ファイアーエムブレム覚醒~Susanoh's lust sin~   作:昆布さん

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こないだ生協の売店で荒川弘がカバーイラストを描いた『ステップファザーステップ』を見つけたので書き出しをそれっぽく。


序章 よく似た男

――!――!

(ん・・・誰だ・・・?)

かすかに自分を呼ぶ声が聞こえる。

それに一瞬だけ意識が覚醒する。

そしてすぐまた暗闇へ。

さっきからかすかに聞こえていた声が、少しだけはっきりと聞こえた。

「あれ…?また気絶しちゃった?」

ああ、そうだよ。おやすみなさいだ。

 

・・・・・

 

次に目を開けた時、青年の嗅覚が焦げ臭いにおいをかぎ取った。

全身を走る痛みに少しだけ顔をしかめて立ち上がると、近くにいた少女が声を上げた。

「ちょ…そんな傷で動くなんて無茶ですよ!」

「問題ない…それより、これはお前が?」

青年が右腕を、そこにまかれた包帯を示す。

「ええ、専門的な知識とかはありませんけど、応急処置ぐらいなら何とか」

「いや、十分だ。礼を言う」

そういって青年は焦げ臭さのもとへと歩いていく。

「貴様は下がって居ろ。手当の礼に賊を追い払う」

らしくない。胸中でつぶやきながら青年は右手を前にかざす。

「早く行け」

「はっ、はい…どうか無事で…!」

少女の声を背中で受けながら、青年は家を出た。

燃える市街地のため。

市街地を燃やす賊を討伐するため。

秩序を乱す害悪を葬るために。

青年の口が勝手に動く。否、意識せずとも言葉がこぼれる。

「我は(くう)――」

いつの間にやらその右手には青い鞘に包まれた長刀が握られている。

「我は(こう)――」

踏み出す足にはけがの残滓など感じさせない力がある。

「我は(じん)――」

青年の記憶にある自らの姿とは違う銀髪が視界をちらつく。

「我は一振りの刃にてすべての罪を刈り取り、悪を滅する――」

歩いてくる青年を賊の一人が見とがめた。

「何だてめえ?来るなら金目の物を持って――」

ざしゅっ。周辺の空気が一瞬だけひやりと冷え、次の瞬間賊は鮮血を撒き散らす。

「我が名はジン=キサラギ。推して参る!」

 

・・・・・

 

藍色の髪の青年が変わった意匠を施された剣を振るう。

眼前に迫るそれを賊が慌てて受け止め、力任せに押し返そうとする。

「どこの誰かは知んねえが、大の大人に腕力で勝てるわけねえだろうが!」

確かに腕力ではかなわないかもしれない。だが、剣と斧では得意とする土俵が違う。

「俺は負けん!」

青年は一瞬だけ力を緩め、つんのめった賊の首筋を薙ぎ払う。

「クロム様!ご無事ですか!」

端正な顔立ちの騎士に聞かれ、クロムと呼ばれた青年は大丈夫だ。と頷きながら次の敵に向かう。

「クロム!」

「なんだヨシュア!」

ヨシュアと呼ばれた赤毛の青年が稲妻を放って賊をけん制しながらクロムに叫ぶ。

「民間人が一人賊の真ん中にいる!」

何だと!?クロムが声を上げる。

そして次の瞬間、民間人を取り囲む賊が

一斉に凍り付いた。

 

・・・・・

 

「――ぐっ…!傷口が開いたか・・・まったく、本当にえげつないな、兄さんは」

脇腹から流れ出す血液。

痛みに気を失いそうになるのをこらえながら、ジンは周囲を囲む賊を睨み据える。

「お?なんだ?こいつケガしてるぜ」

「そいつは好都合だ」

「だな」

「たたんじまおうぜ!」

おう。と応えの声をあげて賊が次々に集まってくる。それを認識したジンはわずかに口元をゆがめた。

「あまり余裕がないからな…出し惜しみは無しで行く」

そう呟くや、ジンは青い鞘に包まれた長刀を抜く。

抜き放たれた刃はまるで氷のように澄み渡る。

その刀身はまるで空気を冷やしているかのようだ。

「起きろ…『事象兵器(アークエネミー)ユキアネサ』」

そしてジンは頭上で切っ先の方向を変えるように長刀を回転させ、それを足元の煉瓦に突き刺した。

「――『煉獄氷夜』」

冷気が地を奔り、瞬く間に賊の体は醜い氷像と化した。

「・・・ち。こんなもので…」

がくん。突き立てたユキアネサを杖代わりに膝をつくと、そのまま地面に倒れ伏した。

 

