再び日常編な短編に戻ります。タイトルがふざけきってますが、いたって真面目な話です。
第35話 狼藉者、成敗致す!(訳:ちゃんとしないとダメですよ♪)
『町が平和になってきたのは良い事、しかし最近は若けもんが調子に乗っとるばい。』
彼は監察のマーシー、年齢は31歳(独身)、元は射撃班に所属していたが、ノーコン過ぎて清蔵の金的を二度も掠めてしまった為に監察行きになった。とは言え、監察の仕事を任されたと言う事は、彼自身の仕事ぶりは正当に評価されているのだ。元々射撃班に就く人間は品行方正、業務優秀な人物に任される。人の命を奪いかねない銃器を扱うのだから当然と言えば当然か。ノーコンでなければ射撃班の統括をしているフラノの後任に彼がなる位には優秀で真面目な男である。
『若い時は血気盛んで正義の代行者的な動きがあってしかるべきではあっちゃけんど、あの連中はベクトルが違う。なんと言うか、反抗期のまま社会に出た危うさを孕んどる。テイル警部補に対するあの行動と言い、署長に対する突っ掛かり方と言い、余りにも受け入れられん。』
マーシーは機動隊の問題児三人の行動を重点的に監視している。血気盛んな若者は他にもシシやコモドらがいるが、彼ら二人は基本的に清蔵の事を尊敬しており、かつコーリン鎮圧辺りから周りの事を良く見るようになっている為、自然と監視対象から外れていた。
問題だったのは機動隊の三人。警察採用時の態度は、基本温厚な清蔵を激昂させる程で、既に二回も彼の怒りを買っている。マーシーは機動隊を指揮するキスケとも密に情報を交換しているが、キスケですら手に余ると言う評価だった。
『あいつらの身体能力自体は合格点じゃ、身体能力はな。問題は頭……あいつらの頭の中は脳ミソじゃなく脊髄しか詰まって無いんじゃなかかと言う位、学習能力がねぇ……女性機動隊員からは特に苦情が絶えん。』
マーシーはキスケがそう頭を抱える状態だと言う事実を知った為、三人の様子を影で監視し続けていた。機動隊の朝練が終わり、それぞれの業務へと移る三人、今のところは何も問題は無い。体力に余裕がある機動隊の多くは、普段開拓課に回る事が多く、彼らも機装一式から開拓道具に持ち代えて、他の人間達と同じように仕事に励む。
『今のところは何も無い……ん?何を揉めはじめてる?』
問題児三人が、刑務作業をしている少年に罵声を浴びせているのだ。少年は商店でパンを盗んだ罪で1ヶ月の奉仕作業を言い渡されたのだが、まだ体の出来ていない彼に、重い石材運びを強要しているのだ。そこは一緒に運ぶなりしなければならない所だが、三人はそれを行う素振りもない。あからさまなイビりだった。
『これは酷いな……署長の掲げる思想から外れる事を、何の悪びれもなくやるとは……犯罪者に人権は無いなんて貴様らが言えた口か!』
マーシーは監察としての業務に準じて様子を伺うに留めていたが、目の前の行為に我慢が出来ず、ついに問題児三人を叱責した。
『貴様ら!黙って聞いとりゃとんでもねぇ事をしてくれたな!それが警察官のやっ事か!』
『うるせぇ!犯罪者に甘い顔するような連中の言う事が聞けるか!お前ら、やっちまおうぜ!』
三人はマーシーを袋にした。機動隊で鍛えられた三人の身体能力の前に、マーシーはなすすべが無かった。
『ぐっ……貴様ら、こんな事をして、一体何のつもりか……』
『へっ、仕事なんてきつかろうがどうとも思わねぇ!俺らはよそ者の癖につけあがってるあのおっさんが気に食わねえんだよ!』
『く……それが本音か……貴様ら……後悔すっぞ?』
『弱ぇ癖に口が減らねぇな、オラッ!』
マーシーの身体はあちこち骨が折れていた。意識が遠のき、抵抗もままならない。刑務作業をしていた囚人や他の職員が止めに入るが、三人の身体能力を前に近付け無い。止めに入った囚人の少年が今度は巻き込まれ、意識を失った。
『邪魔すんなよ犯罪者が!俺達に抵抗するってんなら、この場で死ぬか?ハハハッ!』
『おまんらがな!』
『ああっ?!……え?』
三人は声のした方へ視線を向ける。そこには、鬼の形相で立っているワフラと、囚人達を纏めるカマリタがいた。更にはその後ろに、開拓課に顔を出していた清蔵の姿も。三人はそれぞれ一人ずつ正体し、更に開拓課の人間と囚人が周囲を囲む。囚人らは警察官に感謝していた、目の前の三人を除いては。だからこそ、手は出さないものの、逃がす事はしなかった。
『ちんけな真似はしねぇ、俺ら一人一人とタイマンだ……みんな、二人を医務室へ。』
睨みをきかせながらも、清蔵は倒れている二人を運ぶよう促す。マーシーは微かに意識を保っていたが、息も絶え絶えでかなり危険な状態だった。
『すっすんません……署長。あの三人相手に実力差を考えず……馬鹿……ですよね……俺……』
『馬鹿なものか……君は、警察の鑑だよ。だから、今はゆっくり休みなさい。けじめはこいつらからしっかり取るから。』
それを聞いたマーシーは笑顔のまま意識を手放した。清蔵は近くの者に彼を任せると、問題児の目の前に再び立った。
『ああっ?!やんのかオッサン!』
『凄んでる割には足元が生れたての子鹿みたいなんですけど……』
