「おいおい、どうしようなー俺らの他にもやる気の奴らがいるんだけど」
ここは放送が終了してまもなくのとある民家。
家の中には木蛇 鉄瑠(男子6番)芝見沢 朝陽(男子8番)奏草 浅之(男子9番)の三人が新たな獲物を待つべく隠れ潜んでいた。
隠れるといっても三人が集ってしまえば怖いものなど無い。これは力が物を言うゲーム。この三人を前にして力で勝てるなんてことはまず不可能に近いと彼らは理解していた。
「仕方ねーよ、そんな事はあらかじめ予想がついてたし」
そう言ってもう一度、斧を握りなおす木蛇。
負けるつもりはなくても油断は禁物である。
彼はいつ誰が襲ってきてもいいように、片手から斧を手放すことは無かった。持ち手は少し汗で湿っていた。
「でもさ、でもさ、群咲は死んじゃったぜ」
そう言って奏草は群咲 馬胡(男子19番)の名を挙げた。
群咲 馬胡、ここに集うはずだった仲間の最後の一人。
はずだったというのは彼が既に1回目の放送で名前を呼ばれていたからだ。
群咲といえば自分達のグループの中では一番喧嘩の強い奴で、他人を殺す事はあっても誰かにやられて死ぬような男ではなかった。
でも死んでいた。
「あー信じられねー」
奏草は一人、頭を抱えてしゃがみ込む。
「落ち着けよ」
そう言いながらも芝見沢は考えていた。
喧嘩では負けない俺達だけど今回は話が違う。一人一人に支給された武器が問題だ。
最悪な事にここには使える武器と言ってもボウガンと斧くらいしかない。もしも、銃を持った奴に攻めて来られたら、まずいな……
少し長めの髪の毛が隙間風に吹かれてさらさらと揺れた。
「おいちょっとヤバくない?」
隣の部屋から木蛇が何かに気付いたように声をあげた。
「いいかげん、この死体をどけないとぜってーヤバイって!」
木蛇はそう言って地面にあったものを指差した。
そこには三人がプログラム開始直後に殺した竹原 香(女子10番)の死体が転がっていた。
おかっぱ頭の少女が無残にも斧ですっぱり切断されている。そこからはなんとも言えない気持ち悪い匂いが漂っていた。
「じゃあ外に片付けるか……」
三人はその一言でその死体を片付ける事になった。
『それじゃ、じゃーんけーん……』
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「なんだよ……ったく……俺かよ……」
じゃんけんの結果、不運にも一人だけチョキを出した奏草は香の死体運ぶべく玄関で靴を履き替えていた。
こんな気持ち悪い事やりたくないのに。
ぶつぶつと小言をいいながら香の体に手をかける。そしてそれをひきずり運んだ。
ずるり ずるり ずるり ずとん
砂袋がひきずられるような音を出しながら、重くバランスも取れない体は不規則にゆるゆると揺れた。
「こんなもんでいいだろ」
大きなゴミを捨てるように、一つの体が外の草むらへと投げ出された。
「うわっ、汚っ」
手にべっとりと付いてしまった血を見て奏草は不快な声をあげた。
「最悪だし」
その言葉を残し彼は家の中へと消えた。
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「……」
彼の死角になる片隅で、その行動を無言で覗いている少女が一人。彼女の名前は聖礼 千歳(女子8番)。
「最低。ああいう事する人なんて生きてる価値ないよね」
吐き捨てるようにそう言うと、彼女は奏草が消えていった民家の入り口を冷たく睨みつけていた。
【残り33人】