友達。
今まで、私はこの言葉に何回も騙されてきた。
信じてたのに、ずっとずっと信じてたのに……
「由利ちゃん? どーしたの、顔色悪いよ?」
そう言って、脇から顔を覗きこんだのは徹田屋 江菜(女子13番)だった。
急に現実に引き戻されるような感覚。
「ううん、なんでもない」
私は取り繕った笑顔を彼女に向けた。
違う。本当はなんでもあるんだ……考えていたんだ……
でも、言えない。
また、裏切られるから。
「そう。ねぇ由利ちゃん、これから私、お昼作るけど嫌いな食べ物ある?」
江菜の元気な声はますます私の心を青くする。
「ない……大丈夫」
「なら、よかった♪」
『大丈夫』、その偽りの言葉に安心したのか彼女は台所へと向った。
私の心配なんかしなくていいのに……
ため息をつき、イスにもたれかかった。
イスのぎしぎしという音は、私の心の軋む音によく似ていた。
本当は今すぐにでもここから追い出したい癖に。ほら、あなたのお友達はお怒りよ。
私は視線を少し上げ、テーブルのその向こう側へと移した。
弐羽 一木(男子14番)と西 瀬里奈(女子16番)、二人が何も言わずこちらを睨んでいた。
当然だよね。私はあなた達、仲良しグループには入ってないものね。
私は理解してしまった。
訳も分からないまま参加させられた『殺し合い』。
死ぬかもしれない恐怖にさらされながら、やっとの思いでここに辿り着いた山小屋。見つけたクラスメート。
こんな状況ならきっと、普段は口下手でみんなと仲良く出来ない私でも、仲良くしてくれる。そんな風に思ってた。
でもそれは、間違いだった。
彼女達の目が語っていた。『どうしてお前がここに来るんだよ』と。
……つまりはそういう事だった。
いつも軽々しく『友達』と口にする癖に、本当のところは嘘ばかり。心のどこかで選別してる。彼女は『友達』、私は『友達の皮を被せた何か』。
そんな状況が手に取るように分かるのが馬鹿馬鹿しくて、私は彼女達を心の中で嘲笑ってやった。
「あっ!!」
台所から聞こえた江菜の声。パリンという破壊音がそれに続く。それが皿の割れる音だというのは想像に難くない。当然犯人は江菜だろう。
「もー何やってんの!」
「やれやれ、仕方ないな。怪我はしてないか?」
瀬里奈と一木は立ち上がり、台所へと向かった。
彼女の割ったお皿の破片処理を手伝っているのだろう。
馬鹿馬鹿しい。馬鹿馬鹿しい。馬鹿馬鹿しい。
「あっ、ありがとう。二人とも!」
せっせと仲良く協力してお皿の破片を集める彼らの姿が目に浮かぶ。
また、私の心が青くなった。
――【困ってる時、助け合う人】それが友達ですよー!
どこからかそんな声が聞こえてくる。
「……ははっ。私、困ってる時、助けてもらった事あったかな」
――おや? あなた、助けてもらった事ないんですか?
「…………YES」
――それじゃあなたは友達がいないんですね。
「……」
――おめでとうございます。あなたは一人身の称号を手に入れました。
「……」
――あなたに友達はいりません。さぁこれから何をするか、あなたならもうお分かりですね?
「……はい」
私は静かに立ちあがった。ディバッグの中に手を伸ばす。取り出されたのはしっかりとした木の杭。
自分には一生使う事がないと思っていた支給武器。私はそれを今、しっかりと両手に握りしめている。
目の前には男。
ぐっすりとソファーで寝ている鳴子 尋(男子13番)だった。
「馬鹿馬鹿しい」
私は思いきり両手を振り下ろした。
手にはしっかりと肉を貫いたような感触。
「……」
彼にかけられていたタオルケットに徐々に赤いしみが出てきた。
彼は死んだのだ。
たった今、この手で、この私の手で殺した。
突き刺さった杭は、私の意思を褒めたたえるかのように堂々とその姿を際立たせていた。
GOOD BYE.もう後戻りは出来ないわ。さよなら、自分。
【鳴子 尋(男子13番)・死亡】
【残り28人】