10種族、正確には天族を含めて11種族の人類種は、身体的特徴の差こそあれ、其々まぐわいハーフを成せる。また、其々の種族から、時折突然変異とも言える派生種が誕生する事もある(ゴブリンオーズのカマリタ等)。そして、突然変異であるか無いかに限らず、厳しい修業により傑出した力を持つ者を、種族を越えた存在と言う意味で、超人と呼んだ。
今から400年以上もの昔、魔法・鉄器大戦と呼ばれる世界大戦が起こった。魔法を操る魔法兵団を指揮するのは、レイーラ・ゴラシ。ヒューマでありながら史上最強の魔力を持ち、魔導帝の異名を持つ。魔法兵団には彼の友人である四人の猛者が将軍として付いていた。東方の魔女の異名を持つ、魔神(魔人の突然変異)ラン・リョービ、温和な氷帝の異名を持つ、ハイエルフ(エルフの亜種)のクダル・レイオウ、火炎姫の異名を持つ、ピクシーのミクニ・ナスカ、そして雷神の異名を持つ、天族のインシャク・ティランド。
対する鉄器兵団を率いるのは、タイドラッシュ・アトラ。人類史上最強の戦士と呼ばれたヒューマである。鉄器兵団は彼の友人である四人の大将が付いていた。辺境の戦乙女の異名を持つ、ヒューマのカグヤ・ミトヅキ、超弓神尼の異名を持つ、龍鬼人(オーガの少数民族)のピョードル・ナスターシャ、戦う記録人の異名を持つ、ドワーフのメルヴィン・コーブ、破壊王の異名を持つ、オーガのキョウイチ・オガマル。
魔法・鉄器大戦の主要人物である十人は、正に超人と呼ばれる傑物達であり、彼らは後のタイーラ連合国の各国家の初代宗主となる者と自らを封印した者に分かれた。特に帝国、王国を冠する国の多くは超人たる十英雄の末裔が執り仕切っているのだ。大戦後国をもたず、自らを封印した者は二人、魔法兵団の長レイーラ・ゴラシ、そして、十英雄最年少だったカグヤ・ミトヅキ。レイーラは来るべき次の戦乱に備えて封印の道を選んだ。だがカグヤはレイーラとは違い、自らの業に対する贖罪の為に封印される事を望んだ。レイーラの肉体はロストワールドと呼ばれる不毛の地に、カグヤの肉体はタイーラ連合国の何処かに封じられる事になる。
それから400年、地方の小競合い等はあれど、戦乱に発展する事も無く、平穏な世の中が続いていた。しかし、ユナリン・ローズ・カン=ムエルの諸行により、世が乱れ始めた。禁術に手を出し始めたユナリンは、召喚の儀式により、多くの命を奪った。それに飽きた後、政務を康江達に丸投げし半隠居の身となった今、新たな禁術に手を染めようとしていた。それは、不特定のものを破壊する禁術……よりにもよってノーコン系の禁術に手を出してしまったのだ。康江からは
『まあ今までの召喚のように異世界人引っ張ってこない分マシだけど、あんまり頑張らなくていいから(震え声)』
と言われたので、ユナリンは鼻歌混じりに集めた触媒(宝石や金属)を並べ、お絵描きの感覚で魔方陣を描く。生贄を使った儀式はリキッドと康江の二人からの説得で二度としない事を約束した(誓ったとは言っていない)ので触媒は健全なもので済ませている。
『キャハッ☆これで新しい禁術を使えるね!』
『ソウデスカー、ヨカッタデスネー(棒)』
ユナリンは何時ものテンションのまま、一時間以上も長い詠唱を唱え続けていた。近くで見ていた康江はジト目でその様を見ていたのだが、詠唱が止まった瞬間、膨大な光がその場を覆うと、驚愕の表情を浮かべた。
(このババァ、ほんとに凄い魔法使いだったのね!ただの若作りのババァだと思ってた!)
