「クソッ!!」
また外れた。悔しくて神器を瓦礫に叩きつける。
「おい止めろ。破損させたりしたら看守にどやされるぞ。」
「だってよ!!今日もだぜ!!もう何日アタシらは医療キットを探しては空振りに終わり続けてるんだよ!!」
「…………確かにな。そろそろヤバいんだが…………ッ!!リツ、アレを見ろ!!」
「?何だよコウ…………おい、嘘だろ…………?」
アタシたちの視線の先にあったのは、馬鹿でかい黒い波。あれは……あれは…………
「灰嵐だ…………。」
EP.03 菊とドリルと灰嵐と
「おいアレ…………港の方に向かってねぇか?」
同時刻、別方向でユウゴ達三人も灰嵐を確認していた。
「このままじゃミナトの子供たちが…………急がなきゃ!!」
「待てルカ!!今から行っても…………先回りするのは不可能だ。。」
距離を計算したユウゴがそう声をかける。
「だったら!!…………クソッ!!どうすれば…………。」
「騒ぐんじゃねぇ。絶対手がある筈だ。仲間は絶対死なせねぇ。」
なんとか三人はこの危機的状況を打破しようと頭を回転させる。しかし、一向に考えは浮かばず、時間だけが過ぎて行ったその時だった。
『こちらキャラバン周囲のAGEに通達。現在灰嵐が発生中。誰か応答願えるか?』
無線がオープン回線の通話をキャッチした。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「こちらAGEだ。状況を伝えろ。」
コウが無線に出ると、
『つながった。話は後よ。この船の航路上に居る中型アラガミ二匹を排除して。』
『待て!!何をする気だ?』
無線からはユウゴの声も聞こえてくる。
『話は後と言った。貴方達は二組に分かれてるわよね。お互いの元にアラガミが…………グッ!?』
「!?おい、何があった。応答しろ!!」
衝撃と共に無線が一時途絶えたが…………
『問題ないわ。アラガミの攻撃が当たったけど。そのアラガミ。私達を無視してそっちに向かったようね。報酬の話なら後からいくらでも聞くわ。本線は港の救援に向かってる。事態は一刻を争うの。』
と、声が聞こえてきた。
「うち等のミナトって事か。仕方ねぇ。やるぞコウ。」
「ああ。当然だ。その依頼受けさせてもらうぞ。」
『了解した!!直ちに向かう!!…………港には、AGEのガキ共が取り残されてるはずだ。そいつらを…………』
『必ず助けると約束する!!通信は異常!!健闘を祈る!!』
そんな言葉と共に、通信が切れた。
「さてと、アラガミがこっちに来てるって話だったが…………。」
神器を構えれば、現れたのは深紅の鳥みたいな頭部をして、腕には剣に似たパーツが生えている中型アラガミ、【ネヴァン】だ。
「あれで間違いなさそうだな。コウ。」
「フン。中型の相手なんて初めてだな。」
バスターソードを構えるコウ。
「前衛は任せるぞ。リツ。」
「ああ。仕方ねぇ。行くぜ、コウ。」
「ああ、リツ。」
目くばせをしたアタシらの腕輪に黄色い光がまとわりつく。ちょうどチャージ完了か。
「「エンゲージ!!」」
獣の本能/
/デリート・プロセス
アタシらを一つながりの黄色い光がつつんだ。アタシらの力を最大まで高める力。エンゲージだ。
「一気にカタす!!」
「生憎仲間が待ってるんでな。時間は裂いてやれないぞ。」
ネヴァンが勝負を挑むかのようにアタシらに手の剣をを向けてくる。
アタシたちは同時に地面を蹴った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「これが逆転のチャンスって訳か。」
握り締めた拳を見つめ、そう呟いたユウゴは、振り向いた。
「いっちょやってやろうぜ。」
と、ジーク。
「ボク達なら………どこまでも行ける。」
腕輪を差し出してくるルカ。
「ああ。そうだな。」
それを打ち合わせると、ガリガリと言う岩を削るような音が聞こえてきた。
振り返った先に居たのは、左腕がドリルとなっている中型アラガミ。バルバルスだ。
「ちょ、威圧感すげぇんだけど。」
「死なないように。だね、ジーク。」
ニコッ、と笑って彼女の神器。【ヴァリアントザイス】を構える。
「行くぞお前ら。ひっくり返すぞ。全てを。」
「「おう!!」」
彼らも、バルバルスに向けて地面を蹴った。
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「一気に行くぞコウ!!」
「分かってる!!」
ネヴァンの突進をかわしたアタシたちは、神器を捕食形態にしてネヴァンにかぶりつく。そうすることでバーストして、バースト中だけの神器の技【バーストアーツ】が使えるようになる。
「いっくぜー!!ニャラァ!!」
ネヴァンの連続突きを直観と反射神経を駆使して躱してチャージグライドを叩き込む。
チャージグライド後の隙を突こうと突きを放ってくるが、普通ならあり得ないような速度で放ったアタシの【バックフリップ】のおかげで見事にスカッた。
「かかった!!見たかアタシの【スラスト&アウェイ】を!!」
「Kieje!!」
吠えるネヴァン。けど、
「これで止まれ。」
コウの放った弾丸が、ネヴァンの膝関節を直撃すると破砕音が響いた。【結合崩壊】だ、アラガミの部位を破壊した。
ダメージを喰らったネヴァンが膝を突く。
「リツ!!」
「任せろよ!!」
狙うは一番初めにチャージグライドを叩き込んだ右腕!!