清蔵は怒りながらも目の前の男の膝がガクガク震えているのを見た。威勢だけはいい馬鹿野郎がと言葉を出したかったが、その気すら削がれた。しかし、マーシーと少年が殴られた事に対するけじめはつける。清蔵は顔を引き締める。
『仏の顔も三度までって知ってる?』
『知るかよ!ブゲッ!』
清蔵はノーモーションで目の前の男に拳を当てた。手加減無し故、鼻がねじ曲がり、大量の鼻血が吹き出している。
『一度目は何もしていない時の顔、二度目は一度粗相をした時の顔、三度目は二度粗相をした時の顔だ。つまり、粗相の三度目は無いって事だ。』
『ってぇ、てめぇ、殺してやる!』
男は使っていたつるはしを握り、清蔵へと大きく振るった。清蔵はそれを片手で受け止めた。男はなおもつるはしを振るおうと力を込めるが、動かす事も出来ない。
『うっ、動かねぇ……』
『俺は仏様じゃないから二度目の時点で拳骨かましたなそう言や……まああの時は俺の女に手を出したんだ、それは仕方がない……んで?今度は罪を償っている途中の人間、そして、あろうことか仲間を……次の俺の言葉は殺すぞでは無い……死ね、外道!』
つるはしの柄を素手で砕きながら、清蔵は渾身の力を込めたアッパーをめり込ませた。顎を砕かれながら、男は吹っ飛んで行った。
『警察とは国や自治体によって制限付きで武装を認められた組織、そして警察の仕事は人の人生を左右する仕事だと何度も言っていた筈だ……警察の狼藉は、一般人のそれに比して重いもの、身を以て知れぃ!』
ー
……やっちまったよ……死んではいないだろうけど、ありぁもう二度と警察に復帰処かまともに暮らせねぇな。とは言え、テイルちゃんを暴行し、更正に向けて作業していた少年を暴行し、止めに入ったマーシーまで暴行した……あそこまでやって法に照らし合わせてとか以前だよ。元世界の自称人権団体のみなさんはこんなのですら擁護すんのかな?理解は出来ても納得はしねぇよ被害者から見ればよ……非暴力不服従のガンジーですら、反撃や報復に関しては禁止しちゃいなかったんだぜ?やるときゃやらねば付け上がる人間には、時には鉄拳を与える……揚げ足取る連中に隙を与えるから出来ればやりたくは無かったけどね。しかし俺の方はまだ比較的マシな制裁だったね、あの二人はやっぱいざと言う時の甘さが無いから凄いわ。
ー
制裁一、カマリタ
『その土地の再犯率が高いのは、一概に前科者をどう扱っているかによるらしい。あの署長はそれを知っているから無益な真似をせんかった。だから言う、きさんらのような屑が取り締まる側にいる事、納得出来ぬ。』
『ぬぬ、抜かせ犯罪者が!』
男はカマリタにビビりながらも啖呵を切った、刑務作業者に暴言を吐く事を禁止しているのにこれだったので、カマリタはやれやれと言いつつ、その丸太のような腕を鳴らしながら男に近付く。
『更正の機会を与えてくれた人間に唾する奴には、拳が一番じゃ、受け取れぇ!』
『ベラボゥッ!アギャァ!たずげべ!』
カマリタの強烈なパンチの連打を浴びて、男の体はボロボロのボロ雑巾と化した。
『死にはせん、真面目に生きて食えるだけの力は残してある、更正するんだな!』
制裁二、ワフラ
一方のワフラと対峙する男は、ワフラに対しいきなり鍬を振り回した。肩に刺さり、男はざまぁと言いながらもう一度引き抜いて今度は顔面にそれを振るう。ワフラは避けもせず、それを額で受け、鍬の刃の部分が割れた。実は肩に刺さった場所も瞬時に傷を塞いでおり、ノーダメージだった。
『なっ、何ぃ?化け物め!』
『人の命を蔑ろにした奴に化け物呼ばわりはされたくないのう……きさっころが!!』
『エロブォッ!』
ワフラの強烈なパンチは、男の胸に深々と刺さり、胸骨をバッキバキとへし折った。ピクピクと僅かに動く程度の状態に陥った男に、ワフラは冷たい視線でこう述べた。
『弁護士は呼ぶ、黙秘権もある、ただし、警察官ゆえにその身に降りかかる罪はデカイと知れ、童が!』
ー
……ってな感じでした。俺の顎粉砕も大概だったけど、あの二人のはヤバかった、特にカマリタ……よくあの時勝てたなと感じるよ。ともあれ俺は終わってから涙が流れた。署長になって沢山みんなと試練を潜り抜けてきたと思っていただけにさ、自分で手にかけるなんて本望じゃねぇよ。どこぞのチート主人公のように割り切れる程、俺は非情になれねぇよ馬鹿野郎……
『大将、泣いてんのか?』
『無理も無い、いくら狼藉を犯した者であろうとも、今まで仕事をしてきた仲間ば。』
清蔵が涙を流す様を見て、カマリタはこの男が非情になりきれないのだと悟った。しかし、非情になりきれないからこそ、人が清蔵の後ろをついていくのだとも感じていた。
『ふっ、ますます生きて大将のその後が見たくなった。その為に、過去の精算じゃ!みんな、開拓に戻るぞ!』
カマリタは愛用のつるはしを持って、開拓途中である新町の工事へと戻っていった。ワフラは涙を流し続ける清蔵に声をかけず、そっとする事にした。
(これからの人生、何度も挫折を味わい、何度も泣くだろう。じゃが、だからこそあんたは強くなる。今は…気のすむまで泣くといい。)
†