光が収まると目の前には今まで見た事も無いものがそこに現れた。
『キャハッ☆みてみてヤスヤス、鎖に繋がれた人が氷漬けになってるよ☆』
『マジでどっから来たんですかね……て言うか普通に召喚じゃないッスか!何しとんねん!』
『えーい、アンティバースト☆』
ユナリンは康江の言葉をスルーすると最後の詠唱を唱える。氷漬けの者を覆う氷、正確には水晶だったが、それが解き放たれ、頑強な鎖も同時に外れる。顔は豪奢な兜に覆われてよくわからないが、身長はかなりの長身、手に携えている長柄の斧と、体を覆う金をあしらえた赤い鎧と具足、籠手……明らかに常人では無い何者かが甦ったのだ。
『……せっ、成功したんですよね?ユナちん。』
『うっ、うん……でも動かないのよ……生きてるのかなぁ……』
目の前の者は、そのまま動かなかったが、暫くすると、如何にも重そうな長柄の斧を軽々片手で振ると、これまた軽々と肩に担いだ。
『私を解き放ったのは誰?多くの人と国を滅ぼした私を……目覚める事の無い眠りから引き戻した迷惑な人は誰?』
(女の子?……でもなんかヤバい予感が……)
可愛さすらある女性の声だった事に驚くのと同時に、相手の機嫌が酷く悪いのを察知した康江は、
『あっ、あの、すみませんけど、ちょっと待ってて下さいね、こっちにいるユナちんと話し合いますから。ユナちん、ちょっとこっちへ……』
そう言ってユナリンを呼び、その場から少し離れ、耳打ちする。
(ちょっとユナちん、あの人相当ヤバいですって!戦闘力たったの5、ゴミめ!な私にすらビンビンやばさが判るもん!)
(で、でもぉ、同性同士なら話し聞いてくれるかもよぉ?)
(いや、やな予感がするんだって、あの人の話聞いてました?多くの人と国を滅ぼしたとか言ってたけどあれガチですって!冗談通じなさそうですって!ここは封印を解いた事に対してはしらを切った方が良いですって!)
(うっ、うん、そうする……)
ー
康江とユナリンは話を合わせると、目の前の女性に適当な理由を話した。
『そう、誰が解いたかはわからないのですね……ご迷惑をおかけしてごめんなさい。』
目の前にいる美丈夫は、どうにか気を落ち着かせたようである。警戒を周りの人間に解かせる為、素顔を明かしてくれと頼むと、彼女は素直に従い、重たげな兜の緒を弛め、脱いだ。大きな体からは想像がつかない程の小顔の可憐な素顔に、康江は同性ながら見とれていた。
『何この子可愛い……イメージしてたより童顔なんですね。』
『あの……童顔と言われると嬉しくないです……レイオウ兄ちゃんにからかわれていたから。』
『レイオウ兄ちゃん?あっ、あのぅ、レイオウって、クダル・レイオウの事ですかぁ?』
『はい……貴女は何処かあの人にそっくり……もしかして身内の人?』
『パパなんです……もう随分昔に死んじゃったけど……』
ユナリンは普段康江達近しい者にしか見せない気恥ずかしい表情を浮かべながら身元を明かす。目の前の女性はそれを聞くと目を閉じて涙を流した。
『そう……レイオウ兄ちゃんも死んじゃったんですね……エルフのレイオウ兄ちゃんが死んだって事は……何百年も過ぎたんですね……』
少女は自分が目覚めた場合の辛い現実を覚悟してはいたが、嘗ての英雄達が既に皆死んだ事を受け止めるには若かった。涙を一頻り流して落ち着いた頃に、康江は再び声をかける。
『あの、貴女はどちら様で?さっきから聞こうと思ってたけど、泣いていたから言い出せなくて。あっ、私は山口康江です、カン=ム帝国で関白してます、此方の御方はカン=ム帝国の今上陛下です。』
