「コウ、見つけたぜ。マイン・スパイダー1匹。アックスレイダー3匹だ。」
アラガミレーダーの情報を頼りに、廃教会の近くの広場に、四体のアラガミを発見する。そいつらを、物陰に隠れて様子をうかがう。
マイン・スパイダーは、遠距離攻撃が主体の厄介なアラガミ。
特に、気を付けなきゃいけないのが自爆。
アックスレイダーは、イノシシみたいなアラガミだ。
気性が荒くて、単純に突進力は厄介。良くも悪くも、初心者向けのアラガミだ。
「ああ、見えている。」
そう言うコウ。どこにいるのか、レーダーを見てみると、瓦礫に潜んでるっぽい。でも、細かい位置は見えない。
「フン。俺じゃなくて、奴らに集中しろ。」
「わーってるよ。まずは蜘蛛から潰す。で、いいんだよな?」
「ああ。アックスレイダーを狙い、マイン・スパイダーに遠距離から妨害され、囲まれてサンドバック。なんてパターンが嫌ならな。」
「うっ、それは一度味わいかければ十分だよ。」
マジであの時は死んだと思った。
「ま、まかせろよ。」
そう言い、チャージスピアを握る。スピアに意識を集中させ、オラクルを送る。
槍の先端が開かれ、オラクル細胞で形成された第二の穂先が現れ、リーチが伸びる。
これが、【チャージ】だ。
「一気に行くからな。ちゃんと援護しろよ。」
「フン。誰に言っている。さっさと行け。」
「へいへい。」
そんな言葉と共に、瓦礫の陰から飛び出す。アラガミの集中が一気にこっちに向いた。
三体のアックスレイダーが、こっちに突進を開始する。が、
「おいおい、お前らは大人しくしていろ。」
三発の氷弾が、バスバスと刺さり、アックスレイダーが動きを止める。
ステップで、素早く三匹の間を駆け抜ければ、マイン・スパイダーが二発の光弾を飛ばしてくる。
「そこぉっ!!」
その間を、小さい身体を最大限利用して潜り抜け、突撃をぶっさす。
【チャージグライド】一気にアラガミに距離を詰めれる技だ。
そのまま、槍を引き抜き、下から上への切り上げ。その反動で上に飛ぶ。
素早く後退、回避を、攻撃と同時に行う【バックフリップ】だ。
「コウ!!」
「言わなくても分かってる。」
減らず口と一緒に飛んできた光線が、マイン・スパイダーを倒す。十分安全マージンを取ってるから、爆発は当たらない。
正面から突っ込んで来たアックスレイダーを躱して、神器を【捕食形態】にする。
アラガミの口を彷彿とさせる神器が、アックスレイダーにかぶりついて、オラクルを吸収する。
こうすることで、私たち神器使いはバーストする。
「そらよッ!!」
その一撃でレイダーにトドメを刺す。
そのままチャージグライド。二匹目を大きくひるませて、横を駆け抜ける。
駆け抜けざまに回転の威力を上乗せした槍で切り払う。
「コウ!!」
そう言えば、残った三匹目の傍に、突如コウが現れる。
コウは、ステルスフィールドに調整を咥えていて、アラガミから姿を完全に消すことが出来る。
私達ゴットイーターでも見えなくなるし、狙撃銃形態を展開している時しか使えないから、使い勝手のいい能力ではないけど。
「死んでろ。」
その声と共に、高々と振り上げられた大剣が、アックスレイダーに振り下ろされた。
それで潰されたアックスレイダー。
発見したら強襲。即撃破が私達の戦い方だ。
そして、残ったアラガミの死体を捕食形態でムシャムシャして、アラガミの素材を回収する。
「ふぅ。任務完了だな。コウ。」
「ああ。地獄に帰るか。リツ。」
お互いの顔を見つめ合って、フフッ、と笑った。
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「イテテ……看守の奴ら……。」
「今日は派手に絞られたな~。」
そう言い、まだ痛むところを擦るユウゴとルカ。看守に逆らってこうなったらしい。
「フン。命令違反なんてするからだ。」
「コ~ウ。生意気で殴られそうになったワタシらが言える事か?」
そう、ワタシ達も、任務の後、殴られそうになった。
殴られなかったのは、コウが看守の弱みを握ってるからだ。
たとえば、少年AGEの回収した素材の一部を巻き上げて、申告せずに自分のポケットに入れてるとか。
あと、AGEの食費ケチって私服肥やしてるとか、実はゲイとか。
最後のはどうでもいいけどほとんど私服肥やしてるな。
「……何かずるいね。」
「……ああ、何と言うか、ずるいよな。」
不平を漏らす二人。すると、
「随分としけたつらしてんじゃ~ん。」
と言う声と共に、背中を小突かれるユウゴ。しかし、看守にみっちりじっくりがっつりこってり絞られたユウゴにはクリティカルヒットだったようで、
「痛ってぇ!!」
と悲鳴を上げ、自分を小突いた金髪の青年を見た。
「テメェ、ジーク。戻ったのかよ。」
「おうよ。ついさっきな。」
ジークは、気さくなブーストハンマー使い。
