――さぁ……行くのよ。
玄関を開けゆっくりと中に忍びこむ。その動作はとても正確にそして冷静に行われた。
足元に点々と残る血痕。それは一つの部屋へと繋がっていた。
――たぶん、この部屋……いるんだわ。あいつが。
奏草 浅之(男子9番)が潜んでいるであろう部屋の入り口に背中を預け、聖礼 千歳(女子8番)は静かに息をひそめた。
彼女はまだ知らない。この家には彼一人では無く木蛇 鉄瑠(男子6番)、芝見沢 朝陽(男子8番)がいるということを。
===
「へっ、ばればれなんだよ~」
「俺らを甘く見てもらっちゃ困るってーの」
そんな彼女の後ろ姿を、男達は物陰から密かに窺っていた。
実は既に彼らの姿はその部屋にはいない。
千歳が家に侵入したことに気付いた際、血痕の続く部屋をおとりに使おうという朝陽の提案のもと、彼らは急いで別の部屋へと移動したのだ。
侵入者の正体とその危険が事前に把握出来た三人は、何も気付かない彼女を横目にひそひそと会話を続けた。
「で、あいつの武器はなんだ?」
「わかんねぇ、でも長い棒状のものみたいだ」
その棒状の物は日本刀だったのだが、鞘におさまり千歳の影に隠れていたため彼らの目からは確認することが出来ずにいた。
「棒状? なんだそれ? ま、いいやコイツで攻撃すれば大丈夫だろ」
奏草は自信満々で竹原 香の支給武器のボウガンを見せる。
「それは止めた方がいい」
朝陽はあまりいい顔をしなかった。
「相手の武器が長い棒状の物だとしたら、こっちが攻撃する前にやられる可能性の方が高い。長いって分、相手の方が有利だからな」
「そ、そっか……じゃどうすればいいんだ?」
「相手より長そうな物を使え。それで相手をひきつける。その間に違うところからボウガンを使えばいい」
「わ、分かった。おい鉄瑠、そっちに何かその辺に長い物無いか?」
そう訊ねられた木蛇はきょろきょろ周りを見まわす。
「んっと。あった! あった! ほれ」
「お、サンキュ♪」
奏草は木蛇から受け取ったそれを確認した。
「ラップの芯かよ! おい、もっとマシなのないの?」
「ごめん、冗談。これでも使えよ」
そう言って今度は身近な所にあったゴルフバッグからゴルフクラブを抜いた。
「おーこれなら使えるな」
嬉しそうに奏草はゴルフクラブで2~3回素振りをする。まるで普段からその動きを行っているかのように、ゴルフクラブは軽やかに振りぬかれる。
「あっそーか、お前んちって道場やってたっけ?」
奏草の家は実家が古くから続く道場だった。
小さい頃からそこで育てられていた彼は、実はかなり武術が上手い。
まあ本人があまり人には恥ずかしくて披露しなかったので知ってる人は少ない話ではあるが。
「ま、そう言う事。ひきつけるのは俺に任せて」
「わかった。失敗すんなよ」
ひきつける役⇒奏草 浅之 ボウガンで狙う役⇒木蛇 鉄瑠
===
どき どき
――次第に心臓の音が高まっていく。緊張も解けた。覚悟は出来てる。さぁカウントダウンして侵入しましょう。
千歳は胸に手をあて、静かに呼吸を整えた。目を閉じてゆっくりと数える。
――5……4……3……2……1………………
ばんっ
ちぎれてしまいそうなほど力強く音を立ててドアが開く。
――さぁ、戦闘開始だわ。
【残り33人】