『私は……カグヤ、カグヤ・ミトヅキ。世界を巻き込んだ戦争でレイオウ兄ちゃん達と殺し合いをした、戦う事しか知らない女です。』
ー
なんつーもん召喚してんのよババァ!ヤバいわよ、洒落抜きにマジでヤバいわよ……何あの体から滲み出る圧力、何あの可憐なご尊顔に似合わないバキバキの腹筋、そして、何あのハイタワーな身長!テレビで見た大柄の女格闘家の人の首から上をそのまま変えたような感じ……話を聞くと、更に驚きの連続……この人魔法・鉄器大戦の十英雄だって……私達の世界で言うなら呂布とかチンギスハーンが目の前に現れた位の感じ?……ババァ、ホンマ何してくれとんねん!封印された時の年齢を聞いてまたまた驚き、22歳……若っ!魔法兵団をたったの一人で数万単位倒したとか言ってたけど、あの顔で言われたらドン引きなんですけど。
『戦いで数多くの人を殺してしまった贖罪から、生きたまま永久に封印される道を選んだのに……現世に帰って来てしまいました。レイオウ兄ちゃん達に申し訳が立たないです。』
まっじめぇな子ね(年代的に子て言うの失礼だけど)、あくまでも戦士として兵士を倒しただけなのに、命を奪った事に変わり無いなんて慈しむ心があるんだもの、元の世界にいる誰一人殺して無いけど権力争いばっかりしてて腐敗しきった
『ねぇ、カグヤさん、ナハト・トゥって町があるんだけど、そこで暮らしてみない?貴女の心がどのくらい傷ついているのかは分からないけど、そこならきっと大丈夫。』
『……優しいのですね、私のような者に光を与えてくれるなんて。』
いやぁ、なんと言うか、異世界から来たんでこっちでの過去なんて知らんな?ですよ。そるに(それにです、舌ったらずです、お姉さんゆるして)、警察で色んな悪い人見てきたんだよ?良い子悪い子の見分けは大方わかるよ。
『ってなわけだから、辺境のナハト・トゥにカグヤさんを送る事にしたからね。ユナちん暫くは禁術の研究を控えてよ?』
『はぁい……老化予防の研究でもしてまあす。』
うん、そっち方面やってくれると助かるわ、成功したら私にもかけて!……ふぅ、ババァを上手いこと御してるからどうにかなったかな。あっ、でもこの事を清蔵兄ちゃんにも伝えなきゃ。私からの手紙をしたためて、カグヤさんをナハト・トゥへ。
ー
『ナハト・トゥへ。じゃねぇよ!あの合法ロリ、後日説教してやる。にしても生きた
『せぞさん、大丈夫?ほら……その、これで……落ち着いた?』
『オォフ!イエス!最高ですとも!』
署長室改め本部長室でカン=ム帝国関白殿下直筆の書と言う名の、身内による面倒事の押し付けに頭を抱えていた清蔵(現在テイルの胸に顔を埋めてやる気チャージ中)は、次から次へとやってくる案件にさすがに疲れが押し寄せていた。
『(はぁ、はよ仕事一段落して、テイルちゃんとデートしてセ〇クスして愛を深めたいのにぃ)……はぁ、何だか凄く慌ただしいね。』
『大丈夫?凄く疲れとうよ?私じゃ癒せないの?』
真剣に身を捩らせ、涙目で清蔵を見つめるテイルの顔を見ると、清蔵は笑顔で彼女を引き寄せ、唇を重ねた。
『俺を癒せるのはテイルちゃんだけだよ。テイルちゃんとゆっくり過ごせなくてイライラしてたんだ、心配かけてゴメンね。』
そう言うとまた唇を重ねた。
『んっ、良かった……まだ仕事だから、ここまでね♪』
そう言いいながらその後数回唇を重ね続けた為、もうそのまま〇っちゃえよと遠巻きで覗いていたキスケの声を聞いた二人は、赤面しながら職務へと戻った。
ー
『ははは、お熱いのう、本部長殿!』
