星見山中プログラム   作:なななお蝶

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13.勘違い

 

「よっこいしょ」

 近所に住むおばさんのような声を出しながら、学校から300mほど離れた地点の草むらに藤真 鈴華(女子14番)は腰を下ろした。

 基本的に動く事が嫌いな彼女は300m歩いただけでも十分な運動になっていた。

 

「しかし……なんでこんな事に参加させられちゃうかなぁ~」

 

 つまらない。そんな風に言いたげに鈴華は支給されたデイバックを覗き込んだ。

 どうせ、中にはたいしたものは入っていない。

 さっき確認した時に入っていたもの。

 パン……面白くない。

 水……これも面白くない。

 地図……ぜーんぜん面白くない! 

 ああなんて凡庸なんだろう。実に実に実に面白くないものばかりだった。

 

 そして、極めつけは武器!

 藤真 鈴華に支給された武器………………………………………………無かった。

 

――政府の人が忘れる事もあるんだねぇ

 

 鈴華は鼻で笑った。

 それはそれでギャグかな? なんて。普通の人とは違う事が出来て面白い、なんて。そんな事を考えながら。

 ヤバい事だと気付いたのはそれからしばらくしてのことだった。なんと銃声が聞こえたのだ。ゲームに乗ってる人がいる。じゃあ自分が殺されるかもしれないじゃないか。

 

――ま、そういう人がいても仕方ないけどね。少なくとも私の友人達はそうだろうなー

 

 一時はその危険性から恐怖を感じた鈴華だが、しばらくして慣れてしまったのかそんな事をぼーっと考えるに至っていた。

 

さく さく さく

 

――あ。

 

 誰かが近くをゆっくり歩いている。足音に気付いた鈴華だが逃げる様子は無かった。

 

――移動するの面倒だな。

 

 ただそれだけだった。ただそれだけのために、鈴華は逃げずにいたのだ。

 

さく

 

 ついにその足音が自分の前で止まる。伏せていた顔をあげ、鈴華はその足音の主を確認した。

 

「えっと、群咲君だよね」

 鈴華の前に現れた人物、それは群咲 馬胡(男子19番)だった。

 『木蛇・芝見沢・奏草』の決して真面目とは言えないグループに属している彼。

 頭はいつも坊主で、はたから見ればお坊さんみたいに見えなくもない。

 鈴華はなんとなくこういった種類の人間が好きにはなれなかった。

 

――いやぁ……だってこの人はどう考えたって。

 

 鈴華はまじまじと群咲の手元を見た。なぜなら、群咲の手には銃(ワルサーPPK)が握られていたからだ。

 

――やっぱり……

 

「やっぱり、私、君に殺されるって?」

「……」

 無言だった。彼はもう、確実に鈴華を殺す気でいるのだ。

 

かちゃ

 

 額に銃口が当てられた。

 鈴華は反撃する気も逃げる気もなかった。

 まぁ、逃げればもちろん撃たれてしまうだろうし、反撃してもやはり撃たれてしまう。それだったら、動かなくてもやっぱり同じだと考えたからだ。

 

――私の人生あっけないなぁ。

 

 いよいよ引き金が握られる、その時だった。

 

ばぁん

 

 耳にはっきりと残る大きな銃声が響く。鈴華は確実に撃たれたのだと思った。もう死後の世界をさまよっているのかと思った。

 しかし、それは間違いだった。

 撃たれていたのは群咲の方であり、鈴華ではなかったのだ。

「え? ええ?」

 誰が彼を撃ったのか。辺りを見まわしてみたが誰も見つけることは出来なかった。

 

――なんで私じゃなくてこの人が死んだんだろ。うーん気になる。そもそも一体誰がそんな事を……?

 

 鈴華は腕組をして考えた。けれど答えは分からない。

 

――私にはストーカでもついていて、私のピンチに助けに現れてくれたのかな?

 

 そんな適当な理由を考えた。

「ま、なんでもいいけど」

 鈴華は再び群咲へと視線を移した。

 不気味なほど正確に頭を打ち抜かれている彼は、ほぼ即死だったに違いない。

 

――群咲君、可哀想に。

 

 鈴華は目を細めた。

 主人を無くした銃が一丁寂し気に転がっている。

「こんなぶっそうな物」

 そう言って鈴華は群咲の銃を土に埋めた。単純に危ないから。

 実のところ元々あまり争い事が好きではない鈴華にとって、武器があろうとなかろうと関係は無いものだった。だって結局はこうするのだから。

 

――全くもって面白くない。

 

 それから、鈴華は群咲に支給されたパンを1口食べた。

 

「さてと、そろそろ移動しますか」

 

 自分に最低限必要な物を持ち、藤真 鈴華はさらに300m北へ進む事にした。

 

【群咲 馬胡(男子19番)・射殺・死亡】

 

 

===

 

「いけない、いけない。また、撃っちゃった。せっかく本物が手に入ったんだから大事にしなきゃ」

 藤真 鈴華(女子14番)の所から20m離れた木の影に烏丸 智野(男子4番)はいた。

 別に鈴華がいてピンチだったから助けたわけじゃない。

 『ただ、試し撃ちがしたかった』だけ。

 それが、おそらく運悪く群咲 馬胡(男子19番)に当たった。

 

 ただそれだけだった。

 

 まぁ、それはおそらくであって、本当は智野の意志ある行動であったのかもしれないが、20mも離れた場所から当てるにはよほどの腕が必要なので、そんなことはないだろう。

 

 

 おそらくは。

 

【残り38人】

 

 

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