本官、異世界で署長になりました!   作:劉鳳

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本来はミクスネシアの話は一話で終わらす予定でしたが、書いてるうちに肉盛り酷くなって二話に分けようと思い至りました。


第49話 ミクスネシア

 

 

旅行三日目。清蔵はランボウ王国から出ている定期便に乗って、タイーラ唯一の島国国家ミクスネシア共和国に渡る。大陸側の旅行の定番で、ランボウ→ミクスネシア→ランボウと言うルートは主に両国の首都圏をシャトルしながらビーチで過ごすと言う若いカップル向けの旅行ルートだ。尤も、日がな一日イチャイチャしている二人には何処でもよいのだが。

 

ミクスネシアの首都、カヤ・ナスカは、ランボウ王国首都ジョンヌから距離にして僅か120kmのミクニ島全域を差す。ミクスネシアは大小二百の島からなる島嶼国家であり、面積は九州と四国を合わせた位、人口一千万程の小国である。

 

この国家の人種はピクシーや獣人が大半を占めており、ファンシーな雰囲気を醸し出している。共和制国家で明確な身分制度が撤廃されたミクスネシアの首都、カヤ・ナスカの人口は三百万、タイーラ主要都市で七番目の規模を誇る。

 

『獣人やピクシーばっかでディ〇ニーの世界みたいだなぁここ。』

 

清蔵が某団体に消されかねないワードを口にしてしまっているが、目の前に映る城が、某テーマパークの城にそっくりだったので仕方ない。そう、ミクスネシアには城が存在している、現在はアメリカのホワイトハウス的ポジションで、大統領の居住地が敷地内に存在する。しかし清蔵にはそれ以上に気になった事があった。

 

『ねぇ、ここの獣人さん達、より動物的見た目してるなぁ。うちらの所はケモ耳としっぽ着けたヒューマって感じのが大多数なのに。お陰であっちのリボン着けたネズミのお嬢さん、まんまミ〇ーちゃんだし。』

 

清蔵、やめろ、消される!

 

 

ミクスネシアの獣人は厳しい島の環境に堪えてきた種族であり、大陸側の獣人に比べて元生物に近い姿をしている。因みに大陸側の獣人も、サバンナのような場所出身の獣人はその傾向が強い(サカサキのライオン公安さんとか)。しかしここは比率が殆どと言って差し支え無い為、某テーマパークを想起させてしまうのだろう。

 

『あっ、見て見てせぞさん、あの娘フェアリーじゃない?可愛い♪』

 

ピクシーの変異種、フェアリー。背丈はヒューマの三分の一程、背中に昆虫の羽を持つ、天族と共に、特異な進化をした種族である。特徴としては、人形のような愛らしさ漂う顔立ち、体長の割に手足が長い事か。

 

『リアルティン〇ーベルだ、凄いわこの国。』

 

アウト!スリーストライクルールならもうアウト!

 

 

異世界旅行って感じがより強くなりました、はい、清蔵であります。ランボウ王国を渡ってミクスネシアに行ったらそこはリアルディ〇ニーランドでした!ファンシーな見た目の人々が行き交う様はランボウ王国以上に驚きであります。つーかここの人々可愛いのなんのって、テイルちゃんずっと可愛い可愛い言って興奮してるのよ、子どものようにはしゃぐ君はもっと可愛いよ(馬鹿)

 

さて、ミクスネシアの首都がこんなにランボウ王国と近いなんて、びっくりしてるよ。近くて遠い国ばっかの元世界の近隣情勢とは大違い。だからランボウ王国の魔人の観光客も目立つね。しかしファンシーな見た目とは裏腹に、屋台で焼かれてる匂いは、ワイルドな香り……うぉっ!豚の丸焼きが!大きさは元世界の豚よりやや小ぶりながら、あんなでかいのを丸焼きとは……やべっ、腹が減ってきた。テイルちゃんもお腹空いてるのか、丸焼きに釘付けだ。

 

『テイルちゃん、あれ食べる?』

 

『うん♪ちょっとお腹空いたけんね。』

 

よっし、ならば丸焼きの屋台の列に並びましょうかね。うっ、こう並ぶと観光客以外みんな身体小さいな。獣人も大陸側の人と比べて小柄、ピクシーは元々小柄、観光客も魔人が多いので俺達カップル大男大女扱いでじろじろ見られてるよオイ……

 

『キャッ!』

 

どうしたのテイルちゃん?!ってオイコラァッ小僧!テイルちゃんの極上ピーチに顔埋めんじゃねぇ!げんこつじゃ!

