本官、異世界で署長になりました!   作:劉鳳

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今更にイラッとするタイトルだと気付いた……


第6話 異世界で美少女と旅行なんて夢……そう考えていた時期が、俺にもありました。

 

 

うう…ワフラにあんたは働き過ぎじゃけぇ、比較的平和なエウロ民国に視察がてら旅行に行きなっせなんて言われて、署長の権限で断ろうと思ったら、過労死でんされたら溜まらんば、こっちは任せぃ!と、凄まれたから断るに断れ無かった。まっ、まあ俺達を信じろと言われて働いたらそれって裏切りと一緒なんだろうなとは思うけど。

 

自分では全然疲れを感じて無いんだけどね?いや、マジで。ワフラは結構長い時を生きてるから俺の不調でも見えてるのかな?まあ俺はテイルちゃんの手作り弁当のお陰で、体力も精力もビンビンなんで不調なんて感じ無いけど。と言う事で今俺は旅行の準備の為借家で着替えを整えてる所だ。黒のスラックスに白いワイシャツ、スーツはスラックスと同じ色合いのを前開けにして。普段着なんて持って無いので、通勤中に着ていたスーツと同じものを何着かあしらえて貰った。ついでに下着も……トランクスじゃないと落ち着かないので。支度を整えた頃に、可愛らしい元気な声が聞こえて来た。

 

『せぞさん、準備出来たよ!』

 

『エロ……』

 

ノースリーブで胸が開いた短めの丈の白いワンピース……素人童貞(そして精神年齢は13歳)の俺には刺激が強すぎる!と言うか改めて思う、テイルちゃん、かなりグラマー(上から98-65-90。ウエストが太いだと?身長は172cmはあるからウエストその位でも全然クビレよむしろムッチリウエストもろ好み)。ギャグ漫画なら大量の鼻血が飛び出す乳、尻、太ももォ!そして性格最高!俺のいた世界では殆どいなかった究極生命体的な存在(アルティメットシング)がそこにある、まさに天女……

 

『もう、せぞさんたら、エッチ!』

 

すんません……興奮し過ぎて後半部分声に出してしまいますた(乳、尻、太ももォ!辺りから)。でも当のテイルちゃんは照れながらも満更でも無い顔をしている……こんなん、惚れてまうやろ!しかし、もう35歳にもなる大の大人、極端な下意識は出さないように……っておい、Jr.!何スーツの上からもくっきり判る程主張してんだよ!とりあえずもち着け、いや落ち着け。すんません、テイルちゃん、トイレ行ってきます。

 

……ふぅ、どうにか落ち着いた。しかしエウロ民国ってなんだよ、それに視察?俺は改めて話に出ていた国の名前を思い出した。カン=ム帝国の隣国、この町からだとかなりエウロ民国寄りで歩きでも2日もあれば着く所にサカサキと言う、エウロ民国でも首都副都に次ぐ街があるって聞いたな(人口に関しては二番目らしい)。当然歩きで行く訳もなく、バッテリー充電がてら白バイで行く事になった。

 

バイク自体は高校の時に乗ってたし、白バイの航続距離と燃料タンクならば徒歩2日(夜歩かないから実質1日)の距離ならガソリンにも優しい。街道は土を押し固めたような簡素なものだったけど、アップダウンは無いと言うから問題無い。まあ街に入ったなら何処かいい宿を探して置いとかないと何かやられそうだけど。

 

ヘルメットは被らない事にした。テイルちゃんはラブリーな角のせいで被れないので気を遣ってそうしてる。美少女と2ケツとか非リア充な俺にとっては夢のような感じだけど、乗り物に乗ってる時は神経を尖らせるから余り楽しめないかな……荷物をカーゴに入れ、いよいよ出発。

 

『じゃあ、行くよ、しっかり掴まってて。』

 

『うん。』

 

俺はやや粗い土の街道を、感触を確かめるようにバイクを走らせた。エウロ民国、その都市サカサキ……何が待っているやら。うっ!テイルちゃんの双丘が背中に!馬鹿野郎、ここは運転に集中せぇ!!

