たったったっ
同時刻、藤真 鈴華(女子14番)とはまったく逆、はるか南の方角で鷹代 仁(男子10番)は走っていた。
――さっきからいろいろな銃声が聞こえる。俺、殺される!! だって、さっきから誰かが追ってきてるし!
耳にするいくつかの銃声。
恐怖のあまりただひたすら音のしない方へと仁は逃げていた。
その最中だった。
「待って、仁君。待って」
後ろから自分を呼ぶ声がしたのは。
「っ」
反射的に仁は足が緩む。そして、なんだろうとつい反射的に振り向いてしまう。
「だ、誰?」
(だめじゃん。これでやる気のやつなら、俺は殺されるよ)
後悔しても遅かった。
「はぁ……はぁ……仁君。足、速いよ……」
幸いそれはそれはクラスの女子、船崖 珠未(女子9番)だったからよかったってだけの話だ。
クラスの中でも結構可愛い彼女はもたもたとした足取りで仁に追いつく。
「私、みんなが殺し合いするの恐くって……一人じゃ恐いから仁君のあとをつけてきたの。ごめんなさい。迷惑……だった……よね?」
珠未は半泣きであやまった。
――こんな俺の事を追いかけるために、涙を浮かべて一生懸命走ってきたなんて。
その様子を見て彼は確信した。きっと、彼女は『やる気』じゃないんだと。そうだ何も全員がやる気じゃないんだよな。と。
冷静さを取り戻したのである。
「そっか、女の子一人じゃ寂しいもんなぁ。どぉ? 俺と一緒に行動しない?」
優しく声をかける。親切な自分。これが、彼なりの答えだった。正しい発言だと思っていた。
「ありがとう。じゃそうす……」
珠未も安心したように言葉をもらし、嬉しそうに顔をあげた。
その時だった。
ぷすっ
一瞬の事で最初何が起こったのか仁にはよく分からなかった。
よく見ると珠未の首に針のような物が刺さっている。
「……え?」
仁がそう言葉をこぼすよりも早く、珠未の様子がおかしくなっていった。少女は恐ろしく震えている。唇の色は不気味な紫色へと変わっていった。
「うっっぐっ苦しっ助けて」
「助けてって俺は何をすれ……」
「……仁……く……ぶはっ」
口から血を吐き出し倒れ、珠未は一言も話さなくなった。
それは本当に一瞬の出来事で、仁には何が起きたか理解することも出来なかった。
「珠未、さん?」
後に残るのは不気味な静寂さだけ。
【ただの臆病者・船崖 珠未(女子9番)・死亡】
――なんだよ、なんだよ?? おい? どーなってんだコレ? 1分前まで普通にしてただろ。なんで倒れたんだよ? 恐えーよ!! マジかよ!
珠未が急に死んだのを見て、仁は気が動転していた。
当然ながら珠未が死んだ理由すら、今の彼には推測出来ない。彼はとっても苦手なのだ、ピンチってやつが。
――誰だ? 誰が殺したんだ? ってことは俺もここにいたら危ないよな? そうだ、逃げよう。
仁は船崖 珠未(女子9番)の死体やデイバックには目もくれずとりあえず走った。
自分は助かろう、ただそれだけのために彼はひたすら走った。
「はぁ、はぁ、なんで俺なんかの方を狙う奴がいるんだよ」
仁(男子10番)は力の限り逃げた。服はもうぼろぼろだった。彼の綺麗だった顔もぼろぼろになり、もはや別人のようになっていた。
目の前ではもうすぐ綺麗な朝日がのぼろうとしていたが、それすら気付くことはなかった。
――生きることだけが大事。
===
「じ・ん・君。逃げられないよ。だって私、あなたをいつまでも追いつづけるんだから」
鷹代 仁(男子10番)が必死に逃げ惑うはる後方。彼に見つからないように、散倉 央(女子12番)はひっそりと後をつけていた。
別名・ストーカー。
仁は彼女に取ってとても好みの男性だった。何せ顔がいい。有名俳優に似ていると言われていることもあった。
そんな彼を央はとても大好きだった。(仁は央の気持ちを知らなかったが)
だからこんな状況になった時、彼女の取る行動は決まっていた。
央のとる行動、それは、仁に近づく者は全て排除するというもの。
現に先ほど船崖 珠未(女子9番)が彼女の愛の犠牲者となった。
「だめよ。他の女としゃべったりしたら。殺されちゃうわよ。私みたいな人にね……」
そうつぶやくと、央は大事そうに。珠未を殺した吹き矢(毒入り)を自分のディバックにしまいこんだ。
そして、走っていく。仁の足音を追いかけながら。
好きな人。……私が殺してしまいたいくらい……
【残り37人】