※2022/8/20、誤字修正。
ランボウ王国の首都の中央に位置する王の居城、リョービ・シュブレツィア。石造りの三階建ての立派な白亜の城は、観光名所の一つでもある。
城の主、アナベル・マインツ・ラン=リョービ45世は今年37歳になる、壮年の女性魔神。だが、その浅黒い肌は若者のように瑞々しく、魔人族としてはかなり高い身長は威厳さえ感じさせる。頭に王の証である冠を被り、手には豪奢なルビーを誂えた白銀の杖を持ち、赤いドレスの上に紫のビロードを羽織った姿は、異世界から来た者が見たら、(あっ、これどっかのRPGで見たラスボスや)と口にしてしまうようだった。
しかし、その見た目に反して女王の性格は温厚であり、開かれた王室となって百年が経過した中でも指折りの外交的な人物である。彼女は週に三回、謁見に来る海外の人間に気さくに声をかけ、ランボウ王国のイメージアップを自ら買って出ている。しかも打算でも無く、自分がそうしたいからと。
ランボウ王国の歴代国王の大半は、海外、特に魔法の力を持たない者に対して辛辣であった。これは魔法・鉄器大戦時代の名残りとも言えたが、アナベルはそんな事関係無く交流を続けていた。国民の支持率は過去最高で、ランボウ王国のイメージアップを後押ししている。
今日は一般謁見の日であり、そこには我らがバカップルの姿もあった。清蔵は何処ぞの田舎者のように城の内部を見回し、テイルは絢爛豪華な内装にうっとりしていた。一般客は30名程、各々種族も様々だったが、この二人はやはり目立つ。と言うのも、旅行に着ているテイルの服が官能的(本人に自覚無し)な為に、嫌でも目立つのだ。そして清蔵はテイルと腕を組んで鼻の下とJr.を伸ばしっぱなし、目立たない訳が無い。アナベルはそんな二人に興味を持った。海外からの謁見者はこれまで幾組も見てきたが、これ程浮いたカップルは今まで見た事が無かったのだ。
(ほぅ、とても面白い男女じゃのう、見た目も悪く無い。)
清蔵のおっ立てJr.には突っ込みを入れず、二人が目の前に来たのを確認すると、アナベルはしゃなりとした足取りで彼等と同じ目線までやって来た。
『旅のお方、良くぞ我がランボウ王国に観光に来てくれた。妾は現国王、アナベル・マインツ・ラン=リョービ45世である。』
『どうも、俺はカン=ムのナハト・トゥからやって来ました、児玉清蔵と申します。』
『同じくナハト・トゥから来ました、テイル・オーガスタです。婚前旅行にせぞさんと一緒に満喫してます。』
人懐っこい笑顔でそう言う二人に、アナベルも同じく笑顔で彼等を歓迎する。
『ふふっ、お二人共幸せそうで。ランボウ王国の自然や街並みは気に入ってくれたかな?』
『いやー、最高ですとも!実家は海の方なんですが、あれほど青く綺麗な海を泳いだのは生まれて初めてで、イきかけ……生き返りました。』
言葉に下が入るのが難点だなと思いながらも、本人達の満ち足りた顔を見て、アナベルはご満悦の表情を浮かべた。
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いやー、見た目RPGのラスボスじゃね?って感じで固くなっちゃってたけど、国王陛下凄い気さくな方だった。どうも、清蔵です。本官いつ仕事するのって思われておりますが、ちゃんと仕事はしてたの!働き過ぎ言われて休み取らされてるの!でもテイルちゃんと二人で旅行なんだからそりゃあ嬉しいですとも。
さて、陛下と謁見した後は、なんと陛下が我々観光客を自らエスコートして、王室を案内してくれております。リアルな王室なんて初めて見たけど、うん、おとぎ話の世界って奴?すっごい豪華。んで、リアルメイドさん達もいましたよ、魔人族の小柄な体なせいか、セレブ御用達の高級ドールのような感じを受けた、滅茶苦茶可愛い(愛嬌あるって意味でね)、勿論俺の中で最高に可愛い女性と言うのはテイルちゃんだけどねぇ。
しかし陛下ってなんやかんやお喋りだな、王室の始まりとかランボウの成り立ちとかを説明してくれてるんだけど、凄い詳しいのよ。どこぞのな〇うな王様って、歴史を省みないアーパーなイメージがあったんだけど、この人は違う。なんと言うか歴史の先生のような感じ。高貴な見た目とは裏腹にめっちゃ距離が近いのよ。日本と英国の王室皇室の良いところを足した感じ。
『戦争終結後の我々魔人族は、ひとえに繁栄を優先していた。鎖国状態を強いたのは、一概に我々魔人族が一定の数に達するまではと思っての事だと、先祖は書き記している。』
成る程ね……そう言や魔人族って大戦時魔法兵団側だったんだよね?鉄器側につく人間だっていても可笑しくないのに、なんで皆魔法兵団側にいたんだろ?