 

『いでっ!何すんだよ!』

 

こっちの台詞ですはい。君、女の子のお尻に許可なく顔埋めるのはセクシャル・ハラスメント!そして強制猥褻だこの野郎!

 

『ん、んなこつ言っても……そんないいお尻みたら顔埋めたくなるじゃんよ……』

 

マセガキィ!気持ちは分かるがやっていい事と悪い事があるだろうが!ナハト・トゥならそのまま現逮してるが、ここは海外、次やったら知らねぇぞ……

 

『いやだぁっ!この子胸も揉んだよ?!』

 

『小僧、死にたいらしいな?まぁ極上の身体に触れたんだ、未練は無いな?』

 

『ぎゃあ!いっ、いてててて!腕を捻らないで!』

 

孤〇のグルメ(ドラマ版)のアームロックだ!身長差がある程有効なこいつをお見舞いしてやったぜ!

 

『おっ、お兄さん落ち着いてくれ!うちのせがれが申し訳ない事をした!』

 

ん?丸焼き作ってるおっちゃんじゃねぇか。まっ、まぁ丸焼き食いたいし、後々うるさいの嫌だし、アームロック解除してやっか。

 

『いてててて……隙あり!』

 

『いやん!』

 

『くぉぞぉおおおっ!!ぶっ殺す!!』

 

 

『……本当に申し訳ない!』

 

『いや、もう懲らしめ尽くしたのでおやっさん、顔上げて下さい。それに一番旨い部位をしこたま頂きましたんで。』

 

豚の丸焼き屋台の店主の息子(狼の獣人、10歳)にテイルがセクハラを受け、アームロック+内股+腕ひしぎ十字固めのコンボで制裁した清蔵。父親の説得と、丸焼きの極上部位であるバラとロース部分をご馳走になる事で落ち着いた。

 

『しっかしおやっさんの生真面目さと裏腹にとんでもねぇエロガキだよ!テイルちゃんのおちりは俺だけのものだ!』

 

『ボソッ(キモッ)……ってててて!』

 

『今度は背負い投げ食らわすぞ小僧!』

 

テイルが絡むと、怒りが抑えられない清蔵、特に性的な嫌がらせに対しては過剰に過ぎるきらいがあった。

 

『女の子は守るものって考えは古い考えだとは思うけどさ、体力差考えたら男の方がどうしても強いわけよ。いいか小僧、女の子が嫌がる事はするもんじゃない、お前が男ならな。』

 

若干説教臭くなったのはおっさんだから仕方ない。清蔵としては刑法により人を捕縛する人間である、不埒な行為に関しては厳しくなるのだ。少年は黙って清蔵の説教を聞き、少年の父親も少し涙ぐみながら聞いていた。

 

『うちの妻が早くに亡くなってねぇ、男手一つで育ててきたんですがね、私の教育不足で迷惑をおかけして申し訳ない。』

 

『謝らなくていいですよ、物心ついたばっかの少年の不徳はまだ善悪が良く分かって無い訳ですから、少々痛い目見たらきっと反省しますって……出来るよな?少年。』

 

『う、うん。お姉ちゃんごめんなさい、おじさんごめんなさい!』

 

『お兄さんだるルォ?!』

 

『ひぃぃ!!ごめんなさいぃ!!』

 

『せぞさん!落ち着いて!ね?』

 

 

『せぞさん、落ち込まないで。』

 

『ぐすっ、どうせあちきはおじさんでごぜぇますよ……』

 

カヤ・ナスカの宿の部屋で落ち込む清蔵と、それを慰めるテイル。ナハト・トゥ警察署においては日常の風景を、旅行先でも見せる形になっていた。清蔵はおじさんと呼ばれるのは好まない。元々濃い顔故に年より老けて見える顔でコンプレックスだったのだ。

 

『せぞさん、私は気にしないからね。誰がなんと言おうと、せぞさんはせぞさんだよ?』

 

『おお、天女が、天女がおる!』

 

涙目になりながらテイルの胸に飛び込む清蔵。テイルは優しく受け止め、清蔵の頭を撫でてやる。次の瞬間にはご機嫌が治っている、単細胞である。

 