・・・・・

 

「お兄ちゃん、ねえ大丈夫かな?」

「ダメかもしれんな」

クロムと彼を兄と呼ぶ金髪ツインテールの少女の会話を聞きながら、ヨシュアは苦笑を浮かべていた。

先の戦闘では部隊の指揮をとっていたヨシュアであるが、彼自身先頭の少し前に拾われた身の上だ。

そしてそれ以前の記憶が存在していない記憶喪失でもある。

「おや、ヨシュアさん、何やら微妙な顔をしていますが、どうかしましたか?」

「・・・フレデリク…いや、なんかあのやり取りを聞いたことがあるような気がしてな。昔俺がいたところであんなやり取りがあったのかな…」

フレデリクと呼ばれた騎士は少しだけ苦笑していえ。と返す。

「あなたを見つけた時と同じやり取りですよ。それこそ一字一句たがわずね」

「道理で…」

ハハ。と乾いた笑いをもらすヨシュアである。

「あ!」

「気が付いたか」

「平気?」

「――あ、頭痛くなってきた」

途中からはっきりした自分が言われたのとまったく同じ言葉に頭痛を覚えながらヨシュアは様子を見守る。

(だがなんだ?あの男・・・見たところ簡単な応急処置は済ませてあるみたいだが、それにしたってあの傷であれだけの賊を一網打尽にできるものなのか?)

ヨシュアの疑問はそこまででは終わらない。

自分は主に剣を使うらしいが、魔法だって使えるし、先の戦闘では雷の魔法を併用して戦った。

「フレデリク、氷の魔法なんて知ってるか?」

「いえ、聞いたことがないですね」

む。とそこでフレデリクもヨシュアの考えていることに気付く。

「あなたよりも素性が知れませんね…」

「おいおい。少しでいいから俺のことも信頼してくれよ」

少しだけため息をつきながらヨシュアは足元に落ちていた薄い氷のかけらをちょうどコインをそうするように指で弾いた。

 

・・・・・

 

――声が、聞こえる。

――聞き覚えのある、懐かしい声。

――いつも聞いていたやさしい声。

――あの日失われたやわらかい声。

――どんなに怒声を浴びせられても、あの声が憎悪に染まっても、僕はあなたが大好きだった。

――兄――さん――

 

・・・・・

 

上半身を起こしたジンは少しだけ頭を振ってあたりを見まわした。

「兄さん…?」

「随分ひどいけがをしていたな。立てるか?」

「兄さっ…!」

そこまででジンの言葉が止まる。

それを不審に思ったクロムはどうしたと声をかけた。

「いや…知り合いと声が似ていたから取り乱しただけだ」

「そうか。俺たちが来るまで賊と戦っていてくれたらしいな。礼を言う」

「いや、けがの治療の借りを返しただけだ」

そして互いに名乗り合うと、クロムはジンに手を差し出す。

「見たところ行くところもないようだし、俺たちと来てくれないか?」

「・・・何故だ?」

「自警団にお前の剣術がほしくなった。それとこの村を守ってくれた礼がしたい、それだけさ」

まっすぐジンを見る曇りのない視線。それが幼い時に見た兄のものと重なり、ジンは少しだけ苦しげな顔になる。

兄とよく似た声。兄とよく似た目。それがジンの胸を締め付ける。だが、それは嫌なものではない。

そんな自分の感情を持て余しながら、ジンは首を縦に振った。

「いいだろう」




アトラスよろしく~ってわけじゃないですけど、マイユニの名前は過去作キャラからとりました。
今のところ一章まで書きあがっていますが。二章がまだ出だしなんですよねえ。
未だアジトにクロムが入ってないという体たらく。
レポート書きながらッてのはきついですなあ。
ではとりあえず、みんなの部屋でお会いしましょう。
ちゃおちゃおー。
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