神喰らいの狼   作:ナナシのG愛好家

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プロローグ in ペニーウォート
プロローグ~ビバ!!神狩り生活!!~


 自分を…………認める。

 なんだ、そんな事だったんだ。

 

 落ちて行く時間が、とてつもなく遅く感じる。正面に見える、ワニの様な物の口が開いていく。

 自分と向き合えた今なら、本当に、変われる気がする。

 

 最後に気が付けて、良かったな。

 ふと、視線を感じた気がして、ゆっくりと顔を向ける。

 私が好きで、私が罪をなすりつけようとして、結局失敗した男。

 白コートの新村コウが、こっちを見ている。

 

 その顔は、後悔しているようにも見えた。その瞳に涙がたまってる。

 ハッ、何後悔してるんだよ。私は狼なんだ。誰かを犠牲にすることもせずにただアイツを殺した狼。

 泣くなよ。そう言うつもりで、口を開いた。

 

「バイバイ。」

 

 大好きだよ、コウ。

 お前は絶対、生き残れよ。

 

 バクン!!

 激痛と共に、私、神木リツの人生は、終った。

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「オラッ!!さっさと歩け!!」

「キャイン!!」

 

 端的に言おう。私、神木リツは生まれ変わった。

 しかし、最悪なことが3つ。

 1つは、この世界は【灰域】って言う一般人ならその場に居るだけで死んじまうヤベー場所に包まれてること。

 2つ目は、この世界にはアラガミって言うなんでも食べるバケモンが絶えず辺りをウロチョロしてること。

 そして、3つ目。これが一番最悪なんだが、私は、件のアラガミをぶっ飛ばせる存在、ゴッドイーター。

 しかも、灰域内で活動できるようになった、特別な【編食因子】を持つ存在、【対抗適応型ゴッドイーター】通称AGEへの適合試験を受けることになってること。

 

 最後の3つ目最高じゃん。とか思った奴、この世界に飛んで来い。そして今すぐ私と変われ。

 このAGE適合試験は適性がなかった場合普通に死ぬ。

 しかも、これロクに戸籍登録されてない孤児をまとめてトラックに詰め込んで、ここに運んできて強制的に適性があるかないか分からない状況で、無理やり受けさせられる。

 お前ら…………ゲシュタポかなんかの生まれ変わりか?私達はユダヤ人なのか?そうなのか?

 

 そんな文句を心の中でぶつくさ言っていると、私の番が回って来た。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 私は椅子に座っている。傍には、監視員である一般のゴッドイーターが立っている。

 

『AGE適合試験を開始します。気を楽にしてください。』

 

 そう機械音声が響き渡る。しかし、こんな状況で気を楽にできる奴がいるならお目にかかりたい。

 

『第1フェーズ。喰灰による浸食を開始。』

「ぐっ!!うぅぅ…………!!」

 

 その声が響き渡った途端。私の左腕に何かが注入され、激痛が迸る。

 見れば、私の左腕には、黒いひび割れの様な痣が浮かび、体をむしばんでいる。

 

『第2フェーズ。編食因子を投与。』

 

 そんな声と共に、左腕の腕輪が閉じられる。

 

「あっ!!あぁぁ…………ッ!!」

 

 投与された編織因子と喰灰がせめぎ合い、身体が悲鳴を上げる。

 

『第3フェーズ。神器を実装。』

 

 右側を見れば、手の位置に、大きな剣、アラガミを倒すための神器が置いてある。私はそれをもうろうとする意識の中、掴んだ。

 すると、右腕の腕輪が閉じられ、さらなる激痛が全身に迸る。

 

「うっ、うわああああぁぁぁぁぁ!!」

 

 余りの痛みに絶叫したその後、腕のヒビが消えて行き、痛みが引いて行った。

 

『編織因子による喰灰の中和を確認。おめでとうございます。貴方は対抗適応型ゴッドイーターに任命されました。』

 

 そんな言葉と共に、椅子の拘束が解除される。

 

「うわっ。」

 

 その瞬間、身体を襲った脱力感で、私は地べたに投げ出された。

 それでもなお、神器を杖に立ち上がる。

 

「生き残ったか。」

 

 そう達観したかのような表情で眺めてくる一般ゴッドイーター。手元のタブレットを一瞥すると、

 

「【甲判定】。ここらじゃ見なかったレアものだな。」

 

 そう呟くと、私に顔を向けた。

 

「どうだ、人間やめた気分は?」

「上等だよ……………。」

 

 一般ゴッドイーターの言葉に、皮肉を返す。

 

「今度は…………ワタシが……………、オマエらを…………守ってやる…………よ…………。せいぜい…………感謝しとけ。クソ野郎。」

 

 そう言い、ニヒルに笑ってやる。

 

「ほう……………いい度胸だ。威勢だけは認めてやる。」

 

 そう言う、イラついた表情の看守が、目に映った。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「…………い。おい、起きろ。」

 

 誰かがアタシの体を揺さぶる。でも……………、まだ寝てたい。

 

「ムニャ…………。あと4時間……………。」

 

 そう言うと、ハァ。と、ため息が聞こえてきた。

 

「長いぞボケ。おら、起きろクソ猫。」

 

 そう声がし、私の頬を思いっきり抓って来た。

 

「あだだだだだだ!!」

 