『うふふ、ご機嫌治ったら、お風呂にする?』

 

『いいですともおっ!!』

 

今夜もお盛んだった。

 

 

四日目、清蔵達はカヤ・ナスカを改めて観光する事にした。宿屋の主人からここのオススメ観光スポットを聞いていたので、足は迷いなくそこへ行く。その場所とは、ミクニの永遠焔(とわひ)と言われる大きな聖火台が建てられた闘技場だった。

 

『凄ぇ、コロシアムだ。サカサキのは運動競技場って感じだったけど、こっちはまじもののコロシアムだよ。』

 

初代大統領ミクニ・ナスカの時代に造られた闘技場。ここは武器を持った戦士と杖を持った魔法使いによる本気の殺しあいが催される場である。闘技場最上段にはミクニ・ナスカの火炎魔法により灯されたと言う、消えずの聖火がゴウゴウと燃え上がっていた。

 

『でも今日は闘技は無しみたい……でも殺しあいなんて見たくないから私はホッとしとるとよ。』

 

『そうだね……』

 

闘技場は週三回戦いが行われるのだが、あいにく休戦日に当たったらしい。休戦日は闘技場の端の区画にあるミュージアムが公開され、闘技場の歴史を見る事が出来る。

 

『うへぇっ、髑髏が飾られてるよ……』

 

ミュージアム入口は、初期の決闘者達の髑髏が飾られており、ここが血生臭い場所である事を嫌がおうにも知らされる。中に入ると、大きな斧や馬ごと叩き斬りそうな大剣が飾られており、特に目をひくのが割られた鉄兜だった。ここまで見て清蔵は気付いた。

 

『テイルちゃん、何か可笑しくない?魔法使いと戦士の戦いって言いながら、ここに飾られてるの、戦士の遺品ばっかだよ?』

 

清蔵の指摘通り、戦士の遺品は飾られていながら、魔法使いの遺品は一切無いのだ。書かれている説明も何処か偏っている。例えば、〔愚鈍な戦士の斧を掻い潜り、俊足の魔法使いが炎の魔法を叩き込み勝利〕等、あからさまに戦士に対する敬意が無いのだ。

 

『ミクニって人は、よっぽど大戦の時に戦士に嫌悪感でもあったのかねぇ?』

 

『旅の方、我が国の歴史に興味がおありか?』

 

このミュージアムの館長らしき人物が声をかけてきた。清蔵は素直に興味があると答えると、館長は奥に二人を案内してくれた。

 

『共和制国家ではありますが、表向きはミクニ・ナスカを神格化し過ぎた国故に、歴史を知りたい方はこうしてバックヤードで説明しないと過激な信奉者が色々うるさくてですな……』

 

『色々大変なんですね……』

 

 

十英雄の一人、ミクニ・ナスカ。魔法適性の高いピクシーである彼女はかつて存在した大国、トマヤシア連邦の出身であった。トマヤシア連邦は魔法使いを重宝する国家ではあったが、種族間の差別意識が強く、体格の小さいピクシーは特に見下される傾向にあった。子どもの頃からいわれの無いいじめを受けてきた、12歳の時には街の悪ガキ達にレイプされると言う辱しめを受けた。それらの人間は魔法もろくに使わない力だけの存在……ミクニの中で魔法を使わぬ人間に対する嫌悪感が出たのはこの頃からであった。

 

『女性の性的被害によるトラウマってのは、心にとんでもなく深い傷を残すものだからね、あっちの世界では亜由美さんが被害者のサポートを積極的にやってたから性被害の実体験はかなり聞いているよ、ひでぇもんだよな。』

 

 

ミクニが13になる頃、トマヤシアを離れ、単身武者修行に旅立った。高い炎魔法の適性を伸ばし続け、僅か二年程で無詠唱で意のままに操れるまでになっていた。故郷トマヤシアへと帰る道中、レイーラ率いる魔法兵団にスカウトされる。

 

魔法兵団の長が魔法適性が凡庸と言われるヒューマである事に最初は警戒していたが、レイーラが素直にミクニの炎魔法を認めた事、魔法兵団は出自に問わず、魔法力のみで上に上がれる事等、ミクニにとっては生きる証を証明出来る最適な場所であると感じ、魔法兵団に入った。火焔姫と渾名される程の強力無比な炎熱魔法で大量の屍を築いてきたミクニ。

 