 

 

〔番外編・‐邂逅・後編‐〕

 

 

俺は長耳の娘さん、名前はユウミと言う彼女に言われ、木尾田が住んでいると言う場所へと案内された。そこに行くまでに、街の様子を確認していく。中世ヨーロッパの大都市、そう言った印象…道行く人々は明るく、飲食店や服飾の店があちこちにあり、少し出た広場は噴水があり、街路樹があり、人々が各々の時間を楽しんでいる。ここは非常に治安が良いのだろう。暫く歩くと、住宅地のある場所にやって来た。2階から5階建ての煉瓦造りのアパート的なそれが並ぶ区画。ユウミはその一角の2階建ての建物に俺を招き入れた。彼女を疑う訳では無いが、警察の職柄、警戒心を持って建物へと入って行く。

 

入ったそこはバーのようになっていて、テーブルが2つと、カウンター席があった。元々そう言った場所を住居にしているのか、その逆か。なんにしてもまだ何の確証も持てない。ユウミはテーブル席の方で待っているように言うと、奥の階段へと登って行った。少し落ち着いたので、今の状態を確認する。懐には、オートマチック。こっちの世界に共に来たらしい。銃撃戦で2発撃ったので残り3発。後は警察手帳と電話。こっちの世界では役に立ちそうにない……後は着ている服だけ。ダッフルコートの下にスーツ、我ながらその手のセンスが無いな。暫く待っていると、階段からユウミと……まごうことなきあいつが共に降りてきた。俺は手の甲をつねってみた、やっぱり夢じゃない。木尾田雅人……俺はとにかくあいつと話したかった。

 

『どういう因果か分からんが、俺もこちらの世界に来てしまったらしい。見ろよ、お前と同じ場所を撃たれて死んだぜ。』

 

そう言う俺に、木尾田は薄く微笑みを浮かべたまま、俺の話を聞いていた。まだあいつは何も喋らない。俺は噛み締めるように話を続けた。

 

『お前が死んだ後、清蔵は魂が抜けたようになっちまってな。無理もねぇ、お前の一番の親友だったもんな。そしてお前の彼女……康江ちゃんだったかな?お前の死後、まるで人格でも入れ替わったようになっちまってな、大学出てキャリアになったよ。感情を捨てたマシーンのように被疑者を追う〔氷のロリータ〕なんて警察庁の連中にあだ名されてるよ。

 

俺は……お前を死に追いやった銃の密輸を手引きしていた左派のテロリストを追う為、公安に行ったよ。そして……そいつらを追い詰め、確保と言う所で、銃撃戦になり、俺は撃たれて死んだ。恐らく体はあっちにあるんだろう、お前の時と同様に。』

 

そう、木尾田の遺体はあっちにある。荼毘に付され、遺骨は墓に眠っている。俺の体も今頃清められ、霊安室に安置されている事だろう。故に、別の世界に飛ばされ、何故こうして五感が働いているのかが分からない。

 

『なぁ、木尾田。ここは何処なんだ?天国なのか?死んだお前と話せている時点でおかしい状態ではあるんだが……』

 

そこで初めて木尾田が口を開いた。3年ぶりだな。酷く透き通った声をしていた、同じ声の筈なのに。

 

『山田、本当に久し振りだね。ここは天国……と言っても、住んでみて良いところだなと言う感想の意味でだけどね。ここは僕らの世界とは違えど、きちんとした文明を持った所だよ……そう、僕は間違い無く死んだ……君がそう答えた事で、それが確信出来た。

 

僕は白戦会の事務所捜索の銃撃戦で死んだ後、目が覚めた時、何の因果かユウミの家の前にいた。彼女は何処の馬の骨か分からぬ僕を助けてくれた。今は……サカサキ市の役所で地域の整備をしながら生活をしている。君を連れて来てくれたユウミは……僕の妻となった。子供が1年前に生まれてね、今じゃあ父親さ。』

 

こちらの世界で宜しくやっている事をあっちに生きる二人が聞いたら、どんな顔をするだろうか?清蔵は想像出来る、単純に喜んでそうだ。しかし康江は……複雑だろう、こっちの世界で愛した男が女性と子をなしているなんて聞いたら……

 

じゃあ俺は……この先どうしたものか?暫し考え事をしていると、木尾田は優しく俺に道を標すような言葉をくれた。

 

『僕は役所の人間でね、地域保安官の方にも知り合いがいるんだ。保安官だから、やる事は警察と同じだね。公安でならした山田なら、きっと天職だと思うよ。』

 

『ありがとう……俺の、いや、俺達の第二の人生、しっかり楽しもう。』

 

