ファイアーエムブレム覚醒~Susanoh's lust sin~ 作:昆布さん
と、言うわけで。
本編をどうぞ。
ヴァルム帝都に向けて進む連合軍は未来から来た子供達や力を取り戻したチキを加え、はっきり言って過剰戦力ともいうべきレベルに達していた。
立ちはだかる軍勢を蹴散らして一行は帝都へ向かう。
覇王と聖王の戦いはもうすぐそこまで迫っていた。
・・・・・
ゲン担ぎの為の髭を整えると言って出ていったセルバンテスを見送ると、ヴァルム帝国の軍師であるエクセライは背後を振り向く。
「いるんでしょ?」
その言葉にこたえるようにして、柱の陰からにじみ出るかのように一人の男が姿を現す、彼は帽子と前髪で隠した細い目をエクセライに向けた。
「首尾は良いようですね?」
尋ねる声にエクセライは頷く。
「すべては筋書き通りに進んでいるわ、予定通りのものがあたしの手に揃うのもそう遠くないわ、そうなったらその時は・・・くけけけ・・・」
妙な調子で笑うエクセライから視線を切ると、男は音もなくその場を立ち去る。
哀れな人だ。口をついた言葉を危ういところで飲み込みながら。
・・・・・
その時、ずん。と戦場が震えたように感じた。
圧倒されそうな覇気、誰もが視線を注いだのはヴァルムの城、その城門である。
「いた。あれが・・・」
「間違いない、奴だ」
ジン、続いてヨシュアが見た。
赤い装束、遠くからでも分かる力強い目。
「皇帝ヴァルハルト・・・自ら打って出てくるとは・・・」
「あの男が征く覇道、絶対的な武力による制圧。それを考えれば当然、か」
ゴクリと喉を振るわせるクロム。
それにこたえるサイリの顎を伝って汗が落ちる。
気持ちだけでも負けられぬとばかりにファルシオンを握り直し、己に注がれる射貫くような視線を睨み返す。にいっ。と覇王の厳つい口元が吊り上がった。
「――聖王を継ぐものか。よい気を放つではないか」
だが!つぶやきに続けて声を張る。
「人の王は我唯一人!その証明こそが我が覇道!」
神すら射貫くが如くその右手に握った赤い剣を突き上げる。
「戦士達よ!ヴァルムの誇りを胸に抱き、阻むモノ全てを刺し貫く槍となれ!」
その剣を振り下ろす。開けた城門前。ヴァルム帝国、連合、双方ひしめき合うその戦場を突き抜けて、クロムの喉元に突きつけるように。
そして、
「全軍ッ」
ヴァルム大陸最後の戦いの
「進めえイッ!!」
幕が上がる。
・・・・・
払う避ける落し走り切り伏せ跳び砕く。
刀身だけではない、鞘を使っても尚抑えきれぬ、剣圧で薙ぎ払っても尚押し寄せる武士達。
その士気に内心舌を巻きながらもジンはユキアネサを振るい続ける。
(どうする・・・技を練る時間が無い・・・ち。この圧倒的な物量差、捌き切れる物では無いぞ・・・)
何より。
「死を恐れぬ兵がこれほど厄介だとは・・・!」
敵陣最深部にどっしりと構えるヴァルハルトの前で無様は見せられぬと言わんばかりに攻めてくる兵の中に腰の引けた者はいない。
・・・・・
「ッの・・・コノエ、水を!」
「、ええ」
兵の波に埒が明かぬとヨシュアが一計を講じた。
コノエが膨大な水流を放つと、続けざまにマークに指示を飛ばす。
「はいっ!ギガサンダー!」
水流を雷が走り、さらにそこにヨシュアが炎を投げ込む。
術の規模に見合うだけの水蒸気爆発によって削られた兵の波はすぐに塞がり、再び押し寄せる。
「ちょっと、あんなの私でもそうそう撃てないわよ!?」
兵の足元の草目掛けて炎を奔らせながらコノエが言うが、ヨシュアは今度は答えない。
――どうする、この波を一時的にでも引かせるにはどうすればいい、まて、そうではない、元を断てばいい、では元とは何だ、決まっている――
瞬時に思考を組み上げていくヨシュア。
「今一番奥まで入り込んでいるのは」
片手間に銀の剣で敵の攻撃を躱し、逆に喉を裂きながらヨシュアはコノエから教わった探知の術式を起動させる。
「見つけた!」
・・・・・
果たしてヨシュアの指示に従ってヴァルハルトにたどり着いたのはクロムが最初であった。
覇王は静かにその目を開けて問うた。
聖王はその目を見返しながら答えた。
「決まっている、お前を止めるためだ。その覇道は血が流れすぎる」
「世に血の流れぬ革命など有りはすまい。ましてや我は神の世を終わらせる者。我が覇道は血と共に在る・・・人の血によってのみ築かれる道よ」
「馬鹿な――そんな勝手が許されるものか!」
憤りを剣に乗せて聖王は馬上の覇王に挑みかかる。
「誰の許しを得る必要がある?神か?法か?王か?」
答えを窮する聖王。それまで果敢に攻め立てていた聖王はその瞬間、わずかにその勢いを鈍らせた。
