ファイアーエムブレム覚醒~Susanoh's lust sin~ 作:昆布さん
・・・といっても一章ずつのだましだましなんですが・・・。
スクエニ出版の小説版烈火よろしくいくつかの章を会話イベントにしたり省略したりしてやりくりしていますが、いやはや何とも・・・
では、本編をどうぞ。
時は少しだけ進み、イーリス王城。
エメリナの部屋の前で眉根を寄せるジンがいた。
「あ、ジンさん!」
「リズか・・・どうしたんだ?」
無邪気な声にそちらを一瞥し、少しだけ表情を緩める。
「この時間だ。暗いし何より抵抗なく標的の寝首を掻けるこの状況、エメリナ様の暗殺に動くことも十分に予想できるからな。フレデリクと交代で警備しているというわけだ」
そういってジンは再びドアの反対側の壁に背を預けた。
「――?まだ何かあるのか?」
ふふっ。と笑うリズの声にいぶかしげな顔をする。
「ううん。ちょっとね」
「ちょっと…なんだ?」
「初めて会った時より表情が柔らかくなったなあって」
屈託なく笑ってそういわれ、ジンは少しだけ暗い廊下に感謝した。
少しだけ頬が紅潮しているのを自覚する。こういうのをほだされる。というのだろうか。
そんなことを考えながらジンはふう。と一つ息を吐く。
吐こうとして。
「どうしたの?」
「――敵だ」
刃のように目を細めた。
・・・・・
そのころクロムとヨシュアは中庭にいた。
「・・・エメリナ様の理想を守りたい・・・ね」
いつものように飄然とした態度で言われ、クロムは少しだけむっとする。
「そう怒るなよ。馬鹿にしてるわけじゃないさ。ただ、少しだけお前のことが羨ましくなっちまっただけさ」
「どういうことだ?」
俺には。ヨシュアはゆっくりと口を開く。
「俺には過去がない。
だから羨ましい。そういって苦笑する。
「で、だ。だからさ、俺にも手伝わせてくれ」
「ヨシュア?」
「っと、この話はまた今度だ。一応エメリナ様の部屋の前でジンが張ってるが、それでも警戒するに越したことはない」
そうだな。とクロムもヨシュアに倣って周囲の気配に注意を傾ける。
「ペレジアに姉さんを殺させるわけにはいかない、イーリスには姉さんが、聖王が必要なんだ」
言い聞かせるようにつぶやくクロム。それにその通りと答える声が聞こえた。
「マルス…!」
二人に久しぶり。と言葉をかけるマルス。
どこから入ってきた。そう聞くクロムにマルスは壁にあいた穴からと返す。
「クロム、その反応を見るに、穴開けたのお前だろ?」
「う…いや、剣の稽古をしていてうっかり・・・隠していたつもりだったがばれていたのか…」
ジト目のヨシュアと小さくなるクロムに苦笑を浮かべながらマルスはそれより。といって注意を向けさせる。
「今日は君たちに大切なことを伝えに来たんだ」
「大切なこと・・・だと?」
こく。と一つ頷き、マルスは口を開く。
「・・・聖王エメリナに迫る危機について」
「姉さんの・・・?どういうことだ?」
「まるで未来でも見てきたような口ぶりだな」
焦るような声を上げるクロムと訝るヨシュア。
「ああ、僕は聖王エメリナが暗殺される絶望の未来を知っているんだ・・・。といっても信じてもらえないだろうからね。僕が真実を語っていると、証明するよ」
言うやマルスはファルシオンを投げあげ、空中でそれをキャッチして茂みに隠れた暗殺者を斬り捨てる。
「これで信じてもらえただろうか?」
少しだけその流れの鮮やかさにクロムが面喰っていると、ヨシュアの瞳が茂みのかすかな動きをとらえる。
「マズ・・・ッ!後ろだ!」
はっとマルスが振り向くが、それよりももう一人の暗殺者の方が半瞬早い。
振り下ろされる刃がマルスの仮面をかすめ、素顔が露わになるより先に、クロムのファルシオンが暗殺者の胴を薙ぐ。
「・・・もういないみたいだな…ってマルスぅ!?」
「なんだヨシュア、そんな大きな声・・・で…!?」
クロムの語調もすぐに戸惑ったものになった。
何故ならマルスは・・・
・・・・・
ぐわっ。男の断末魔を聞き、反射的にそちらに意識を向ける。
「戦況は!?」
参戦するや暗殺者を一人討ち取ったヨシュアの問いに、ジンは視線だけを向ける。
「部隊を正面、右翼、左翼、護衛の四つに分けた。右翼には甘党の盗賊が、正面には獣人の女が新しく加入した」
しゃべりながら戦うジンの周りにはリズとヴェイクしかいない。
「察するにここは右翼部隊か?」
「そうだ。ヨシュア、指示を」
ああ。と頷くとヨシュアは後ろを振り向く。
「クロムは正面部隊の指揮を。ジンは右翼部隊を連れて指揮官を叩け。ここは俺とマルス、リヒトで食い止める」
分かった。といってクロムは正面部隊へ。自警団で指揮官としての力を有するのはクロム、フレデリク、ヨシュア、ジン、バングの五人。それを踏まえての作戦だ。
「それはそれとして…ジンは驚かないんだな」
無言で暗殺者と切り結ぶマルスを見やってヨシュアがつぶやいたが、ジンは別に。とだけ返す。
「男にしては肩の線が滑らかだったから気づいていただけだ」
それだけ言うと、ジンは隊が分散しないように速度を落としつつ、風のように暗闇に突入した。
・・・・・
ファウダーは歯噛みしていた。
本来であればエメリナはすでに討ち取られ、自分は炎の台座を持って悠々とペレジアに戻っているはずだったのだ。
それがどうだ。いまだに暗殺成功の報は入らない。
そればかりか差し向けた兵が迎撃を受けて撃破されているという報だけが入ってくる。
そんな状況にファウダーが何匹目かの苦虫を噛み潰した時だ。
腹部にひやりとした感覚を覚える。
膝に力が入らない。
するりと体から何かが抜けていく。
「・・・な・・・に・・・?」
ジンがイカルガの英雄と呼ばれる所以はイカルガ盟主テンジョウを討ち取ったこと。
敵の本陣に単身で入り込み、テンジョウを斬り捨てた事から伺えるのはジンが隠密行動もそつなくこなすということ。
故に、倒れ伏すファウダーを、氷のような瞳で見下ろしているのがジンであっても何らおかしくはないのだった。
・・・・・
「ジン…といったわね」
先ほどの戦闘で加入したウサギの耳を持つ女性、ベルベットの声にジンはそちらを見る。
「・・・なんだ?」
「・・・あなたは他の人間とは違うようね」
何のことだとジンは問う。
「ここにいる人間はみんなそうだけど、あなたは私の姿を見ても眉ひとつ動かさなかった」
何故?と問いかけるベルベットにジンは大したことじゃないという。
「故郷で士官学校に通っていた時、二つ年下の後輩の中に『マコト=ナナヤ』という少女がいた」
「それで?」
「彼女には栗鼠の耳と尻尾があった。それだけだ」
お前を差別したら彼女に殴り殺される。冗談めいた口調でジンはそういった。
差別したらパーティカルフレアーな!
何か実際くらったらプラネットクラッシャーよりパーティカルフレアーの方が痛そうな気がする私でございます。
では次回、六章 嘘と裏切りでお会いしましょう。
ちゃおちゃおー。