「あーあ、仲間集めって案外簡単にいかないのな」
壁智 明流(男子16番)と海名 小卯(男子2番)は相変わらず二人で行動していた。
本来ならばクラスメートの一人や二人と合流しておきたいところである。けれどそうなっていないのは、佐羽 静枝(女子5番)を仲間に出来なかった時のことが大きい。
古月 昌成(男子7番)と棒葉 宰春(男子17番)の殺害現場で遭遇してしまった二人は、運悪く彼女に犯人だと疑われてしまったのだ。
犯人を否定しようにも受け入れてもらえない。結局二人は、その場を立ち去ることしか出来なかったのである。
「信用してもらえないっていうのはかなり痛いね」
「信用かぁ~」
ついこの間までは仲間を沢山作ろうと意気込んでいたのに。
思いがけなく生じてしまった障害を前に明流はがっくりと肩を落とした。
「こうしている間にも、みんなが殺し合いをしているのかもしれないのに……これじゃ奴らの思う壺だ」
小卯は淡々とそう告げた。
「お前冷静だな」
「まさか」
明流の言葉に小卯は自嘲的な笑みを浮かべた。
「正直かなりイライラしてる。こんな最悪のゲームを仕向けた奴らにも、静枝さんの一件以降、また拒絶されるんじゃないかって怖がって次の行動に移せない自分にもね」
「そんなもんか」
「まあね」
その辺の木に腰かけて、小卯はゆっくりと空を見上げる。雲一つないお天気で、こんな状況なのが馬鹿馬鹿しいくらいに思えた。
「んじゃさ」
大きく背伸びした明流が小卯に向けて語り掛ける。
「もう一度くらい頑張ってチャレンジしてみる?」
「チャレンジ……」
「だってほら、ここで諦めたら試合終了って感じするし」
どこかで聞いたフレーズを並べながら明流はもっともらしく腰に手を当てた。
「そうと決まれば移動しようぜ」
ディバッグを担いで動き出そうとする明流。小卯は短く制止かけた。
「いや、待った」
「なんだよ」
不思議そうに眉が潜む。
「手あたり次第に声かけるんじゃなくて、信用してもらえそうな相手に声をかけよう。現状、既に殺し合いに乗ってる人間もいるし、錯乱している人間もいる」
静枝の件も踏まえた小卯なりの判断だった。
「信用してもらえそうな……って、例えば誰? 津家と天根とか、女子だったら江口……あたり?」
「うん、まあその辺りかな」
小卯は短く頷いた。
本当は江口 みほの(女子3番)の名前が出た時、一瞬気になる事はあったがそれを口にはしなかった。
江口 みほの。
このゲームのスタートが男女交互の出席番号順である以上、小卯が外で待ち構えていれば必ず出会えたはずの少女。
けれど小卯が彼女に遭遇出来なかったということは、もしかすると避けられていたのかもしれない。
でも、誰とでも気軽に打ち解ける彼女が、本当にそんな事するだろうか……?
「まずは人の居そうな湖にでも行くか?」
次の行先を探るように地図を広げていた明流の言葉に小卯は我に返った。
――そうだ、今はそんなことを考えている場合じゃ無い。
「うん、明流に任せるよ」
そう言って、自分の荷物に手をかけた。
「おっとそうだ。そういえば気になってたんだけど」
「何?」
地図に印をつけ終えた明流がそのペン先を荷物に向ける。
「武器、何が入っていたんだ?」
「え? ああ、見てなかった」
ついつい流されるまま現状に至っていた小卯は、武器を確認することをすっかり忘れていた。
「お前、冷静なんだか天然なんだかどっちだよ」
「だって別に殺し合いとかするつもりなかったし」
「や、そうだけど。自分の身を守る事ぐらい考えてもよかったんじゃねーの」
「そうだよね……あった、これみたいだ」
出てきたのは硬くて丸いボールのような物だった。それが小卯の手の中にすっぽりと収まっている。
「しゅっ……手榴弾?」
手榴弾が2個、彼の武器はそれだった。親切に説明書まで付いている。
「守るっていうより、攻めるって感じのアイテムだね」
その不気味な感触と重さを肌で味わった小卯は、それ以上何も言わずにディバッグの底へとしまった。
そして二人は湖へと向う……
【残り30人】