ここらで一旦切って前章を完にしたいと思います。と言っても大雑把なのでその区切りは書かないです(既に〇〇編的な区切りがあるので)
赤旗党、法撰の会、そしてダークハウンド……山田達サカサキの公安がマークする監視対象組織。山田はこのうちダークハウンドの動きと協力者を特定したものの、相手側の追跡によってこちら側の方も中々に厳しい状況にあった。そもそもの原因は山田の苛烈な取り締まりに起因しており、協力者達の目に留まってしまった為に自らを危険に晒してしまったのだ。しかしそれは山田自身も覚悟の上でやった事であり、敢えて押さえる時は派手に行うようにしているのだ。サカサキ市の保安所は約二千名にも及び、その練度も高い。一旦サカサキへと誘い込んでしまえばいかにダークハウンドでも手がつけられないのだ。
『ゼロ、ダークハウンドの偵察の者と接触した班から報告がありました。』
『報告を開示しろ。』
山田は公安関係の者と接触する際にはゼロと言うコードネームで呼ばれている。各員にもコードネームで呼びあっているのだが、元世界の公安との違いは、特秘以外の情報は出来る限り通常の保安官と共有化するように伝えてある事である。秘密主義が行き渡り過ぎた結果、足の引っ張りあいと言う醜悪な状況を生み出したのを見てきた山田が示した策により、一般保安官らも有事には公安関係者と連携が取りやすくなるようにしている。当然ながら、組織の性質上、口の軽い者や特定の思想に傾倒する者は除外されている。
『ダークハウンドで影と呼ばれている連中です。どうやらビーオーは上手く影に取り入った模様です。』
『詳細は?』
『ゼロを始末する為に市内数ヶ所の拠点に33名、半数が魔法を扱う者との事です。今のところゼロにたどり着いた者はおりません。』
山田は表向きは保安所の隊長と言う顔を持ちながら、立ち回りにより裏の顔である公安トップとしての動きを一切察知されていない。身内の住居移動と言う目立つ行動も、各幹部全てが同様に行った為に足がついていない。対してダークハウンドの影達は、既に全容を丸裸にされる寸前まで追い込まれていた。山田が各所で苛烈な取り締まりを行っているのと同時に、その後の動きを探る者を混ぜていたのだ。
『拠点にしている場所は全て市長の知人が払い下げた邸宅や借屋です。偽名で住民登録されていますが、奴等の身辺は洗いだしが終わり、後は確保に漕ぎ着けるだけです。』
『確実な状態になるまでは功を焦るな、向こうも敢えて影を押さえる事で我々を嵌めると言う事も起こり得る。退路を無意識の内に断ち続け、気付かぬ内に押さえろ。』
山田は相手の首を、真綿でゆっくりと締め上げるように追い詰めて行く事を徹底した。接触する人間も最小限にし、その人間はあらゆる危機に対応出来る猛者を選び、造反をしにくい者に限った。エメリャー侯との違いは、強制された兵ではなく、志願者を選び行動させている点である。その差が如実に現れていた。
『相手は手駒の多さを利用しているようだが、所詮それは部下をただの使い捨ての道具としてしか扱わない貴族の下についている者、志願した者との違いを……思い知るがいい。』
尤も、山田は思い知らす間もなく潰す気でいる。山田は油断しない、こちら側がやられた場合も頭に入れながら行動を徹底させている。法の杜撰な世界に跋扈する悪党の突飛な行動に対応する強かさを以て、部下を動かすのだ。
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『ダーリン元気にしてるかな?私がいないと身の回りが散らかっちゃうからそれだけが心配なの。』
ナハト・トゥに匿うと言う形で移り住んだサリーはそう一人口にする。頭にたんこぶが出来ているのは、清蔵達の情事を覗いた事による制裁だったが、本人は全く気にしていない。サリーは身籠ったばかりのお腹をさすりながら、新町の宿の掃除に戻っていく。妊娠が分かってから日が浅いのか、まだ見た目的には外見的変化が無いが、安定期に入るまでは体に負担のかかる仕事は控えるように言われたので、フロアの掃除が彼女の現在の主な仕事である。
『おはようございます、絶倫署長、うぇひひ!』
『おはよう、そしてやめなさいその呼び方。異常は無かった?』
『ティヒ、特に無いよ、二組のカップルが愛し合ってただけだった。』
『異常あるじゃねぇか!覗きは犯罪、ダメ、ぜったい。』
清蔵が巡回で宿屋に立ち寄った。新町に出来た宿屋は食事、部屋共に評判が良かったが、誰かに覗かれていると言う噂が先走っていた。清蔵は覗きは立派な犯罪だと何度も伝えているが、無邪気な目の前のサリーの態度を見ると、余り強く言えないでいる。
『でもサリーちゃん達のお陰で随分と宿屋が繁盛してるよ。特にシェフのお兄さん、あの人の料理の腕は超一流だね。』
『トニオさんは宮廷料理人の家庭に生まれてずっと腕を磨いてきたからね、優しくて料理上手なお兄さんだよ。ただ厨房に用がある時は清潔な状態で入らないと怖いよ。』
『同名の誰かさんと一緒か、包丁投げそう……まあ俺がそっちに用事がある事は無いからいいかな?ところでサリーちゃん。山田の事について、何か変わった事は無かった?』
唐突に話題を変える清蔵、山田の身を心配するのは清蔵も同じである。
『何時も通りだったよ、ダーリンは仕事で考え込む時はあるけど、今度はそんな深刻な顔をしなかったのよね。』
『そうなんだ……』
