本官、異世界で署長になりました!   作:劉鳳

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長い事エタって申し訳無い……


第50話 異国の警察交流

 

治安維持に属する組織、それが他国との交流を持つ事は、軍と違いそこまで多くない。一応、インターポールと言う形で交流と言うか情報交換をする事はあるが、警察はあくまでも国内の事件事故の解決に注力する組織故、中々交流機会は無い。特に逮捕術に関しては、国により毛色が違う為、初動から終動に至る経緯も変わってくる。

 

日本の警察に於いては、犯人を殺す事は稀であるが、アメリカ等の銃社会では射殺を前提に動く事も珍しく無い為、初動の時点で指に引き金が食い込んでいる状態もしょっちゅうである。清蔵がナハト・トゥで広めたのは、日本の警察における逮捕術。妄りに拳銃を抜けぬ日本国では、犯人を如何に怪我無く捕らえるかを考えて行動しなければならない。中には凶悪犯故にやむなく射殺をした警官が始末書を書かされるという例もあると言う。治安が良すぎるのも問題である。

 

清蔵達はミクルに連れられ、治安維持隊の本部に来ていた。大規模署もかくありやと言う大きな建物に、人員四万名が出入りする様は圧巻だった。

 

『おお、やっぱ首都ってのもあるけど、デカイな。しかも警察と言うより軍に近い。』

 

『うん、山田さんとこのサカサキの保安所も大きかったけど、ここも人が一杯だね。』

 

『ミクスネシアは軍を持たない代わりに、治安維持隊が代行しているようなものだから、他の国の治安維持組織に比べて装備は多いのです。』

 

清蔵達の世界にも、軍を廃止した国はあるが、それは武力を持たないのではなく、警察に能力を一本化させたと言った方が正しい。どこぞの反戦運動家が何を勘違いしたか日本も自衛隊を無くして無防備になれとのたまわっているが、軍が無い国の警察は警察が軍並の装備を固めている事実には目を背けている。こう言った武力を必要悪と言う輩もいるが、あからさまな暴力に対し、話し合いが通じない相手に対しての力はあるべきであると、清蔵は警察学校時代に叩き込まれた。

 

『にしてもガタイのいい人の多いこと……ピクシーが魔法キラキラってイメージしてたけど、ちゃんと俺らのとこみたいに体鍛えてる人間が多くてびっくりしてるよ。』

 

『魔法はとても被害を生みやすい上に、使う方としても隙が大きくてかなり難しいんですの。それに下手人は出来る限り生きて捕らえたいので加減がしやすい武器戦闘術を習得する意義は高いのです。』

 

『合理的な考え方ですね。しかし闘技場の館長いわく、戦士は差別されていると聞きましたが。』

 

清蔵は敢えてストレートに聞いた。現場をこうして自分の眼で見たからこそ、差別に対する違和感を隠さず言いたくなったのだ。ミクルはやや憂いを帯びた表情を見せると、この国の現状を治安維持側の視点から話し始めた。

 

 

魔法使い、それも稀代の使い手たるミクニ・アスカは苛烈な人間だった。しかし連合国の一国として、あからさまな差別は自分達の国の品位、ひいては魔法使いの品位を下げると考えた彼女は、王位を持たない国の代表が政のトップとなり、一見すると差別の無い世界を作り上げた。しかし、人種を越えた雇用の殆どを魔法使いの末裔らで執り仕切った結果、人種間の差別は無くなった代わりに、魔法を使わぬ者への差別が広がった。これはひとえに、ミクニが大戦により鉄器兵団への嫌悪感を終生取り除けなかった事、初代大統領としてではなく神格化された火焔姫の意向をよいしょし続けた官僚達の影響が大きい。

 

『……尤も私は、世界情勢を子供の頃に仲の良かった友達のドワーフのお兄ちゃんとお忍びで旅行に行って、初代の考えに全然共感出来なかったんですけど。それに、大規模な戦争が終わって、小競り合いレベルの騒動を止めるのに、殺傷力の強い魔法で撃退する程の過剰な力に危険性を感じましたの。だから私は私の考えで、魔法だけじゃない、きちんと武器戦闘術を駆使した治安維持を推し進めてきたのです。』

 

『立派だなぁ、貴女は。しかし他の一族の方達はどう思ってるんです?』

 

