星見山中プログラム   作:なななお蝶

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30.冷たい目

 

=前回のあらすじ【by水田】=

 

「動くな! 望夢さん!!」

 

 銃を構えられた俺こと水田 太一朗(男子18番)に出会った枠 望夢(女子20番)。

 銃を構える俺の姿はさすがカッコイイ☆

 そんな中、俺をみつめる望夢さん。もしかして俺に惚れたって!?

【俺vs枠 望夢】もちろん、勝つのは俺サマ☆今日も華麗に決めちゃうぜぃ☆

 

 

===

 

 ……つっこむのも嫌なほどアホな事を考えている水田を前に、望夢はじっと彼を凝視していた。

 氷のように冷たい目。

 望夢は幼い頃からこの目のせいで「何を考えているのか分からない」と周囲の人間からよくそんな言葉を浴びせられていた。

 

――こんなに私が真剣に見つめていても、誰も私の心なんて分かってはくれない。

 

 そう理解すると自分の心が更に冷たくなっていくのが分かる。

 

――別に私はそれでいい。

――私の事なんて誰も考えてくれなくていい。

 

――私さえ生き残れば……

 

 さぁぁっと風が望夢の前を通りすぎた。空には眩しい太陽。こんな爽やかな日なんてめったに無い。

 日の光が目に差し込み、望夢は目を細めた。

 

 

 

「おっと、本当に動くなよ。撃つぞ」

 

 力強く銃口を向け、水田は再度忠告の言葉を投げかけた。

 洞窟の影に守られて外へと出て来ない彼に、天気の良さなど関係は無かった。

 

「おい、望夢さん。お前の武器を出しな……バッグごとだ。命が惜けりゃな」

 

 命の権利はこちらにある、その確信のみが彼を強者の態度たらしめるのだった。

 

――どっちにしたってこいつは死ぬんだ。武器ぐらいは貰ってやらないとな。

 

 今彼が頭の中に思い描いている作戦。それは実に単純なものだった。

 銃を向けて禁止エリアに足止めする。

 そしてそのまま自爆を誘発させる。勿論逃げても銃で殺す。

 最悪、銃を使ってしまうが運が良ければ、銃を使わずに相手を一人葬れる。更に状況が噛みあえば新たな武器だって手に入る。

 銃弾節約を考慮した彼なりの最適の方法だった。

 

「おい、何迷ってんだよ!! 死にたいのか、早くしろよ!」

 

 水田はまくしたてた。

 けれど望夢はこれだけ追い詰めているにも拘らず、武器をこちらに渡すどころか泣き叫ぶ様子も見せない。ただ無言でこちらをじっと見ているだけ。

 

――ほんと何考えてるか分かんない奴だな。

 

「……いいぜ、それなら今この銃でお前を撃ち殺すだけだ」

 

 意を決したように水田は引き金に指をかけた。

 一歩二歩、狙いを確実にするように彼女の元へと進んでいく。

 

「ちょっと待って」

 

 飾り気の無い彼女の声がエリアに響いた。

 

「なんだ」

 

 水田はまるでその声に反応したように足を止めた。

 

――止めてくれてよかったぜ。あまり近づきすぎて俺まで禁止エリアにかかったら洒落にならないからな。

 

 彼が内心安堵しているなどとはつゆ知らず、望夢はある一つの案を提示する。

 

「……2分考える時間を頂戴」

 

――2分か。

 

 水田は腕に巻いていた時計をチラリと確認した。ただいまの時刻12時7分30秒を過ぎたところ。

 そこが禁止エリアになるまであと3分も無い。この時間なら、望夢の判断が遅くてもほぼ確実に自爆か銃の餌食にすることが出来るだろう。

 

「分かった、2分だけ待ってやるよ」

 

 彼女を確実な死へと追い込むことが出来ると確信した水田は、喜んでその提案を受け入れた。

 

――馬鹿だなコイツ。恐怖のあまり、そこがもうすぐ禁止エリアになるって事を忘れてるな。

 

 水田は笑ってしまいそうになるのを必死で堪えた。

 彼女の自爆まであと1分30秒。

 

「あともう少しだぜ、望夢さん。このままそっちの荷物を渡さないようなら、君は死ぬ」

 

 再度時計を確認する。あと1分。

 

「あと1分。時間が分からないようならカウントダウンしてやろうか? 55……54……53……」

 

 望夢は動かない。時間だけが刻々と流れ過ぎていく。

 

「20……19……」

 

 20秒を過ぎた時点でも、やはり彼女は動こうとしなかった。

 

「10……9……そろそろお別れだな」

 

 武器は手に入らないかも知れないがこの際仕方ない。

 彼女を確実な死へと招待するため水田はカウントを続けた。

 

「5、4、3、2……」

 

 これから来るであろう首輪爆破の衝撃音と、銃の反動に備えようと水田は少し身を引き締めた。

 

「いちっ」

 

 そう告げるのとほぼ同時だった。

 

ドーン   ズズズズズ…………

 

 深い唸り声のような音が周囲から聞こえてくる。首輪が爆発するにしてはまだ早い。何事だと思い水田は天井を見上げた。

 

「石?」

 

 こつんと小さな小石が彼の眉間めがけて落ちてきた。

 

「……え? なんだこれ。天井が……洞窟が揺れてる?」

 

 こんなタイミングで地震かと彼は思った。でもそうじゃない。

 

 …………それは、岩崩だった。

 

「え。え。まて、まてっ――」

 

ズン

 

 まだ言葉も言い終わらないうちに水田の体を重たい岩の天井が塞いだ。

 

「……」

 

 たまたま衝撃と共に水田の銃が外へと投げ出されていった。

 足元に転がったそれを無言で見つめ、冷たい表情で拾い上げる。目の前の洞窟は既に岩に覆われていた。

 

 時限爆弾、それが望夢に支給された武器だった。

 本当は水田に気付かれず仕掛けて立ち去るはずのそれだったが、運悪く立ち去るところを見つかってしまったのだ。

 幸いだったのは禁止エリア発動よりも若干早くそのタイマーをセットしていたことか。

 

「私、水田君に殺される気ないよ? 逆に私が殺すつもりだったし」

 

 返答の無い岩の塊に向かって彼女は呟く。

 

「だって……このゲーム、生きるためには殺さないと駄目なんだもん、殺すに決まってるよ」

 

 そう言って彼女は足早にこの場を後にした。

 

 

 

「……くくくっ何とか助かった」

 

 崩れた岩をかき分けて、男の指がにゅっと生えた。

 水田は岩に埋もれながらも辛うじて生きていた。銃を投げだし、生存本能の成すがまま、少しでも洞窟の外にと体を投げた結果だ。これを奇跡と言うのだろうか?

 

「あと少し、あと少しだ……」

 

 もうちょっと広い場所へ。光を求めて手を伸ばす水田。その光が少しずつ視界に入る。

 

ピピピッピピピッ

 

 突然、人工的な赤い光が彼の目に映った。

 

「な、なんだよ!! ここは平気なはずだろう??!」

 

 点滅を始める首輪のランプに水田は激しく狼狽する。

 

「馬鹿やめろ、違う! よく見ろ! ここは禁止エリアなんかじゃない。禁止エリアなんかじゃ……」

 

ピピピピピピピピピ……ばんっ

 

 

 洞窟の崩れたその場所はギリギリ間違いなく禁止エリアだったのだが、彼がそれを知ることはもう無い。

 

【水田 太一朗(男子18番)・死亡】

【残り29人】

 

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