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なんか引っ掛かるっつーか山田が深刻な顔してなかったってのが妙に気になるな……勝算があるのかも知れないけど、死亡フラグかも知れない。是澤さんがあいつの死の前日に表情見たときがそんなだったと言ってたんだよ。遂に追い詰めた、明日で終わるなんて言ってたらしいが……くそ、気になって仕事に身が入らない。
『署長、お話が。』
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清蔵が思い悩んでいると、巡査の一人が署長室へと入り、来客が来たと伝える。
『どんな人?』
『結構背が高いヒューマの方です。署長の知人だと言ってました。』
『木尾田来たよオイ……取り敢えずここに呼んで。』
来客を察すると通すように指示を出し、署長室へと木尾田を招き入れる。座って木尾田を見るとより彼の大きさを実感する。190を越える長身、清蔵に見劣りしない鍛えられた体は何度見ても目を引く。
『よう、2ヶ月位ぶりかな?元気?なんかカン=ムの連中と和解したとか聞いたけど……』
『ああ、やっちゃんが皇帝の代わりに政を引き受けるとか聞いていたから、押さえつけられてた市民から暴動の類いが起こる前にコンタクトを取ってね。』
木尾田はいきさつを話す。関白職に就いた康江は、それまで市民生活を圧迫していた法案を見直し、上手く立ち回ろうと奔走していたが、皇帝が顔を出さないままに関白職に政を任せたのを、国を捨てて逃げたと捉える過激派が暴動を扇動しようとしていると組織から伝え聞いていた。
木尾田は暴動が本格化する前にエルフランドへと赴き、コンタクトを取る事にした。最初はエルフランドの衛兵達に取り囲まれ、捕縛されかけたが、事情を伝えると、総軍司令であるリキッドが直々に現れ、話をスムーズに通してもらったのだ。
『康江ちゃんの彼氏と対面出来たんだっけそういや。』
『分別の聞く常識人だったよ。故に僕は何者であるかを彼に伝えた。今まで貴族や皇族、将軍等とコンタクトを取ってきたけど、僕の話をしっかりと聞いてくれたのは彼が初めてだった。
お陰で奴隷解放戦線が正式にカン=ムのバックアップを受けられ、公的機関として動けるようになったし、僕らが率先して現在皇帝代理をしているやっちゃんの手助けをする事で暴動を鎮圧出来た。』
次期皇帝の即位には時間を擁するらしいが、現皇帝の暴発は確実に防ぎきると公然化した為、エルフランドの現在は平穏に向かいはじめているという。しかし、一方では、奴隷解放に異を唱える皇族貴族のグループが、正式に奴隷制度停止になるまでの間に人身売買を加速させているとの情報も入っており、康江の周辺は予断を許さない状況であると言う。
人身売買の単語が出た時、清蔵は山田の事について詳しく伝えた。現在山田とは連絡を取り合っていないと言う木尾田は、山田の行動、状況を聞いて驚きの表情を浮かべていた。
『山田が探っているエメリャー侯爵、その人物はかなり危険だ。僕が潜伏しているアンブロスの軍を統括する最高幹部だからね……悪い話ばかり聞くよ。比較的規制の少ない国から若い男女ばかりを労働力の為に拉致しているって話。』
『ダークハウンドはいわばその侯爵や他の貴族らがスポンサーとなって動かしているってわけだ。山田は相手が巨大なのを分かっていて敢えて攻め手に出た……木尾田、お前さんが死んで以来、あいつはかなり危ない橋を自分から渡るようになってしまった。心が落ち込み、魂が抜けた俺とは対照的にな。』
清蔵の魂はこの世界で復活したが、山田と違い、あくまで町のお巡りさんとして、身近に生きる人々を守る事が使命と考えているのだ。手の届く範囲が違う事は最初から気付いてはいたが、清蔵はそれを抜きにしても山田達と自分の違い、差を痛く感じていた。木尾田はそんな清蔵にこう答えた。
『平和に生きる為に町のお巡りさんをするのも、国を守り平和を作る事も、そんなに変わり無いよ。清蔵、君は君、山田は山田の道があるんだ。大きい小さいじゃない、その人のゴールはそれぞれでいいんだよ。』
『木尾田……全く、かなわないなお前には。よし、ならば俺は町の一層の発展の為に、精進し続けるぜ。山田の嫁さんもこの町を気に入ってくれたし、木尾田、お前も組織の活動が落ち着いたらこの町に住みたいと思わせる位にはするからさ、生きてまた会おうぜ。』
二人は固い握手を交わし、其々の仕事へと戻って行った。
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どうも、清蔵です。本官、色々と吹っ切れました。山田達の心配をする前に、俺自身のグランドをしっかりさせる事が、あいつらの為になるのだと考える事にした。町を守るのがちっぽけな仕事?どの口が言ってんだ、立派な仕事だよ。元世界でネット上で匿名で悪口書いてる連中よりも遥かに、遥ーかに高尚な仕事だよ。
俺は町のお巡りさん(同時に町の土建屋さん(笑))、それ以上でもそれ以下でも無い。国を変える力は無くても、手に届く範囲は変えられるはずだ。山田、康江ちゃん、そして木尾田、お前らが羨む素晴らしい町を目指して、今日もナハト・トゥ警察署署長として、本官は仕事に励むのであります!
第1章・完
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第一章完とか言ってますが、既に第二章完位の所ですw転移転生者のその後はまたおいおい書いて行きますが、先ずは清蔵にスポットを当てないと、バ〇ーボーイズ的な女と〇りまくってるだけの展開になりそうなのでそちらをメインに出来ればと熟考中です。