『あっ、それについては心配無いですわ。ピクシーは決して体は弱く無いのに、魔法ばっかに頼ってた身内は弱いから力でわからせましたわ。こう見えて私、体術得意なので。』

 

そう言うと軽く力こぶを作って見せた。細身で小柄なピクシーにしてはつくべき所にしなやかな筋肉が付いている。それに加え彼女はピクシーとしては長身(163cm位)であり、強化魔法をその鍛えた体に纏わす事で、魔法主体のミクニ一族を文字通り力で黙らせたのだ。

 

『なっ、殴り僧侶的な……』

 

『ははっ、嫌ですわねぇ、インテリ戦士なんて♪』

 

『そんな事言ってない……なんねこの人……』

 

『まっ、まあ気難しい人間じゃないし良いんじゃない?悪い人じゃないし。』

 

 

どうも、旅行(と言う名の始末書処理)で今ミクスネシアに来ています、自称警察本部長の清蔵です。いやあ、ミクスネシアの警視総監(うん、俺個人の認識ですが)、きちんとしてんのか抜けてんのか分かんない人だなぁ……ただね、この人四万人もいる首都の警察達のトップ張るような人間だからね?部下達の前では滅茶苦茶恐れられてる鬼の指揮官って空気出すのよ、ギャップ凄いのなんのって。しかし俺の世界の逮捕術をご教授願いたいなんて……いや、軍隊の無い代わりに軍の機能を兼ねた警察を持つコスタリカ並の武装っぷりと言いますか、警察が弩弓だの投石機だのクロスボウだの、それプラスで魔法って……どう考えても警察じゃなくて軍です、ありがとうございました。うん、やっぱ俺ってまだまだこの世界の警察や軍の事を良く知らないって事なんだな。テイルちゃん共々またひとつ賢くなりました……って何失礼な事いってんだ、テイルちゃんは賢いだろ?

 

 

『皆の者、今日はカン=ムのナハト・トゥからやって来たこちらの二人が、我が治安維持隊と交流をしたいとの事だ!二人はカン=ムの自治区において治安を向上させた実績がある者故、学ぶ事もあろう。』

 

ミクルが治安維持の最高責任者らしい威厳を以てそう口にする。治安維持隊はミクスネシアの多数派であるピクシーが多くを占めているからか小柄でやや細身ながら、しっかりと統率は取れているようでビシッと敬礼をする。清蔵とテイルも警察の幹部らしく彼等にきちっとした敬礼で応える。因みに治安維持を行う者の場である為、二人共露出の高い着衣から念の為に持ってきていた制服に着替えている。

 

『はじめまして、私はカン=ム自治区の警察本部長を務めています、児玉清蔵と申します。ミクスネシアには旅行で来たのですが、職務柄治安維持を行う貴方がたに興味を持ちまして、こうして交流の場を、治安維持隊の大隊長であるミクル氏にこの場を設けて頂きました。』

 

未だに慣れない人前での挨拶だが、二年の間に少しずつ様になってきたようで、治安維持隊の面々が侮るような目を向ける事は無かった。むしろ、肉体錬成を続けてきたきびきびとした動きに見惚れる者すらいた。清蔵は続けてナハト・トゥをはじめとしたカン=ム自治区の治安維持の現状を伝えた。清蔵が持ち込んだ日本流の警察のスタイル、機動隊、警備部と言った特殊業務の存在、奉行所や弁護士と言った職種との連携等、事細かく話した。話を聞くうち、治安維持隊の隊長格の一人が質問する。

 

『基本的には街のいざこざに対しての仲介や警戒が仕事のようですな。しかし機動隊ですか、中々に興味深い。』

 

清蔵は機動隊について詳しく説明する。機動隊は通常の警察が手を出せないであろう武装組織に対する特殊業務を遂行する、故に言ってしまえば街単位における軍等に近いものである。軍との違いは、常に配備されている訳では無く、非常事態が宣言されぬ限りは出動せず、装備も軍程大掛かりでない事位か。

 

『まあ警察にしろ軍にしろ、国や自治体から許可を得て武装をしている訳だから、法に則り動かねばならないってのは変わらない訳だけどね。』

 

『成る程……しかし気になるのは警備部……どのようなものなのですか?』

 