「【デスブリンガー】!!」
地面を踏みしめ推進力にして最速の一突きを放つ。
「コウ!!」
「フン。リツにしては上出来だ。」
ステルスフィールドを解除したコウが目の前に現れ、バスターブレードを肩に担いで【チャージ】を始める。
コウのチャージが終わったのは息を整えたネヴァンが立ち上がろうとした瞬間だった。
「死ね。【ライジングクラッシュ】!!」
敗北を悟り、死の間際、コウを恨みがましく見たネヴァンの顔面を、思いっきりかちあげる一撃。顔面を砕かれたネヴァンはそのまま勢い余ってぶっ倒れた。
動かなくなったネヴァンを見たアタシは、ニッ、と笑ってコウを見る。
「やったな。コウ。」
「そうだな。リツ。」
皮肉な笑いではない、いい笑みを浮かべたコウの顔がある。今日はいつものAGE用のクソ不味いレーションが美味く感じそうだ。
「さてと、向こうの方はどうしているか。」
ふと、コウはユウゴ達がミッションに向かっていた方角に目をやる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「オ…………ラァ!!」
バルバルスのドリル攻撃を飛び上がって回避したジークは、バルバルスの顔面を強打して離脱。走りながらショットガンを連射して注意を退く。
「へへッ、こっちだぜ!!」
「いい動きだジーク!!行くぞルカ!!」
「まっかせて~!!咬・刃・展・開・形・態ッ!!」
伸縮するヴァリアントサイズの刃が、バルバルスの脚を払った。
「Gaaa!?」
「ヘッへ~ん!!ヴァリアントサイズはこんな使い方もあるんだよ!!ユウゴ、やっちゃえ!!」
「任せろ!!【ディバイドゼロ】!!」
ステップを踏んで切り込んだユウゴのロングブレードが、三本のドリルの一角を切り落とす。
「これでもう地中に潜れねぇだろ!!ジーク、ルカ!!」
「おっしゃあ!!【ぶち壊し!】だぁ!!」
「咬・刃・展・開・形・態ッ!!噛み砕け、【ヘルオアヘヴン】!!」
ジークのハンマーの後方にロケットブースターが現れる。これが縦横無尽の機動力を有するブーストハンマーの【ブースト】だ。そのブーストの威力を最大まで乗せた一撃に、バルバルスの顔面が結合崩壊を起こす。
さらにそこを、ちょっとでもタイミングが狂えば発動しないため、AGEの中でも一握りの実力者しか使えない上級バーストアーツ、【ヘルオアヘヴン】がとらえ、圧倒的な威力でバルバルスを引き裂いた。
「ま、こんなもんか。さてと…………ガキ共は…………大丈夫か?」
ユウゴ達は、不安そうにペニーウォートのミナトの方を見つめた。
キャラ解説!!
ユウゴ・ペニーウォート
ロングブレード【イマジニア】を愛用する、ペニーウォートの兄貴分。
生真面目な性格で、受けた仮は必ず返そうとする。
味方に優しく、敵に厳しい。
ロングブレードの剣さばきは一級品だが、全体のサポートに回るため、あまり評価されずらい。
また、ルカの事になると壊れることがある。
日に日に女性らしい体つきになって行くルカだが、スキンシップが子供時代から変わっていないので困っているらしい。
次回!!あの二人が大活躍!?【菊の奮闘】