しかし、次第に自分を認めてくれたレイーラとの軋轢が生じ始めた。大戦後期になってから、レイーラとレイオウの穏健派両名が鉄器兵団との終戦交渉をしようとしている事を知った。ミクニは自身が虐げられてきた種族であり、鉄器兵団側との終戦は無いと思っていた、しかし、レイーラ達がそれをする……多数派種族の人間である彼等との違いを感じた彼女は、終戦交渉の使者を敵味方問わず屠り続けた。

 

『エキセントリック過ぎだよな魔法兵団側の強硬派って……』

 

だが、レイーラ自身が鉄器兵団側へと赴く事によって、それらの行為に終止符が打たれた。ミクニ自身は納得しない形で大戦が終わり、レイーラやレイオウ、鉄器兵団幹部との繋がりを嫌って、未開の島嶼部へと部下を引き連れ、ミクスネシア共和国を築き上げた。闘技場の焔は、ミクニが大戦で不完全燃焼だったと言う意思を顕在化させたエゴであり、決して平和の灯火では無いのだ。

 

 

『……そう言った事実を余り公にしなかったのは、建国の母であると言う事実は無視してはならないと国民が感じている事、そして……闘技場での戦いは、決闘ではありますが、魔法使い側が勝つように仕向けられたパフォーマンスにございます。』

 

『プロレスかよ……いや、プロレスより酷いな。プロレスならヒールでも勝利する事が珍しく無いのに、それじゃただのいじめじゃねぇか。』

 

『ミクニ様の子孫であるナスカ一族が闘技場を経営しておりますので……』

 

『どんな奴らなんだろ?ちょっと顔を拝みたいな。』

 

清蔵が軽いジャブのつもりでそう言うと、館長が耳打ちするように清蔵に話をした。

 

『ナスカ一族の穏健派、ミクル様なら気軽にお会い出来ますよ。何と言ってもこの国の治安維持のトップなので、彼女と顔ききになっておけば、ミクスネシアのどの辺りが危険か安全か把握しやすいですので。』

 

『うん、そうする。館長さん、ありがとうございます。』

 

 

ミクスネシア共和国初代大統領ミクニ・ナスカの子孫であるナスカ一族。数代に一度の頻度で大統領を輩出し、政治の中枢に今なお深く関わり続ける国の顔。治安維持、つまり警察組織の統括をしているトップ、ミクル・ヤヨイ・ナスカ。22歳の若年ながら、明晰な頭脳でミクスネシアの治安を守る有能な女性である。

 

『どうも、カン=ム帝国自治区の警察本部で本部長をしております、児玉清蔵であります。』

 

『本部長秘書官をしています、テイル・オーガスタです。』

 

『初めまして、ミクスネシア共和国治安維持本部長、ミクル・ヤヨイ・ナスカです。』

 

清蔵は自らの身分を明かして話した。治安維持部隊と言う響きはとても穏やかな響きとは離れたワードだったが、話を聞くと、自分達警察とやっている事は変わらないようだった。

 

『私の家系は代々政治家になっている人物が多いですが、どうも私は身体を動かしている方が性に合うもので、このような役職についていますの。』

 

『奇遇ですね、俺もそうです。でも俺の場合は頭が無いものですから、体力仕事をして汗流すのが好きだってだけですが。』

 

『でも貴方の動きを見てると、とてもキビキビしてらっしゃるわ。私の部下達にも見習って欲しい程だわ。』

 

ミクルの言葉に、少々照れた。元々あまり誉められ慣れて無いのもあったが、素直に自分達と近い波動を感じたのもあった。異国の警察の情報交換をしようと思ったのは自然な流れだったのかも知れない。

 

『成る程、警察と言う組織は、対象をなるだけ殺さずに拘束する技術に優れているのですね、もし良ければですけど、貴方様達の逮捕術と言うもの、ご教授出来ませんか?』

 

『テイルちゃん、どうする?』

 

『いいんじゃない?その代わり、こちらの治安維持の様子も見たいなぁ。』

 

テイルの言葉を聞き、清蔵はその要望に応える事となった。サカサキ以来の、異国の警察の様子を見れる機会も得られた清蔵としては、快諾以外の言葉が出なかった。

 

 

 




都合良く警察或いはそれに似たり屋な組織に会ってますが、清蔵は聞き込みをする人間なので必然的に都合良く会うと脳内補完してくれたら幸いです。
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