探索が得意で、色んなオモチャを年少組の奴らに渡している。
ワタシも少し探索のイロハを教えてもらったけど、ありゃ天性の才能だな。
「それより、聞いたか?この近くのミナトが、灰域に呑まれたって話。」
「ん?そんなの別に珍しい話じゃねぇだろ?」
灰域にミナトが呑まれるのは珍しい事じゃ無い。何人死んだかは知らないけど、運が悪かったって話だ。
普通の人間じゃそうは割り切れないかもしれない。でも、ワタシは狼ゲームを経験して、AGEの仲間達がバタバタ死んでくのを見て、一度死んで、死がすごく当たり前の様に感じてる。
「ああ。けどな、その灰域、段々こっちに近づいてるって話が、オマケで付いて来たとしたら、どうする?」
「……灰乱がおきてるのか……?」
その言葉に、コウがそう問いかけた。
灰乱。それは全てを飲み込む、超危険な灰域。
私達AGEも、呑み込まれれば死は避けれられないレベルだ。
それがこっちに近づいて来てるとしたら………………………。
「コホッ!!ゴッホ!!ゴッホ!!」
その時響いた、大きな咳の音に、ワタシは振り向いた。
咳の主は、年少組のショウだ。ここのところ、体調がすぐれない。
薬を処方してもらってるらしいが、看守がショウのスープに怪しいオクスリを入れているらしい。
「あ…………、ごめん…………。うるさかったよね。大丈夫だから。」
やつれた顔で、ワタシらを心配させまいと無理して笑みを浮かべる。このままじゃショウは…………。
「まぁ、灰乱より、目先の問題だな。」
深刻な顔で切り出したのは、ユウゴだ。
「ショウの事でしょ?最近、咳が酷いもんね。」
「そう思って、灰域で医療キット探したけどよ…………、ああいうのって、いらない時にはゴロゴロ落ちてんのに、いざ欲しいときに無いんだよな。」
沈んだ顔でそう言うジーク。でも、ジークの探索で駄目なら。
「明日、全員で探す。」
コウがそう切り出した。
「任務の場所は広いんだ。医療キットの一つや二つ、必ず落ちている。」
「でも、ジークの探索でも…………。」
「偶然見つけられなかっただけだ。サルも木から落ちる。コイツはサル以下な訳だから、偶然見つけられなくても仕方がない。」
「そうそう、今度こそは……ってオイ!!誰がサル以下だ!!」
ジークの講義を、コウは黙殺する。
「アハハッ!!なんかやる気出て来た!!」
それがつぼったのか、大笑いしたルカは、そう言ってガッツポーズをした。
胸が揺れてる…………羨ましくなんかないやい!!
「そうだな。よしお前ら、絶対見つけるぞ!!」
「「おー!!」」
「…………」
コウだけ参加しなかった。空気読まないよなアイツ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
そう意気込んだはいい物の…………。
「無い!!」
瓦礫の下にも、
「無い!!」
廃教会にも、
「無い!!」
前に見つけたアラガミの巣の中も、
「クソッ!!どこにあんだよ!!」
全く見つからない。八つ当たり気味に、瓦礫を蹴飛ばす。
「おい、時間だリツ。行くぞ。」
「それで良いのかよ!!まだ医療キットは」
「見つからなかったものは仕方がない。」
「何でそう割り切れるんだよ!?コウはショウの命が大切じゃないのか!?」
「そんな訳はない。だが、見つからない物は見つからないんだ。また明日探すしかない。」
「けど!!」
「もう任務は終わってる。ここで看守にどやされて時間を食うのは愚策だ。」
「……わかった。」
奥歯を噛んで、そう言った。
コウは合理的だ。アイツはショウを見捨てる気は無い。けど、頭がいいから呑み込んでるんだ。常に冷静に、切り捨ててる。
ワタシは余り頭は良くない。だから、ワタシにコウの気持ちは分からない。
だからこそ、呑み込んだ。
明日こそ、医療キットを見つけよう。
そう心に誓って。
キャラ解説!!
ルカ・ペニーウォート
性別:女性
年齢:16歳
ボーイッシュな、白髪の少女。
白のショートヘアに黒メッシュ。ブルーの瞳は、一見すると男性っぽいが、胸のふくらみが、それを大きく否定している。
明るく、めげない。
ドジな所があり、たまに素でボケるアホの子。
ユウゴとペアを組んで行動しており、素早く連撃を叩き込むアタッカー。
なお、笑いのツボが浅い。
次回予告!!
今回の次回予告を担当させてもらう、ユウゴ・ペニーウォートだ。
リツはああ心に決めた。俺達も血眼になって探すが。来る日も来る日も医療キットは見つからない。
そんな時、俺達のミナトへと襲い来る灰乱。度重なる不幸だが、必ずこれを突破して見せる!!
次回【菊とドリルとワタシらと】
これでいいのか?え?何何?カンペを見ろ?
え~っと、俺は止まらねぇからよ……お前ら……だから……止まるんじゃ……ねぇぞ……。
………?何だこれ?