぬよう、しっかり生きるよ。』
『清蔵兄ちゃん、さよならは言わないよ、また会おうね。テイルさんと幸せに!』
二人はそれぞれ別々の道へと進み、帰って行く。清蔵達は二人が見えなくなるまで、見送り続けていた。
『さて山田、お前さんも休暇は余り取ってないと見るな?まあサカサキに比べれば何もない所かも知れないけど、ゆっくりしてくれ。』
『ああ、そうする。サリー、君の要望に応えよう、どこに行きたい?』
『ダーリンとなら何処でもいいよ!』
『そうか、ならば清蔵達の警察署を見学したい。話は聞いていたが俺は行った事無いからな。』
『見学?いいですとも!』
ー
木尾田達を見送り、本官は現在、警察署の見学をしたいと行ってきた山田夫妻を、警察署に連れて来ております。尚、俺は非番の身でありますので、制服は来ておりません。
『警察署ごと来たと行っていたが、ああ、懐かしい感じだ。警備部に行ってからは殆どここに来なかったから、もう遠い遠い昔の話なんだな。』
山田は向日葵署勤務だったな。交番での勤務志望だった俺と違い、あいつは元々刑事志望だった。警察学校の成績は木尾田とワンツーだったから志望は通りやすかったらしい。何であの頭がありながら偏差値30の工業高校に通ってたのか……
『そう言えば濱田巡査部長や是澤先輩は元気か?』
『滅茶苦茶元気、今濱田さんは警部補、是澤さんは巡査部長だよ。是澤さんは殆ど事務仕事だって嘆いてた、そんだけ平和なんだけどね向日葵市が。』
『そうか……』
山田は、少し感傷的な表情を浮かべていた。あの人がバリバリ花形で仕事してたのは白戦会、赤軍新党が裏で暗躍していた頃の時代だっけな。山田は公安行って裏の裏を見てきたから、思う所がいっぱいなはずだ。そう言えば是澤さんのお気に入りだったな山田は。
おっと、そうこう話しているうちに、署長室へと着いた。副署長たるワフラが署長席に座って執務を行ってる、こうして俯瞰で見ると、どう見てもワフラの方が署長にしか見えないのよね。一応署長なんですが俺……
『清蔵どん、その方達は?』
俺はワフラに二人を紹介した。ワフラは二人をじっと見つめていたが、直ぐに柔らかな表情に戻り、二人と握手をかわした。
『清蔵が世話になっているそうで。』
『ふっ、世話になっているのはワシらの方じゃ。清蔵どんが来るまではこの町も治安が悪かったからの。』
正直俺ですらまさかここまで治安が良くなるとは思わなかったよ……これは俺の力ではなく、この人らの元々高い能力が発露される切欠位には俺がなったって事かな?いずれにせよ、俺が絡んだと言う事実が、恥ずかしさもあるから公言したくないけど、正直嬉しい。
『清蔵どん、機動隊はいい感じだ。尤も、例の三人はあんたの事を逆怨みでもしとるのか、相変わらずば。』
うわぁ、頭痛ぇ……かなりハードに怒ったのにまたかよ!これはテイルちゃんと同じ時間帯に勤務しないとまたあの子が……
『安心せい、キスケとワシの指導を曲解したものは鉄拳制裁を受けとる、その内嫌でも変わる。』
パワハラ反対派ではあるけど、機動隊はその真逆だ。まあでもあの二人、加減は知ってるからいいか。
『まさか本当に機動隊を作っていたとはな……公安を作った俺とはまた別方向に危機感を感じたのか?』
まあ山田には話していた方が良いな。なんと言ってもサカサキは同じナハト・トゥ内のスバリュ集落よか近いってのもある上、エウロ民国は他国との協力を惜しまないと言う国だからね。味方は多い方が良い、特に頼もしい味方はね。
ー
清蔵は山田とワフラを交え、警察署の方針と保安所の方針を議論し、互いが協力出来るよう情報交換を行った。山田は既に何かあった時の為に、サカサキ市長のサインが入った誓約書を持っている。清蔵は山田に町長を紹介し、これからの方針を伝える事となった。
『サカサキの保安所のトップの方が、清蔵どんの知り合いとは……そなたも大変じゃったの。』
『いえ、俺は死んでこちらに来た身です。生きたままこちらに来た清蔵に比べれば大した事もしていませんよ。』
謙遜ともとれる発言だが、山田はそんなつもりは毛頭無い。任務中に殉職した、ただそれだけ。だから元世界の未練と言う者は山田の頭には無いのだ。山田は町長にサカサキの方針を伝えた。具体的には、
・サカサキとナハト・トゥを繋ぐ街道の保安隊配置
・サカサキ側の領土においてのナハト・トゥの犯罪者に対する処遇の委任権(その逆も認める)
・年に数回、若手を中心とした相互の交換研修の実施
・サカサキ公安部とナハト・トゥ機動隊及び警備部の連携
これらの提案を、町長は受け入れた。強制、強権的な部分もなく、友好都市であるサカサキと関係を深める事は、治安においても経済においてもデメリットは無いからだ。
『とは言え、ナハト・トゥの警備部は人事が難航してるよ。言ってしまえば、所轄の公安だからね、優秀かつ犯罪に走らない人間の選別をしなきゃだから難しいよ。』