また別の隊長が質問する。警備部は俗に公安警察とも呼ばれる部署で(公安調査庁とは違う)、テロ組織、あるいはそれに準ずる組織を取り締まる為に置かれている。テロを未然に防ぐ事を主目的とする為、組織に動きが無い状況でも潜入、尾行、諜報活動を行う為、警察内部の人間ですら内情を良く知らない事が多く、元世界では評判が宜しくない。清蔵は秘密にする範囲を限定的なものとし、あくまでも一部署が宜しくない状況にならぬように気を遣っている。この辺りはサカサキにて公安を執り仕切っている山田の遣り口を多く参考にしている。

 

『尤も、上層部にすら秘密秘密と極端な事していたら裏との繋がりを疑っちゃうけどね。元々ナハト・トゥと言う小さな町単位の治安維持が我々の本懐だから、警備部の仕事はほんとに限定的になってるよ。』

 

『うむ、納得致した。ところで児玉本部長、大隊長から聞いたのだが、貴方はかなり高い戦闘技術を持っていると聞いた。もしも宜しければご教授願いたい。』

 

隊長格の中でもかなり体格の良い青年が前に出てきた。ミクスネシアにも少数ながらいる剛力族の人間だ。縦幅はそうでもないが、横幅がかなり大きい。魔法の扱いが限定的な治安維持隊における主要な肉体派の隊長なのだろうと察した清蔵は、その求めに快く応じた。優しくも強い眼差しを向ける清蔵に対し、隊長格の男は好印象を受けた。

 

『ミクスネシア治安維持隊第五中隊隊長、タカマサ・キチダだ。魔法に偏重しがちな我々治安維持隊における異端児が特に集まった部隊ではあるが、清蔵さん、貴方の動きはかなり参考になるやも知れん。』

 

『確かに、貴方の指揮する部隊はドワーフやオーガと言った肉体派がかなり占めている、ならば杖術と体術を不束ながらお教えしましょう。』

 

 

『アアリャッ!!』

 

『フッ!!』

 

『ガフッ!!』

 

『『『オオオッ!!』』』

 

清蔵が殴りかかってきた隊員の腕を取り、そのまま流れるようにひっくり返した。合気道の技の一つ、小手返しである。

 

『力だけで向かって来る者はこのように鎮圧出来ます。因みにこれは基本技の一つで、応用すると武器を持ったままでも掛けられます。』

 

『うす、次お願いしゃす!!』

 

気合い十分な剛力族の若者が掴みかかるような動きで清蔵に突進してきた。清蔵はすかさず懐に入り込み、大腰を放って無力化した。

 

『ウグッ!強い……』

 

『相手の動きを止めるのは力ではなく流れるような動き。攻撃を受け流して相手の力も利用するように技を掛けるんだ。』

 

清蔵の得意とするのは空手だが、警察に入り大方の武道を修練している。清蔵としてはそうは思っていないのだが、空手以外のセンスも天性的なものだと武道の先輩である濱田のお墨付きを得ているのだ(勿論清蔵は全く知らない)。

 

『うーっし、じゃあ今度は某が!』

 

『うむ、掛かってきなさい。』

 

清蔵は次々と若手を中心にして指導していく。その様を横目でニコニコしながらテイルが見つめ、ミクルもうんうんと頷きながら見守っていた。

 

(ふふっ、せぞさんの周りにはほんとに人が集まるね☆でも当然よ、せぞさんは魅力的な人だもん。)

 

(知らず知らず、人がああして集まって行く……真似して出来るものではない、彼自身の持つ魅力ね。)

 

 

『児玉清蔵さん、本日はありあしたっ!!』

 

『『『ありあしたあっ!!』』』

 

『こちらこそ、勉強になりました、ありがとう!!』

 

僅か半日程で治安維持隊と仲良くなった清蔵。レクリエーションが終わり、ミクルが改めて二人を連れて街中のカフェへと招待した。ミクスネシアの海を一望出来る場所にあるカフェ、ランボウ王国との国境になっているランネシア海峡の速い潮の中で育った海鮮料理と共に、清蔵の世界となんら遜色の無いコーヒーが出てきた。それらに舌鼓を打ちつつ、ミクルが言葉を掛ける。

 

『せっかくの旅行だったのにごめんなさいね、でも凄く勉強になったわ。』

 

『こちらこそ貴重な時間をありがとうございます。なんだかんだ言いながらも俺は体動かすの大好きなんで、力になれたなら嬉しい限りですよ。』

 

そう応える清蔵。南国の日差しですっかり黒くなった肌は、鍛えた肉体のラインをよりくっきりと浮かばせている。

 