そして俺は、サカサキ市の保安官として、地域の治安を守ると言う仕事に就いた。住居は役所の勧めで木尾田の住居の並びにあるアパートに住む事になった。ここの暮らしは楽しい。テレビもネットも無いけど、娯楽はあるし、食事も中々に旨い。ここに来て早くも10年以上月日が経過した。もう、あっちの世界に未練は完全に無くなった。……その、結婚もしたしな。可愛い女性と巡り会えたよ。

 

清蔵……お前の事だ、きっと立ち直って立派な警察官になってるだろう。だから、過去に囚われずに生きてほしい。それが向こうで死んだ俺達二人の願いだ。

 

 

 

木尾田の犠牲を出しながら、白戦会の幹部及び構成員を逮捕、日を改めた事務所捜索により、白戦会と繋がりのある左派テロリスト〔赤軍新党〕の存在が明らかになった。奴等は北朝鮮、ロシアと繋がりのある左派を仲介して、白戦会に武器を密輸していた。警察のデータベースにも存在しない赤軍新党と言う組織。しかし意外にも彼等が拠点にしているとされる場所は向日葵市と同県内、しかも隣接市町村である事を白戦会の幹部の一人から情報を得たと言う。

 

弔いの捜査、か。そいつらを捕まえてもあいつはもう帰って来ない。この前、奴の骨を拾って来た。木尾田雅人と言う存在は、百グラムあるか無いかの骨の欠片になってしまった。あれから俺は仕事に身が入らない。この前まで交番勤務から本署に転属して浮かれてたのが嘘のようだ。周りは俺に気を遣って、誰も退職を促さないでいる。

 

現在地域課所属だが、やってる事は雑用と事件の殆ど起こらない街のパトロール。どうやら、俺は出世コースに乗れないと判断されたのだろう。元々、公務員だから安定した収入があるって言う動機で入った口さ。漸く俺の望んだ世界がそこにやって来た、それだけの事だよ。だから、公安に行くと言った山田は、とても立派な奴なんだと常々思う。あいつは優しいから、厳しい言葉を言わずに、やる気が戻ったらまた何時でも連絡くれと言って笑ってたな。凄い奴だよ本当に。

 

そして俺は、山田の期待を裏切るように、やる気が戻る事無く、3年が過ぎた。署の方は公安が赤軍新党拠点を確保したとか言ってたけど、俺には興味無かった。俺は何時ものように仕事を終わらせ、帰り支度を済ませ、車に乗ったと同時に、山田から着信が鳴った。珍しいな、あいつから連絡なんて。そう思って電話に出る。

 

『もしもし、山田?珍しいねそっちから電話なんて。』

 

『あっ、清蔵君?啓将の母です。』

 

嫌な予感がした、木尾田の時以来か。

 

『……彼の身に何かあったんですか?』

 

『啓将は……殉職しました……』

 

信じられなかった。信じたくなかった。しかし事実としてそれは受け止めざるを得なかった。俺は山田が運ばれたと言う病院へと車を走らせた。霊安室に足を運んだ俺は、穏やかな顔で眠る山田の顔を見て、短く呟く。

 

『おい……山田……起きろよ……』

 

俺の心はその日、完全に空になった。

 

 

『……っはぁっ、はぁっ……くそっ、今度は山田の……』

 

エウロ民国のサカサキの宿で、俺はまた、空虚(ぬけがら)な頃の自分の記憶を夢として見てしまった。そう……木尾田だけじゃない。高校で一番の仲良しになった山田が、殉職したのだ。赤軍新党の抵抗にあい、銃撃戦による被弾……撃たれた場所は奇しくも木尾田と全く同じ場所。俺は親友二人の最期を見送ったが為に、完全に壊れたのだろう。

 

ベッドから起き上がった俺は、大量の汗をかいていた、2つの意味で。1つは悪夢、もう1つは……その……あられもない姿で寝息をたてているテイルちゃんが直ぐ横にいたので。かく言う俺は……全裸。あっあれ?!先っちょの亀が、なんかカピカピなんですけど!!

 

(ちょっ!えっ?!嘘?!オジサンもしかしてヤっちゃったの?!人間で言う15歳の女の子を?嘘だと言ってよ、バー〇ィー!!)

 

あの、ごめん、どういう事?俺は一旦テイルちゃんに背を向けるようにしてここまでの経緯を整理する。つーか悪夢とか何とか言いながら俺って奴は!空になったのは心じゃなくてザー〇ンかよ!

 

 

 

 

 

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