色々と探索や物色、試食をすること一時間ほど。
実働は三十分ぐらいだか、途中で火薬草を食べあまりの辛さに雪に顔ごと突っ込みながら耐えていたり、ネムリ草を食べてウトウトとうたた寝をしてしまったりと、はたから見たら相当マヌケな姿だったと思う。
そんなこんなで、このエリアでの用事は一通り終わり移動しようかと思い始めたところ、何かが猛スピードでこちらのエリアに近づいている気配を察知した。
〈この躊躇のない突進。成程な、まさに《猪突猛進》なワケだ。〉
ドッドッドッ、と地面を鳴らし息を荒らげながらこちらに姿を現したのは-ドスファンゴ-。年期を感じさせる一部白くなった毛に、天に向かって刺し貫くように成長した牙。
俺自身はあまり自覚していないがテノー曰く、通常より図体が大きい俺と相対しても臆すること無く、野生の鋭い眼孔で睨んでくるあたりこの雪山を縄張りしているファンゴ達のリーダー格なのだろう。
〈俺には風格が一切無く、まだまだ青臭い坊やってのもあるんだろうけどな。
しかしまぁ、折角の実戦の機会だ。地元としてもモンスター生としても先輩に胸を貸してもらうとしましょうかね!〉
相手の足が、何度か地面を踏み締めながら姿勢を低くし唸るように嘶く姿を合図に、俺も何度も目にしてきた上体を起こし勢いよく空気を吸い込み、そして喉を震わせながら一気に吐き出す。
-ガアアァァァアアアア!!!-
空気を震わす轟吼。鬨の声が上がり開戦を示す。
初動が早いのはやはり野生歴の長さか先方。
こちらの咆哮終わり、一番無防備なタイミングに合わせて突撃してくる。
だがこちらも黙ってやられてやるほど甘いつもりは無い。放つ空気が青臭かろうが、こっちには今まで見てきた知識がある。
左腕に力を込め軸とし、右半身を少し後方にズラして力を溜める。そして互いがぶつかる瞬間に、溜めた力を解放してその場で回転をしながら相手の左頬を、全霊をもってして引っ掻き殴る。
ドスファンゴは、俺の膂力が勝りゴロゴロと横に二回転してヨロヨロと立ち上がる。左頬からは裂傷の影響で血が流れている。
対して俺も無傷とはいかず、引っ掻き殴ると同時に右顎を下からカチ上げられて、一瞬意識がトんだ。数回頭を振り、意識を戻すと右顎から口許に向けてできた裂傷の痛みを感じ、頭を振った際の血が雪面にしっかりとシミを作り出していた。
〈痛ってえなぁ!?ノーガード過ぎたか。だが互いに脳を揺さぶられたのか、フラついてやがるな?追撃をするなら今だな。〉
相手の体勢が整う前に、その場からドスファンゴに向かって飛びかかり爪と牙で背に齧り付く。
相手も修羅場を潜り抜けてき歴戦だ。傷を追加で負わせたものの、全身で暴れてこちらを振りほどく。その際に牙で左腕を引っ掻かれ、こちらも手傷を負ってしまう。
一瞬のうちに一進一退の攻防を繰り広げる。
互いに体勢を整え、俺は次の攻防に備えて低く構えて力を溜める。
そしてドスファンゴが再度突進してきた時に、右腕を後方に振り上げそのまま前方の地面に突き出し、雪ごと地面を削り礫としてドスファンゴに向けて飛ばした。
この攻撃で勢いが緩んだところに、再度飛びかかり終わりだと思っていた最中に予想外な行動を取られた。
ドスファンゴが左に身体を傾けカーブした。
予想外の行動にて、呆気を取られた俺の前から嘲笑うかのようにドスファンゴは背を向け、颯爽と走り去っていった。
気づけば静寂と共に、虚しさと興奮がおさまったことにより戦闘での傷がズキズキと痛みだし、俺の初戦は幕を閉じた。
なんともまぁ、苦々しい戦績の始まりを感じながら息を整え、傷を癒すため薬草類を求めて移動をする。
痛み分け。
続けたら互いに只ではすまないと判断し、群れの長として引くことを選択したドスファンゴ。
戦闘面では、膂力に身体の違いから俺に軍配が上がるのかもしれないが、生きていく上で引き際や立ち回りはまだまだ学ぶことが多いことがわかった。
〈まだまだ青二才なわけか。〉
初戦は、自身の甘さを実感する結果を痛みと共に感じさせられた。
ドスファンゴ君。やるやん。君、野生歴いくつなん?
とまぁ、初戦は苦々しい引き分けとなります。
ゲーム的には、ティガレックスの方が強い筈ですが文字通り歴が違います。こうして強くなっていくんやで主人公よ。
(ちなみに、通常のクエストではエリア7では火薬草は入手出来ませんが、トレジャーでは採取出来ますので勝手ながら出しております。)