『茶化すなよキスケさん……転移者案件、天族案件と来て今度は歴史偉人案件だぞ?休ませる気無いのかって位我が家に帰って無いんだけど(悪意ある編集でバレーボー〇ズ並に本職してないイメージだけども!)』
ここ一ヶ月、清蔵は本署から家に帰っていない。第一に、転移者案件は全ての責任を取ると決めていた事、第二に、ナハト・トゥの存続に関わるであろう案件には必ず顔を出す事を決めていた事、何より、知人の頼みを蔑ろに出来なかった事……これらに加えて開拓と巡回、機動隊訓練の指南役と何時寝ているのと言われるオーバーワークをこなしているのだ、さすがに疲れが顕在化していた。目の前のキスケも同様に働き過ぎで清蔵の疲れを理解していた。キスケはチェンルンの案件で様子を見ていたのだが、そのせいで余計に疲れているようだった。
『天族の娘っ子、拘置所で喚く喚く……わざとじゃないから早く返してと煩くてのぅ……』
『あんまり喚くと天族に関する扱いが変わるよって強めの口調で言ってて。あっ、そう言えば痴漢でっち上げグループ、あいつらはどうなったの?』
『男共は暴力沙汰起こしたらしい。カマリタの旦那が鉄拳制裁して大人しくはなってるが、ありゃあのまま解放するのはダメだ。』
『胃が痛ぇ……』
清蔵は苦労事がまだまだ続く事を悟り、書類を手早く纏めて外回りへと向かう。
ー
『セーッ〇ス!!』
『ウボアァ!』
ガキ共が暴れてるんで制裁をしとります、ガキ共って誰って?元機動隊員の三馬鹿と痴漢でっち上げグループの男二人だよ。刑務作業で意気投合して、徒党を組んで暴れてたから、カマリタに頼んで周り囲んで貰って俺一人でみんなボコボコにしたよ。最初の台詞?掛け声だ、気にすんな!三馬鹿は懲戒免職だけで済まさなかっただって?捕まれば警察関係ねぇ、罪を償うなら一般人と同じじやボケ!
『てめえら何回おんなじ目にあったら気が済むんじゃコラッ!金〇潰すぞ本当によ!』
『チッ、うるせぇな……すみませんでしタワバ!!』
チッ、うるせぇなってボコボコにされた人間の台詞じゃねぇだろが……はぁ、しかし男二人はともかく、三馬鹿随分と弱くなったな……まあ前の制裁で要らん力を入れられなくなったからだけども、それでもまだこのざまだから救いが無いよ……勘弁してくれ、暴力に訴えるのほんとは嫌なんだから。
『旦那、随分と溜まっておるな。その様子だとあの麗人と最近はゆっくり過ごせて無いのか?』
ええもう、忙し過ぎて……いや、開拓課とか機動隊とかだけならなんて事無いのよ?それ以外の案件がなだれ込んできたもんだから溜まりに溜まっております仕事もザー〇ンも!
『カカッ、聡明な人じゃから悩み事を内々に溜め込み過ぎるんだ、時には若者に頼らんか?皆良く動いているじゃなかか。』
ええ、みんなほんとに俺なんかの為に動いてくれている。頼りたいのは山々なんだけど、どの案件もトップがいないと務まらない系故に、休み返上中ですぜカマリタさん。
『全く、あんたは人が良すぎて抱え込みが過ぎる。あの麗人を泣かせるような事はするなよ?』
うっ、うぃ……テイルちゃんの顔を曇らせちゃあ俺の人間が廃るか……よし、決めた。俺、後二週間頑張ったら、テイルちゃんとイチャラブ〇ックスするんだ。
『大将、そう言う事口にすると死臭がまとわりつくぞ……』
むしろ言わなきゃだよ、死亡フラグブレイクする!大丈夫、絶対大丈夫!
『こりゃ重症だの……』
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以前書いていた小説のヒロインを設定変えて移植しました。御大層な設定の割に、清蔵が主役の為意外と大事にはなりませんw