星見山中プログラム   作:なななお蝶

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3.予感

 

 何も見えない暗闇の中で意識が朦朧としている。

 岩敷 李阿(女子2番)は嫌な予感を感じていた。彼女の勘は結構当たる。

 

 コツ

「な、なに?」

 何かの当たった感触。

 李阿は、ストレートの黒くて長い髪をなびかせながら後ろを振り向いた。

 見まわすとみんながイスに座りいつもの席順どおりに寝ていた。

 でも、いつもの様子とはやはり何かが違う。おかしい。

 コツ コツ

 もう一度何かの当たる音。

「……誰か。起きてるの?」

 自分の右斜め後ろの席だった。

 見るとさっきまでは気づかなかったが天根 俊谷(男子1番)がめずらしく起きている。

「やっと起きたか。さっきから起こしてるのにみんな起きねぇ……お前で起きたのは一人目。あ、違うな。俺の次で二人目か」

 二人目と言う事はこの人も寝ていたという事か。

 言われてみると、確かに天根は短くてぼざぼさした寝癖が立っている。さっきまで寝ていたと言われればそんな気もする。

 

 では、一体誰が彼を起こしたのか? 

 

 一度寝たらなかなか起きないこの男を起こす事が出来るのはクラスでただ二人。

 

 一人目は水田 太一朗(男子18番)。彼は歌が大好きでマイクをもったら離さない。そんな彼の素晴らしい(?)歌声が天根 俊谷(男子1番)の眠りを妨げる事はよくある。

 しかし、どうやらそれではないらしい。

 ならば二人目。

 李阿の視線が今度は左斜め後ろにそれた。

 

「津家君」

 

 津家 貴史(男子11番)はクラスではあまり目立つ方の人間ではない。

 綺麗に整った黒い髪の毛と生まれのよさそうな顔立ち。彼は存在感はある人だった。

 たぶん存在感があると感じているのは、顔が少なからずとも悪くないと言うのが理由だろう。

 彼に好意を抱いている女子がいるという話はよく聞いていた。それに対して、本人はあまり関心を持っていないようだが。

 

「ツゲが俺の事も起こしてくれたんだよ。殴って!」

 

 天根はわざとらしく、津家の方をにらみつけた。でも、悪意はこもっていないようだと李阿は思った。

 この二人は仲が良い。なので、たぶん何をやっても許せるのだろう。

「……寝てるお前が悪い」

「悪いったって……ま、いいや早く他の奴らも起こしてやらないと」

 そう天根が言った時だった。

「きゃーっっ!! 何コレぇ?!」

 前の席の方で、天根が声をかけるよりも早く誰かが起きたらしい。

 その声をきっかけにみんながどんどん起きはじめた。

 

 ざわざわ ざわざわ

 

 次第に騒ぎが大きくなっていく。すると……

 

ばんっ

 

 まるで生きているように教室の扉が勢いよく開いた。

「お前ら!! 早く、ここから逃げろ! 今すぐだ!!」

 ものすごい形相で入ってきたのは担任の芝尼 針生先生だった。

 

==

 

――『逃げろ』ってどういう事だ? 

 

 海名 小卯(男子2番)は必死にその答えを探していた。

 もちろんその言葉の意味はわかる。しかし、その状況がわからない。

 誰かの叫び声と共に起きたと思えばいきなりこれである。

 これではたぶん表向きクラス一頭のいいとされる音島 清人(男子15番)にも分からないだろう。

 

「い……いいか……お前らはプログラムに……」

 息を切らしながら必死に何かを伝えようとしている先生。

 

――『プログラム』? もしかして……

 

 嫌な考えが頭の中をよぎった。

 

「と、とりあえず早くここを出ましょう。みんな私の指示に……」

 学級委員の沖ノ島 恵子(女子4番)が叫んだ。いつもはおっとりしているがこういう判断は賢明だ。

 その時だった。

 

だんっ だんっ

 

 赤い火花が自分達のいる教室に入って来たのだ。

 

==

 

 飛び入る弾丸。

 それを岩敷 李阿(女子2番)はしっかり見ていた。

 嫌な予感、それはこの事だったのだ。

 どこからともなく入って来た弾丸は先生の腹部と心臓めがけて当たった。

「う、うわっ」

 先生のうめき声が教室中に響く。

 一瞬だけとても教室が静かになった。

 

「きゃーっ! 早く、早く手当てしなきゃ」

 誰かの声を皮切りに再び教室が騒がしくなっていく。

 先生の周りに数名の女子が集まる。

 けれど、李阿はそんな気にはなれなかった。

「は、早く、病院に行こう。ここに居たら間に合わない」

 沖ノ島 恵子(女子4番)の判断の声。それを受けて先生をみんなは教室から運び出そうと動き始めていた。しかし……

 

ばんっ ばん ばん

 

 再度の銃声。

 今度は先生を担ぎ上げた生徒の肩をかすめた。そして、最後の一発が先生の心臓に確実に当たった。

 そこからは誰が見ても、一目で分かるくらいのおびただしい量の血液。

 

 やがて、先生は動かなくなった。

 

 それと同時に教室に20代半ばの男が入って来た。

「みなさん、静かにしなさい」

 顔は笑っているものの、とてつもない威圧感。

 

 私の勘はやはり当たる。

 とても悪い予感。気持ちが悪い。

 

 その男はにこやかに笑って告げた。

「この人は罪を犯しました。まぁどっちみちこうなる運命かな? あっ自己紹介が遅れましたね。

僕の名前は『国守 誠』この国をしっかり守るのがお仕事です。でも、今回はみなさんの担任になります」

 

 状況を飲み込める者は誰もいない。

 

 ざわざわ

 

 教室はまた、ざわつき始めた。

「みんな、何もわかっていないみたいだね。とりあえず説明するから一旦全員、席に戻ろうね」

 そう言うと国守 誠は拳銃を取り出した。

「ひっ」

 それを見て、先生が動かなくなって周りで泣いていた女の子たちもゆっくりではあるが席についた。

 

「それでは全員着席したね。みんなこれを知っているかな?」

 

 誠は黒板にしっかりと『BR法』という文字を書いた。

 そしてその時、私の隣の席の海名 小卯(男子2番)がうつむきながら悲しそうな目をしていた。

 

 

 ねぇ、小卯君はもしかして、何か知っているの? 

 

 ねぇ、私にも教えて。これから、起こる事……

 

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