「答えられまい!」
ギィンッ!と次の瞬間には剣を跳ね上げられる。気合で保持するもそれは大きな隙となる。それを見逃す覇王ではない。
「当然だ!」
どうにか剣を引き戻し、次の一撃を防ぐ。
「答えなど有りはしないのだからな!人は神という毒に冒され、思考する力を失ったのだ!」
連撃は重く、鋭い。元より力も体格も覇王は聖王の上を行く。それを表すかのような状況であった。
「
唯一上回る小回りと技術を駆使して聖王はとにかく喰らい付く。これは覇王が圧し切るか、聖王が保たせるかの根比べだ。
「笑止・・・人に代弁される程度の神の言葉も、神の意志を借りねば言えぬ人の言葉も我には不要!!」
「我は我の言葉で語る!!!!」
「我は我の力で導く!!!!!!!!」
「此れからの世に神は要らぬのだッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
その一撃はそれまでのどれよりも強かった。
が、聖王はそれをけして砕けることのない剣で受け止めた。それでもなお勢いを殺しきれずに人ひとり分の距離を滑り、止まった。
「神の是非をここで語るつもりはない」
腕が痺れるがその程度、些細な事だ。摩擦で靴底が焦げているのだろう、足が熱いが特に問題はない。
「だが、その為に人の命を奪う事をお前が躊躇わないというのなら、俺は俺の正義でそれを止める!」
裂帛の気迫とともに瞬時に距離を詰め、剣を突き出す。わずかに回避が遅れた覇王は、絶命した愛馬より飛び降りて獰猛に笑った。
「そうだ、英雄を継ぐ者よ!」
再び打ちかかる。
「人は己の言葉で!力で!正義で!他者と争えばよい!間に神の如き不純物など無くとも!人は語れる!」
振り下ろされる一撃を剣の腹で受け流す。覇王の一撃はわずかに右へ逸れた。
「さあ来い!うぬの言葉を語って聞かせるがよい!我は全ての人の言葉に耳を傾ける!全ての人の想いを受け止める!そのうえで!我は我を押し通す!」
圧倒的な自我、押し寄せる覇気の荒波に負けじとクロムは剣を振るった。
鋭く、疾る一太刀は赤い剣に受け止められた。
だが。
「ま・だ・だアアアアアアアッ!」
続く一撃がそれを砕き防御もろともヴァルハルトの脇腹をかすめた。
「我を・・・破るか!人の子が・・・我が覇道を止めるか!」
武器を砕かれても尚、拳を以てクロムに挑みかからんとするヴァルハルトだが、筋肉の緊張に呼応して脇腹の傷から血が噴き出す。
「ぬ、ウ・・・しかしまだだ、我の炎は、まだ燃え尽きておらぬ・・・!」
城内に戻ろうとするヴァルハルト。それを追おうとするクロムだが、背後からの殺気に反応して振り向きざまの一撃を放つと、ヴァルム軍の戦士の腹がバックリと裂けた。
だが。
「ごふっ・・・、時間・・・切れ…だ・・・!」
血反吐を吐いて倒れ伏すその男の言うとおりにヴァルハルトは戦場から姿を消していた。
・・・・・
戦闘はすぐに終わった。
クロムがヴァルハルトを退けたことで生じたヴァルム軍の動揺をついてジンとウードが煉獄氷夜を限界を超えて使用したのだ。
力を使い果たして座り込むジンをリズが介抱している。
「大丈夫?」
「・・・問題は無い・・・が、かなり疲れた。突入隊の背中を守る部隊の指揮をとらせてもらうが、かまわないか?」
荒い息をつきながらクロムに問いかけると、クロムは城門前の自分たちがいる場所以外を覆い尽くす氷を一瞥してから頷く。
「ジンもウードもよくやってくれた。指揮に徹して少しでも体を休めてくれリズ、シンシア、二人を頼めるな?」
「任せて!父さんの期待に応えて見せるよ!」
よし。と満足げに頷くクロム。
「そうだな、では、セイメイ、二人の補佐を頼む」
サイリの頼みにああ。とセイメイは頷いた。
突入隊が去ってから数分後もすれば、ふらつきはするものの、立つことができる程度に回復したジンを見てウードが呆れたような声を漏らした。
「ダメだ、何も思いつかねえ・・・父さんは凄いよな、俺と同じくらい力を使ったのに・・・」
未来からの付き合いであるユキアネサを恨めし気に見ながらため息をつくウード。
と、地面に倒れこんだままのウードが振動に気付いた。
「父さん、何か来る・・・!」
「くっ・・・ここで裏切者が剣を向けてくるか・・・!」
今回一番苦労したのはヴァルハルトの表現です。どうやって圧倒的な存在感を表現するか苦戦した結果がこれです。勢いというか圧迫感というか、そんなものを感じていただければ幸いです。
今度はそんなにかからないと思います。
次回、 二十八章 王の中の王 中 でお会いしましょう。
ちゃおちゃおー。