『ふむ、その疑問は確かに。他の種族は偏りはあれども両陣営に別れていたが、我々は魔法を奪われればひ弱だったとも言えたし、見た目が半端な印象を持たれていた為に魔法特化な魔人族は魔法兵団に皆がつかざるを得なかったと先祖は伝えているな。それに、全種族の比率で言っても、我々は少数派に属していたからな、両陣営に分散するより、片方に固まっていた方が生き残れると察したのかも知れないな。』
分かりやすい……ヒューマ、オーガ、ドワーフの三種族だけで世界の半数以上を占めているって話だからな、この三種族は何処にいても生きられるタフネスさが売りと言うのがこの世界の人の感想らしいからね。エルフや魔人族が如何に苦労しているか、改めて分かった気がした。
『こちらが、我々王室所有の歴史博物館じゃ。妾の家系図や大戦時代の武具等が所有されておる。』
え?王立の歴史博物館が城の中にあんの?おー、何だあの装飾の凄い槍みたいな奴は!エメラルドが槍の根元にびっしり。
『国宝、ロード・オブ・ルーンスピア。初代国王ラン・リョービが大戦中に扱っていた魔法槍じゃ。刃はタイタニウムとイリジンの合金で出来ておってな、強さと魔法付与両方をかね揃えておる。まっ、エメラルドの方は単純に初代王の趣味らしいのだがね。』
趣味かい?!魔法付与関係無いんかい?!にしてもタイタニウムとイリジン、えー、つまりはチタンとイリジウムの合金か、超硬そう……
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王立歴史博物館を行く清蔵達。魔法槍の横にある戦闘服、そしてそのすぐ側に置かれている肖像画、これらは全て初代国王、ラン・リョービにまつわるものだった。
ラン・リョービ。魔法・鉄器大戦の十英雄の一人で、魔法兵団幹部。魔人族の変異種、魔神であり、精強な火炎魔法軍を率いて鉄器兵団との死闘を繰り広げた女傑。その生涯は波乱万丈そのものだった。彼女が属する魔人族は、元々は現タイーラ連合国のカン=ム地域に暮らしていた少数民族だった。一説によればエルフの変異種族とも、エルフとオーガのハーフがまぐわい続けて生まれたとも言われているが、そう噂される要因は、エルフとオーガの特徴を合わせていたからに他ならない。エルフに見られる尖った耳と魔法適性、オーガに見られる角と八重歯。しかしその二つの種族と似ても似つかぬ短命さと魔法適性の圧倒的高さ、それは体に負担のかかる魔法を率先して使い続けてきた結果である。他の種の中で比較的魔法適性の高いエルフがゆったりとした時間の中でゆったりと成長するのとは対照的であるが、このお陰で魔人族は戦争において重宝される存在となった。
『我々は魔法戦闘の為に寿命を犠牲にした種族と言われていてな、今現在は栄養状態の改善で平均寿命が40年近く生きれるようにはなったが、その当時の平均寿命は25歳だったと言われている。』
魔人族が大戦に駆り出されるようになったのは、タイラーとレイーラの二人が地域紛争の長に任じられた頃である。レイーラが魔人族と交渉して大戦に絡むのだが、この時魔人族の長になっていたのは、弱冠10歳の魔神、ラン・リョービであった。ランは小さい頃から、他の魔人族と違う特徴である、紫色の肌、白目の部分が赤く、金眼で、かつ、オーガと遜色の無い角を持っていた。その結果、同じ魔人族からも、他の種族からも虐めを受けて育ってきた。幸いにも、彼女は魔法適性が飛び抜けて高く、かつ惨めな人生を覆す為に魔法の特訓を重ねて来た。気が付けば魔人族の長にまで成り上がっていた。更に、レイが彼女の存在を嫌がる事なく認めた為に、魔法兵団として働く事を快く受け入れる下地が出来たのだ。
『初代は……誰かに認められたかったのだろうな。それが例え、沢山の犠牲を伴う戦争であっても。』
魔人族の軍団は、炎の魔法を駆使して、鉄器兵団側の街を焼き付くした。助けを求める者すらも炎で焼き、それらを指揮するランは、いつしか東方の魔女だとか、フレアードエンプレスだとか渾名される存在となっていた。因みに同じ幹部だったミクニ・ナスカも炎使いで役目が被っていた関係でライバルかつ親友の関係だったと言う。
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『ミクニ氏とは互いに迫害にあったと言う共通点があってな、初代がこの地で国を拓いた後も交遊があった。隣国ミクスネシアの初代大統領にミクニ氏が就任してから数回、大戦後に顔を合わせていると記録されておる。』
