星見山中プログラム   作:なななお蝶

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8.仲良し二人

=学校西門付近=

 

「瀬里奈~早く出てきてよ……私、一人じゃ寂しいよ」

 門の影に隠れながら友達を待つ徹田屋 江菜(女子13番)。

 しかし、友達の西 瀬里奈(女子16番)は自分よりも出席番号が後ろにある。

 彼女と再会するためには、まだ後6人くらいこの場で待たなければならないのであった。

「あぁ私ったら、こんな事して待ってる間に殺されちゃったらどうしよう」

 それなら一人で行動すればいいだけなのに、江菜は彼女を待っている。

 昔、友達に裏切られイジメのターゲットにされた江菜、出来ることなら自分からは友達を裏切りたくないのだ。

 それでも一人でいるのはやはり心細い。

 

――こんなことして、誰かに後ろから襲われたらどうしよう。もしそうなったら私だって……

 

 江菜はデイバックの中にある包丁を握りしめた。

 

とんとん

 

 江菜の肩を何者かが叩いた。

 

――誰か、いる?

 

 彼女の心臓はばくんと大きく鳴った。

 

「だ、誰!?」

 

 驚いた江菜は、ついさっき握り締めた包丁を思いきり振りまわした。

 包丁は江菜の力により、思いきり、しかも無差別に動きまわる。包丁を振り回された相手はいいものじゃない。

「わっ馬鹿、やめろ。俺だ、俺。別に危害加えねーよ」

 江菜に声をかけた人物、鳴子 尋(男子13番)はそう言ってとっさに5歩ほど後退した。

 その声を聞き、ふと我に返った江菜は急いで手に持っていた包丁を離した。

「ご……ごめんなさい。鳴子君」

「死ぬかと思った」

 たまたま知った顔に声をかけたがために殺されてしまうなんて、不運にもほどがある。

 鳴子は両手を広げ、敵意はないというポーズをとった。

 

「そ、それで私に何の用?」

 まだ若干警戒したような面持ちで江菜が尋ねる。

 彼女はたいして鳴子と関わりを持っていなかった。

 それでも対話に応じようとしたのは、友達の瀬里奈が鳴子と仲が良かったからだろう。

 鳴子 尋。彼は親友の弐羽 一木(男子14番)といつも一緒に行動していた。

 人のよさそうな顔、いつもにこにこというよりはへらへら笑っていて、何を考えているかはよく分からない。

「江菜さんはここで何をやっているの?」

 そんな事を江菜が考えているうちに、鳴子は江菜に質問を投げかけた。

「私は……瀬里奈を待っているの」

「あぁ……あいつか」

 何か考えたように鳴子は少し静止する。

 その時だった。

 

「おい、尋」

 

 再び背後から別の声が届く。

 先ほどとは違い一人では無かったので、心に余裕が生まれたらしい江菜は「誰かな?」と、若干気軽な気持ちで声のする方へ振り返る。

「あ、弐羽」

 それは鳴子の友達、弐羽 一木だった。

 銀縁の眼鏡、制服のボタンは几帳面に一番上までしまっている。

「こんなところで何してるんだよ」

「それがさぁ」

 それから鳴子は、江菜が友達の瀬里奈を待っているという話を弐羽にも伝えた。

 混乱して包丁を振りまわした事を言わなかったことは彼女にとって幸いといえよう。

 普段は結構乱暴な事を言っている鳴子だがこういう時は気を使ってくれたらしいという事に、江菜は心の中で感謝の言葉を述べた。

 

「なるほど……」

 眼鏡をふきながら、とりあえずといった感じで話を聞いて3分。一通り事情を理解した弐羽は眼鏡をかけ直し顔をあげた。

「それじゃ、まず、お前らはここから離れなきゃな」

 何を考えたか、弐羽はそんな事を言う。

「え、どうして?」

 江菜は面白く無さそうな表情を浮かべる。

 

――自称・学年一の学力だかなんだか知らないがヒドイ事をいうなぁ。鳴子君の話を聞いていなかったの? 私は、瀬里奈を待っているのに……

 

 疑問を感じたのは彼女だけではない。

「そうだよ、弐羽。お前本当は馬鹿か?」

 鳴子君もまた江菜と同様の想いを感じていた。

「まだ話の途中」

 二人の気持ちを呆れたように制する弐羽。

 一呼吸おいて、言葉を続けた。

「ここは校門付近だろ? 万が一やる気のヤツがここに戻ってきたらどうするんだ? ココは目立ちすぎる」

 二人は辺りを見回した。

 確かによく見るとここには校門がぽつんとあるだけ。大抵の人ならすぐに隠れていた(つもり)の私を見つけてしまうだろう。言われるまで考えつかなかった。

 江菜は少しだけ反省した。

 

「弐羽君、頭いいね!!」

 

 はしゃいだ調子で彼の状況判断を称賛する。

「……」

「ん? あれ、二人ともどうかした?」

 二人の生み出す間に小首を傾げる。

「いや、そんな声出して誰かに見つかったら危険でしょ」

 弐羽は冷静にツッコミを入れる。

「あっ、そうだったごめーん」

 

『………………天然』

 弐羽と鳴子の声はみごとハモっていた。

 

 その後、すぐさま3人は少し離れた草むらの影に隠れた。

「尋と江菜さんはここに行っててくれ」

 そう言うと弐羽は地図上にある小屋を丸でかこんだ。

 そして、二人に向けて四角い箱を差し出す。それは探知機だった。

「これは半径10m以内に誰かが居ると反応してランプが光る」

 四角い箱の画面には簡単なこの辺の座標とランプが3つ点いていた。今、ここにいる3人の事だ。

「俺は後から合流する」

 鈍い光を発しながら、眼鏡の彼はそう言った。

「後からってお前は何する気だよ?」

 少し不機嫌そうに鳴子が訊ねる。

「俺は瀬里奈を待って一緒にそっちに向う。……ほら、早く行け」

 そう言うと弐羽は手でしっしっと犬を追い払うようなそぶりを見せた。

「……わかった。弐羽……ちゃんと来いよな」

「わーかってる」

 

 そうして、鳴子と江菜は小屋へとむかった。

 そんな中江菜は、『男の友情っていいな』なんてのん気なことを考えていたのであった。

 

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