『せぞさんはやっぱり働いてる時の顔が一番輝いてるよ♪』

 

テイルは笑顔でそう返す。二人で二つの国を回って沢山の思い出が出来ただけでも幸せだったが、テイルにとっての一番の喜びは、清蔵の輝いてる姿なのだ。そんな二人の様子を見ながら、ミクルは改めて感謝の言葉を掛ける。

 

『お二人さん、ほんとにありがとうございました。もしまたここに来るような時は遠慮無く寄って下さいね!治安維持隊の大隊長としてではなく、ミクル・ナスカ個人として、貴方達二人とまたお話ししたいから。』

 

『いいですとも!』

 

『うん、宜しくね♪』

 

こうしてミクスネシアでの異国警察交流は無事に終わった。

 

 

『……ねぇ、せぞさん。』

 

『ん?どしたの……テイルちゃん……』

 

その日の夜、情事を終えた二人。まだ火照りが取れない裸体で清蔵を抱いたままテイルが言葉を発した。清蔵は計11回も達した反動でややトリップ気味なテンションで言葉を返す。

 

『あのね……今日はその……月の日なんだけど、まだ来て無いとよ……』

 

『……まっ、マジでごぜぇますか?』

 

テイルの告白にトリップ状態から即座に戻った清蔵。二年余りの交際期間、あれを死ぬ程した。しかし中々その時がこないものだから清蔵は『ん?俺ってまさか種無し?!』と若干涙目になっていた。だが、遂にその時が来た事を告げられた。清蔵は喜びよりも冷静に、

 

(つーか逆にヤバくね?ちゃんと赤ちゃんになるの?今日は11回も出したし、毎回テイルちゃんの可愛い〇〇〇の子宮に滅茶苦茶がん突きしまくったんだけど?!)

 

と、別の事を心配していた。ミクスネシアの海の潮騒がやけに騒がしく感じる程動揺した清蔵だったが、テイルの方はと言うと、

 

『ん?どうしたと?せぞさんは私との赤ちゃん、嬉しく無いの?』

 

と、うるうるとした目になっていたので、慌てて『ううう嬉しいいでっすとも!!』と若干どもりながら言葉を返した。清蔵はテイルが安心するよう、優しく抱きしめながら、その艶やかな唇に口づけを交わしながらその目を見つめた。

 

『大好きだよ、テイルちゃん。』

 

『せぞさん、私も……』

 

 

ミクスネシアでの夜を過ごし、再びランボウ王国へと渡り、最初に来たアシスの宿へと行く二人。肌つやもより良くなり、来た時以上にベタベタとくっつく二人の様子を苦笑しながらも、アシスは二人が旅行を満喫した事を理解したのか、その表情はとても明るかった。

 

『お二人さん、旅行、楽しんでたんだね!幸せそうな顔してるからすぐに分かっちゃった!』

 

『うん、ほんとに来て良かった、ね?せぞさん♪』

 

『そっ、そそそそうですとも!』

 

おめでたショックがまだ少し信じられないと言った感じが抜けきれていないものの、ずっとアホ面して幸せな顔をしていたのは清蔵だった。

 

『旅行最後の夜だから、ならばここで泊まろうと思って……』

 

『うん、空いてるよ♪お兄さん達がまたここに来るだろうって、料理の材料も奮発して集めたんだ。』

 

『おお、マジで?よし、じゃあいっぱい食べよう!そして夜のセッ……はテイルちゃんの母体を考えてお預けかぁ。』

 

『あの……なら、ママがパパにやってたようにお口で……』

 

『フェラ〇オ?!初フェラ〇オ?!いいんですかお嬢さん!!』

 

『う、うん、せぞさんが喜ぶなら……』

 

『もう!このドスケベカップル!そう言う話はお部屋でしなさいよ!』

 

小さなアシスに叱られながら、二人は夕食へと向かった。様々な事があった旅行、清蔵はこの出来事を終生忘れないだろう、何故なら……

 

『オッフ!テイルちゃんのお口、気持ちいい、超気持ちいいっ!!』

 

最低な初めて記念も混ざったからだとは言ってはいけない。

 

 




有給満喫編、これにて終了です。テイルちゃんのご懐妊で清蔵が漸くパパになるのか?次話は今までの話の編集等でまた大分空くと思いますが、ボチボチと投稿は続けていきたいです。
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