『戦友っていつまでも繋がりがあるって祖父さんが言ってたなぁ、辛い時期に共に生きた人間だから結び付きが強いんだって。』
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大戦末期、タイラー達との直接停戦交渉を経て、ランは悩みに悩んだ。彼女本人は大戦を止めるつもりは無かったのだが、魔人族達も長い戦いで嫌戦ムードが広がっており、これ以上は戦いに力を割けないでいたのだ。悩んだ末に、ランは未開の地へと渡って国を興す事を決めた。亜大陸は大陸から僅か百里の位置と言う近い所にありながらも、度が過ぎる程の潮の流れと海峡を吹く強風によって、年中温暖な赤道付近と言う好立地にも関わらず人の手が入っていなかった。ランは魔法使いの法力で船をガードしつつ亜大陸に進出、炎の魔法、風魔法を開拓に有効活用してランボウ王国開拓に成功した。
『行動力半端無いッスね。何もない場所に道を切り開くって相当な根気と体力を使うってのに、初代の時代でそれを成したんですね?』
『まあ正確には初代の頃は首都周辺の開拓が終わった程度だったがな。亜大陸と言うだけあって面積も馬鹿にならず、今でも三割程しか手を付けられておらぬ。広い国土故に、海岸線に都市を築くのが精一杯だった。』
赤道付近、手付かず……清蔵のイメージ通り、鬱蒼と繁ったジャングルからの開拓である、想像以上の難事業であった事は言うまでもない。魔法は強力な道具ではあるが、モノを運んだりするのはあくまで人力であり、体が弱い魔人族にとっては死と隣り合わせだったに違いない。
『国を拓く、統治する、これらは多くの人々の血と汗のもとに成り立っている、妾はそう考えている。だからこそ、せめて妾も民と同じ目線で世界を見たいと思っての、歴史博物館の案内役をやっておるのじゃ。』
『陛下はお優しいんですね……』
『いや……初代からの苛烈な歴史を考えて自重するようになっただけの話よ。』
そう謙遜するアナベルだったが、清蔵は誠実だなと素直に感じた。法の整備が元世界に比べて整ったとは言えない世界で、上に立つ人間がこれほど身近に民と接する等、パフォーマンスにしろ中々出来るものでは無い。
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謁見、歴史博物館見学が終わった清蔵は、テイルと二人で城内の一角のカフェテラスで昼食をとっていた。手入れが行き届いた中庭を一望出来るカフェテラスは、観光客に人気のランチポイントで、ちょうど太陽が真上に来た時間と言う事もあり、ほぼ満席だった。各国様々な見た目の観光客がいる中、やはりテイルに視線が注がれる。白いが血色の良い健康的な肌は薄くきめ細かく、水牛のものを小さくした角は、愛らしい童顔を引き立たせる。対照的に成長著しい胸から尻のラインは、男と言う男の目をひき、女からは羨望と嫉妬の混じった目で見られる。そんな美女がフォークを刺して南国フルーツを運ぶ先には……
『あーん♪んっまぁい!』
その美女に似つかわしくない強面なマッチョ男が崩顔しながらそれにパクつく姿が。美女と野獣だなと周りがヒソヒソ話すのも気にせず、間の抜けた幸せそうな表情を浮かべてランチを楽しんでいた。
『えへへ、せぞさんおいしいね♪』
『ほんとにね、最高ですとも!』
体を密着させ、見せつけるように(二人共に全く自覚は無いが)イチャイチャしている様を見た観光客カップル達は、それにならいイチャイチャしだす者、バカップル〇ねと中指を立てる者、赤面しながらその一部始終を目に焼き付けようとする者に分かれたが、清蔵達の注文するメニューが普通に旨そうで同じメニューを頼んで行った結果、カフェ的には良いお客さんとなったと言う。その後我慢出来なくなった清蔵は、公衆トイレにてテイルとセッ
『してねぇ!渡〇じゃねぇんだから!つーか浮気でもねぇし!ラブホで10回やっただけだし!』
やる事はやったのは事実のようである。
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誤字脱字修正をやっていて話を投稿できぬぅ!後、ボクシング熱が再燃してそっちに意識が行ってるのも要因です。井上対バトラー戦ほんとに実現しねぇかな?日本人初の四団体統一王者とか誕生の日には自分の事のように喜んで飲めない酒飲んでやるぜ!