一難去ってまた一難
「よっと。おす、ユウゴ。」
「待たせたようだな。」
「いや、問題ない。俺たちもさっきついたところだ。」
ネヴァンを倒したワタシ達は、無線の主から指定されたポイントに集合した。
ワタシとコウより先に着いてたユウゴ達に、声をかける。
「しっかし、こっちは運よくアラガミが来なかったけどよ、そっちはダイジョブだったの?」
「問題ない。俺にはこれがあるからな。」
ジークの問いに、コウがスナイパーの神機を掲げて見せる。
「あ~、あのコウ特性のアレね~。 ステルスフィールドと違うんでしょ? アレ。どうやってんの? なんだっけ、アレ。」
と、アレアレ連呼するルカの問いに、コウは呆れたような顔で、スナイパーにつけた外付けのデバイスを見せて、
「アレアレうるさいぞ。ミラージュシステムだ。」
「あ~、キースと結構前からガチャガチャいじくってたやつだよね。ボク達にも見えなくなるのってすごいよね。けどさけどさ、この間もソレ弄ってたけど。」
「…………あいにく、看守も目を向けないようなボロパーツでやりくりしてるものでな。
使う回数にも制限があるし、連続で起動しているとイカレる。おまけにバッテリーは長持ちしない欠陥品だ。」
丁寧に手入れしないといけないんだよ。と言うコウ。だから最近ガチャガチャやってたのか。
「でもよ、それだとリツはダイジョブだったのかよ?」
耳のいいアラガミとかもいるんだろ? っつうジークの質問に、コウはニヤリと笑う。……まさか…………。
「フン、そんなの当然」
「おいやめろ。」
「どうした? リツ。」
「お前!! アレを言うつもりじゃないだろうな!?」
「ん? 何かあったのか?」
「何でもないぞユウゴ。コイツが」
「わーっ!? のわーっ!? やめろバカーッ!!」
ミラージュシステムのフィールドに入れてもらうためにおんぶしてもらったなんて言えるわけないだろ!? 恥ずかしすぎて死ねるわ!!
ジークに聞かれたらにちゃにちゃしながらイチャついてるとか言われんだろ!? 確かにコウは好きだけどそういうのを言われるのはハズいんだよ!! 分かれ!!
「バカだと!? この俺が!? 俺がバカならお前は何なんだ!?」
「知らねーよ!! このデリカシー皆無のクソバカ野郎!!」
「フン。お前みたいな暴走と言う言葉が形になって歩いているようなアホに言われるとはな。」
「アホだと!?」
「事実だろうが!!」
フシャーッ!! と威嚇する私に怒鳴り返す。そんなギャアギャアやってるワタシ達に、
「はいはい、おなか一杯なんでそのバク太郎も食わねぇ痴話喧嘩を終わらせてくれませんかね?」
と、ジークが割って入った。
「「誰が夫婦だ!!」」
顔を真っ赤にしたワタシとイラついたコウのセリフに、
「そういうところだな。」
とユウゴがあきれ顔で突っ込んでいると、地面が揺れる音がした。
「これって…………。」
「フン。ようやくお出ましか。」
ルカの言葉に、コウがつぶやく。
そして、やってきたのは、
「で、」
「デッケェ。」
巨大な、船だった。正確に言えば陸上戦艦。この灰域を切り抜けるための船。灰域踏破船だ。
しかもコイツは大型の。ペニーウォートには、少なくともこんなデカい船はなかった。
すると、ハッチが開いて、中から着流しみたいな服装のおっさんが出てきた。
「よう。あんたらが俺たちを助けてくれたAGEか。ありがとうな。」
と、声をかけてくる。
「ああ。アラガミは倒したぜ。……ガキどもは?」
「安心してくれ。牢獄にいた奴らはちゃんと保護した。」
「アイツらは無事か……よかった。」
ホッと胸をなでおろすジーク。だけど、その考えは間違いだったと、知らされることになる。
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「は?」
リルたちからの話を聞いて、ジークの顔色が変わった。
きっかけは、不安そうな顔をしていた三人と再会した時、コウとジークは、キースについて言及したことだった。
キース・ペニーウォート。ルカの事を先輩。としたってる良いやつで、感応率が低くく、戦闘には参加できないがその代わり、機械いじりが得意な奴だった。
さっきルカが言ったように、コウと協力してあの改造ステルスフィールド、【ミラージュシステム】の改良や設計も、コウとの共同作業だった。
「キースが、連れてかれちゃったんだ。」
リルの言葉に、ジークが目の意を炉変えたんだ。
「オイ!! どういうことだよ!? だってアイツは戦えないだろ!?」
あまりの動揺に、マールの肩を掴んで訴えかける。
「わ、わっかんねぇ。ただ、
「う、ウソ、だろ。」
あまりの動揺に座り込むジーク。
「……クソッ」
「ユウゴ……」
悔しそうに俯くユウゴに心配そうな顔を向けるルカ。
「…………あくまで、戦力として見ていないことを願おう。技術者として見ていることをな。」
腕を組んで、そう呟くコウ。けどよ、いくら技術者として見てたって、あのクズどもが、AGEをどう見てるかなんて…………。
「あれだけ頑張って助けて、待ってるのは次の悲劇かい…………やるせないねぇ。」
おっさん、いや、リカルドって名乗ったソイツは、頭をかいてそう呟いた。
「…………そう、そんなことが。」
その話を聞いていた、この灰域踏破船【クリサンセマム】の艦長で、おんなじ名前のミナト、【クリサンセマム】のオーナーらしいイルダさん。
…………どことは言わないし、こんな時だからデリカシーがねぇかもしれないが、デカい。ルカもそうだし…………。
ワタシは無言で自分の体を見る。リルの二倍は年上なのに、背丈はそれよりちょっと上なだけ。体の起伏なんてないに等しい。…………羨ましくなんかねぇよ!!