『俺の所も公安が暴走する事は多々ある。特性上舵取りが難しいってのもあるしな。公安同士の顔を知らないってのもザラだ。』
山田は元世界の公安で最も苦労したのは、監視対象ではなく、自分達公安同士との連携だったと言う。公安は顔の割れを徹底的に嫌う。時には味方を欺くような者もおり、監視対象の検挙時には共に捕まる事もある。山田の死因は表向きは暴力団組員の流れ弾が当たって死んだ事になっていたが、そもそも公安の他の連中が逃げ腰だった故に山田が突出せざるを得なかったのだ。山田が公安に行く事を告げていたのと、濱田是澤ら向日葵署の敏腕達からの情報で清蔵は真実を知っていた。公安への不信感は清蔵も感じているものだった。
『秘密主義が行き過ぎれば、俺達の組織の正義なんてものは本末転倒になる。ナハト・トゥとの連携はそう言ったの抜きにしたい。』
『約束だぞ?……まあお前さんは絶対裏切らない、それは俺が一番知ってるから心配無いさ。警備部はまだ選考も出来てないから、暫くは機動隊との連携になるな。』
山田と清蔵、サカサキ市長と町長との協力合意をまとめ、警察の体制は整いつつあった。自分達より危険な場所にいる木尾田達の身を案じながら、二人は今出来る事を広げ、護るべきものを見失わないよう、結束を固めたのだった。
ー
本官、今日は色々と疲れました。サカサキ市とナハト・トゥ町と言う、国境を越えた協力合意、これはカン=ムの首都エルフランドとアンブロス帝国の情勢を鑑みたもの、10の国の連合たるタイーラの平穏が崩れかねない暴君暗君のスタンドプレーに対して何かしらの抵抗が出来るようにしときたかったのよ。まあその暗君は康江ちゃんの事を気に入っている上、康江ちゃんが上手く手綱握ってるもんだから暫くは安心かな?アンブロス帝国の暴君に関してはエルフの抹殺以外は割と善政を敷いているみたいだから、木尾田の組織が引き続き監視して動向を伺っているらしい。クーデターや革命は今の時点ではかなり厳しいらしいけど、あいつは無理をしないと言っているなら信用しよう。さて、仕事(仕事自体は非番だったけど)も終わったし、山田夫妻とテイルちゃんを連れて行きつけの飯屋に行く事になった。サリーちゃんはナハト・トゥの町を気に入ってくれたようだ、はしゃぐ姿はなんと言うか子供みたいだ、ヒューマ換算年齢だとテイルちゃんより結構上らしいけど、これは地の性格のせいかな?しかし康江ちゃんより小さい身長なのにえらくデカイ乳してんな……宿屋のメイド服にあんな凶悪な乳が隠れていたとは……
『あ、痛い、テイルちゃん痛い!』
『せぞさん、人妻をどんな目で見てるの、やっぱりエッチ!』
はい、すんません、腕をつねられました。赤面し頬を膨らませて怒る彼女の顔、うん、可愛い!やっ、やべ、またJr.が自重しないでおっ立ててるよ……山田、ちょっと顔が怖いんですけど?愛犬の首を掴まれた時のプー〇ンみたいな顔してるんですけど。
『清蔵、サリーに手を出すなよ?』
『出さねぇよ!お前こそテイルちゃんを視〇してたろこのムッツリスケベ!』
『ムッ、ムッツリスケベとは何だ!お前程はひどく無いだろ!』
『ウェヒッ!二人共仲良いのね、もしあれだったらスワッ〇ングする?』
『ドすけべ猫さんは相変わらずだなオイ、引くわ!』
『せぞさん、スワッ〇ングってなぁに?』
『テイルちゃんのような心が綺麗な人には関係無い事だよ!』
流石に冗談きついわ!サリーちゃんに修羅の顔を見せたよ……ちょっ、あの、山田君?マジにならないで、サリーちゃんの言葉間に受けてテイルちゃんにスワッ〇ングの説明しようとしないで!駄目だ、それをやっちゃ駄目だよ!相変わらずこいつはこの手に関しては冗談きかないな、危ない奴(おまいう)。
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食事と酒を楽しんだ二組は、当然の権利のように宿屋と言う名のラブホへと入って行く。サリーがスワッ〇ングの話を引き摺っていたのを無視しつつ、
『色々あるけど、山田、今夜位はしっかり楽しめよ?』
『ああ、そうだな……明日になればまた殺伐な時を過ごすんだからな。』
『ダーリン早くぅ☆』
『せぞさん、今日も優しくしてね♪』
『おっおう!』
『いっ、いいですとも!』
二人は鼻の下と股間を伸ばしながら、それぞれの部屋へと消えていった。因みにス〇ッピングについてはハンニがテイルにかなり偏見が入った説明を受けてテイルを赤面させたと言う。
『あのエロ熟女覚えてろよ……』
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実は山田も清蔵並にスケベではありますが、ムッツリスケベです。清蔵は思った事が口に出てしまう(主に下で)ので警察官としてどうよと思いましたが、元警察官のお兄さんいわく、交番勤務なら清蔵は向いてると言われました。顔や声に出るので刑事向きでないとも言われましたがw