 余りの痛みに飛び起きる。

 そこには、白地にペンキで水色のラインが引かれたボディースーツを身に纏った、双葉アホ毛の男。

 私が前世で愛した男、新村コウがいた。何を隠そう、あの時の試験、コイツも受けていたのである。

 出会った時は驚いた。私は泣いたし、アイツは、私を離すまいと抱き締めて来た。

 

「もう、何処にも行かせない。」

 

 その言葉を、私は一生忘れないだろう。

 

「すっごく…………、痛かったんだからな。」

 

 アイツの胸の中で、そう呟いた私に、すまないと投げかけられた時の温もりは、今でも鮮明に思い出せる。

 ちなみに今の私の服装は、灰域で見つけたネコミミキャップとかぶり、支給されたパーカーにはいくつものワッペンが付いている。

 そんな過去は、今の私達の状況からは到底想像できないだろう。

 

「イテェんだよこのバカコウ!!」

「お前が起きないんだろこのアホリツ。」

 

 私の涙目の訴えを冷たいまなざしで跳ね除ける。解せぬ。

 

「キュウ。」

「ニャァ。」

 

 すると、私とコウのベットの上から、それぞれ動物の鳴き声がした。

 

「おう、どうしたミント。腹減ったのか?」

「どうした?バク太郎~。ご飯ならやるぞ~。」

 

 その瞬間、ベッドに振り返り、コウはAGEになる前の孤児時代に偶然拾った猫のミントに、私は灰域で拾った超小型アラガミのバク太郎に、猫なで声で語りかける。

 コウは猫好きの看守からもらっているキャットフードを、バク太郎にはネジやマグネシウムと言った、灰域で拾ってきた物を与える。

 ちなみに、何でもバクバク食べるからバク太郎って読んでる。アラガミだけど、エサ与え解けば人畜無害だ。アラガミを察知したら鳴き声を上げるから、アラガミ探知機にもなる。

 ついでに言うと、コイツの脚は吸盤みたいになっていて、吸い付く。いつも頭の上に載っているが、激しく動いても基本落ちない。

 癒し系という事もあり、運のいいことに看守からこの2匹は黙認されている。

 

「相も変わらずだな、お前ら。」

 

 私達の居るAGE用の牢獄の、同年代の同居人。年少組の兄貴分でもある、ユウゴだ。傍には彼の幼馴染の白髪の女、ルカもいる。

 

「うるせー。それよりコウ、何で起こしたんだよ?」

「ユウゴも、何かあったの?」

 

 私はコウに、ルカはユウゴに語りかける。

 

「ああ、それがな。」

 

 コウは目を泳がせた。言葉を選んでるのか?

 

「今度の仕事を、取って来たんだ。」

 

 ルカのベッドの隣にユウゴが座り、私の隣にコウが座ってくる。

 

「相当濃い場所だよ。リツ。」

「灰域濃度が。って事か?」

「そうだな。」

 

 そう言うと、らしくないため息を付いて、上を見上げた。

 

「そろそろ、年貢の納め時かもしれない。」

 

 ユウゴも同様に上を向き、弱音を吐く。

 

「いずれは生命線である編織因子の投与を断ち切られ…………それで…………。」

「何弱気になってるんだよ?コウ。らしくねー。」

「俺達は死なない。でしょ?」

 

 私はコウに、ルカはユウゴに声をかける。

 

「ああ、そうだな。」

「全くだ。情けない。」

「さてと。仕事だろ?行こうぜ!!」

 

 ルカはユウゴと腕輪を打ち合わせ、私はベットから降り、コウを引っ張って看守の前まで連れて行く。

 

「任務だろ?看守。さっさと扉を開けろよ。」

「相変わらずだな。お前は。」

 

 得意げに言う私に、コウはため息を付く。

 

「チッ、減らず口を叩きやがって。せいぜいミナトに損害を駆けるなよ。」

 

 ミナトってのは、この世紀末で人が集まってる集落の事だ。

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「さてと。ここが濃いとこか。」

 

 灰域の目標地点に付いた私は、高台に座り、新しい景色を見下ろした。

 

「ああ。楽しみだ。そうは思わないか?」

 

 コウが語りかけてくる。

 

『おい、無駄口を叩くな。』

 

 看守の声が響いてきた。

 

「フン。この拘束を解除しないと、仕事が出来ない。無駄口を叩くしかない状況にしてるのはお前らの怠慢だが?」

「ああ。全くだな。おーい看守。さっさと手のこれを外せよ。」

 

 と、文句を言いながら両腕の腕輪を利用した拘束具を外すよう求めると、

 

『減らず口を…………まぁいい。

 ペニーウォート専属AGE、ウルフ1(アイン)ウルフ2(ツヴァイ)の拘束解除を許可する。行って来い。狂犬ども。』

 

 と、声がした。

 その瞬間、私とコウの拘束が解かれる。

 私はの神器は突進力と、【チャージグライド】が売りのチャージスピアに、機動力が売りのショットガン。展開速度に優れたバックラーの組み合わせ。

 コウは、バツグンの破壊力を誇るバスターブレード。アラガミから身を隠す【ステルスフィールド】を搭載したスナイパーに、防御力重視のタワーシールドで組んでいる。

 

「さてと、行くか!!」

 

 勢いよく飛び出す私に、

 

「援護は任せろよ。」

 

 とステルスフィールドを張り、散開していった。

 私とコウの、今日の神狩りが始まった。




 次回 同室の少年AGE、ショウの様子がおかしい?彼の病気を治すため、医療キットを探せ!!

 次回【ウェア・イズ・医療キット?】
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