「…………残念だけど、私達にはどうすることも出来ないわ。……謝罪と、その彼が生きていられるよう祈ることくらいしか。」
「…………いや、それで十分だよ。」
かすれるような声でジークはつぶやいた。
「信じるさ。アイツは生きてるって。俺たちのために必死に機械いじりを覚える努力家なんだぜ? 兄貴としちゃあ情けねぇけどよ、アイツは俺より何倍も賢いんだぜ? 看守共なんざ足元にも及ばない知恵で、今頃看守の下をグルグル巻かせてやってるはずさ。」
そう言い、微笑む。
ジーク…………強がりがバレバレだぞ。
それを言うほどワタシは野暮じゃねぇ。すると、
「イルダ、とか言ったか?」
ユウゴがイルダの方に向き直る。
「確かにキースはいないが、マール、ショウ、リル。この三人を助けてくれたこと、感謝する。先ほどの無線の報酬の件、それだけで十分だ。」
そう言い、頭を下げた。
「頭を下げないで頂戴。あなた達がアラガミを倒してくれたおかげで私たちは救われたし、その、」
「いや、こうじゃないと筋が通らねぇ。だから、この感謝は受け取ってくれ。」
そう言うユウゴの目を見たイルダは。
「いい目ね。まっすぐな目。そういう目の人は信頼できるわ。」
そう言ってから。
「じゃぁ、この感謝は受け取るわ。そして、私からも言わせてもらうわね。ありがとう。ここのクルーを救ってくれて。」
と、頭を下げる。
「ああ。その感謝はありがたく受け取らせてもらう。」
そう返したユウゴに、イルダは笑みを浮かべて、
「だけど、この状況も、長く続かないのは、わかってるわよね。」
ユウゴは、その問いに顔をしかめる。
原則、AGEの移動はミナトの権利者と、ミナトを統括してるグレイプニルの許可なしに出来ねぇ。そして、ワタシらは看守以上の階級の奴とあったためしがねぇ。
「ま、そのことはおいおい考えるさ。生きてさえいれば、なんとでもなる。」
ま、キースの事とか、ワタシも頭がぐちゃぐちゃになってっからな。
「……とりあえず、貴方達は灰域航行法にもとづいてクリサンセマム保護させてもらうわ。ペニーウォートの責任者は、先の灰嵐のおかげで、軒並み行方不明なの。
どうやら逃げたみたいなんだけど…………行く当てもないまま灰嵐に巻き込まれていたりしたら、」
「うっわ。喜ぶ奴と悲しむやつで分かれそうだぜ。」
思わず、そうつぶやいた。
「止めとけ、リツ。」
「何でだよ。」
「たとえそうだったとしても、俺は喜ぶ気にはなれない。」
…………ま、確かにな。
「悪かったよ。」
「いいんだ。そういう気持ちがあるのも理解できる。」
コイツ、ホントにリーダーの器してやがるぜ。ワタシらをこんな風に言えるとか、菩薩かキリストか何かか?
