「ララッラッラー♪ ふーん、ふふーん♪」
学校から北西の方角にある洞窟。そこに、クラス一いや日本一いや世界一歌がうまい(自称)水田 太一朗(男子18番)はごきげんにも鼻歌を歌っていた。
「いやー洞窟って音が響くなー。いいな、ここ。最高のステージだぁ」
結構ここの場所も満足してきた、水田。
まるで自分の部屋で鼻歌を歌っているような清々しさではあるが、洞窟にいるのは彼一人ではなかった。
水田の友達、四川 八須尾(男子21番)。彼もまたこの素晴らしい歌声を聞いているのだった。
四川は目立つ事を好まない男だった。
一言で言えば地味。話をかけられても、学校だと『あぁ』とか『うん』とか必要最低限の返事しかしない。朝、クラスメートに会っても、よっぽど親しくなければ挨拶さえしない。そんな、シャイな男だった。
そして水田の意見には絶対服従。
感じ方は人それぞれである。本人は最低限のことしかしていないだけのつもりだったが、水田にとってはそう見えたらしい。
クラス一のアイドル(自称)水田が四川と友達でいるポイントはそこだった。
自分を誉めて、自分を思いきり引き立たせてくれる。目立たせてくれる。だから、一緒にいた。
「それももう今日で終わりだな、四川」
「?」
水田は歌を止めると突然自分の支給武器である鉄パイプで四川の頭を殴り始めた。
最初、何が起こったのか、四川の頭の中では全く理解出来なかった。
また、理解した頃には、すでに頭を殴打されていたため意識もなかった。
一発。二発。三発。
四川の頭の中には鈍い感覚が残る。口の中も血でいっぱいだ。
「これで、とどめだぁ~!!」
すっかり水田はヒーロー気分だった。そして、それはもちろん歌のリズムに乗っていた。
ばきっ
そのとどめとやらを機に、もう四川は動かなくなった。
四川の死を確認すると、水田は四川の死体を洞窟の外の目立たないところに置いた。
「ふ~んふふふ♪」
またご機嫌に水田は歌い始めた。
――四川ぁ~お前の武器の銃(グロック19)と食料はありがたく使ってやるよ。感謝しろよな。
――最後に残るのはこの、俺様だ。
【四川 八須尾(男子21番)・撲殺・死亡】
「あれ、あそこにいるのって……」
水田が洞窟の中に入ろうとした所を七来 卓味(男子12番)は見ていた。
彼に取って不運なのは、四川をの死体を運んでいる所と殺している所は見ていなかったことだろうか。
「おーい!! 水田君~」
何も知らない七来は大腕を振って呼びかける。
名前を呼ばれた水田は思わずびくっとした。
――もしかして、見られたか?
ひやりとした気持ちが押し寄せる。
「や、やぁ七来君じゃぁないか」
水田は自然体を装って、さりげなく笑顔で彼に言葉を返した。
「……? どうしたの水田君? なんか変だよ?」
「いや、いつもの事だよ俺が変なんて。あはは……さ、さぁ中に入りなよ」
――よかった。たぶん、俺が殺したのはこの様子じゃばれていないんだろう。
七来の平凡な反応から警戒されてはいないのだと確信した水田は彼を洞窟内へと誘った。
そこで七来はある事に気がついてしまった。
「あれ? ディバックが二つあるね。……ってことは誰か他にもう一人いるの??」
――しまった、ヤバい!
水田はやや強引に機転を利かせた。
「ああ、もう一人いるんだ。ちょっとトイレに行ってくるらしいよ」
「なんだ。そうなんだ」
――よ、よし。うまくごまかせた。
水田は胸をなでおろす。
彼はこのまま異変に気付かれても嫌なので話をそらすことにした。
「ところで七来君の武器は何だったの?」
「僕はね」
七来はデイバックの中を漁り始めると一つの四角い箱を取り出した。
「コレ」
スズムシ育成セットだった。
「僕、動物を育成するの大好きだからよかったよ。でも、これじゃ殺し合いに乗ってる人に見つかったら死んじゃうけどね」
動物愛好家の彼は嬉しそう笑う。
彼の人懐こい笑顔、たれ目で敵意を感じさせない笑顔を見て水田は目を細めた。
――馬鹿だなコイツ。もう、見つかってるんだよ。俺に。
水田はばれないよう静かに銃を取り出し、七来の後頭部めがけて撃った。
だん
「えっ?」
七来はくらりと体がよろける。
やがてどさっという音とともに七来は絶命した。
「よし、二人目……」
少し反動で痛みが走ったが、それ以上の高揚感が彼の痛みを覆い隠す。
「ラララー俺は最強だぜー♪ 来るならこーい♪ ラララーラララー」
七来の武器(??)のスズムシ育成セットにいたスズムシは、ただ「リンリン」と鳴く事しか出来なかった。
洞窟からは不気味な音が響いていた。
【七来 卓味(男子12番)・銃殺・死亡】
七来が殺される瞬間を空東 千秋(男子5番)は目撃していた。
その時、彼の頭の中にどんな思惑があったかは分からない。
ただ彼は静かに洞窟のわきを通り過ぎていった。
【残り35人】