「道中何かあったら、手伝ってもらうことになるかもね。」
そう微笑むイルダに、ユウゴは笑みで返した。
「任せろ。だが、ギブ&テイクだ。タダ働きはしない。」
いい悪い笑みでな。それに、イルダも
「ええ。露払いをしていただくことがあるでしょうね。」
「上等だ。そこらのAGEとは、一味も二味も違うというのを見せてやるぜ。」
「あら? 期待しておくわ。」
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「航路?」
その後、ワタシ達には、女性部屋と男性部屋の空きベットが用意された。
男部屋にお邪魔したワタシは、そこでコウからそんな言葉を聞いたのだ。
「ああ。ユウゴ達が交渉した結果だ。俺たちは、グレイプニルまでの新規航路の開拓を手伝うことになった。」
航路。それは灰域濃度の薄い
「報酬は?」
「手数料の五割。」
「吹っ掛けたな。」
ユウゴの答えに、ジークがそういう。
「そういうな。初めはコイツ、7:3なんて言い出したんだぞ。」
「そりゃ吹っ掛けたな。」
「スマン。さすがに調子に乗った。」
コウの暴露に、ユウゴが項垂れる。
「それで? 今は?」
「休憩だ。ルカが、船の目ともいえる感応レーダーの適性があってな。」
「しばらくは大丈夫らしい。しばし休憩だ。」
今のうちに体を休めとけって話な。そういうことなら分かった。すると、
「おや、これが新入りの皆さんですか。」
と、声がした。入ってきたのは、着物姿で、羽織を肩に掛けて羽織ってる、糸目の男だ。両腕のそれは、腕輪。
「……アンタは?」
ユウゴが睨むと、笑みを浮かべたソイツは、
「これは失礼。コジョウ・クリサンセマムと申します。クリサンセマムの、数少ないAGEですよ。
まぁ、先の襲撃で少々ケガをしているお陰で、今は療養中のみですが。」
そう言い、右腕を見せる。
「見事にギプスでグルグル巻きだな。」
「ええ。腕が鈍ってしまいそうです。」
そう答えてから、
「この度は、私の負傷のせいでご迷惑をおかけして、申し訳ありません。」
と、丁寧な物腰で。頭を下げた。
「気にすんな。こっちはそれだけ利益が出る。」
「それはそれは。何はともあれ、これからよろしくお願いいたしますよ。」
そう言ってから、
「そういえば、お名前を伺いしていませんでしたね。」
「ああ。ユウゴ・ペニーウォートだ。」
「改めて、宜しくお願い致します。」
「ああ。」
そうして、手を握り合う。
「(この男、クリサンセマムはデカい船なのにたった一人で守ってんのか? もしかしなくても相当な実力者かもな。)」
「(この青年、腹に一物抱えていますね。イルダさんの護衛であった海千山千のタヌキどもと似た様な、危険な香りがします。)
心の中では、蛇が鎌首もたげてたけどな。
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《No Side》
「ほら、ここだ。さっさと入れ」
「うわっ!?」
ペニーウォートの大型船。キースは、そこの、どこだかわからない場所放り込まれていた。
「イテテ…………人使いが荒いよ。」
エンジンの整備やら何やらと手伝わされて、挙句の果てにここに放り込まれたのだ。文句はしょうがないだろう。
「あ、ほらっ、言われてた新入りクンっスよ? レイト君、起きてくださいっス~。」
すると、声がした。
「ふあ? な、何?」
こんどは、眠そうな声が。
「ッ!? だ、誰ッ!?」
警戒するようにあたりを見回すキース。
「あ、そうだ。電気は付けないとっスね~。」
そう言うと、パチンという音がして、電灯が付く。
そこは、倉庫のようだった。積み上げられてた箱の上に座る少女と、眠そうな顔を浮かべる青年。二人とも、AGEだ。
「ようこそ新入りクン、歓迎するっス。」
「え?」
「あ、ボク、レイト。よろしく…………グゥ。」
「ね、寝た?」
青い髪の青年が、名前だけ言って、また眠りに入ろうとする。
「ほら、レイト君、お~き~て~!!」
それを揺さぶって起こす少女。
「苗字は割愛するけど、ラキナっス。あんたと同じ、ここに連れ込まれた、お仲間っすよ。」
「お仲間?」
「アナグラ組。」
「へ?」
「Zzz…………。」
「また寝てる。」
再びラキナがレイトを叩きおこしながら、
「ともかく、そう呼んでるんすよ。ラキナたちの住処は、文字通りアナグラっスからね。」
そう言うと、キースに顔を近づけた。
「という訳で、よろしくっス!!」
ニカッ!! と笑うラキナ。
「え、う、うん。よろしく。」
キースは、戸惑いながらもその手を取った。